ミニディスク()とは、ソニーが1991年(平成3年)に発表し、翌年の1992年(平成4年)に製品化したデジタルオーディオの光学ディスク記録方式、および、その媒体である。略称はMD(エムディー)。アナログコンパクトカセットを代替するという目標が開発の背景にあった。初期の音楽MDの規格書は "Rainbow Book"と呼ばれている。音楽MDメディアは直径64mm(2.5インチ)・厚さ1.2mmのディスクが横72mm、縦68mm、厚さ5mmのカートリッジに封入された構造になっている。このため傷やほこりが付きにくく、取り扱いが容易である。ディスクには再生専用ディスクと録音用ディスク、ハイブリッドディスクの3種類が規定されている。2000年代以降に流通しているディスクはほとんどが録音用ディスクである。再生専用ディスクはCDと同様の構造の光ディスクである。録音用ディスクと異なりシャッターがディスクの裏側のみにある。CDのように既成曲の入ったパッケージメディアが主にソニー・ミュージックエンタテインメント (日本)(現:ソニー・ミュージックレーベルズ)を中心に発売され、一時期はオリコンチャートも実施されていたが、以下のような理由で普及せず1999年(平成11年)に発売が打ち切られた。2016年現在、MDタイトルで最後に発売された作品は、2009年に発売された倉木麻衣の『ALL MY BEST』(品番:VNYM-9001~2(数量限定))である。録音用ディスクは磁界変調オーバーライト方式により記録される光磁気ディスクである。シャッターはディスク両面にある。通常はユーザーが自身で録音を行うためのブランクディスクとして販売されている。ディスクタイプは当初ステレオモードで60分タイプのみだったが、1993年に74分タイプ、1999年に80分タイプが発売され3種となった。最初期の80分ディスクは、74が80に変更されている以外にも、外観を同種の74分ディスクと変えてあるものも存在した。モノラルモードや各種拡張モードを使って録音した場合の分数はこれと一致しない。74分はディスクの回転速度を1.2m/sにすることで(60分は1.4 m/s)、80分はこれに加えてトラックピッチを1.5μmにすることで(60分と74分は1.6μm、規格上は1.5μm - 1.7μm)、それぞれ実現している。ハイブリッドディスクは、再生専用エリアと録音用エリアの双方を持つ特殊ディスクである。また、レンズ・ヘッド両用クリーナーで一部存在していた。再生専用エリアでレンズを、録音用エリアでヘッドをクリーニングしていた。曲情報はTOC (Table Of Contents) 領域に書き込まれる。トラックの移動・分割・結合・消去といった編集を行うこともできる。最大255トラックまで作成できるが、条件次第ではもっと少ないトラック数しか作れないケースもある。音楽データ以外に曲名などの文字情報の記録や編集、録音日時の記録などが可能である。漢字対応のレコーダーも存在している。TOCは0から31までの32セクタが存在するが、実際に使用されているのは0から4までの5セクタのみである。なおセクタ3は再生専用ディスクでのみ使用され、CDと同じようにディスクのバーコードやISRC(International Standard Recording Code、曲ごとの固有データ)が記録される。録音モードにはステレオとモノラルの2種類がある。モノラル録音モードではディスク額面表記の2倍の長時間録音ができるため、会議やラジオ番組の録音などに利用される。どちらのモードで録音した場合も、ソニーが開発したATRAC (Adaptive Transform Acoustic Coding) 符号化方式で音声の非可逆圧縮が行われる。ビットレートは通常ステレオ録音時で292kbps、モノラル録音時で146kbpsであり、これにより記憶容量が小さいMDメディアでCDと同等の録音時間を実現している。黎明(最初)期のMD機器での録音ではエラー制御に容量を割いていたため、音声記録には現在の半分しか割り当てられていなかった。