『タクシードライバー』(原題: "Taxi Driver")は、1976年公開のアメリカ映画。制作会社はコロムビア映画。監督はマーティン・スコセッシ。脚本はポール・シュレイダー。主演はロバート・デ・ニーロ。第29回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。また、1994年にアメリカ議会図書館がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の1つ。大都会ニューヨークを舞台に夜の街をただ当てもなく走り続ける元海兵隊のタクシー運転手が、腐敗しきった現代社会に対する怒りや虚しさ、逃れられない孤独感から徐々に精神を病み、ついには自分の存在を世間に知らしめるため過激な行動に走る姿を描く。1960年代後半から1970年代中頃にかけて隆盛を極めたアメリカン・ニューシネマの最後期にして代表的な作品とされている。ニューヨークにある小さなタクシー会社に運転手志望の男性が現れた。ベトナム帰りの元海兵隊員と称する彼、トラヴィス・ビックルは、戦争によるのか深刻な不眠症を患っているため定職に就くこともままならず、タクシードライバーに就職。誰となく目的地まで送り届け運賃を受け取るルーティンワークの日々を送っていた。社交性にやや欠け、同僚たちから守銭奴とあだ名されるトラヴィスは、余暇はポルノ映画館に通ったり、深い闇に包まれたマンハッタンを当てもなく運転する、という孤独の中にあった。そして、そこで目にする麻薬と性欲に溺れる若者や盛り場の退廃ぶりに嫌悪を示していた。ある日、トラヴィスは次期大統領候補パランタインの選挙事務所付近を通りかかる。彼はそこで勤務する女性に魅かれ、選挙運動に興味を示した。彼女はベッツィーと言う名で、トラヴィスは彼女をデートに誘う。徐々に懇意になっていく二人だったが、トラヴィスは日頃の習性でベッツィーとポルノ映画館に入り、激昂させてしまう。以来どうなだめても応じず、思うようにことが運ばない彼はついに選挙事務所に押し掛け「殺してやる」と罵るのであった。民主主義の理想と現実の狭間で、トラヴィスの不眠症は深刻さを増し、心は荒んでいく一方であった。「腐敗しきったこの街を俺が浄化してやる」という思いは憤怒から実行性を帯び目的へと固まっていく。そんな中、トラヴィスのタクシーに突如幼い少女が逃げ込んできた。ヒモらしい男が彼女を連れ戻すが、トラヴィスは方向性を定めるにいたった。トラヴィスは裏のルートから拳銃を仕入れ、射撃の訓練と肉体の強化に励んだ。「俺に用か? 俺に向かって話しているんだろう? どうなんだ?」トラヴィスは鏡の前で、半狂人と化した自身の鏡像を前に不敵な笑いを浮かべ、あるいは怒りに満ちた表情で瞬時に拳銃を突き出すのであった。そんな中、トラヴィスは行き付けの食料品店で強盗事件に居合わせた。彼は咄嗟に拳銃を取り出し犯人を撃つ。刑事気取りの彼は偶然にもいつかの少女と会う。アイリスと名乗る少女にトラヴィスは売春で稼ぎ学校にも行かない生活を止めるように説得した。アイリスは、恋愛などではなくヒモに騙され利用されていることに気づいていない。しまいに少女にあきれられてしまうトラヴィス。トラヴィスは浄化作戦を実行に移す。次期大統領候補であるパランタインの集会に現れたトラヴィスの出で立ちは、モヒカンにサングラス。パランタインを射殺しようとした彼はシークレット・サービスに目撃され人混みの中を逃げ去った。その夜トラヴィスは、アイリスのヒモ、スポーツのアパートを訪ねた。トラヴィスはスポーツや用心棒、さらにアイリスの眼前で買春客を立て続けに射殺。自らも銃弾を受けて重傷を負うも、マスコミは彼を一人の少女を裏社会から救った英雄として祭り上げる。心変わりしたベッツィーからも好意を寄せられるが、彼は何事もなかったかのように夜の街をタクシーで一人彷徨い続けるのであった。トラヴィスとアイリス、たくさんの死体と踏み込んだ警察官たちを真上から写す場面は、空家になったアパートの上階の床をくり抜いて撮影された。同じシーンの血の生々しさから公開にあたって、レイティング審査でXレート(=16歳以下入場禁止)指定を受け、光学処理(リンウッド・ダンによると言われる)で血糊の色を作り物らしく加工することでR指定を受けた。常に徹底した役作りで知られるデ・ニーロだが、本作の撮影に際し数週間実際にタクシーの運転手を務め、役の研究を行った。売春で生計を立てる少女アイリスを演じたジョディ・フォスターは、公開当時わずか13歳であったことで大きな話題を呼んだ。彼女は、この作品でデ・ニーロとの共演で演技に開眼したと語っており、突然アドリブを入れるなど、子役として活躍してきたフォスターには刺激的な体験となった。後に、本作で第49回アカデミー助演女優賞にノミネートされ、本格的に女優としての第一歩を歩み始めた。監督マーティン・スコセッシは、浮気した自分の妻の殺害を仄めかすタクシーの客として出演している。劇中ではデ・ニーロ演じるトラヴィスが、精神の昂揚しているスコセッシに終始無言で対応しているが、リハーサルの時には、逆にデ・ニーロが冗談半分でスコセッシのセリフにアドリブで言い返し、驚いたスコセッシは「頭が真っ白になり、言葉を返せなかった」と後に笑って語っている。デ・ニーロが鏡に向かい「」と呟きながら自分の鏡像に銃を向ける場面は、脚本には書かれておらず、監督とデ・ニーロが即興で練っていった。このセリフは、2005年にアメリカ映画協会が選出した「アメリカ映画の名セリフベスト100」で10位にランクインした。終盤のデ・ニーロのモヒカンは、特殊メイクの巨匠ディック・スミスが作成したものである。ハーヴェイ・カイテルの長髪も鬘。本作が遺作となったバーナード・ハーマンによるサックス(演奏はトム・スコット)を中心に据えた音楽も映画の高評価に一役買った。最後のレコーディング・セッションが終了して12時間後、息を引き取った。この映画に影響されてジョン・ヒンクリーがレーガン大統領暗殺未遂事件を起こした。なお、本作自体も、1972年に起きた暴漢によるジョージ・ウォレス大統領選候補狙撃事件からインスピレーションを得たと言われている。DVD版では、アイリスに会いに行ったトラヴィスが隠し持っていた拳銃を用心棒風の男に取り上げられるシーンがカットされている。また銃を密売人から買う場面で銃の携帯許可証を入手できないか聞くシーンがカットされている。このとき、サービスでホルスターをもらっている。脚本担当のシュレイダーらによる音声解説や日本語吹替え音声を新規収録した本編ディスクのほかに、ロケ地のその後の様子や絵コンテと完成シーンを比較した映像を収録した特典ディスクが添付されている。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。