伝聞証拠禁止の原則(でんぶんしょうこきんしのげんそく)とは、伝聞証拠(後述)の証拠能力を否定する訴訟法上の原則を言う。これにより、伝聞証拠は原則として証拠とすることができない。単に伝聞法則(でんぶんほうそく)とも呼ばれる。日本法では、この原則は刑事訴訟にのみ認められるが(刑事訴訟法320条1項)、例えば、アメリカ法にあっては、州によって多少の差異はあるものの民刑事を問わずに妥当する重要な法原則の一つである。この原則の理論的説明は、日本の刑事訴訟法の通説たる学説では次のようになされる。まず、伝聞証拠とは、公判廷における供述に代えて書面を証拠とする場合、または、公判廷外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とする場合であって、原供述(元々の供述)の内容の真実性が問題となる証拠を言う(形式説。この点につき、伝聞証拠を反対尋問によるテストを経ていない供述証拠とする実質説もある)。例としては、関係者の供述を書面に落とした場合にその書面が証拠と認められるかどうか、という形で現れる。また、他の者の供述を内容とする供述とは、例えば、目撃者が犯行状況を話したのを証言者が聞いた、という場合に、目撃者本人ではなく間接的に聞いた証言者の供述のみで、犯行状況に関する証拠として用いてよいかどうか、ということを意味する。供述証拠は、知覚・記憶・表現・叙述の過程を経て公判廷にあらわれる。そして、この各過程にあって誤りが生じる可能性がある。見間違い、記憶違い、言い間違い、嘘をついているなどの可能性があるからである。この誤りの可能性は、対立当事者などによる(反対)尋問によってただされ、本人の一通りの供述だけをそのまま証拠とするのとくらべて、裁判の過程で証拠として取り扱うのに支障のない程度まで縮減されると考えられている(これは当該供述を証拠として取り扱って良いかどうか、という証拠能力の問題であり、その供述に表れた内容が認定できるかどうかは、証明力の問題として別途吟味される)。しかし、供述が伝聞証拠という形で公判廷に提示されるとすると、対立当事者などが(反対)尋問をすることはできない。すなわち、書面に反対尋問をすることはできないし、又聞きの場合には、原供述者の誤りについては反対尋問をすることができない。上記の例で言えば、目撃者の供述に誤りがないかは、目撃者を(反対)尋問しなければ確認する過程を経ることができず、それを聞いたと言う供述者を尋問しても、確かに目撃者がそう言っていたかどうかについては検証することができても、それ以上の検討はできない。したがって、伝聞証拠を証拠とすると事実認定に誤りを生じる可能性が類型的に高いことから、証拠能力を否定して原則これを証拠とすることは出来ない、とするものである。以上の理論を実定化したものが刑事訴訟法320条である。刑事訴訟法320条の理論的根拠はもっぱら憲法37条2項の証人審問権にあるとする見解がある。ただ、刑事訴訟法上の伝聞法則が弁護側と検察側とを区別していないことから、証人審問権のみでは伝聞証拠の理論的根拠として不十分であるとの批判がある。伝聞証拠は原則として証拠とすることができないため(刑事訴訟法320条)、供述内容を証拠としたい場合には、原供述者を公判廷に呼び実際に証言をさせることになる。ところが、原供述者が死亡している場合など、その方策をとることができないことがある。このため、あらゆる場合に伝聞証拠を完全に証拠から排除すると、真実の発見に困難を生じることが予想される。刑事訴訟法では321条以下に伝聞証拠であってもこれを証拠とすることができる例外的な場合に関する規定を置いている。これら例外のなかでは、原供述者に対する証言ができない場合には、一定の要件のもとで伝聞証拠であっても証拠能力を認めている。その中でも、裁判官や検察官の面前における供述については、通常の場合よりも要件が緩和されている。「被告人以外の者」には共同被告人も含むと解されている。
出典:wikipedia
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