そのため後継モデルのMDや先述の通りMDとほぼ同期に登場した競合規格のDCCに比較してあまり音質が良くなく、特にピュアオーディオファンからはネガティブイメージを持たれていた。なおATRACはが独立しているため、録音後に音量の調整などが可能である。この特徴は一部機器が「S.F.エディット」機能として利用している。MD機器には、SCMSおよびHCMSによるコピー制限が適用される。詳細は各項目を参照。据え置き型のMD機器にはMDドライブを2つ備えたものがあり、これらは2枚のミニディスク間でデジタルのまま音楽データの移動(ムーブ)を行えることが多い。いずれもSCMSによる制限内の機能である。例として1998年にソニーから発売されたMDS-W1はMDからMDへの曲の移動のみの対応で、デジタルでのコピーはできず移動元の曲は消える仕組み(アナログならばコピーは可能)。また日本ビクター(現・JVCケンウッド)のダブルMDミニコンポはコピーが可能だが、機器内ではアナログ接続されている。シャープのダブル機器も全く同様でありMD倍速録音もCDからMDへの倍速録音ともども1999年8月にいち早く搭載していた。なおケンウッド(現・JVCケンウッド)のALLORAではCDを同時に2枚のMDにダビングできる機種も存在した。MDは、録音後に編集が行える。アナログコンパクトカセットと違うのは、もう1台のデッキが要らないことである。編集モードは曲をつなげるコンバイン (Combine)、曲を分けるディバイド (Divide)、曲順を入れ替えるムーブ (Move)、曲を消すイレース (Erase) の4つがある。なおイレースには、1曲を消すトラックイレース (Track Erase) と全内容を消すオールイレース (All Erase) がある。また、後述の文字入力も厳密には編集機能の1つである。またコンバインはつなげる曲どうしが同じ録音モードである必要がある。同じ録音モードであっても、アナログ録音されたトラックとデジタル録音されたトラックはコンバインできない機種もある。コンバインについては日本ビクターではジョイン (Join) と呼ばれた。機器メーカー・個々の製品によって、TOCを更新するタイミングは異なる。例として、同一ディスク上で任意の編集作業を数回行う場合に、すべての編集作業が終了してディスクをイジェクトする、あるいは電源を切る、MD搭載ワンボディシステム等ではソース切換を行う等の操作をすると、それまでメモリーに蓄積されていたTOC更新情報をまとめてディスクに書き込んで "Complete" 表示を行うものもあれば、一方、個々の編集を行うたびに逐一TOCを更新し "Complete" 表示を行う機種もある。TOCの書き込み時間自体は数秒だが、書き込み中は実質的に操作不能でありユーザーにとっては待ち時間となるため、特に編集行程が多い場合、後者のシステムでは、前者よりも編集完了までに要する時間が長くなる傾向にある。編集作業中は「編集作業の結果をメモリーに蓄積中だがディスクにはまだ書き込まれていない状態」を表す "TOC" 表示が目安となるが、例外もある。日本ビクターのMD搭載ワンボディシステムには "TOC" 表示部がなく、タイトル(ディスク/トラック/グループ)入力後のTOC更新情報に限り、即時書き込みされない。ティアックの製品には "TOC" 表示部は存在するものの、タイトル(ディスク/トラック/グループ)入力後のTOC更新情報については、ユーザーが能動的にディスクイジェクトする、あるいは別の編集作業を行いその更新情報と合わせて即時書き込みされるよう意図しない限り、ディスクに書き込まれない。"TOC" 表示部が点灯するのは実質的にタイトル関連の編集後だけである。また "TOC" 表示中に電源を切るとその直前の編集内容(=未書込のタイトル)が書き込まれないため、やり直す必要がある。ケンウッドのMD機器では、一時期クイックムーブ (Quick Move) とクイックイレース (Quick Erase) 機能があった。クイックムーブは20曲までの複数曲を1回の操作で移動できるモード、クイックイレースは1度の操作で複数曲を消去できるモードである。