比例代表制(ひれいだいひょうせい)は、現代議会制民主主義における代表的な選挙制度の一つ。比例代表制は得票数に応じて議席を配分しようとする制度である。死票発生の抑制や民意に忠実な議席配分が保証されるという認識は誤謬であり、この制度の定義とは無関係である。比例代表制は、19世紀前半にトーマス・ライト・ヒルによって考案され、ジョン・スチュアート・ミルがイギリスでの実施を訴えたことでその考えが広まった。単記移譲式投票は1857年にデンマークで初めて採用され、最古の比例代表制となっているが、デンマークでは本格的に普及しなかった。単記移譲式はイギリスで(独自に)再考案されたが、イギリス議会はそれを退けた。しかし、タスマニア州で1907年に採用されると、そこから広がっていった。単票移譲式はアイルランド共和国で1919年より使用されている。政党名簿比例代表は、19世紀後半にベルギーのによって考案された。空想的社会主義者のもこの制度を1892年の著書で考案した。スイスのいくつかのカントン(1890年のティチーノ州が最初)で採用された後、ベルギーが国として初めて1900年の国政選挙で採用した。類似した制度が第一次世界大戦の間とその後にかけて多くのヨーロッパ諸国で施行された。政党名簿比例代表小選挙区比例代表併用制単記移譲式投票小選挙区比例代表並立制上記の国・地域のほか欧州議会において政党名簿比例代表および単記移譲式投票が採用されているほか、イギリスではスコットランド議会、ウェールズ議会で小選挙区比例代表併用制が、北アイルランド議会で単記移譲式投票が採用されている。比例代表にはいくつかの種類があるが、政党を立候補単位とした選挙を基本とし、各政党が立候補者の名前を並べた「立候補者名簿」を事前に提出し、政党の得票数に比例して政党ごとの当選者数を決定する制度が基本である。このため、政党名簿比例代表とも呼ばれる。 政党名簿比例代表では無所属の立候補は形式的に不可能であるが、立候補者数1人の立候補者名簿を提出することで認める場合もある。また、通常は行われないが、政党・政治団体が無所属候補を推薦する形で、政党・政治団体の立候補者名簿への登載を行うことは認められている。政党名簿比例代表は、以下の手順で行われ、それぞれにバリエーションが存在する。立候補者名簿内での事前順位付けには、立候補者名簿を届け出る段階で、立候補者に順位を付けている「拘束名簿式」と、順位付けしない「非拘束名簿式」に大別される。 拘束名簿式は、順位付けの程度によって、さらに「厳正拘束名簿式」、「単純拘束名簿式」に区別される。有権者は、支持する(当選者を増やしたい)政党に投票する。拘束名簿式、非拘束名簿式のいずれの場合も、有権者が名簿を書き換えたり、順位を変更したりして投票を認める国も存在する。有権者の投票は、各政党の得票として集計する。得票数に比例して、各政党の当選者数を計算する。後述、「比例代表の計算方式」を参照。各政党の当選者数が確定した後、立候補者名簿から当選者を選定する。議員定数、各政党の当選者数は整数であるため、得票数に完全に比例して計算されることは稀である。そのため、小数点以下の値を処理する加工が必要であり、その加工方法によってさまざまな計算式(決定方法)が提案、採用されている。ヘア=ニーマイヤー式は、ドイツやスイスの比例代表制で用いられている方式である。「剰余の大きい順」とするのは、「余り(小数点以下)がより大きい値が1議席により近い」という考えに基づく。議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。基数は(1500+700+300+200)÷10=270だから、これで割ると整数部分は5+2+1+0=8で、あと2だけ足りない。その分を剰余の大きい順から補うと、上のようになる。この方式では、総議席数が増えたときに配分議席が減る政党が生ずる「アラバマのパラドックス」が発生する。このパラドックスは、後述のような基数を変えても、剰余の大きい順に割り当てる方式である限り、総議席数や各政党の得票数によって発生する可能性がある。「アラバマのパラドックス」は余りの値に依存することに起因するため、別の方法で残余議席を配分する方法が模索された。その1つがハーゲンバッハ=ビショフ式である。さらに1議席、2議席与えた場合の「1議席あたりの得票数」が大きい順に残余議席を配分する。ドント式は、ハーゲンバッハ=ビショフ方式、ジェファーソン方式と同じ結果になる。この計算式は、仮に本来の比例配分をした場合(小数点以下の議席も認めた配分の場合)、1議席あたりの得票数は、一致する考えに基づく。まず得票数を÷1、÷2、÷3…で割る。この割り算の答え(商)の多い順に議席を配分することになる。定数10の場合において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。商の大きいものから順に議席数10までが当選となる。まず一番大きい1500のA党が1議席。次にA党の÷2とB党の÷1で比較するとA党の÷2が大きいので、A党が2議席。次にB党÷1が1議席。