ダーウィンフィンチ類はフウキンチョウ科に属する、フィンチ類に似た(類縁性は薄い)小型種の総称である。南アメリカ沖のガラパゴス諸島・ココ島の島々にのみ生息する。単にダーウィンフィンチとも呼ばれるが、狭義にはこのうちの1種をダーウィンフィンチと呼ぶ。ガラパゴスフィンチ類とも称されるが、1種(ココスフィンチ)はガラパゴス諸島にいないので不適切ともされる。絶海の孤島で、しかも地質学的には新しい火山諸島であるガラパゴスにこれだけの種が最初から存在したとは考えにくく、また南米に近縁な種が生息することから、ガラパゴス諸島の北東にかつて存在しすでに海没した島々を伝って、200から300万年前に祖先種の一群が渡来し、環境に合わせて適応放散的に進化したことの例証とされる。ビーグル号の航海の途中にガラパゴス諸島に立ち寄ったチャールズ・ダーウィンに進化論の着想を与えたとしてこの名称がつけられている。ダーウィン自身は最初フィンチの差異に気づいてはいたが、それぞれが全く別の種の鳥であると考えて重視していなかった。初めてこれらが近縁の種であると発見したのは鳥類学者のであった。は、進化論の着想に影響を及ぼしたのはむしろマネシツグミや南米で発見した化石、ロンドンで研究に供されたハトであり、フィンチ類はそれほど大きな影響を与えていなかったと述べた。20世紀に入ってから最初に本格的な研究を行ったのは鳥類学者のデイビッド・ラックであった。「ダーウィンフィンチ」の名は1935年にダーウィンのガラパゴス訪島100周年記念講演で初めて用いられたが、ラックの同名の書により一般に知られるようになり定着した。ダーウィン自身はこの鳥の採集をいい加減に行ったことをのちにひどく後悔した。また『』の第2版で「もしただ一種の祖先が渡来しこれだけの多様性を持つに至ったとすれば、種の不変性は揺らぐかもしれない」と述べたが、著書の中でこのフィンチ類に触れた箇所はわずかである。体長はおおむね10cmから20cmで、日本の鳥ではスズメに似ている。体重は最も大型のオオガラパゴスフィンチで35g、最も小型のムシクイフィンチ属で8gである。ただしガラパゴスフィンチの大型個体とオオガラパゴスフィンチや、ガラパゴスフィンチの小型個体とコガラパゴスフィンチなどは見分けるのが難しい。また、オオガラパゴスフィンチが生息しない島ではガラパゴスフィンチの大型個体がその生態的地位に収まるなど、個体差や変異が大きい。ムシクイフィンチ、マングローブフィンチなどを除く多くの種では、雄は性成熟すると黒または黒と白のまだら色になる。幼鳥および雌は地味な土色をしている。すべての種が、程度の差はあるが雑食である。近年では観光客や住民の排出する生ゴミを食べるものが増え、生態の破壊が危惧されている。不定期に訪れる雨季の直後に繁殖行動を取り、雌は一度に2個から5個の卵を産み、10日から2週間ほど抱卵する。親鳥は2週間から4週間ほど子育てをする。天敵はフクロウ類のコミミズク(亜種ガラパゴスコミミズク)のほか、メンフクロウ(亜種ガラパゴスメンフクロウ)やタカ類のガラパゴスノスリも捕食の可能性があるが、重大な天敵とはいえない。20世紀初めのデイビッド・ラックの研究により、それぞれの島で複数の種に分化したフィンチが生息しており、生息状況によってくちばしを始め、特徴、習性が異なることがわかった。古典的な分類を施したのもラックであった。その後、1960年代からは鳥類学者ロバート・ボウマンが、1970年代なかばから生物学者ピーターおよびローズマリー・グラント夫妻のチームにより詳細に観察研究され、現在でも厳しい自然選択にさらされていることなどが確認されている。グラント夫妻のチームはダフネ島を中心に研究を行っていた。中でも1977年の干ばつと1978年以降の大雨によってフィンチがどのような影響を受けるのか詳細に分析された。干ばつによる食料の減少によって、1977年初めに1,200羽いたガラパゴスフィンチは1977年末に180羽に、280羽いたサボテンフィンチは110羽に減少し、10羽いたコガラパゴスフィンチは全滅した。生存した個体のくちばしの長さの平均は10.68ミリメートルから11.07ミリメートルになった。わずか0.5ミリメートルに満たない個体差が生存上有利に働いたと見られ、翌年生まれた子供の平均的な体格も約5パーセント増大した。しかし1978年以降の大雨によって食料が増えると体格の大きさは不利になり、自然選択の圧力は小型個体に有利に働き、平均的な体格は1977年以前に戻るような傾向を示した。これは自然選択および進化が屋外で詳細に観察された初めてのケースといわれている。その他にもさえずりの分化や性選択への影響、種分化のメカニズムなどが研究されている。また地上フィンチ、樹上フィンチそれぞれのグループ間では交雑が可能であり、実際に雑種が生まれ一部は繁栄していることから、生物学的には完全な種に分かれているわけではなく、種分化の途中であると考えられている。