普通のムーブやイレースでは、移動または消去により曲順と曲名がずれるが、このモードはそういった計算をしなくてすむため、便利だった。シャープのMD機器にも同様の機能が搭載されており、それぞれプログラムムーブ (PRGM MOVE) 、プログラムイレース (PRGM ERASE) と呼称していた。MDでは文字入力が可能である。これはコンパクトカセットでは不可能な機能であり、MDユーザーを増やした一因とも言われている。MDには文字領域が2つあり、半角カタカナと英数字を記録するセクタ1と漢字やひらがなも入力可能なセクタ4がある。それぞれセクタ1はJIS X 0201で、セクタ4はシフトJISで記録される。セクタ1はほとんどの機器で扱えるが、最初期はカタカナを扱えない機種もあり、全盛期の機種でもチューナーがアナログ式の廉価MDシステムや一部のカーオーディオなど液晶や蛍光画面でドット表示が出来ない機種に存在した。アルファベット・カナ入力は当初は他の編集作業ともども本体でしか作業出来なかったが、1998年にリモコンで操作できる機能が付いたほか、キーボードそっくりなやや大きなリモコンがパナソニック(この当時の社名は松下電器産業)やアイワ(現:ソニーマーケティング)から登場した。その後ソニーからは普通サイズのリモコンで携帯電話のようなテンキーに50音を割り振ったものが登場、さらに時間短縮にも貢献できる録音中文字入力も可能となりその後のMD機器のリモコンの定番機能となった。セクタ4は対応機器が限られる。セクタ4の入力は1997年以降、コンポーネントステレオやシステムステレオの上級機種で対応した。漢字入力は、パナソニックの機種はデッキにPC/AT用のキーボードを接続して行った。ソニーのピクシー・システムステレオではPCのシリアルポート・USBに接続するデバイス「PCリンクキット」の付属ソフト『Media Communicator』(NetMDの音楽転送機能を省いたもの)上やタッチパネル式リモコンで入力したタイトル情報を転送する。ただし、コンポでは本体画面にセクタ1表示のみの機種が多い。2000年10月に発売されたMDデッキ搭載の「バイオMXシリーズ」では、PCリンクキット相当の機能が内蔵されている。NetMD・Hi-MD機種ではセクタ4の編集・タイトル表示が標準化されている。ポータブルMDでは、1999年8月にシャープから発売された「MT-832」に初めて、PCリンクと同等の「パソコン・ザウルス接続対応」と、「漢字表示対応リモコン」が装備された。パソコンにインストールするためのソフトはシャープから無料でダウンロードできた。ソニーでは2001年10月にMDウォークマン「MZ-E909」以降の再生専用上位機種やNetMD対応の録再機種が発売されるまでセクタ4表示機能がなかった。漢字表示自体は1997年9月以降のモデルで対応。データ領域はそれぞれ2332バイトあるものの、一部領域がトラック管理などで利用されるため半角約1700文字、全角約800文字に制限される。なお、半角カタカナも約800文字に制限される。これは、カタカナは内部でローマ字入力されているためで、それと一緒にカタカナ開始・終了のコードを打ち込むことで、カタカナ対応機器ではカタカナに変換されて表示され、カタカナ非対応機種ではローマ字とコードが表示される。MDには録音日時を記録する機能もある。日時情報はセクタ2に記録される。セクタ2の対応機器は主に生録が可能なもの、特にポータブルMDレコーダーに多い。2000年以降より導入されたMDLP (MiniDisc Long-Play mode) は従来の音楽MD規格に2倍、4倍の長時間録音モードを追加する上位規格である。MDLPはメーカー・ユーザーのいずれからも歓迎され、登場から数年で、市場で従来型の音楽MD機器を置き換えた。現在では、MD機器には欠かせないモードとなっている。追加録音モードはそれぞれLP2モード、LP4モードとよばれ従来のステレオモード(MDLP対応機器ではSPあるいはSTモードと呼ばれる)のそれぞれ2倍、4倍の時間、録音できる。