コーヒーノキ(コーヒーの木)は、アカネ科コーヒーノキ属(コーヒー属、コフィア属)に属する植物の総称で、主に栽培種(アラビカコーヒーノキとロブスタコーヒーノキなど)を指す。また、多数の野生種がアフリカ大陸西部~中部からマダガスカル島と周辺諸島にかけて分布している。常緑で光沢を帯びた葉と白い花をつけ、鮮やかな赤~紫または黄色の実をつける。種子からコーヒーの原料となるコーヒー豆が採れるため、商品作物として熱帯地方で大規模に栽培されるほか、観葉植物として鉢植えで利用されている。果実にカフェインを多く含み、古くから薬効を利用されていたと考えられている。また、果肉や葉にも若干含まれていて、これらも利用される事がある。発芽から3~5年で、ジャスミンに似た香りの白い花を咲かせる。その後50~60年に渡り、コーヒーチェリーと呼ばれる果実を付ける。通常、赤または紫の核果で、黄色の品種もある。果実が成熟するまでには約9か月かかり、熟した果肉は甘く食べられるが、量が僅かなので利用されていない。果実の中には2粒の種子が向かい合わせに入っており、この部分がコーヒー豆である(果実・種子の画像)。通常は2粒のうち片方の種子が大きくなり、一方は退化して皮状になる(「枝の先端に付く実」とされているが、実際は枝のどの部分にもできる)。1粒の丸い種子が付くものはピーベリーと呼ばれ、同じ樹には、5%以下しか出来ない。通常の物と比べると焙煎後の味が微妙に異なる。樹高は9〜12mに達するが、厳しい剪定に耐えることから、農園では実の採取に適した3~3.5m程度で管理される。本格的な栽培は17世紀以降で、栽培種の原産地はアフリカ大陸中部で、エチオピアのアビシニア高原やコンゴ、西アフリカが知られている。生育には熱帯地方のサバナ気候や熱帯モンスーン気候のような雨季と乾季、または熱帯雨林気候の山岳地帯など昼夜で寒暖差が大きい気候が適し、多雨も好む。一方、冬霜など強い寒さには弱い。土壌は有機質に富む肥沃土、火山性土壌を好み、火山帯や高地が適し、特にブラジルのテラローシャは最適とされる。コーヒーノキ属には4亜属66種が含まれ、10種ほどの栽培種はEucoffea亜属24種の一部となっている。亜属はさらに5つの節に分けられている。一方、新しいAPG植物分類体系では2亜属103種が含まれ、栽培種はCoffea亜属95種に含まれている。さらに遺伝子系統解析により、5~6のクレード(系統)に分けられている。アラビカ種 ("Coffea arabica" L.、アラビカコーヒーノキ) はエチオピア原産で、最初に広まったイエメンにちなみアラビカの名がある。コーヒーノキ属中、唯一染色体数が44(核相が2n=44。他の種は2n=22)の倍数体で、また自家不和合性も無いなどの特徴を持つ。200以上の品種があり、さらに交配による新品種の育種も行われている。最近の染色体DNAと葉緑体DNAの系統解析により、ユーゲニオイデス種("C. eugenioides")の花とカネフォーラ種("C. canephora")の花粉との自然交配による交雑種が、さらに倍数化して生じた複二倍体を起源とする事が明らかとなった。また、他種から孤立した分布は氷河期の影響と考えられている。高品質で収量も比較的高く、世界のコーヒー生産において7~8割を占め主流となっている。主な栽培地は中南米とアフリカの一部で、高級品として取引される産地が多い。ただし高温多湿の環境には適応せず、霜害に弱く、乾燥にも弱い。レギュラーコーヒー用。ロブスタ種 ("C. canephora" var. "robusta"、ロブスタコーヒーノキ) はコンゴ原産のカネフォーラ種 ("C. canephora" Pierr ex Froeh) の変種で、染色体数は22。1895年に発見され、強靭を意味するRobustから命名された"C. robusta L.Linden"というシノニムを持つ。ベルギーで研究された結果、当時流行していたサビ病に強い性質を受けてジャワ島で栽培され、広まった。品種はあるが特に区別されない。病虫害に強く、高温多湿の気候にも適応するうえ成長が速く高収量で、生産量の2~3割を占める。主な栽培地は東南アジアとアフリカの一部で、特に生産量2位のベトナムで栽培が伸びている。主にインスタントコーヒー用、あるいは廉価なレギュラーコーヒーの増量用として用いられる。カフェインやクロロゲン酸類の含量が高く、焦げた麦のような香味で苦みと渋みが強く、酸味がない。旧植民地と宗主国の関係からヨーロッパ(特にフランス)での消費が多い。フレンチロースト、イタリアンローストなど深煎りしてミルクを合わせる飲み方が普及した背景と見られる。リベリカ種 ("C. liberica" Bull ex Hiern.、リベリカコーヒーノキ) は西アフリカ原産で、染色体数は22。ロブスタ種と同様に個々の栽培種が区別されることは少ない。1876年にリベリアでヨーロッパ人によって「発見」されたが、当時からアフリカ西岸各地で栽培されていた。かつてはアラビカ種、ロブスタ種とあわせてコーヒーの三原種と呼ばれていたが、現在では全生産量の1%未満にすぎない。高温多湿の気候に適応するがサビ病に弱く、交配しやすいので品種の固定が難しく、かつ大木となるため豆の採取が他種よりも困難である。品質もアラビカ種に及ばないとされる。西アフリカの一部で栽培、国内消費されている。栽培地ごとに移入された年代や経路が異なることと、栽培の過程で変異種の発見と品種改良が行われた結果として、栽培のための品種(栽培品種)が数多く存在している。品種改良は特にアラビカ種で進んでおり、ブラジルとコロンビアで盛んに行われている。