ツクシマイマイ(筑紫蝸牛)、学名 "Euhadra herklotsi" は、有肺目オナジマイマイ科に分類されるカタツムリの一種。日本の九州を中心に、その周辺や韓国南部の済州島まで分布する。標準和名の「ツクシ」は九州の古称「筑紫」に由来し、種小名の "herklotsi" はオランダのライデン自然史博物館のJ. A. ハークロットへの献名。同館にはシーボルトが日本から持ち帰った貝類標本があり、それをドイツのマルテンスが研究する際にハークロットが便宜を図ったことによる。本種もシーボルトが持ち帰った標本に基づいて命名された。九州と山口県西部、愛媛県の佐田岬半島、長崎県の五島列島・壱岐・対馬、鹿児島県の甑島列島、韓国の済州島など。かつて本種の亜種とされていた九州南部から口永良部島・屋久島・種子島まで分布するマイマイ属は分子系統解析の結果からタカチホマイマイ "E. nesiotica" (Pilsbry,1902) という別種とするのが妥当であるとの結果が得られている。ただし九州中南部でツクシマイマイとタカチホマイマイが同所的に生息する場所では交雑個体が見られることもある。また本種が朝鮮半島に分布するトウヨウマイマイ "Nesiohelix samarangae" Kuroda et Miyanaga に近縁とする文献もあるが、異なる属に分類されている両者が近縁であるという具体的な証拠が示されたことはない。殻は右巻き、日本産カタツムリとしては比較的大型で、一般には殻高20~24mm・殻径30~40mm程度、特に大型のものでは殻高29mm・殻径47mmほどになり、分布域内ではコベソマイマイと並ぶ最大のカタツムリである。殻底中心には明瞭に開いた臍孔(さいこう;へそあな)がある。殻の色は黄褐色-褐色だが、全体の色や色帯は個体変異が大きく、全く色帯のない無帯型からさまざまな色帯パターンのものが知られる。しかし他種に比べると0230型(巻きに沿って2本帯)が出やすいとされ、これを「ツクシマイマイ模様」と呼ぶ図鑑もある。ただし「ツクシマイマイ模様」という呼称は、日本の貝類研究の基礎を作った一人である米国の貝類学者ピルスブリーがマイマイ属の色帯パターンを定式化した際に提唱した「"herklotsi" pattern」(図4)に関係して、あたかもその和訳のようにも受け取られて多少の混乱が見られる。ピルスブリーの言う "herklotsi" は今日のタカチホマイマイを指し、従って「"herklotsi" pattern」も鹿児島等のタカチホマイマイなどに見られるやや薄い赤褐色の色帯があり、臍孔には色帯を欠く模様のことで、敢えて和訳すれば「タカチホマイマイ模様」となる。これに対し広く流布している「ツクシマイマイ模様」は0204型と”タカチホマイマイ模様”との合成型で、黒褐色の周縁帯(第2帯)の上下にやや淡い第1帯と第3帯が出て、かつ臍孔にも黒褐色の色帯(第4帯)が出るもので、『原色日本貝類図鑑』などで「クロイワマイマイ模様」という名で紹介されているものに相当する。また前述のとおり0230型をツクシマイマイ模様と呼ぶ場合もあって一定しない。なおピルスブリーは今日のツクシマイマイには "Euhadra herklotsi hesperia" Pilsbry, 1928 (タイプ産地は長崎)と名づけ南部のタカチホマイマイの亜種と見なして区別した。 マイマイ属の軟体部背面の模様は種類によって決まった傾向があるが、ツクシマイマイでは灰褐色~赤褐色の地に淡褐色~褐色の不規則斑が出る。主として森林内~林縁に生息し、日中は落葉や朽木の下に潜み、あるいは樹幹や樹上の葉などに付着して休止し、夜間や降雨時などに這い出て活動する。"Euhadra" 属には地上性のもの、樹上性のもの、その中間的なものなどあがるが、ツクシマイマイはこれにも変異があり、個体群によって地上性の強いものや樹上傾向の強いものなどがある。餌は主として枯葉などの植物遺骸や樹皮、物の表面に生じた藻類などであるが、森林に近接した農耕地では作物を食べて害を与えることもある。雌雄同体で、他の個体と交尾して遺伝子交換をし、落葉層下や地中に産卵する。卵は数ミリの白色真球状で、炭酸カルシウムの卵殻をもつ。仔貝は殻をもった小さいカタツムリの姿で孵化し、親と同様に匍匐して餌を摂りながら成長する。【原記載】タイプ標本は、ライデン王立自然史博物館(現・ナチュラリス)に保管されていたシーボルトが1823年-1830年に日本で収集した貝類標本中の一つである。学名 "Helix herklotsi" は「ハークロットのカタツムリ」の意で、ドイツの貝類学者マルテンスがオランダのライデンに滞在してこれらを研究した際にサポートした、同館の無脊椎動物主任 J. A. ハークロットに献名された。タイプ産地は特に記されていないが、論文の標題「Die Japanesischen ~(日本の~)」から自動的に "Japan" とされ、シーボルトの収集品であることから、同じ "herklotsi" の名をもつヤマタニシとともに長崎産であろうと言われている。タイプ標本は1994年にモノクロ写真が公表されている。上述のとおり分子系統解析の結果からは九州南部より北のものは全てツクシマイマイ、九州南部に分布するものは別種タカチホマイマイ "E. nesiotica" として扱うのが妥当だとされるが、20世紀前期には、九州と周辺の島々に分布するものを全てツクシマイマイ1種とした上で、地域個体群ごとに複数の亜種として扱う分類法があった。しかしそれらの”亜種”は20世紀半ばからはランクが下げられ、黒田徳米(1953及び1963)は単なる「諸地方型」とし、湊(1988)はタカチホマイマイ(亜種)とヤクシママイマイ(独立種)以外はツクシマイマイの異名(シノニム)と見なしており、いずれも分子系統解析の結果に近い扱いとなっている。他方、細分傾向の強い『原色日本陸産貝類図鑑』(東、1995)では下記のものが全て”亜種”として区別されて20世紀前期に回帰しているが、その根拠などは一切示されていない。しかしそのためかこれらの”亜種名”が使用されることもあるため、以下に列挙する。
出典:wikipedia
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