内部者取引(ないぶしゃとりひき)またはインサイダー取引(インサイダーとりひき、"insider trading")とは、各国の証券規制において禁止される、証券の発行者の関係者によって行われる当該証券の取引。日本において、金融商品取引法(昭和23年法律第25号、金商法)により規制されている(上記2.の意味での)内部者取引については、主体別で、(1)会社関係者に関する規定(第163条以下)と、(2)公開買付等関係者とに分かれる(第167条)。また、規制態様については、概ね(a)予防規定と(b)禁止行為としての内部者取引に大別され、単に「インサイダー取引」という場合、後者の違反行為を指すときが多い。会社の営業秘密などを不当に利用して取引がなされる事を防ぐため、金融商品取引法は、会社関係者の中でも特に重要な地位を占める者(役員等)を対象に、以下のような規制をしている。金融商品取引所に上場され、または店頭売買有価証券市場(現在は存在しない)に登録されている会社の関係者が、会社の重要事実(当該会社の株価の騰落を左右しうるなど、一般の投資家の投資判断に著しい影響を及ぼしうる情報(会社の意思決定に基づく情報か否かは問わない)を知った者により、その情報の公表前に行われる株式等の取引のことをいう。実質的な根拠としては、「偏在情報の不公平利用の禁止」「有価証券市場に対する信認」および「情報の不正流用の禁止」に求められるとされる。以下の会社関係者や情報受領者が、各規定に該当する場合によって重要事実を知った場合、内部者取引の規制対象となっている(第166条第1項)。また、内部者情報を利用した株式の公開買付けに関しても、同様の規制がなされており、公開買付関係者等(第167条第1項)やその情報受領者(第167条第3項)がその主体となる。重要事実については第166条第2項がその内容を規定しているが、同項第1号ないし第4号までの4類型に分けられ、また、これに対応して、同項第5号ないし第8号が当該上場会社の子会社に関する規定となっている。1. 決定事実(第1号・第5号)当該上場会社等(又はその子会社)の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことにつき決定したこと又は当該機関が公表した当該決定に係る事項を行わないことを決定したこと(1) 株式の発行、募集又は募集新株予約権の募集(2) 資本金の額の減少(3) 資本準備金又は利益準備金の額の減少(4) 自己株式の取得(5) 株式無償割当て(6) 株式の分割(7) 余剰金の配当(8) 株式交換(9) 株式移転(10) 合併(11) 会社分割(12) 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け(13) 解散(14) 新製品又は新技術の企業化(15) 業務上の提携その他上記に準ずる事項として政令で定める事項※ なお、子会社については、(1)~(7)に該当する規定はなく、(15)政令で定める事項についても当該上場会社より少ない。2. 発生事実(第2号・第6号)当該上場会社等(又はその子会社)に次に掲げる事項が発生したこと(1) 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害(2) 主要株主の異動(3) 特定有価証券又は特定有価証券に係るオプションの上場の廃止又は登録の取消の原因となる事実(4) 上記に準ずる事項として政令で定める事項※ なお、子会社については、(2)、(3)に該当する規定はなく、(4)政令で定める事項についても当該上場会社等と若干異同がある。3. 決算情報(第3号・第7号)当該上場会社等(又はその子会社)の売上高、経常利益、純利益若しくは配当等につき、公表された直近の予想値に比較して、当該上場会社等(又は子会社)が新たに算出した予想値又は決算において差違が生じたこと4. バスケット条項(第4号・第8号)その他、当該上場会社等(又はその子会社)の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの※ 包括的・一般的規定である。公表は、単に重要事実が公衆に知れ渡るという意味ではなく、金融商品取引法上では、以下の1.ないし2.のいずれかの措置が講じられた場合のことをいう。1. 多数の者に知りうる状態に置く措置として、以下の2つのうちどちらかの措置が講じられたこと2. 有価証券届出書、有価証券報告書等に当該重要事実が記載されている場合において、当該書類が公衆の縦覧に供された(EDINET上に開示された)こと上記の重要事実の発生後から公表の前までに、未公表の重要事実を知りながら株券等の売買等を行うことが内部者取引の構成要件となる。株券等とは正確には特定有価証券とそれに関連する関連有価証券を含む特定有価証券等をいう。特定有価証券とは株券、新株予約権証券、社債券、優先出資証券が、関連有価証券には株券に関連する投資信託、投資証券、カバードワラント、DR、信託受益権証券、他社株償還条件付証券(EB債;投資家が株券での償還をせしめる権利を有しているものに限る;令第27条の4第6号)等が含まれる。ただ、法に定められた重要事実の中でも、投資家に与える影響が軽微なものとして有価証券の取引等の規制に関する内閣府令で定める事項(軽微基準という)に当たる場合は、インサイダー取引の規制対象とはならない。重要事実のうち「軽微基準」に該当する例会社関係者が重要事実を知って自社株などを取引する場合であっても、取引者の裁量が入り込む余地のない場合など、法令により特に認められた以下の例のような場合については、インサイダー取引規制の対象から除外される。インサイダー取引規制の実効性の観点から、内閣総理大臣(実際には金融庁長官に委任されている。第194条の6)は、審判手続を経て、インサイダー取引を行った者に対し、課徴金の納付を命じなければならないとされた(課徴金制度)。課徴金の額は、以下の計算で得られた額とする(第175条)。※内部者取引がされたことにより利益が生じたか否かを問わず、刑罰の対象となる。ただし、課徴金納付命令とは異なり、内部者取引の立証責任は立件する側の検察にあることから、機動的な摘発は容易ではない。(時間とコストがかかり過ぎる。)・ 資源エネルギー庁元次長によるインサイダー取引事件(2012年)インサイダー取引が規制される理論的根拠としては、以下のような点が挙げられる。なお、米国では、法と経済学論者の一部によって、インサイダー取引の規制は不要であるとの主張も少数ながらなされている。株、金融商品以外に土地を初めとする不動産取引や水利権、小作権他の取引において当該箇所に重要な公共施設や鉄道等が誘致される、もしくは国、自治体の新規政策や外国での戦乱である特定の資源やサービスの市場価値が暴騰、暴落するといった重要情報を知り得る政治家や政治団体、またはそれらを経由して容易に情報を入手できる支持者等がいち早くそれら権利を買い占めるといった一連の行動を「インサイダー取引」と表現することがしばしばあるが道義上の観点、比喩的表現であるならともかく前述の金融商品取引法他の法令上は内部者取引、インサイダー取引には相当しないので注意を要する。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。