しきしま型巡視船()は海上保安庁の巡視船の船級。分類上はPLH()、公称船型はヘリコプター2機搭載型。巡視船としては世界最大級で、その大きさは海上自衛隊のはたかぜ型護衛艦を凌駕し、イージス艦こんごう型護衛艦と比肩し得るものとなっている。ネームシップの「しきしま」は敷島型戦艦「敷島」に続き日本の艦船としては二代目。同型艦の「あきつしま」は19世紀の防護巡洋艦である「秋津洲」、太平洋戦争中に竣工した水上機母艦の「秋津洲」に続き、三代目。日本の原子力発電所で生じた使用済み核燃料は、イギリス・フランス両国の再処理工場でプルトニウムと放射性廃棄物に処理されて保管されてきたが、行き場がなく、備蓄量は増加の一途をたどっていた。このことから、これを用いたMOX燃料によるプルサーマル発電が試みられることになった。このためにはプルトニウムを日本に輸送する必要があり、まず1984年に初回の輸送が行われたが、この際にはアメリカ海軍やフランス海軍の護衛を受け、輸送船にも武装した海上保安官が警乗護衛を行っていた。そして1990年代初頭には2回めの輸送が計画されたが、1988年の日米原子力協定改訂を受けて、核ジャックなどに対する体制強化が求められた。この輸送の際の護衛を海上保安庁と海上自衛隊のどちらが行うかが政府部内で議論となったが、内閣外政審議室のジャッジにより、海上保安庁が実施することになった。しかし出発地であるフランスのシェルブールから東海港に至る航路は2万海里を超えるうえに、安全確保や航路周辺諸国の感情配慮の観点から途中燃料補給などは行わない予定であったことから、当時海保最大の巡視船であったみずほ型巡視船ですらその任に堪えないことは明らかであった。このことから、長大な航続距離と強力な監視警戒能力を備えた巡視船として、平成元年度補正計画で開発されたのが「しきしま」であった。プルトニウムの輸送は以後行われなかったが、「しきしま」は、様々な警備案件や長距離救難に投入可能な大型の洋上プラットフォームとして重宝された。約350億円にも及ぶ建造費(2009年6月18日の国会質疑による)のために同型船の建造はなかなか実現しなかったが、2000年代に入って、マラッカ海峡・ソマリア沖の海賊問題や尖閣諸島問題、海洋権益の保全などへの対応が重視されるようになったのを受けて、再度建造が検討されるようになった。特にソマリア沖の海賊に関しては、遠隔地に常時1隻を派遣するため、航続距離が長く遠洋での長期活動が可能である本船型を新たに2隻取得することが検討された。これに応じて建造された2番船が「あきつしま」であり、平成22年度計画で、搭載ヘリコプターとともに総額320億円が要求された。なお3番船も検討されたが、尖閣領海警備専従体制の構築が優先されたために、こちらは棚上げ状態となった。船型は既存のPLHと同様、全通甲板を備えた長船首楼型とされている。内部構造は軍艦に準じて抗堪性に優れたものといわれており、船橋構造物は両舷に通路を配し、中央部の区画も横方向の通路で細かく区分している。また船橋周りの防弾にはかなり留意されており、窓の内側にはポリカーボネート製の防弾ガラスを用意、外壁にも防弾板用の金具が取り付けられている。弾片防御のみとされている同世代の軍艦よりもむしろ強固である可能性も指摘されている。なお上記の経緯より、核テロリズムを警戒して、本型の設計の細部は非公開とされており、乗員の名前も、船長ら数名の主要乗組員を除いては海上保安庁職員名簿にも掲載されず、人事異動のリストにも掲載されない。船橋直前の20mm多銃身機銃の装備位置は、「しきしま」では船橋構造物と独立した砦状の甲板室とされていたのに対し、「あきつしま」では船橋甲板下に電気機器室(OAフロア)が設けられるなど船橋構造物が拡大されたことから、その一部として組み込まれている。また格納庫上で40mm機銃を搭載する構造物も拡大されており、これらの変更により、総トン数は約180トンの増加となった。また幅も17メートルに増加しているほか、計画年度が開いたことから、その間の船級規格の変更にも対応している。主機関としてはディーゼルエンジン4基、合計出力3~4万馬力と推測されている。アメリカ海軍協会()では、既存のPLHで採用されてきたSEMT ピルスティクPC2シリーズのV型16気筒モデルであるIHI-SEMT 16PC2-5 V400を搭載しているものと推測している。抗堪性確保のため、主機関は2基ずつ2区画に分散配置されている。推進器はハイスキュード・タイプの可変ピッチ・プロペラ、またバウスラスターも2基備えられている。なお減揺装置として、フィンスタビライザー2組を備えている。