アラビカ種が世界シェアの70%を占め、ロブスタ種はアジアで多く栽培されている。従来はティピカとブルボンがアラビカ種の二大品種と呼ばれ、それぞれコロンビアとブラジルで主力品種であった。しかし、この二品種は収量があまり多くなく病害虫にも弱いため、品種改良によってより収量が多く病虫害に強い品種の栽培が盛んになり、コロンビアではカトゥーラとバリエダ・コロンビアが、ブラジルではカトゥーラ、カトゥアイ、ムンド・ノーボなどが主力となった。ところが、より風味の優れるコーヒーを求める消費者の要求により、近年では低収量でも風味に優れるティピカ、ブルボンの栽培が盛り返してきている。特にコロンビアではロブスタ種との交配種であるバリエダ・コロンビアを主な栽培品種にした結果、産地としてのコロンビアの評価が大きく低下してしまったため、ティピカへの切り替えが進められている。中南米地区の国でも高級品として、これらの品種の栽培が増えてきている。全体としての生産量がアラビカより少ないことや、アラビカ種とは異なり自家受粉では実をつけないのため(自家不和合性)、遺伝的背景がばらばらであることから、個々の栽培種が区別されることは少ない。ロブスタ種に属する品種には以下のようなものがあるアラビカ種の品質の高さを維持したまま、その弱点である収量の低さや病虫害抵抗性の低さを克服させるため、アラビカ種とロブスタ種の交雑種の作製が行われている。ただしアラビカ種とロブスタ種は染色体数が異なり、単純に交配させても結実しないため、ロブスタ種が自然に変異した四倍体、あるいは人工的に四倍体化したものとの間で交配が行われる。交雑種由来の品種には以下のようなものがある。コーヒーノキは13世紀頃からイスラム圏全域に広まり、16世紀末にはインドにも伝わっている。しかし大規模な農業生産は、1700年にオランダ東インド会社がジャワ島で行ったのが最初とされる。主要生産国の大規模コーヒー農園を中心に、全世界で1000万ヘクタールの土地で150億本のコーヒーノキが栽培されていると概算され、主要産地は北緯25~南緯25度までの熱帯と亜熱帯に集中し「コーヒーベルト」と呼ばれる。ただし、この範囲内ならどこでも栽培可能というわけではなく、気候や地質の面から商業生産に適した土地はある程度限られている。国内消費も含めると70ヶ国ほどで栽培され、最大の生産国であるブラジルの栽培面積は2000年頃には240万haあったが、近年バイオエタノール生産のためのサトウキビ畑に圧され、やや減少傾向とされる。一方で生産量の伸びが著しいベトナムでは急拡大し、2008年には52万haを超えている。日本でも小笠原諸島や沖縄で明治時代から生産が試みられたものの大規模生産には成功していないが、現在も小規模ながら生産・販売が行われている。収量を上げるためには水や肥料を十分与える必要があり、目安として1ヘクタール当たり熟した実で16トン、あるいは1エーカー当たり15,000ポンドが理想とされる。また、アラビカ種の場合には、シェードツリーと呼ばれる植物を同時に植えて、その木陰で栽培されることが多い。木は播種または挿し木で増やされ、3年ほどでコーヒー豆の収穫が可能となり50年以上収穫できるが、やがて収量が落ちるため20年目を目処に植え替えされる。コーヒーの果実は開花してから熟するまでに約9ヶ月を要する。熟した果実は10日間程度の短期間で収穫され、そのまま生豆(なままめ、きまめ、生のコーヒー豆のこと)を取り出すコーヒー豆の精製と呼ばれる加工作業が農園内で行われることが多い。収穫には主に2通りの方法が用いられている。コーヒーノキの栽培を困難にする要因には、ハリケーン、さび病、コーヒーノミキクイムシなどがある。 コーヒーノキは常緑で、また赤い実を長期間にわたって結実させることから、その外観の美しさのために観葉植物として室内で栽培されることがある。商用栽培の場合と同様に3〜5年で開花および結実が可能となる。観葉植物を扱っている店では比較的広く販売されているため入手も容易であり、観葉植物としては栽培も易しい部類だと言われている。アラビカ種が観葉植物として流通している。通常、鉢植えにして栽培する。夏場は日光によって葉が褐色に日焼けする場合があるため、直射日光を遮って育てる。冬場は、日本の屋外気温では越冬できないため室内で育てる。また、冬場に大量の水を与えすぎると根腐れの原因になるので、表面の土が乾いてから少量を与える。根が張りやすく根詰まりを起こしやすいため、毎年5~7月に、大きめの鉢に植え替えるか、余分な根を切り除いてから植え替えることが望ましい。上手に育てれば、栽培開始から3〜5年程度で開花結実するようになる。開花時期は種によっても異なるが、開花している期間は1日程度と極めて短い。その後、結実してから実が熟するまでには半年から9ヶ月ほどの時間を要するため、長期間に亘って赤い果実の観賞を楽しむことができる。収穫した実から種子を取り出して焙煎し、コーヒーとして飲用することも可能である。ただしコーヒー豆の乾燥や焙煎にはある程度の熟練を要する。株分けを行うには播種と挿し木の2つの方法がある。夏の直射日光、冬の低温、根腐れ、根詰まりに注意する必要がある。またそのほかカイガラムシなどの虫害が発生することもある。コーヒー生産国の養蜂家が、コーヒーノキだけから集めた蜂蜜を作って販売している。黒褐色で独特の風味を持っておりコーヒーとの相性がよく、コーヒーの持ち味を殺さないと言って珍重されている。生産量は多くはないものの、日本国内でも蜂蜜を専門に扱う店で入手が可能である。
出典:wikipedia
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