LPモードの符号化方式には表のとおりATRAC3を採用しビットレートはLP2モードで132kbps、LP4モードで66kbpsである。LP4モードではステレオ音声の左右相関を利用して圧縮するJoint Stereoを導入することで、ビットレートの不足を補っている。各LPモードにはいずれもモノラル録音モードはない。また、ATRACと違いスケールファクターが存在しないため音量の調整は出来ない。なお、これらLPモードのビットレートはSPモード (292kbps) の2分の1、4分の1より若干小さい。これは、MDLP非対応機器でLP形式のトラックを再生した際に問題が起こるのを避けるために各サウンドグループ(212バイト)毎に20バイトのダミーデータが挿入されているためである。MDLP規格で録音されたディスクはMDLP非対応機器でも認識が可能で、そのうちSPモードで記録されたトラックは正常に再生できる。ただし、LP2・LP4モードで記録したトラックを再生すると曲名欄の先頭に「LP:」と表示され、音声が流れない。なお、録音機の設定によりトラック名に「LP:」を付加せずに記録されたトラックの再生時には「LP:」の表示もされない。一方、MDLP対応機器は従来型音楽MDとの上位互換性を確保しているため、従来機器で記録されたディスク・トラックの再生及びSPモードでの録音が問題なく行える。このように、MDLPは従来仕様との互換性が比較的高いのが特徴である。これはMDLPが録音モードの追加を目的としているため、ディスク・ファイルフォーマットなどが従来のまま引き継がれたことが大きい。しかしこのことで、ディスクあたりに記録できるトラック数は最大255トラックまで、および入力できる文字数は最大半角約1700文字・全角約800文字という従来の制約も引き継いだ。そのため、使用法によっては、残記録可能時間に余裕があるのに録音できない、条件次第では全曲に曲名をつけられない、など、せっかくの長時間録音を活かせない。LP4で長時間録音したタイトルをディバイド(分割)する時は、MDLP非対応機種でディバイドした方が早い。LP4で録音したタイトルをMDLP非対応機種にかけると音は出ないが時間表示は半分で表示されディバイドなどは可能なため、非対応機種で30分ごとでディバイドしたのを対応機種にかけると1時間ごとにディバイドされている。早送りに必要な時間が半分になるのでMDLP対応機種でやるより短時間で済む。これは、ラジオ番組などをLP4で5時間録音したのを手早くディバイドする時に有効な手段である。ただし、音が流れないため分割ポイントの確認はできない。MDLP録音したタイトルを、SONYのW1にてディスク間ムーブで他のMDに移動すると、モノラル録音の無音タイトルになる。2001年にはMDLPグループという、ディスク内の各曲を幾つかのグループに振り分けることで簡易的なフォルダ分けを行う機能が登場した。これは、前年のMDLPの導入で1ディスクあたりの録音可能曲数が増えたことがトラックの閲覧性の低下を招いており、グループ機能の導入はこの問題に対する解決策となった。なお、この機能には以下のような制約がある。実際に記録されるグループ情報は、従来から存在するディスクタイトル領域に一定の書式に従って入力された文字列である。したがって、グループ機能に対応していないレコーダーでもタイトル入力機能があれば手動でグループ情報を入力することができる。この例の場合、ディスクタイトルはWikiMDとなり1曲目から5曲目までがJ_Popsグループ、6曲目から11曲目までがWorldグループに振り分けられる。Net MDは、MD・PC間の音楽転送規格。2001年6月27日にソニーによって発表された。このシステムは、当時流行の兆しを見せていたデジタルオーディオプレーヤーのように、PCに録りためた音楽を転送して持ち出すスタイルをMDに持ち込んだ。登場当初はフラッシュメモリが高額であり、MDは当時のメモリーカードや内蔵メモリタイプのオーディオプレーヤーに比べて、容量単価が安価だった。