ヨット (yacht) は、レジャー用船艇を広く意味する言葉で、その中でも特に次の2つを指す。英語では、単に“yacht”と言えば主に 1. を意味するが、日本においては「ヨット」と言った場合 2. の意味で用いられることが多い。本項目では主に 2. について解説する。英語では、単に yacht と言えば主にこの意味である。後述の、小型帆船の一種を示す“Yacht”の英語においての由来が、英国王室の非軍用船であったことからの「豪華な遊び船」という意味で、現在ではモーターボートであることが多いが、歴史的には帆船も多かった。現代のものは客船並みの大きさがあるものも珍しくなく、プールやジャグジー、ヘリポートが付いていたりと、豪華客船並みの装備があるものもある。日本語で「ヨット」と言う場合は、こちらの意味で用いられていることがほとんどである。英語では、帆走ヨット (sailling yacht)、あるいは単に帆船 (sailboat) と呼ぶことが多い。ただし、これらの船艇を使ったレースは yacht race と呼ばれる。ヨットでの航海やヨット競技のことをセーリング(sailling)ともいう。これはヨットがセール(sail:帆)を使って進むからである。 現在、ヨットと分類される船舶は非常に多岐にわたっている。乗員数も一人乗りから10人以上まで様々であり、設備もラダー(舵)、セール(帆)、キール(竜骨)しかないものからキャビン、発動機を完備したものまである。発動機やキャビンのない小型のヨットを「ディンギー」、発動機やキャビンのある大型のヨットを「クルーザー」と呼び分けることがある。外洋を長期間・長距離に渡って航行することが可能ながら、比較的小型で個人で運用可能であるため、冒険心のある人物による単独での大洋の横断、無寄港での世界一周などが行われている。ヨットが歴史に初めて登場するのは、14世紀のオランダとされている。当初は、その高速性や俊敏さから海賊を追跡したり、偵察などに用いられるために建造された高速帆船で、jaght schip、略して“jaght”と呼ばれていた。17世紀には金持ちの娯楽としてセーリングが大々的に流行するようになり、スペールヤハトと呼ばれる専用のプレジャーヨットが作られるようになった。1660年にイギリスで王政復古に成功したチャールズ2世は、オランダより寄贈されたこの乗り物を好み、イギリスの水路事情に合わせ喫水やリーボードの廃止などの改良を施し、発音に基づいた英語として“Yacht”と名前を改めた。これが現在のYachtの語源である。王とその弟ジェイムスは同種の船を12隻建造し、軍用や王室行事などに使用したため、イギリス貴族の間でもプレジャーヨットが流行した。記録に残る最初のヨットレースは、1661年にチャールズ2世とジェイムスがグリニッジ - グレイヴズエンド間で行った競争である。1720年には、記録に残っている最古のヨットクラブ「コーク・ウォーター・クラブ」がアイルランドに設立された。これは現在の「ロイヤル・コーク・ヨットクラブ」の祖である。以後、19世紀にかけてヨーロッパ、アメリカの王室や富裕層を中心にヨットを嗜む人が増え、各地にヨットクラブが設立された。18世紀にもアイルランドとイングランドのクラブ同士でレースが行われる事があったが、19世紀になって大掛かりな国際ヨットレースが行われるようになった。19世紀後半にはディンギーと呼ばれる小型艇のレースもも始まり、第一次世界大戦後に盛んになった。当初は参加者がそれぞれに設計したボートで競われていたが、1875年にイギリスで設立されたヨット競技協会(YRA)によって統一的なルールと6段階のクラス分けが制定された。1907年にYRAは国際ヨット競技連盟(IYRU)となり、国際的なレース規則とヨットのサイズなど仕様標準が定められた。また、19世紀末から20世紀にかけてヨットによる冒険航海が流行した。ジョシュア・スローカムは1895年から1898年の3年に渡って、ヨットによる単独世界一周を成し遂げた。今日でもこの種の冒険航海に挑戦するヨットマンは多い。蒸気エンジン付きのヨットはイギリス人トマス・アシュトン・スミスによって19世紀半ばに初めて作られたが、蒸気エンジンは騒音が酷く扱いが難しいため普及しなかった。その後、19世紀末から富裕層の大型ヨットに装備されるようになり、20世紀にガソリンエンジン、ディーゼルエンジンが普及するにつれ、動力付きのヨットは一般人にも手が届くようになった。第2次世界大戦以後、ヨットの素材に化学繊維やグラスファイバーなど新素材が取り入れられ、ヨットはより安価になり水上スポーツ人口を大幅に増加させた。日本においては1861年(文久元年)に長崎で英国人船大工が貿易商オルトの注文で建設し、当時の地元新聞で報道された「ファントム号」や、同年、外国人たちが開催したヨットレース「長崎レガッタ」が初めてのものといわれている。また、1882年(明治15年)には横浜の本牧で日本人により初めて建造され、神奈川の葉山で帆走したことから、葉山港には日本ヨット発祥の地と刻まれた碑が建っている。ヨットクラブは横浜を始め神戸や長崎などに設立された。ヨットを始めとして帆走船は風を利用して動くため、まっすぐ風上の方向(風位)へは進むことができない。しかし、風位に対して最大およそ45度の角度(クローズホールド)までなら進むことができるため、ジグザグにであれば風上へと向かうことができる。進行方向と風上方向との間を成す角度と、理論帆走速度と風速の比を示したものを帆走ポーラー線図(ポーラーダイアグラム)と呼び、性能を示す指標の一つとなる。