渋谷温泉施設爆発事故(しぶや おんせんしせつばくはつじこ)とは、2007年(平成19年)6月19日午後2時18分頃(JST)、東京都渋谷区松濤一丁目の女性専用会員制温泉施設「松濤温泉シエスパ」(ユニマットグループ)の別棟で発生した大規模な爆発事故。爆発によって施設の別棟が骨組みだけを残して全壊し、周辺の住宅やビルなどでも、爆風や飛散した瓦礫で窓ガラスが割れたり屋根瓦が吹き飛んだりした。女性従業員3人が死亡し、一緒にいた別の女性従業員2人が重傷、通行人の男性が爆発に巻き込まれ重傷、周辺の住宅やビルなどでも割れたガラスで数名が怪我を負った。また、施設名をとって「松濤温泉シエスパ爆発事故」(しょうとうおんせんシエスパばくはつじこ)とも呼ばれることがある。事故が起きた施設は前年の2006年(平成18年)1月に開業したばかりで、JR東日本・東急・東京メトロ渋谷駅から直線で600メートル、東急百貨店本店のほぼ真裏の場所であり、温泉施設のある本館はぎりぎり商業地区にあるが、爆発が起こった別棟は松濤地区の住宅街の一角にある。シエスパの建設については当初地元住民に反対され建設を強行した経緯がある。爆発の起きた別棟には従業員の休憩所やロッカールームがあり、地下一階には深さ1200メートルのボーリング井戸から温泉を汲み上げるポンプが設置されていた。事故当時、女性従業員5人が休憩室に在室中に爆発が起きたと考えられた。別棟が住宅街や渋谷の商業施設に近い場所にあったため爆発の影響は広範囲に及び、さらに事故が平日の昼間に発生したため数多くの通行人が現場に駆けつけ、携帯電話のカメラで撮影する者、写真撮影をする者、応急的な救助活動をする者など現場はパニックとなった。爆発現場の住宅街に設置されていた防犯カメラがたまたま施設が爆発するまさにその瞬間をとらえた。この施設は温泉をポンプで汲み上げた後にボイラーで加熱して使用していた。事故発生当初、ボイラーが爆発したと考えられたが、ボイラーの爆発にしては規模が大きすぎること、爆発した別棟にはボイラーが設置されていなかったことから、温泉を汲み上げた際に一緒に噴出するメタンガスを主成分とした天然ガスが何らかの原因で施設内に溜まり、何かの火が引火して大規模な爆発が起きたのではないかと、警視庁と東京消防庁は判断した。総務省消防庁からも職員4名を派遣するなどして調査を実施した。現場の渋谷区は「南関東ガス田」の中にあたり、1500メートル程掘れば天然ガスが出る可能性のある地域であった。施設には温泉から天然ガスを分離する装置が設置されていたが、天然ガスを屋外に排出するためのU字状の排気管が結露した水で塞がれたことと換気扇の稼働に問題があり、天然ガスが別棟内部に逆流・蓄積された。このガスに、温泉の汲み上げを自動調整する制御盤のスイッチが動作した際に出た火花が触れたことによって爆発したと結論付けられた。さらにガス検出器が設置されていなかったことも、爆発に至った大きな要因とされた。東京消防庁から消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)など57隊が出動し警視庁や東京DMATと協力して救助作業や負傷者の治療にあたった。ガス爆発が原因であるとの情報が現場にも伝わっていたため、火花が出る工具等は使用されなかった。瓦礫で救出作業が難航したために東京消防庁の保有する重機も投入された。爆発により温泉施設付属一棟が全壊、全壊建物内に設置されていた従業員休憩室で休憩中の女性従業員3名が爆風による打撲などで死亡し、他2名が重傷(うち1名が脊髄損傷)、周辺住民が数名負傷、付近の住宅で爆風による窓ガラスの破損などが広範囲に発生した。爆発した瞬間は付近の防犯カメラで撮影されており、爆発で土煙を上げて建物が一瞬で崩壊していく模様がテレビで放送された。また、爆発後の現場報道から、建物が鉄骨骨組のみを残して全て崩壊している写真が報道された。爆発現場が狭隘で建物が全壊状態で瓦礫が散乱した状況と相俟って、狭い裏通りに面していたため被害者の救出活動は困難を極めた。