ホスホマイシン(Fosfomycyn、Phosphomycin、Phosphonomycin、商品名:ホスミシン)とは、ストレプトマイセス属の真正細菌が産生するの一つである。カルシウム塩が経口剤、ナトリウム塩が注射剤と点耳剤として製造されている。製剤成分に過敏症の既往を有する患者の他、低張性脱水症の患者は脱水が増悪する可能性が有るので注射剤は禁忌である。経口剤の添付文書に記載されている重大な副作用は、血便を伴う重篤な大腸炎(偽膜性大腸炎等)である。注射剤にはそれに加えて、ショック、アナフィラキシー様症状、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、肝機能障害、黄疸、痙攣が記載されている。点耳剤に重大な副作用は設定されていない。ホスホマイシンが有効な以下の菌株が原因である敗血症、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、感染性腸炎、腹膜炎、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、子宮旁結合織炎、深在性皮膚感染症、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、中耳炎、外耳炎、副鼻腔炎ホスホマイシンは各種の尿路感染症に短期間大量投与される。単回経口多量投与の報告も有る。 とのが嚢胞性線維症患者の肺感染症治療に応用された。ホスホマイシンの忍容性は高く、副作用は少ないとされるが、治療中の耐性の出現率が高く、重症感染症の治療継続が出来ない場合が多い。小児並びに75歳以上の高齢者には推奨されない。更なる使用方法が提案されている。 世界的な耐性菌出現が近年問題視されている。ホスホマイシンはMurAと呼ばれる酵素を失活させる事で殺菌的に作用する。MurAはペプチドグリカンの生合成過程の内、ホスホエノールピルビン酸(PEP)をUDP-"N"-アセチルグルコサミンの3'位の水酸基へ移動させるを持っており、このピルビン酸基はペプチドグリカンのペプチド部分とグリカン部分を繋ぐ役目を果たす。ホスホマイシンはPEPの代わりにMurAに結合し、その活性部位であるシステイン残基("Escherichia coli" の場合は115番)をアルキル化して作用を封じる。この様にホスホマイシンは、細菌の細胞壁のペプチドグリカン合成を阻害することにより抗菌力を発揮する。βラクタム系の様に細胞壁のムレイン架橋を阻害するのではなく、ムレイン単体生合成を阻害する事が特徴である。ムレイン単体合成阻害薬には他にバンコマイシンがある。ホスホマイシンはバクテリア体内へグリセロールリン酸輸送体にて取り込まれる。ホスホマイシンの抗菌活性はグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対して有効であり、"E. faecalis"、"E. coli"、シトロバクター属、プロテウス属等のグラム陰性菌を殺菌出来る。低pH環境下ではより活性が強く、尿中に未変化の活性体が排泄されるので尿路病原菌起因性の予防・治療に適している。 注目すべき点は、"S. saprophyticus"、クレブシエラ属、エンテロバクター属に対する活性一定ではないので、最小発育阻止濃度(MIC)を確認した上で用いるべきである点であろう。他の抗生物質と交差耐性を持たないので、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生する病原体に対する活性は、特にESBL産生型"E. coli" に於いて良好又は著効である。 ホスホマイシンに感性の起因菌に因る単純性尿路感染症に対する臨床データが有る。しかし、感性の判断基準である64mg/Lは全身性感染症については適用すべきでない。欧州抗菌薬感受性試験委員会(EUCAST)は、感性の基準として32mg/Lを採用している。LD:1,200mg/kg(ナトリウム塩、マウス投与時)非必須なグリセロールリン酸輸送体の不活性化に因ってホスホマイシン耐性が出現する。ホスホマイシンの耐性に寄与する酵素群の遺伝子が、染色体とプラスミドの両方から見付かっている。ホスホマイシン耐性に関する3つの遺伝子(FosA、FosB、FosX)はに分類される酵素をコードする。これらの酵素はホスホマイシンの1位の炭素に求核反応してエポキシ環を開き、ホスホマイシンを不活化させる。求核反応に用いる基質に応じてFosA(グルタチオン)、FosB()、FosX(水(HO))に分類されている。一般にFosA及びFosXはグラム陰性菌が、FosBはグラム陽性菌が産生する。FosCはホスホマイシンにATPのリン酸基を転移させる酵素であり、この反応に因ってもホスホマイシンは不活化される。"Streptomyces fradiae" が持つホスホマイシンを生合成するを全て"Streptomyces lividans" に移植する試みが2006年に成功した。ホスホマイシンは最初、土壌サンプルの培養液中に含まれていた"から、発育中のバクテリアをスフェロプラスト化させた事から発見され、1969年に出版された論文集の中で報告された。1971年に工業的に生産される様になった。
出典:wikipedia
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