『少年の日の思い出』(しょうねんのひのおもいで 原題:"Jugendgedenken")は、ヘルマン・ヘッセが1931年に発表した短編小説。日本では、1931年に高橋健二の翻訳が出版された。中学校の国語教科書に掲載されている事で、日本での知名度は高い。ヘッセが1911年6月6日に、ミュンヘンの雑誌《青年》に発表した『"Das Nachtpfauenauge"』(クジャクヤママユ)が初稿だが、20年後の1931年に改稿し、題名を『Jugendgedenken』に変え、ドイツの地方新聞「Würzburger General-Anzeiger」の1931年8月1日号に短編小説として掲載された。これ以外にも『蝶』、『蛾』、『小さな蛾』、『小さな蛾の話』などに改題の上、発表されている。1931年に日本の独文学者である高橋健二がヘッセを訪問し、別れ際に「列車の中で読みたまえ」と渡された新聞切り抜きが『Jugendgedenken』である。この『Jugendgedenken』のドイツ語文は、日本における大学のドイツ語授業でも使用されている。高橋は初め、この物語に『少年の日の億出』の邦題を付けて翻訳したが、後に『少年の日の思い出』に変更された。高橋が『Das Nachtpfauenauge』に対して『少年の日の思い出』の邦題を付けたとの誤解もあるが、高橋はあくまで『Jugendgedenken』を訳したのであり、『少年の日の思い出』の邦題も特に不自然なものではない。1947年に高橋健二訳が、日本の国定教科書に掲載された。それ以来、現在まで60年間以上も検定(国定)教科書に掲載され続けている。このヘッセの作品は、日本で最も多くの人々に読まれた外国の文学作品と言える。2010年現在、採択されている教科書5社のうち、4社に掲載されており、81.7%の中学一年生が本作品を学習している。一方、ドイツで発行された単行本や全集に収録されているのは、すべて1911年の初稿である『Das Nachtpfauenauge』であり、『Jugendgedenken』はドイツでは殆ど知られていない。1931年当時、この物語の鍵となる蛾(Nachtpfauenauge、直訳では「夜の孔雀の目」)には和名が存在せず、高橋は「楓蚕蛾(ふうさんが)」と訳していた。後に日本昆虫協会副会長を努めるほどの昆虫好きなドイツ文学者となる岡田朝雄が、大学時代(1950年代)にドイツ語の資料を調べたところ、ドイツで「Nachtpfauenauge」()と呼ばれる蛾は複数おり、「Mittleres(中型) Nachtpfauenauge」 ()、「Wiener(大型) Nachtpfauenauge」()、「Kleines(小型) Nachtpfauenauge」()の3種が問題の蛾の候補に挙げられた。このうちWiener Nachtpfauenaugeはポケットに入れるには大きすぎる事、Kleines Nachtpfauenaugeは希少性が低い事から、Mittleres Nachtpfauenaugeこそがエーミールの蛾であると断定し、岡田によってそれぞれ「クジャクヤママユ」「オオクジャクヤママユ」「ヒメクジャクヤママユ」の和名が付けられた。一方、クジャクヤママユであれば行わない、敵に対する威嚇行動が作中で説明されている点については、Nachtpfauenaugeと名前の似ている、スズメガ科のAbendpfauenauge(、ヨーロッパウチスズメ)の行動をヘッセが混同していた可能性を岡田は指摘している。岡田は大学院時代(1960年ごろ)、教授であった高橋に請われて蛾について講釈した折に、「楓蚕蛾」から「クジャクヤママユ」への修正を進言した。高橋の訳である1982年の「ヘッセ全集 2」では、クジャクヤママユではないが、同じヤママユガ科で日本固有種の「ヤママユガ」と表記されている。岡田は後に、『Jugendgedenken』の初稿である『Das Nachtpfauenauge』を『クジャクヤママユ』の邦題で翻訳している。『Jugendgedenken』も岡田によって新たに訳され、2010年12月に、これを収録した「少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集」が出版された。主人公の「ぼく」は、幼いころ蝶・蛾集めに夢中になっていた。最初は、はやりで始めた蝶・蛾集めだったが、「ぼく」は時間も忘れるほど夢中になっていた。隣に住んでいる「エーミール」は、非の打ちどころのない悪徳を持っていた。彼は「ぼく」が捕まえた珍しい蝶(コムラサキ)を見るなり、20ペニヒと値踏みした上、様々な難癖を付け始めた。そして「ぼく」はもう二度と「エーミール」に蝶を見せないと決めた。それから2年後、エーミールは珍しい蛾(クジャクヤママユ)をさなぎからかえした、といううわさが広まった。「ぼく」はその蛾が見たくて彼の家を訪ねたが留守だったので、彼の部屋に入り標本を見るが、その美しさゆえに思わず盗みを犯してしまった。思い直して戻しに行くも、標本は無残に壊れていた。すまなく思い、彼に謝りに行くが、怒りもせず軽蔑的な眼差しで冷たくあしらうだけだった。そして「ぼく」は収集した蛾や蝶をすべてつぶすのだった。
出典:wikipedia
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