キャリア・コンサルタントとは、就職を希望する人に対して、さまざまな相談支援を行う専門職である。キャリア・カウンセラー、キャリア・アドバイザーとも呼ばれる。主な業務は、就職希望者が自らの適性、能力、経験などに応じて職業生活を設計して効果的に職業選択や職業能力開発を行うことができるように、個別にキャリアデザインの相談を行うことである。また、この相談のことをキャリア・コンサルティングまたはキャリア・カウンセリングといい同義語である。日本においては、2002年に厚生労働省が計画決定した「キャリア・コンサルタント5万人計画」がきっかけとなり、民間資格としての「キャリア・コンサルタント」の資格講座や認定試験が開始された。「官民合同で5万人のキャリア・コンサルタントを養成すること」を目標にしており、独立行政法人雇用・能力開発機構が養成講座を最初に開始した。その後、人材派遣会社、コンサルティング会社、専門学校、(メンタル)カウンセラー養成講座を実施する各種団体などが、それぞれ厚生労働省の認可を受けて養成講座と認定試験を行っている。キャリアコンサルタントは業務独占資格ではなく、さまざまな機関が養成講座を実施して資格を付与しているが、国は、標準レベルのキャリア・コンサルティングに必要な養成カリキュラムを策定している。特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会により指定された機関の試験に合格した者等を標準レベルキャリア・コンサルタントと呼ぶ。この資格の保有者は、2015年3月末現在で42,131人である。標準レベルキャリア・コンサルタントの対象となる団体の講座を受講し、一定の条件を満たす(試験の合格など)と、各団体が定めた資格を得られると共に、標準レベルキャリア・コンサルタントと名乗ることができる。2007年にまとめられたキャリア・コンサルティング協議会の報告書「キャリア・コンサルティングに関する実態調査結果報告書」は、「"過半数の会社で資格呼称や内容に団体のばらつきがあることに疑問が呈された。業界として扱いづらく、キャリア・コンサルタントとは何かということになってしまうという恐れも一部では語られた。"」と指摘した。また、厚生労働省が発表した「キャリア・コンサルタント制度のあり方に関する検討会」報告書は、「"『職業能力形成システム(通称「ジョブ・カード制度」)』参加者に対し、実施されるキャリア・コンサルティングの担い手としてのキャリア・コンサルタントの充実の必要性が生じている。(中略)専門的なキャリア・コンサルタントの養成へ向けた質量両面で充実を図る取組みが不可欠となっている。"」とする一方で、「"キャリア・コンサルタントのレベルアップと試験の統一を図ることを目的とするのであれば、参入規制を伴う業務独占資格のような制度ではなく、技能検定のような、一定の能力水準にあることを公証するシステムを用いることが考えられる。"」と指摘した。これらの答申等を踏まえ、国の技能検定制度の一種としてキャリア・コンサルティング技能士が2008年に新設された。試験は、特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会が実施する。2級キャリア・コンサルティング技能士を受検するには、原則として5年以上の実務経験が必要だが、標準レベルキャリア・コンサルタントの者は3年、標準レベルキャリア・コンサルタント養成研修と同等若しくはそれ以上の養成研修を受講し修了した者は4年の実務経験でよい。そのほかにも、大学や大学院にて規定の単位を取得した者も実務経験年数が短縮される。検定試験は実技試験と筆記試験からなるが、標準レベルキャリア・コンサルタントは「特例講習」を受けることで、学科試験が免除される。従来のジョブ・カード制度において、ジョブ・カード講習を受講した上で、厚生労働省または登録団体に登録されたキャリア・コンサルタント(但し、標準レベルキャリア・コンサルタントおよび産業カウンセラーなど、一定の条件を満たす者)のことを登録キャリア・コンサルタントと言った。2015年10月、ジョブ・カード制度は、新ジョブ・カード制度に移行し、移行に伴い登録キャリア・コンサルタントはジョブ・カード作成アドバイザーに名称が変更された。キャリア・コンサルタントの主たる活躍場所は、大分すると以下の通りである。人材派遣会社におけるコーディネーターや営業職の役職名として「キャリア・コンサルタント」が使用される例がある。キャリア・コンサルタントの資格制度が開始された当初は、日本は不景気で、企業では人員整理(リストラ)が急激に進行している時期であり、キャリア・コンサルタントは、リストラ対象者としてリストアップされた従業員の次の働き先やキャリア形成を支援することが中心であった。そのため、従業員から見れば「リストラ・コンサルタント」として非難の目で見られ、企業から相談を指示されても相談を拒否したり、キャリア・コンサルタントに会社の愚痴悪口をぶつけ、カウンセリングどころではないという事例も見られたという。2008年現在は、団塊の世代の大量定年退職後の、セカンドキャリアの相談業務が多い傾向がある。また、企業のグローバル化や競争の激化から、長時間労働、サービス残業を強いられ、メンタル的不調を訴えたり、退職を申し出る従業員の相談に乗ることも多いという。就職希望者自身も気付いていない特性や特徴を見出し、適材を適職に配置する「マッチング」を行うために、就職希望者の「キャリアの棚卸」を支援することが中心的業務である。そのために、職業興味検査や職業適性検査などのテスト手法を使用することもある。また、「キャリア・コンサルタント標準カリキュラム」では、キャリア・コンサルティングの能力だけでなく、キャリア啓発のための講義力やグループワークのリーダー能力も求められている。2007年のキャリア・コンサルティング協議会の報告書「キャリア・コンサルティングに関する実態調査結果報告書」の付属資料によると、キャリア・コンサルタントは、企業社員や学校職員として正社員で雇用される場合を除き、キャリア・コンサルタント自身も不定期雇用者や個人事業主、パートタイマーであることが多い。月収20万円未満のキャリア・コンサルタントが69%を超えている。キャリア・コンサルタントとして独立した者は、キャリア・コンサルティングを副業ととらえ、別に保険代理業などの各種業務の収入とあわせて生計を立てているケースが多い。また、キャリア・コンサルティング技能士と、標準レベルキャリア・コンサルタントの(待遇・給与面での)格差を危惧する声も聞かれる。公的職業紹介機関(ハローワーク)や地域若者サポートステーション、公立学校などに勤務するキャリア・コンサルタントは1年契約の非常勤職員である場合が多く、週1~2回のパートタイム勤務の例もある。このため、複数の職場を兼任するキャリア・コンサルタントも多い。また、キャリア・コンサルタントは、常に自己研鑽を積み重ねることやスーパービジョンを受けることが、倫理要綱により義務づけられている。それにかかる費用が高額であることから、活動初期では、キャリア・コンサルタントがワーキングプアに陥る可能性もある。これらの問題に対して、キャリア・コンサルティング協議会でもキャリア・コンサルタント自体の身分保障を1つの課題として捕らえている。スクールカウンセラーにおいては臨床心理士資格が原則的に必須であり、そのために一時的にスクールカウンセラーの不足が生じた。これと同様に、各種の職場、特に公的機関においてキャリア・コンサルタントとして勤務する条件として技能士資格が求められる可能性を、一部のキャリア・コンサルティング従事者は危惧している。そのために一時的にキャリア・コンサルタントが不足したり、技能検定を受けるのに必要な実務経験を積んでいない標準レベルキャリア・コンサルタントが経験を積む場が減少するのではないか、また、標準レベルキャリア・コンサルタントが現在勤務している職場を失うのではないか、との危惧を、一部のキャリア・コンサルティング従事者が示している。
出典:wikipedia
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