父称(ふしょう、)は、人名の一部として用いる、本人の父または男系祖先の名に基づく呼び名である。父系制の民族や文化圏に存在する。姓が使われない場合は姓と同様に使われることもあり、同名の人を区別するため、私生子でないことを言明するため、また家系の呼び名として、あるいは一種の敬称として用いられる。また、歴史的な父称が姓として定着したものもある。父称を用いる民族や文化圏には、次のようなものがある。多くのスラブ民族では、先祖の名前に基づく -(v)ich 型の父称が男女の区別無く姓として定着している。一方ロシアなど一部文化圏では、例えばピョートル・"イリイーチ"・チャイコフスキー(父の名はイリヤー)のように、実父の名に基づく父称をミドルネームのように用いる。これは普段は省略することが多いが、敬意をもって呼ぶときは「ピョートル・イリイーチ」のように「個人名・父称」とするのが基本である。アラブ人には姓がなく、サッダーム・"フセイン"のように、個人名に区別のために父称(ナサブ)をつけたり、ビン=ラーディンのように祖先名を家系の呼び名として用いたりする。また、イスラム圏ではアラブと同様に父称を用いる地域も多いが、現在ではイランやトルコのように姓(父称に基づくものも多い)を名乗るようになった地域もある。ユダヤ人も古くは姓がなく、父称が用いられた。ゲルマン人やケルト人の間では、現在もアイスランドで行われているように、姓がなく父称が用いられた。現在でもウィルソン(ウィルの息子)やマクドナルド(ドナルドの子孫)など、父称に由来する姓が多い。日本には父称をつける習慣はないが、柳田國男によれば、かつて岩手県遠野市の付近では、人の名前を呼ぶ際に必ず上に父親の名前を付ける習慣があったという。たとえば春助の息子が勘太ならば「春助勘太」、女性でも「長九郎きく」などと呼んだ。また、父称というだけではないが、先祖代々、一族の子弟に同じ文字をつける「通字」という名付けの風習がある。代表的なものに、平安時代から現在に至るまで、皇室の男子の大半に用いられている「仁」の字が挙げられる。一般人でも、父から息子に、共通の文字を一つ与えて名付けられる例は多い。父称は、父または男系祖先の名に接辞をつけて作るものが多い。例えば、ロシア人のイヴァン(イヴァーン、)の息子はイヴァノヴィチ(イヴァーナヴィチ )、娘はイヴァノヴナ(イヴァーナヴナ )という父称となる。また、祖先の名に拠るイヴァノフ(イヴァーナフ )および女性形イヴァノヴァ(イヴァーナヴァ )などの姓もある。このような接辞は、「息子」「娘」という語に由来するものもある。例えば、アイスランドでは現在も基本的に姓はなく、代わりに父の名の属格に息子ならソン (-son)、娘ならドウティル (-dóttir) をつけた父称が用いられている。イングランド系の姓ジョンソン (Johnson) も「ジョンの息子」の意味である(古英語で元来の接辞はingであり、sonはノルマン人の影響によるもの)。ウェールズ系の姓ジョーンズ (Jones) は、祖先名ジョン (John) の属格に拠る父称とも、息子を表す接辞の省略ともみなすことができる(元来のウェールズ語の接辞はapである)。また、Jonesのようなsのつく姓は、「〇〇の雇われ人」の意味でも用いられた。アイルランド系の姓につくフィツ(Fitz-:ノルマン語に由来)やオウ (O'-)、スコットランド系などのマック (Mac-, Mc-) も元は「○○の(息子)」の意味がある。アラブ人のナサブもこのタイプで、父の名に息子ならイブン (Ibn-) またはビン (Bin-)、娘ならビント (Bint-) をつけて作る。また、サダム・"フセイン"のようにイブンおよびビンを略すこともある。ユダヤ系でもベニヤミン(ベンジャミン)のように、古くからベン (Ben-) をつけた父称が用いられた。
出典:wikipedia
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