このように進め、B党÷3の233で全10議席が確定する。最終的にはA党が6議席、B党が3議席、C党が1議席、D党は議席無しとなる。日本の比例代表制選挙では、いずれもドント式を用いている。ドント式では÷1、÷2、÷3と除数を1ずつ増やして議席を確定していくところを、サン=ラグ式は÷1、÷3、÷5……と除数を2つずつ増やして奇数で割っていく。ドント式と比べると1議席増えたときの除数が大きくなる度合いが大きいため、小政党が議席を獲得し易く、特に最初の1議席を確保しやすい。André Sainte-Laguë による。ウェブスター方式と同じ計算法である。議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。まず、一番大きい1500のA党が1議席。次にA党の÷3とB党の÷1で比較するとB党の÷1が大きいので、B党に1議席の次にA党に2議席。というように順々に決めると、10議席に達するのはB党の÷5の140であるので、最後にB党の3議席が確定する。最終的にはA党が5議席、B党が3議席、C党が1議席、D党は1議席となる。ちなみに÷2、÷4、÷6と除数を偶数で割った場合は、ドント式の商すべてを2で割った場合と同じであり、結果、ドント式と結果が一致する。修正サン=ラグ式ではサン=ラグ式で最初に1で割るところを1.4で割る。北欧各国の国政選挙で使われている。議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。サン・ラグ式があまりにも小政党に有利であるという批判を受けて、最初の1議席目までの条件のみを厳しくした制度である。2議席目以降はサン・ラグ式と変わらない。ヘア・ニーマイヤー式と違いドント式、サンラグ式は、ある党の配分議席数が(総議席数×その党の得票率)の小数点以下切り上げを超えてしまう場合が出る。これをアラバマのパラドックス無しで回避するため、ヘア・ニーマイヤー式での基数を「有効投票総数/(配分し終えた議席数+1)」にして、一議席ずつ当選者を決める毎に、あたかもその候補者が定数を埋める最後の候補者であるかのようにヘア・ニーマイヤー式の計算をする。議席数 6において、有効投票総数6000、A党の得票数が2800、B党が1900、C党が900、D党が400獲得したときの例で説明する。この計算方法だと分母の最大が定足数になる分数を扱う可能性がある。このため普通は先の計算方法と同じ議席配分の「議席を一つ配分する度に、各党に得票数分のポイントを与え、議席を追加された党から有効投票数分の票を減らす」方法が採られる。この方式では、党Aの得票が減り党Bの得票が増えたのに党Aの議席が増え党Bの議席が減る「人口パラドックス」が発生する。単記移譲式投票では、有権者は候補者リストに順位をつけて投票する。これは比例代表制そのものではないが、似たような効果があるとされている。累積投票制度では、投票者はその票の価値の好きな割合を候補者に対して投じることができる。完全な比例代表制ではないが、少数派の選出が可能になる。コーポレートガバナンスにおいて用いられることがある。巨大な票占有率を持つ組織票と違い一人分の持ち票では、死票が出ないよう候補者の得票率を均等にすることは不可能なので、票の価値を分割せず単一の候補に投ずるのが合理的な戦略投票になり、単記非移譲式投票に帰着される。小選挙区比例代表併用制は広い意味での比例代表制であり、小選挙区併用型比例代表制と呼ばれることもある。選挙区で獲得した分だけ名簿比例代表の議席を失うので、小選挙区比例代表並立制に比べ、比例性の強い選挙制度である。しかし、比例代表の配分議席を負数にまで補正することは出来ないので、比例代表の議席数を越えて多くの議席を選挙区から獲得した政党は、越えた分だけ比例配分より多く議席を得てしまう。特に、比例代表で配分される議席数が0である、無所属や所属政党を選管に届け出なかった選挙区候補の議席は、全てが比例配分の枠外となる。比例代表議席の没収では補正し切れなかった議席は超過議席と呼ばれる。"詳しくは、選挙区と政党名簿比例代表を参照。"大抵の選挙制度では、政党の獲得議席数は有理数ではなく自然数であり、選挙区定数を越える数の政党は選出されない。よって、選挙区定数が小さいほど、名簿式比例代表制では得票率を議席数に変換する時に生じる丸め誤差が大きくなる。同時に、選出された政党は最低でも一議席は奪るため、個人を立候補単位とした選挙方式では開票時に生成する個人政党の数は選挙区定数と等しくなり、定数が小さいと有権者の政党への分類を細かくできない。このため、選挙区定数が小さいほど、当選者と有権者との比例性が確保しづらくなる。"詳しくは阻止条項(足切り条項)を参照。"小党濫立を防ぐため、得票率が基準値を下回る政党には議席を配分しないという取り決め。例えばドイツでは、全国の得票率が5%未満の政党には議席が配分されない。(ただし3つ以上の小選挙区で第1位の得票を得た政党には議席が配分される)趣旨の通り、直接的には小政党・無所属・個人政党の得票率は切り捨てられる(直接的影響)。