色域(しきいき、)は、コンピュータグラフィックスや写真などでの色のサブセットである。特定の色空間や特定の出力機器など、与えられた状況で正確に表現できる色のサブセットを指すことが多い。また、特定の画像に使われている色の完全なセットを指すこともある。この場合、写真をデジタイズし、デジタイズした画像を別の色空間に変換したり、固有の色域を持つ出力機器を使って出力したりすると、オリジナルの持っていた色はその過程で失われることがある。英語で色域に相当する "gamut" は元々は音楽用語であり、メロディを構成する音高のセットを意味していた。シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』でこの言葉を使っているが、作曲家トマス・モーリーの影響があるとされることもある。1850年代にはこの用語を色の範囲や色相に使うようになった。例えば、トマス・ド・クインシーは「斑岩は大理石のように様々な色相の色域が入り混じっていると聞いていた」と書いている。色理論においては、色域とは機器や処理で表現または再現できる色空間の部分を意味する。一般に色域は色相-彩度平面で示され、多くのシステムがその色域内で広範囲の輝度で色を生成できるものとされる。さらに印刷などの減法混合の表色系では、照明を考慮しないと可能な輝度の範囲を論じることはできない。ある色モデル内で表示できない色があるとき、その色は「色域外」(out of gamut) と呼ばれる。例えば、RGBの色モデルに含まれる純粋な赤は、CMYKモデルでは色域外である。可視な色空間全体を再現できる機器は、カラーディスプレイや印刷技術に関する工学にとって未だ実現されていない目標である。新たな技術がよりよい近似を可能にしているが、複雑すぎて実用的でないことが多い。どの程度で「十分」なのかは、人間の知覚の限界との関わりが重要である。デジタル画像を処理するとき、最もよく使われるのはRGBモデルである。画像の印刷では、RGB色空間をプリンタのCMYK色空間に変換する必要がある。このとき、RGBの色がCMYKで色域外だった場合、ある種の近似が行われる。CMYK色空間からはみ出た色だけを最も近い表現可能な色にすると、画像の見た目が変わってしまう。この変換で近似を行うアルゴリズムがいくつか存在するが、色域外の色をその機器で出力できないのはどうしようもなく、どれも完全とは言えない。そのため、画像内の色のうち対象の色空間の色域外となる色を素早く識別することは、最終的な画質の向上にとって非常に重要である。色域は右上の図で示すように CIE 1931 色度ダイアグラム内の領域として表現することが多く、曲線の境界線は単色を表している。一般に色の再現には三原色を使うことが多いので、色域は三角形の領域となっていることが多い。しかし、実際の色域は明るさも関係する。そのため完全な色域は、左の図のように3次元空間で表現しなければならない。左の図は、コンピュータディスプレイなどで使われるRGB色空間の色域(上)と自然界の反射色(下)を示している。灰色の線で描かれている円錐状の部分は右上のCIEダイアグラムと大まかに対応し、それに明るさの次元を加えている。これらの図にある軸は、人間の目にある短い波長("S")、中間の波長("M")、長い波長("L")の錐体細胞の反応に対応している。その他の文字は、黒("Blk")、赤("R")、緑("G")、青("B")、シアン("C")、マゼンタ("M")、黄色("Y")、白("W")に対応している。なお、この図は縮尺的には正しくない。左図のRGB色域の形状を見てみると、暗いところでは赤・緑・青の三角形になっているが、明るいところではシアン・マゼンタ・黄色の三角形になっており、最も明るいところに白の点がある。各頂点の正確な位置は、例えばブラウン管では蛍光物質の発光スペクトルで決まり、3種類の蛍光物質の最大光度の比率(すなわちカラーバランス)に左右される。CMYK色空間の色域は理想的にはRGBとほぼ同じだが、頂点の位置は微妙に異なり、染料の性質や光源に左右される。実際プリンタのように走査型で印刷した色は、隣接する部分に付着した染料が相互に影響しあい、紙からも影響を受ける。また、理想的な吸光スペクトルではないため、色域が小さくなり、その頂点部分も丸くなる。自然界の反射色の色域もそれと似たような丸い形状となっているが、印刷色よりもさらに丸い。狭い帯域の周波数だけを反射する物体はCIEダイアグラムの境界線に近い色となるが、それは同時に非常に反射光が弱い(暗い)ということになる。明るいとCIEダイアグラムのうちでアクセス可能な領域はどんどん狭くなり、最終的に白の1点に収束する。その点では、あらゆる波長が100%反射されている。白の点の座標はもちろん光源の色で決まる。20世紀初めごろ、色を制御可能な形で記述する方法が産業界で必要とされるようになり、光のスペクトルの測定が可能となったことで色を数学的に表現する研究が行われるようになった。ドイツの化学者ヴィルヘルム・オストヴァルトは最適色 (optimal colors) の考え方を提唱した。エルヴィン・シュレーディンガーは1919年の論文 "Theorie der Pigmente von größter Leuchtkraft"(高輝度顔料について)で、最も飽和した色は可視スペクトル上のゼロまたは完全な反射がもたらす刺激によって生成されるとした(つまり、反射スペクトルはゼロと100%の間で高々2回遷移する必要がある)。したがって、2種類の最適色スペクトルが考えられる。右の図にあるようにスペクトルの両端はゼロで途中に1になる部分がある場合と、一方の端では1でもう一方の端でゼロとなる場合である。前者はスペクトル色のような色となり、CIE xy 色度ダイアグラムにおける馬蹄形部分に大まかに対応する。後者は同じダイアグラムの直線部分に近い色となり、だいたいマゼンタ系の色になる。シュレーディンガーの業績は David MacAdam と Siegfried Rösch が受け継ぎ、さらに発展させた。MacAdamは、世界で初めて CIE 1931 色空間に明るさを Y = 10 から 95 まで10単位で設定し、最適色の立体の正確な位置を計算した。これにより、実用的な精度で最適色の立体を描けるようになった。この業績により、最適色立体の境界線を "MacAdam limit" と呼ぶようになった。今日では、効率的アルゴリズムで実用的な時間内(最近のコンピュータでは1時間程度)に高精度に境界を計算できる(明るさのレベル毎に数百ポイント。MacAdamは明るさレベル毎に12ポイントを計算)。MacAdam limit は最も飽和した(最適な)色が対応する境界線であり、黄色以外の単色に近い色は輝度が低いところにあることを示していた。黄色の輝度が高いのは、スペクトルの赤から緑までの長い部分を1とすることで単色の黄色に非常に近い色になるためである。加法混合による表現では明るさを表すために光源が必須であり、一般に単色に近くないものが使われる。すなわち、多くの光源の色域は純粋な単色(単波長)の光を作り出すことが難しいため、このようになっていると理解できる。技術的に最良の(ほぼ)単色の光源はレーザーだが、高価であり多くの場合現実的でない(ただし、レーザー技術の進歩によって低価格化が進んでおり、色再現の光源としても利用が始まっている)。レーザー以外では、多くのシステムは多少大ざっぱな近似で高飽和色を表現しており、必要な色以外の波長の光も含んでいる。これは一部の色相で顕著に現れることがある。加法混合を使うシステムでは、色域はおおよそ色相飽和平面内の凸多角形となる。この多角形の頂点がシステムが生成できる最も飽和した色である。減法混合の場合、色域はもっと不規則な形になる。
出典:wikipedia
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