スタント・パーソン(Stunt person)またはスタントマン、スタントウーマンとは、さまざまなスタントをこなす人物のこと。主に映像作品、舞台やイベントなどにおいて、高度かつ危険なシーンを専門に演じる人物を指す。スタントは大まかにボディースタントとカースタントとに分かれており、カースタントを行う人物についてはスタントドライバーと呼ばれスタント・パーソンとはまた違った技能を持つ。ボディースタントではスタント・パーソン本人がドラマの主要人物と戦う格闘シーンや爆破落下などの場面でモブキャラクターとして出演することが多い。他の大きな役割としては、危険な動きや複雑高度な動きを俳優の代理として顔が見えない形で演じることもあり、その場合はスタントダブル(古くは替え玉とも吹き替えとも称した)と呼称される。女優についてはスタントウーマンが担当するが、以前はその数が圧倒的に少なかったため、男性が女性用ウィッグをつけ同じ衣裳を着て吹き替えをすることが多く、現在でも現場によってそういったケースがある。また、このスタントダブルから派生し日本で特に発達した役柄として、特撮ヒーロー番組などで着ぐるみを着用し戦闘アクションを担当するスーツアクターもある。どの国でも危険なシーンを演じるというのは同じであるが、歴史としてはアメリカが主に西部劇においてハードな乗馬アクションをこなす際の特殊技能や安全装置の開発から始まったのに対し、日本ではチャンバラ映画における殺陣での斬られ役、香港の武侠映画やカンフー映画ではやられ役といったリアクションを重んじる形で発展してきた役割であった。アクション撮影においては、スタント・パーソンの上に殺陣師やスタントコーディネーター、香港や日本の現場によってはアクション監督といった立場のスタッフがいるが、それらのほとんどはキャリアの初めにスタント・パーソンとして活動した経験を持つ者である。スタントマンという言葉すらなかったチャンバラ映画、仁侠映画、ヤクザ映画全盛期の日本では、斬られ役、モブキャラクターの悪役や危険なスタントは大部屋俳優と呼ばれる撮影所専属の脇役俳優が務めてきた経緯がある。そんななかNHK大河ドラマ『太閤記』の殺陣師を務める事になった林邦史朗が、派手に馬から落ちたり迫力ある立ち廻りの為に、危険なシーンを演じてくれるメンバーを揃えてくれと依頼を受けたことから、「若駒冒険グループ」(現・若駒プロ)を立ち上げた。1963年のことで、これが日本で初めてのスタントチームと位置付けられている。翌年には大野幸太郎が大野剣友会を設立、時代劇のみならず現代アクションでのスタントマン、特撮ヒーロー番組におけるスーツアクターなどを生み出した。その後、日本のアクションスターの第一人者である千葉真一が自らと絡む端役の人材不足解消と技術向上、そして新たなアクション俳優を育てることを目的に1970年にジャパン・アクション・クラブ(JAC)を設立。また長らく香港台湾などで活躍してきた倉田保昭も倉田アクションクラブを創立した。こういった動きは撮影所にとらわれないスタント・パーソンという専門の人材を派遣するプロダクションの役割を新たに担う事になり、その流れの中から多くのアクション俳優、スタント・パーソンが誕生し、後の殺陣師、スタントコーディネーターやアクション監督を育成した。しかし、映画テレビの流行の移り変わりもあり、かつて一世を風靡した時代劇やヤクザ映画は制作される本数が目に見えて減り、刑事ドラマにおいても時代とともに次第にアクションの占める割合が少なくなってゆくことになる。現在、日本でのスタント・パーソンの仕事としては、舞台やカメラの前でアクションを演じるだけでなく、学校などで行われる交通安全教室のデモンストレーションや、TV番組での身体を使った危険なゲームの安全確認のテスト、アクションゲームのモーションキャプチャーアクターとして格闘シーンの撮影など、様々な現場に参加する事も多い。スタント・パーソンといえば、高所からの落下、炎の中からの脱出、クルマに当たるといった危険なスタントのイメージが先行しがちだが、近年CGが発達し、ワイヤーを操作するアクションも多用され、今では身体を張った命がけのスタントは減る傾向にある。近年のアクション映像は、入り乱れるように同時に何人も相手にするのが主流となっておりアクションが立体的になった。そのためアクションの中心から外れた人間が、そのシーンで立ち止まっているわけにはいかないなど、違った部分で技術的には高度になってきている。日本のアクション監督大内貴仁は、スタント・パーソンは常に役者を「引き立てるよう」に動くことが重要で、タイミングがズレたら待って合わせる、俳優が動きやすい位置に自ら動いていくなど、その場の状況、相手に合わせてフレキシブルに対応する「受け手」としての柔軟性が必要だと語る。受けがまずいと全体の動きが停滞してしまうため、その上手い下手がスタント・パーソンの「実力」になるのだという。また、スタントダブルの場合には、その実力に加え、後ろ向きでも俳優本人に見えるように背中で真似をしないといけないと話す。それには俳優の動きを完全にコピーするくらいの表現力が必要になり、刀の持ち方ひとつにしても、真似をしつつカッコよく見せるというハイレベルな能力が、求められていると解説している。映像撮影では、裏方として俳優のトレーニングに協力したり、俳優に撮影での動きを伝えるなどコミュニケーション能力も重要視される。現場ではワイヤーアクションでのワイヤーの設置や操作、道具の管理、現場の安全確認やそれにともなう準備などを行う。またスタントコーディネーターやアクション監督とともにアクションの設計にも携わり、現在ではアイデアを俳優やスタッフに伝えるためのビデオコンテ(テスト版映像)を制作する事例も増えてきている。しかし日本の現場では、女性のみならず全体的にスタント・パーソンの数は少なく、人材不足、高齢化が懸念されている。ハリウッド映画と日本映画では、その産業規模の差、組合の有無など環境が大きく異なるため、ギャラの形態や傷害保険、労災保険などの面での違いがある。長らく労災問題改善に務めてきたアクション監督・殺陣師の高瀬将嗣によると、日本ではスタント・パーソンは危険な職種のため労災が下りないのではなく、スタント・パーソン自身が経営者つまり雇用主とみなされるため労災が下りないと言われてきたという。近年は厚生労働省の認識の変化もあり、スタントチームの会社化(スタント・パーソンの社員化)、作品ごとの掛け捨ての保険加入や怪我をした際の労災の申請などにより、条件を整えれば、入院休業補償もされるようになった。
出典:wikipedia
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