また、基準値に近い得票率の政党は他の政党より少ない得票率変化で大きな議席数変化が起こり、基準値を確実に下回る政党は多少の得票率変化では議席数が0のまま変化しないので、基準値ギリギリの政党への投票が行われ易くなり、基準値を下回る政党への投票が避けられる戦略投票が誘発される(心理的影響)。ドイツでは、阻止条項ギリギリの連立相手政党が条項に引っかかって議席を全て失うのを避けるため、大政党の票の一部が基準値ギリギリの政党に流れる選挙協力が見られる。デュヴェルジェの法則と同様、心理的影響は得票率の段階から働くため、得票率と議席占有率が乖離する直接的影響より発見されにくい。衆議院選挙で行われる比例代表選挙は政党・政治団体名でのみの投票となっている(拘束名簿方式・名簿届出の個人名の投票は無効扱い)。だが、2005年9月の第44回衆議院議員総選挙に関して、いわゆる「疑問票」の扱いについて以下のような通知が行われた。参議院選挙の比例代表制は、非拘束名簿方式で行われる。投票用紙に記入された候補者個人が所属する政党の得票とされ、さらに当選順位は個人名での得票数の多い候補者の順となる。また、個人名を書かない場合は、政党名を記入して投票することも可能であり、その場合その政党の得票となる。所属政党の移籍の制限日本では2000年以降の国政選挙から、比例当選議員は所属政党が存在している場合において、当選時に当該比例区に存在した他の名簿届出政党に移籍する場合は議員辞職となることになった(公職選挙法第99条の2)。ただし無所属になることや、当選時に当該比例区に存在しなかった新政党への移籍は議員辞職の必要はない(当選時に存在した政党であっても、自分が比例選出された選挙で該当比例区に候補者擁立しなかった政党には辞職せず移籍可能。具体的な例として、2009年衆議院総選挙でみんなの党は衆議院比例区では北海道・東北・北陸信越・中国・四国で擁立しなかったので、北海道・東北・北陸信越・中国・四国の比例当選衆議院議員は議員辞職することなく、みんなの党への入党が可能である。)。政党が他政党の比例選出議員を議員辞職させずに入党させるため、一度解党手続きをしてから新党結成する形で事実上の政党移籍は可能である(過去に保守党が他政党の比例選出議員を入党させるために一度解党した上で保守新党を結成したのがこれに該当する)。その場合は一度解党手続きをとるために、解党前の国政選挙の得票による政党助成金が受け取れず議員数による政党助成金しか受け取れないデメリットが存在する。過去の得票数が多かったり入党議員が少ない場合は逆に政党助成金が減ってしまう可能性がある。また、当該比例選出政党が合併した場合や解散した場合は、比例当選議員は政党移籍において議員辞職せずに移籍可能である(自由党と民主党の政党合併はこれに該当する)。日本ではある政党や政治団体の比例名簿の登録者を上回る当選者が出た場合、上回った議席分は次に議席が配分される他の政党や政治団体に配分される。ただし、これは選挙時に限り、補充(繰上げ)の場合は他の政党や政治団体に配分されず、欠員となる。2005年9月の衆議院選挙において、自民党は東京ブロックで8人分確保したが、重複立候補の小選挙区当選者を除く比例名簿登載者が7人しか残っていなかった。このため、公職選挙法の規定により全員が当選した場合、次に上位を占める政党や政治団体に議席を与えることになり、社民党の候補者(保坂展人)にその1議席を「譲渡」した形になった。2009年8月の第45回衆議院議員選挙の近畿ブロックでは、民主党の名簿登載者が2人不足した。その結果については次節を参照のこと。2009年8月の衆議院選挙において、みんなの党は東海ブロックと近畿ブロックでそれぞれ1人、計2人分の当選枠を確保した。ところが、2ブロックの同党の候補者は全て重複立候補で、かつ当該地域の小選挙区で有効票の10%を得られなかったために、比例復活当選の資格を得ることができなかった。このため東海ブロックの議席は民主党の候補者(磯谷香代子)に割り振られ、近畿ブロックでは民主党の候補者不足(2人)もあって合計3議席が自民党(谷公一、谷畑孝)と公明党(赤松正雄)に振り分けられた。いずれも議席獲得事例がある政党に限った。注1:-は立候補しなかった場合(政党等が存在しない場合も含む)、0は立候補したが当選者がいなかった場合をさす。注2:維新は、第46回が日本維新の会、第47回が維新の党。注3:未来・生活は、第46回が日本未来の党、第47回が生活の党(日本未来の党の改称)。注1:-は立候補しなかった場合(政党等が存在しない場合も含む)、0は立候補したが当選者がいなかった場合をさす。注2:民主・民進は、第23回までが民主党、第24回が民進党(民主党の改称)。注3:維新は、第23回が日本維新の会、第24回がおおさか維新の会。注4:生活は、第23回が生活の党、第24回が生活の党と山本太郎となかまたち(生活の党の改称)。
出典:wikipedia
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