Net MD対応機器としては、単品コンポーネントデッキ・Net MD ウォークマンなどの対応ポータブルMD・オーディオコンポ・パソコン内蔵Net MDデバイスがソニーをはじめとする各社から発売された。MD機器を発売するほとんどのメーカーが参入し、ポータブルMDからカーMDと幅広い機器に採用されたため後述のHi-MDよりも採用メーカーは多い。MD機器とPCの接続にはUSBを使用・もしくはPCに内蔵されているNet MDデバイスを用いて、SonicStage(旧OpenMG JukeBox)・BeatJamにてATRAC3方式へリッピングとOpenMGで暗号化した、もしくはBitmusicなどのEMDで購入・ダウンロードファイルをMagicGateでPCとNet MD機器間を認証し相互転送する。Net MD機器でのMDへの録音・転送はATRAC3(MDLP相当)もしくはATRAC(SP相当)であるため、記録内容は従来のMD (MDLP) プレーヤーでも問題なく再生できる事が利点として宣伝された。ただし、編集は一部制限される。またPC側でMD機器側と接続制御するソフトウェアの制限などによりPC側のソフトウェアに履歴の無い楽曲データ、つまり別のPCでMDにチェックアウトした楽曲のチェックイン(リッピング)は不可となっている。通常のMDレコーダーで録音したトラックをリッピングする事はごく一部の機種で対応していた。2001年10月以降にソニーから発売されたWindows XP Home Edition搭載ミニタワー型デスクトップPCのVAIOMXシリーズではNet MDドライブが本体に搭載され、2002年に発売されたVAIOノートNVシリーズでは付け外しが可能な「Net MDベイユニット」がオプションもしくは標準装備された。これはPCにリッピングした音楽ファイルをそのままNet MDへ転送(チェックアウト)出来る。当初はチェックアウト回数が一律3回までとなっており、同一ファイルは同時に3台までの機器・MGメモリースティックに転送する事が可能だった。チェックアウト回数を超えて別の機器に転送したい場合はチェックアウト済みの機器からPCへチェックイン(ムーブ)させて、カウント回数を戻す必要があった。2004年発表の「SonicStage2.3」以降のバージョンでは、音楽CDなどからリッピングしたファイルについてはチェックアウト回数の制限が撤廃されている。2004年にHi-MDが発表されたが、Hi-MD機器であってもNetMDモードとして記録可能なものも多い。2009年時点で流通していたNet MD対応機器はMZ-N920(ソニー・録音再生対応MDウォークマン)とMZ-RH1(ソニー・録音再生対応Hi-MDウォークマン)があった。2015年現在は全ての機種が生産終了となっている。NetMDのデバイスドライバは2007年発表の「Sonic Stage CP」のバージョンまではOpenMG機器として認識され、チェックアウト操作などが可能であるが、2008年発表の新バージョンである「Sonic Stage V」ではNetMDに非対応とした。このため、旧バージョンである「CP (4.4)」のソフトウェアを継続してダウンロードできる。なお、ソニーでは当初NetMD機器の動作保証OSをWindows XPまでとしていたが、MZ-RH1については2010年10月リリースの「X-アプリ Ver.2.0」が対応した事でWindows Vista、Windows 7にも正式対応となった。Hi-MD(ハイエムディー)は高音質化や長時間録音、PCとの親和性向上など多岐に渡る拡張がなされた規格。2004年1月8日、ソニーによって発表された。音楽MDの拡張規格だが、PCデータや写真などの保存も想定されている。以前の音楽MD・MDLP・Net MDからの主な変更点や特徴は次の通り。また、2005年3月2日には規格拡張が発表された。Hi-MDは従来のMD機器をベースに、普及が拡大している記録装置内蔵型デジタルオーディオプレーヤーの特長を取り入れた規格と考えられている。しかし規格発表と同じ2004年にはソニーもHDDタイプのウォークマンを投入、その後はそれに力を入れるようになった。