最終的には小型重機を投入し爆発現場の瓦礫を撤去し、取り残された者が居ないか確認をした。6月20日、東京都環境局は都内の全ての温泉施設に電話で注意喚起を始め、源泉汲み上げ機械のある部屋の窓を開ける、換気扇を回すことなどを促した。7月10日、ユニマットは、別棟を含む全ての建物を取り壊して、今後の営業再開を見合わせることを渋谷区役所等に明らかにした。また、この事故を受け、同様の事故を防止する目的で温泉法の一部が改正され、温泉の採取に許可制度を導入するなどされた。同施設はユニマットグループの「ユニマットビューティーアンドスパ」(後に解散し、運営権等をユニマット不動産に承継)が運営し、施設の保守管理は「日立ビルシステム」が請け負い、さらに同社がビル管理会社「サングー」を含む3業者に下請けさせていた。ユニマットビューティーアンドスパ側は、「保守管理について外部の業者に委託していた」としている。日立ビルシステム側は「契約にはガス関連の管理は入っていない」としている。サングー側も「爆発した従業員用施設の地下にある受水槽内の湯量などの点検を担当し、毎日、社員が目視で湯量を確認していたが、ガス関連の管理は担当していない」としている。運営会社や保守管理会社など施設に関わるいずれの業者も、施設内の天然ガス濃度については測定しておらず、ガス検知器も設置されていなかったことがわかった。ガス濃度の点検自体に法的義務はないが、警視庁は業務上過失致死事件として施設の運営・保守管理会社双方の安全管理態勢が十分だったかを捜査した。2008年(平成20年)12月12日、警視庁は、設計・施工を行った大成建設の空調設計設計担当者、および施設運営を行っていたユニマット不動産の取締役と社員の計3人を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。2010年(平成22年)3月26日、東京地検は大成建設の空調設計設計担当者とユニマット不動産取締役の2人を業務上過失致死傷類罪で在宅起訴し、ユニマット社員を嫌疑不十分で不起訴とした。大成建設側について、排管のU字部分に結露した水がたまり管が塞がれた場合ガスが排出されなくなる危険性があることを知っていたにもかかわらず、運営会社に水抜き作業の必要性を伝えなかったことが重大な過失にあたると判断された。東京都や千葉県一帯には、南関東ガス田と呼ばれる水溶性天然ガスが存在しており、温泉汲み出しに付随する天然ガスについて、これを屋外に排出するための排気管に問題があることや、漏れたガスを検出する機器が設置されていないことを知りながらも、それらの対応を怠ったとしている。ユニマット不動産側についても、周辺住民に約束していたガス検出器の設置を開業後も履行しなかったことが指摘された。2012年(平成24年)4月13日、東京地裁初公判が開かれ、2人の被告は無罪を主張した。2013年5月9日、東京地裁は、大成建設社員で施設の設計を担当した社員に禁錮3年、執行猶予5年(求刑・禁錮3年)の判決を言い渡した。施設を運営していたユニマット不動産の取締役については無罪の判断となった(求刑;禁固2年)。2014年6月20日、大成建設社員の控訴審において東京高等裁判所は一審判決を支持、被告の控訴を棄却した。2016年5月25日、最高裁は上告を棄却し、大成建設社員の有罪が確定した。2010年(平成22年)6月16日、シエスパの運営会社であるユニマット不動産は、施設の設計・施工に携わった大成建設を含め4社に対し、105億円の損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こした。施設管理における危険性を具体的に認識していながら、施設引き渡しの際、その説明を怠っていたことを提訴の理由に挙げている。
出典:wikipedia
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