創造論者のジョナサン・ウェルズは著書『進化のイコン』で、ダーウィンフィンチを進化論のインチキな象徴であると批判した。例えば乾季が続けばくちばしは増大を続けると予想できるが、実際は雨季と乾季が交互に繰り返されるのだから、それは「根拠のない推論」であると指摘する。また種が分化せず、雑種が誕生しているのは「種の融合」であり、種は分化するはずという進化論の主張に矛盾する、と述べている。しかし現代の地質学は、環境が永遠に不変であるというウェルズの前提を否定している。また進化論は「種は種分化によってのみ誕生する」と考えているのであり、瞬時に分かれるとか、融合しないとは考えていない。そもそも「種」が綺麗に区別できると考えるのは誤りであり、必ずしも明確に定義できるわけではない。逆にダーウィンフィンチ類の雑種の繁栄は、種分化のメカニズム解明に寄与するものと期待されている。同書は意図的な曲解が多いと批判されている。系統樹は、Sato "et al". (1999); Burns "et al." (2002); Grant & Grant (2002; 2008); Weir "et al." (2009)より。ダーウィンフィンチ類の各属間の系統関係は Weir "et al." により高い確度で求まっており、以前の研究もほぼ整合している。各属内の系統関係は Grant & Grant (2008) によったが、異論も多い(特にガラパゴスフィンチ属)。ダーウィンフィンチ類の正確な姉妹群は不明だが、DNAシーケンス解析によれば近縁な群・種として、フウキンチョウ科クビワスズメ属 (キマユクビワスズメ を除く)、コクロアカウソ、セントルシアクロシトドが確認されており、それらとともに単系統を形成する。Gould (1837) はダーウィンフィンチ類すべてを1属 に分類し、, , , の4亜属に分けた。これらはのちには独立した属とされた。ただし、ココスフィンチ属が発見され、 は に含められ、ハシブトダーウィンフィンチ属が分離されたため、現在は標準的には5属に分類される。生態から、ガラパゴスフィンチ属は地上フィンチ 、ダーウィンフィンチ属は樹上フィンチ とも呼ばれる。地上フィンチは地上で種子(一部は花・花蜜も)を食べ、樹上フィンチは樹上で昆虫を捕食する。これに対し、かつてダーウィンフィンチ属に含められたハシブトダーウィンフィンチは草食である。なお、ムシクイフィンチ属は虫食・花蜜食、ココスフィンチは雑食である。ガラパゴスフィンチ属のうちサボテンの花や花蜜を吸うサボテンフィンチとオオサボテンフィンチを 属とする(復活させる)こともある。またダーウィンフィンチ属のうちキツツキフィンチ・マングローブフィンチを 属とすることもある。ただし、ガラパゴスフィンチ属・ダーウィンフィンチ属内部の系統が不確定なため、これらの分類が系統的かどうかも不確定である。ダーウィンフィンチ類のうち最も祖先の特徴を残しているのはムシクイフィンチ属で、アメリカムシクイに似た(類縁性はない)虫食性の小鳥である。ムシクイフィンチ属はそれ以外のフィンチと最も早く分岐し、その後間もなくハシブトダーウィンフィンチが分かれ、ガラパゴスフィンチ属とダーウィンフィンチ属が分かれた。ただし、ハシボソガラパゴスフィンチがガラパゴスフィンチ属とは別系統で比較的初期に分岐したとする説もある。またダーウィンフィンチ属のマングローブフィンチがムシクイフィンチの近縁種だとする説もあった。ココスフィンチの系統位置については諸説あったが、ダーウィンフィンチ属と姉妹群であり共通祖先がココ島に移住し分岐したという結果が出ている。他に、ダーウィンフィンチ属に内包される、あるいはダーウィンフィンチ類の比較的初期に分岐したとする説もある。ダーウィンフィンチ類は、以前は14種とされてきたが、ムシクイフィンチ属が居住環境の異なる2種に分化していることが判明し (Tonnis "et al." 2005)、15種となった。しかし、特にガラパゴスフィンチ属内で種間の交雑が頻繁に見られることから、14種以下あるいは16種以上に分類する研究者もいる。オオガラパゴスフィンチおよびハシボソガラパゴスフィンチとして所蔵されている古い標本の中に、現生標本とは遺伝的に区別できる絶滅種が混在しているという指摘もある。国際鳥類学会議 (IOC)によるが、アメリカ鳥学会 (AOU) 南アメリカ分類委員会 (SACC)も分類は一致する(通俗名の綴りとリニアシーケンスに違いがある)。5属15種。末尾の色つき英大文字はIUCNレッドリストの格付けである。
出典:wikipedia
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