降水セル(こうすいセル、precipitation cell)とは、雨や雪などの降水現象や、大小さまざまな規模の低気圧を構成する空気の塊のこと。セル(cell)は英語で細胞を意味し、ここからストームセル(storm cell)という言葉が生まれた。アメリカではストームセル、あるいは単にセルと呼ぶことが多いが、日本では降水セルまたは単にセルと呼ぶ。気団の1種とする見方もあるが、一般的に気団とされるものに比べて、規模が小さく、持続期間が短く、不安定であるという特徴を持っている。降水セルはよく、一種のシステムとして理解される。例えば、夏の安定した晴天の下で猛暑になり、山沿いを上昇気流が上昇したとする。すると、上昇気流は次第に冷やされてある高さまで上昇すると雲ができる。上昇気流が強ければ、下からどんどんと空気を押し上げるため雲から上にどんどんと上昇し、一部の冷やされた空気が次第に周囲に向かって吹き出してやがて下降し始める。下降した空気が、その下にある暖かい空気を押しやって、山に向かう上昇気流を促進する。このように、熱力学(気象熱力学)や力学(気象力学)的な原理から、自動的に気流の循環が確立していると認められた空気の塊を降水セルと呼ぶ。降水セルに似た気流の循環は、大小さまざまな規模がある。また、できる状況もさまざまで、前線面での空気の衝突、大気の成層不安定などがあり、頻繁に発生する。しかし、その中で降水セルと呼べるものは多くない。降水セルは、直径数km〜数百kmのものに限定しているためであり、その対象は大きな積雲や積乱雲を発生させるような、強い循環をもつものに限られてくる。これは、もともと「降水セル」というものが、雷雨や嵐(ストーム)のメカニズムやシステムを明らかにするために考え出されたからである。このため、陣旋風や竜巻といった小規模な現象、温暖前線や低気圧を動かす大きな循環などは降水セルに含めない。温暖前線や低気圧などの下で降る雨は、降水セルのような小規模な循環ではなく大規模な循環に影響される部分が大きい。一方、寒冷前線や停滞前線の雨は降水セルに影響される部分が大きい。温暖前線や低気圧にも降水セルがないわけではないが、1つ1つのセルの独立性が弱く、多数のセルが緩やかに結合したような形態をとっているため、普通はセルとみなさない。また、積乱雲の降水セルは1つとは限らず、複数のセルからできていることも多い。また、複数の発達したセルがまとまって相互作用を生み出すことがある(次節で解説)。このセルの相互作用が強く多数のセルがまとまると、メソ対流系(MCS)という低気圧に似た循環構造ができることがあり(日本では少なく、アメリカなどでよく発生する)、低気圧にまで発達することがある。さまざまな気象現象の中での降水セルの位置づけは、物質を細かく分けていくときを考えると分かりやすい。ある物質を細かく分けていくと、まず多数の分子に分けられる。分子はさらに1つ以上の原子に分けることができる。原子は多数の小さな電子と1つの大きな原子核からなり、原子核は多数の陽子や中性子からなる。また、電子・陽子・中性子は更に細かな多数の素粒子に分けられる。物質を「地球」の大気に例えると、分子は雷雨のもととなる低気圧や前線、メソスケール擾乱である。分子(低気圧・前線・メソスケール擾乱)は1つ以上の原子(降水セル)からでき、原子の大部分は原子核(雲の塊)からなる。原子核やその周りを回る電子は、更に細かい素粒子(雲粒=雲を構成する水滴や、雨粒・雪粒)に分けることができる。分子は大小さまざまな大きさがあるが、低気圧・前線・メソスケール擾乱も大きさはさまざまである。アメリカなどでは、雷雨をその母体となる降水セル(precipitation cell)の規模をもとに3〜4つに分類している。シングルセルの場合、セルの寿命は30分程度で、すぐに衰えてしまう。ただ、シングルセルの場合でも狭い地域に複数のセルが発生する場合が多く、雷雨が持続する時間はそれよりも長くなるのがふつうである。一方、マルチセルやスーパーセルは、セル内で上昇気流の部分と下降気流の部分がはっきりと分離しているため、気流の循環(=雲の発達の原動力)が維持されやすく、寿命が数時間に及ぶ。上記の分類における説明は絶対的なものはなく、雹や竜巻などの頻度は地形や他の気象に影響を受ける面もある。セルが一生のうちに違う分類へと姿を変える、たとえばシングルセルからマルチセルへと変わるようなことも多い。また、2つ以上の分類に当てはまるセルもあり、分類には不明確な部分がある。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。