ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ(、略称NDM-1)は2007年に発見され、2008年1月に同定された細菌の新型酵素である。イミペネムなどの抗生物質を分解するため、耐性菌の原因となる。メタロβ-ラクタマーゼ産生株自体は最早珍しいものではないが、NDM-1が警戒されているのは、緑膿菌やアシネトバクターではなく、ヒトの腸管に定着しやすい大腸菌や肺炎桿菌において多く見つかる点からである。この酵素を持つ細菌の総称としても用いられている。欧米での幅広い報道は、ランセット感染症誌オンライン版2010年8月11日号にイギリス・インドで感染が広がっている状況と、ほとんどの抗生物質に耐性を持つことが報道されてから始まった。その後パキスタンでの交通事故後帰国したベルギー人が、この病気に効くと言われるコリスチンの投与にもかかわらず6月に死亡したことが判明し、日本でも大きく報道された。この酵素を持つほとんどの細菌では、各種の抗生物質による治療が効かないばかりでなく、多剤耐性菌の治療の切り札だったカルバペネム系抗生物質に対する耐性をもつ。そのため、これが広がると「抗生物質が存在しない(細菌治療が困難な戦前の)時代」に戻るのではないかと恐れられている(それに対して「恐れるほどではない」という意見もある。)酵素であるので細菌の種類によらず耐性化させる。この酵素の遺伝子は、染色体DNAとは別に存在するプラスミドDNA上にあるので、他の細菌に水平伝播 する可能性がある。大腸菌、肺炎桿菌などでの感染報告がある。現在院内感染で耐性菌問題の中心はアシネトバクターや緑膿菌などである。常在大腸菌に感染すると症状を見せない(不顕性感染)感染者が自覚のないまま行動し、院内感染のみならず市中感染の制御も困難になる。また院内感染などで他の病原性の強い菌や感染力の強い菌がNDM-1を持つ(水平伝播)と、新型インフルエンザ以上の社会問題になる可能性が考えられる。インド、パキスタンなどで広がっていた(インドの1つの病院に22人の患者がいるという報道がある)が、安価な整形手術などを受けるために渡航する(「医療ツーリズム」)患者や交通事故の患者などを中心としてアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア(各国数人から数十人)、ベルギー、モンテネグロなどで広がっており少なくとも170人以上の感染者がいることが確認されている。モンテネグロ(旧ユーゴスラビアの一部)で感染した患者はコリスチンで回復した。しかしベルギー人はブリュッセルの病院でコリスチン使用したが効果がなく死亡した。国立感染症研究所の荒川宜親細菌第2部長は「インド・パキスタン方面で治療を受け、熱が続いたり、傷の治りが遅い場合すぐに受診して欲しい」とアドバイスしている。ランセットも対策を呼びかけている。(英国の保健医療制度 (NHS) は弱く、特に院内感染がとても多いという。感染が広がりやすい懸念がある。)獨協医科大学病院で、2009年4月から入院していたインド帰りの50代の日本人男性に国内初の感染が確認されたが、感染拡大はなく、男性も回復したので、2010年9月6日に記者会見で発表した。同10月、国内2例目の感染がさいたま市民医療センターで確認され、市中感染だと推定された。現在のところ、一般の人々が気をつけることは特にない。通常でも色々な菌による院内感染のおそれがあるので、お見舞いに子供を連れて行かない、むやみに病院に行かない、病院に行った後は手洗いうがいをしっかりする、などのエチケットを守ることが大切である。危険性を考え受診の必要があるのは次の2つの場合である。しかし他の細菌による院内感染や耐性結核菌などへの市中感染の危険性は常にあり、NDM-1以上の感染率、危険性があるものも複数あるので、注意が必要である。今後の調査で数人から数十人のNDM-1感染者が発見されることも考えられるが、全体の入院者、手術者に対する割合は非常に低いので冷静に対処することが望ましい。以前からメタロβ-ラクタマーゼ産生菌の問題は危惧されていた。例えば国立療養所東名古屋病院薬剤科は平成15年(2003年)1月の「DIニュース」で、「ペニシリン、セフェム系、カルバペネム系薬、βーラクタマーゼ阻害薬も無効であり、緑膿菌や一部の腸内細菌にもみられる。アミノグリコシドやニューキノロン系薬にも同時に耐性を示すことが多い。日本でのメタロβ-ラクタマーゼ産生菌の分離頻度は数%であると推測されている。まだ少ないが現在のように安易に使用され続ければ、増加する可能性が危惧され、感染症治療が困難となってしまう」という内容を述べている。2010年8月20日の通知で、感染疑い例があった場合都道府県に対し国立感染症研究所への通報をするように要請するとともに、医療機関には院内感染対策をとり、海外渡航歴などを聴取することを求めた。
出典:wikipedia
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