ビッグバン宇宙論でいう観測可能な宇宙(かんそくかのうなうちゅう、observable universe)とは、中心にいる観測者が領域内の物体を十分に観測できるほど小さい、つまり、ビッグバン以後のどの時点でその物体から放出された信号であっても、それが光速で進んで、現在の観測者のもとに届くまでに十分な時間があるような球状の空間領域である。宇宙のどの場所にもその場所にとっての観測可能な宇宙があり、それは地球を中心とするものと重なる部分も重ならない部分もある。「観測可能」という語は、現代の技術でこの領域内の物体から放射されたエネルギーが検出できるかどうかとは無関係であり、その物体からの光やその他の放射エネルギーが地球上の観測者のもとに到達することが原理上可能だという意味である。実際に観察できるのは、宇宙が晴れ上がった「最終散乱面」にある物体までである。晴れ上がる前の宇宙は、光子に対して不透明であった。しかしながら、重力波(やはり光速で移動している)の検出によって、それ以前の情報を推定することもできないわけではない。重力波はインフレーション時代の遅くとも後期から発生しており、それによって数兆光年・あるいはそれ以上の遠方の宇宙を観測できる可能性がある(もちろんインフレーション時代の宇宙の姿の観測となる)。宇宙論の研究論文では、一般人のものでも専門家のものでも、「宇宙」といえば「観測可能な宇宙」を指すことが多い。宇宙はわれわれと因果律的に断絶しており、直接的な実験法では宇宙のどの部分についても全く何も分からない、ということからも、そのことは裏付けられる。もちろん、宇宙のインフレーションなどの信頼できる多くの理論では、観測可能な宇宙をその一部に持つ、より巨大な宇宙(全宇宙)が必要になる。観測可能な宇宙の境界面が、全宇宙の物理的な境界面とぴったり一致することを示唆する証拠はない(そのような境界面があるとしての話だが)。両境界面が一致するということはまずないと考えてよい。もし一致するなら、地球が全宇宙のちょうど中心にあることになり、宇宙原理に反する。確からしいのは、可視宇宙(観測可能な宇宙よりもさらに狭い領域)内にある銀河が、全宇宙の銀河のごくわずかしか表していないということである。全宇宙が観測可能な宇宙よりも「小さい」ということも、もちろん可能である。その場合、非常に遠くにあるように見える銀河が、実は近くにある銀河の光が宇宙を一周してくることによって生じた複製像だということもあり得る。この仮説を実験によってテストするのは、銀河の異なる像がその一生の異なる時代を指すこともあり、結果として全く違うということにもなりかねないため、困難である。2004年のある論文では、全宇宙の直径は、24ギガパーセク(780億光年)が下限であると主張されており、その場合、観測可能な宇宙より少しだけ小さいということになる。この値はWMAPの観測をマッチング・サークル分析したものに基づいている。仮に観測不可能な宇宙を含めた全宇宙が有限で閉じているとしても、観測可能な宇宙の範囲内では、曲率は無視できるほど小さいことから、宇宙全体の大きさは、光年単位を用いても「兆」等の日常的な数の尺度ではなく、指数での表現が必要な大きさである。レオナルド・サスキンドは宇宙の直径をformula_1と推定している。この推定値の単位を考慮することに意味はない。桁数が非常に大きいため、単位が「光年」でも「ミリメートル」でも、もはや誤差以下の違いでしかないためである。地球から「可視」宇宙(宇宙光の地平面)の端までの共動距離は、あらゆる方向に約14ギガパーセク(465億光年)である。これによって、観測可能な宇宙の共動半径の下限が明確になる。もっとも、導入部で述べたように、可視宇宙は観測可能な宇宙よりやや小さいと考えられる。これは、再結合(宇宙の晴れ上がり)以後に放射された宇宙背景放射からの光しか見えないためである。この宇宙背景放射によって、われわれには天体の「最終散乱面」が見えているということになる(重力波によって、あくまで理論上は、この球体の外部領域から、再結合期以前の事象が観察できる)。つまり、可視宇宙は直径約28ギガパーセク(約930億光年)の球体だということになる。宇宙空間はだいたいユークリッド平面であるから、この大きさはおよそformula_2すなわち3×10立方メートルの共動体積に相当する。上に引用した数字は、(宇宙時間でいう)「今」の距離であり、「光が放射された時点における」距離ではない。例えば、今この瞬間にみえる宇宙マイクロ波背景放射 (CMBR) は、137億年前に起こったビッグバンから379,000年後の再結合の時に放射されたものである。この放射エネルギーは、その中間の時期に密集し、現在では銀河になっている物質から放出されたものである。これらの銀河は現在、われわれからおよそ460億光年の距離にあるとされている。光が放出された時点におけるその物質までの距離を推定するためには、「膨張の数学モデル」を選び、また、スケール因子"a(t)" をビッグバンからの任意の時刻"t" について計算しなければならない。観察に適したΛ-CDMモデルでは、WMAP衛星からのデータを用い、によって、およそ1292というスケール因子の変化が得られる。これが意味するのは、宇宙が、CMBR光子が放出されたときの大きさの1292倍に膨張しているということである。よって、現在観測できる最も遠くの物質(460億光年先)は、現在受け取っているマイクロ波が放出されたときには、いずれ地球となる物質からわずか3600「万」光年しか離れていなかったのである。つまり宇宙の膨張により137億光年より遠方の宇宙も「観測可能な宇宙」に含まれたことになり、重力波が最初に発生したインフレーション時期(雑誌ニュートン2012年7月号掲載)にはインフレーションによる急激な膨張により、重力波を発生した物理体が現在では非常に遠方に存在していることになる。多くの二次資料が、これまでにさまざまな誤った可視宇宙の大きさを「報告」している。いくつかを例示する。観測可能な宇宙には3〜7個(300垓〜700垓個)の星があって800億以上の銀河にまとまり、それぞれがさらに銀河群や銀河団、超銀河団を形成している。2つの大まかな計算がそれぞれ、観測可能宇宙内の原子数を約10としている。観測可能な宇宙内の物質質量は密度と大きさから推定可能である。観測可能な宇宙を構成する可視物質の質量を計算する方法は、1つには、平均太陽質量を仮定し、これに観測可能宇宙内の星の総数をかけることである。宇宙の星の推定総数は、観測可能な宇宙の体積formula_5と、ハッブル宇宙望遠鏡の観測値から計算した星の密度formula_6から導かれ、観測可能な宇宙内の星の推定総数は9(90垓)個となる。太陽の質量(2 kg)を平均太陽質量(矮星の多さと、太陽より質量の大きな星の数はつりあっているとする)とし、星の総数を10個とすれば、観測可能な宇宙の星の総質量は3 kgとなる。しかしながら、「内容物質」の節で述べたように、WMAPのデータはΛ-CDMモデルで推定すると、観測可能な宇宙の総質量の5%未満が星などの可視的な物質で構成されており、残りは暗黒物質やダーク・エネルギーが占めていると予測される。フレッド・ホイルは観測可能な定常宇宙の質量を、formula_7という式を用いて計算している。この式は、formula_8と書くこともできる。
出典:wikipedia
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