「しきしま」は巡視船では唯一の対空捜索用レーダーとして「対空監視装置」を備えているが、これは海上自衛隊のOPS-14あるいはその改良型とみられている。なお「あきつしま」はプルトニウム輸送を考慮しなくなったことで、対空監視装置は省いている。「しきしま」では、90口径35mm機銃を連装マウントに配して、船首甲板上の甲板室と後部格納庫上に1基ずつ搭載した。機銃そのものは、昭和53年度補正計画より装備化されたものであったが、従来は機側操作の単装マウントであったのに対し、本型では連装化して火力を増すとともに、光学射撃指揮装置(FCS)による遠隔操作が基本となった。ただし万一に備えて、機側操作機能と射手席も残されている。また船橋直前の両舷には、20mm多銃身機銃も搭載された。これもやはり、従来は機側操作であったもの(JM61-M)をもとに、光学射撃指揮装置(RFS)と連動して遠隔操作される箱型の単装砲塔に組み込んだものであり、JM61-RFSと称される。JM61-RFSについては、平成12年度より標準的な兵器に加えられた。また海上自衛隊の1号型ミサイル艇に搭載されたものもこの派生型とみられている。これらは当時の巡視船としては強力な兵装であったが、これでも軍艦に比べて武装が軽すぎるという批判があった。「あきつしま」では、35mm連装機銃を高速高機能大型巡視船と同型のボフォースMk.3 40mm単装機銃に変更した。JM61-RFSも、同世代の巡視船と同じ最新型に改正されている。また船橋ウイングを含めて、船内各所には、12.7mm機銃用の銃座が配置されている。なお「しきしま」では、格納庫の両舷に放水銃を装備していた。また「あきつしま」では、更に船首側の40mm機銃の両脇に高圧放水銃を備えている。「しきしま」では、全天候型の救命艇と警備艇を各2隻搭載した。なお警備艇のうち、右舷側の「しきしま3号」はプロペラ推進艇、左舷側の「しきしま4号」は浅海域での使用を考慮したウォータージェット推進艇であり、甲板室の形状も異なっていた。また格納庫上の前端には複合艇とその揚降用のクレーンが装備された。「あきつしま」では更に2隻増やして、搭載艇は6隻となった。船首側から7メートル型高速警備救難艇、全天候型救命艇、高速型警備艇が、両舷に1隻ずつ搭載されている。高速警備救難艇・警備艇はそれぞれミランダ式ダビットに搭載されているが、救命艇のダビットは、艇内から固縛を解いて落下させられるタイプとされている。なお高速型警備艇は監視取締艇をベースとしており、操舵室の天井を開放すれば銃座にもなるとされている。本型の最大の特徴が、大型のシュペルピューマ・ヘリコプターを2機搭載・運用できるという強力な航空運用能力である。これは、まず巡視船「そうや」の初期設計案、続いてみずほ型巡視船の初期計画で検討されたもののいずれも断念されたものであり、「しきしま」は大型のAS.332(8トン級)、「あきつしま」ではその発展型のEC.225(10トン級)を搭載している。「しきしま」は、就役直後の1992年11月に最初にして最後の護衛任務を行った。護衛任務を実施した際、フランスでプルトニウムを受領した直後にグリーンピースの漁船から抗議と称する体当たり攻撃を受けて軽微な損傷を受けたが、任務遂行に支障はなかった。これ以降、酸化プルトニウムの輸送は行われず、これにかわるMOX燃料の輸送は英国原子力公社警察隊の武装保安員がパシフィック社の輸送船に警乗して実施されたため、「しきしま」は護衛任務に就かなかった。護衛任務から外れてからは、航行性を生かして、中国や台湾との緊張が強まっている尖閣諸島や沖ノ鳥島の周辺海域を定期的に巡回して、警戒・監視活動を行っている。また、日本の治安機関を代表して東南アジア諸国に毎年のように赴き、シンガポールやインドネシアなどと合同での海賊対策訓練などを行なっている。2015年(平成27年)4月8日~9日の天皇・皇后のパラオ行幸啓には、「あきつしま」が宿泊施設として用いられた。パラオ国際空港と訪問先のペリリュー島が離れすぎることや、移動にヘリコプターを用いることによる選定で、天皇の外国訪問に海上保安庁の巡視船が使われるのは初めてのことである。これに合わせて「あきつしま」は、高齢となった夫妻が利用する可能性のある船内設備にスロープや手すりを設置するなど、可能な限りのバリアフリー化を図った。また、個室である船長室に大きめのベッドを入れて2人で泊まれるようにし、トイレも温水洗浄便座に変更するなどの小改装が行われた。
出典:wikipedia
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