この原理は以下の通りである。図のように、セール(帆)の付近を流れる風によって発生する揚力(船の進行方向に対して斜め前方の向き)のうち進行方向に対して垂直な成分を、キール(竜骨)またはセンターボード(船底の中央から水中に差し込む板)によって打ち消すことにより、進行方向と同じ向きの推進力を得る。更に、セールに発生する揚力に加え、リーウエイする艇のキールへの水流の迎角からも艇を前進する力が発生する。なお、ヨットにはセールを複数持つものもあるが、図では簡略化するためにセールが1枚のものを描いている。セールが複数ある船では、各セールに発生する揚力の合力を、この図でいう「揚力」とみなせばよい。一人乗りから二人乗りのヨットで、比較的見る機会が多いものとしては「FJ級(2人乗り)」「420級(2人乗り)」「シーホッパー級SR(1人乗り)」「スナイプ級(2人乗り)」などが挙げられる。日本では、海沿いの高校、大学でヨット部がある学校などには、大抵はこの3つのクラスの艇が備わっている。また、大学の体育会ヨット部では「470級(2人乗り)」と「スナイプ級(2人乗り)」を所有し、全日本インカレ等が行われる。小・中学生のヨットクラブでは小型の「オプティミスト(OP)級(1人乗り)」で練習を行うところもある。5人から10人乗り程度のヨットは国内でも比較的見る機会が多い。全長によって、おおまかに以下のように分かれる。かつて日本にも国産最大手のヤマハをはじめ、多数のメーカーが存在したが、現在では岡崎造船のみ。設計者としては横山、林、ヴァンデュスタット大橋。現在は外国メーカーのヨットが主流。[仏:ジャヌー、デュフォー、[ベネトウ]]、独:デヘラー、ハンゼ、ババリア 伊:ソラリス、スライ、グランドソレイユフィンランド:スワン、バルティック、デゲロ スウエーデン:ホルベルグラッシー、ナヤード、アルコナ デンマーク:Xヨット 米:ヒンクリー、タータン、その他:Jボート、[[ナウティキャット]、]など。ヨットレースは大きく分けて、湾内や陸が見える程度の[[沿岸]]で行うインショア・レースと、陸が見えない外洋で行うオフショア・レースに分けられる。インショア・レースは[[ブイ]]で構成されたコースを規定の順・回数で周回する形式でディンギーなど1~2人乗りの小型艇が主流。[[オリンピックセーリング競技]]もインショア・レースである。オフショア・レースはスタート港から出港し、ゴールに指定された港までの所要時間を競うレースで、10人上が乗る大型艇が主流。他にも無寄港や単独など過酷な条件で行う冒険レースなどがある。近代のヨットレースには世界的に統一された規則がある。このルールはレーシングルールオブセーリング(RRS)と呼ばれ、国際セーリング連盟(ISAF)が管理し、世界各国の国別セーリング連盟とともに運用している。日本を管轄するのはISAFに加盟する日本セーリング連盟(JSAF)である。一般的なインショア・レースにおけるルールとしては、二等辺三角形や台形の頂点にそれぞれブイ(マーク)を浮かべ、それを反時計回りに回るというものがあり、規定数を周回するまでの順位を競う。公式大会などでは、合計10レース以上を行い、その得点により順位を決する。1位が1点、2位が2点、順位が上位であるほど得点が少なく、全レースで最も得点の低いものが優勝となる。故にリタイアや失格などは高得点になる。オフショア・レースでは航路は大まかな指定のみで、艇ごとに風や海の状況を読み細かく修正しながらゴールを目指す。ヨットレースでのルールで最も頻繁に出てくるのは接触に対する予防規定であり、特にヨット同士が接近しやすいインショア・レースでは重要なルールである。国際的な基本ルールである[[スターボード艇優先の原則]]の他にも、その時の状態において優先権がある権利的強者と接触した場合に罰則を受ける権利的弱者が規定されている。その他、細かい点については、国際セーリング競技規則や、各クラスルールによって定められている。2艇のみで行うレースを[[マッチレース]]と呼び、[[アメリカズカップ]]などが該当する。公平を期すため[[ワンメイクレース|同一規格の艇で行うレース]]をワンデザイン・クラスと呼び、[[ボルボ・オーシャンレース]]などが該当する。単独無寄港で世界一周に挑戦する冒険レース。日本で定期的に開催されている長距離のオフショア・レース。3月下旬にオーストラリアの[[メルボルン]]を出港し、赤道を越えて4月に日本の[[大阪港]]に到着する縦回りという珍しいコースを取る。[[1991年]]([[平成]]3年)から4年に一度開催されている。2008年より[[タモリ]]が主催するインショア・レース。現在は日本国内の[[マリーナ]](3~4ヶ所)を巡るツアーレースとなっており、参加艇は最大で200程になる。参加資格に「愉快な人」が含まれ、クラスカテゴリーが「ぶっちぎりそうな船」や「大会主旨を正しく理解しているか不明な船」など、純粋な競技志向ではなく参加者の交流をメインとした総合イベントである。文学映画漫画パソコンゲーム[[Category:ヨット|*]][[Category:船の種類]][[Category:オリンピック競技]][[Category:パラリンピック競技]][[Category:オランダ語由来の外来語]][[Category:夏の季語]]
出典:wikipedia
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