ソニー以外のメーカーでHi-MD製品を投入しているのはオンキヨー・バッファロー(ソニーから海外向けウォークマンをベースとした機種をOEM供給)等数社であり、MDLPやNet MDほどの成功は得られていない。2008年時点ではオンキヨーのHi-MDデッキ2機種 (MD-133・MD-105FX) と、ソニーの「Hi-MDウォークマン・MZ-RH1」録音再生機1機種が流通しており、2004年 - 2005年にかけて発売されたオーディオコンポやMZ-DH10P(Hi-MD Photoに対応したデジタルカメラ付きHi-MDウォークマン)などは全機種生産終了している。このMZ-RH1は2006年4月に発売され、最新のHi-MD機器でかつ最後に発売されたMDウォークマンである。また日本国外向けにはほぼ同様の機種が業務用扱いで、「MZ-M200」として発売されていた。2011年7月には、MZ-RH1とHi-MDディスク「HMD1GA」の生産・販売終了がソニーから発表され、通常のMDより早くHi-MD規格が終了した。Hi-MDフォーマットでは信号処理技術が変更されたことで高密度化され、従来に比べ大幅な大容量化を実現している。80分、74分、60分の従来型ミニディスクは、Hi-MDフォーマットで初期化することで約2倍の容量を持たせることができる。例えば80分ディスク (177MB) は、Hi-MD機器で初期化すると305MBの容量になる。一方で、Hi-MDフォーマット専用の大容量ディスクも追加された。このディスクは1GBの容量を持ち、Hi-MD AUDIOの最低音質 (48kbps) では45時間の録音ができる。発売当初の価格は1枚700円前後。ただし最低音質の48kbpsは音楽としては実用的なビットレートではない。音楽の場合最低64kbpsほどは必要とされるため、48kbpsはラジオ録音などの用途向けといえる。ファイルシステムにはFATを採用している。パソコンからMOやDVD-RAMやUSBメモリのように、大容量の外部記憶メディアとして手軽に利用できる。なおHi-MD AUDIO機器から利用される音楽トラックもFAT領域に格納されているが、PCからは不可視の"Proprietary Area"に記録された情報により暗号化されているため、SonicStageなどの対応ソフトウェア以外ではPC上での再生・コピーを行うことはできない。Hi-MD AUDIOでは多くの録音モードがサポートされ、幅広い用途に対応できるようになった。しかし録音操作の複雑化を避けるためか録音モードの多くはPCからの転送のみの扱いであり、Hi-MD機器本体のみで録音できるモードは3モードに絞られている。また、MD創生期から利用されていたATRACの両モード (292kbps、146kbps) は廃止となった。このため、Hi-MD機器でこれらのモードを利用したい場合には従来フォーマットでディスクを使う必要がある。Hi-MD AUDIOが対応する録音モードは以下のとおり。Hi-MD専用ディスクは従来の音楽MD・MDLP機器からは一切の認識・再生が出来ず、Hi-MDフォーマットで初期化された従来ディスクはディスク名がHi-MD DISCと表示されるだけで編集や再生はできない。一方、Hi-MD AUDIO機器側では従来の音楽MD・MDLP規格との上位互換性を確保している。このため従来規格で録音されたディスクの再生が可能である。従来規格での録音は一部機種のみ。Hi-MD PHOTOは、2005年春のHi-MD規格拡張の際に発表された画像記録用規格。ベースはデジタルカメラのアプリケーションフォーマットとしてデファクト・スタンダードとなっているDCF・Exifだが、独自にサムネイル用キャッシュファイルの仕組みを追加することで画像閲覧の高速化を図っている。この規格の発表と同時に、対応機器の第1弾であるHi-MDウォークマン「MZ-DH10P」が発表された。この機種は約130万画素のCMOSカメラと1.5インチのカラー液晶を内蔵しており、撮影した画像はHi-MDへ記録される。またHi-MD AUDIOにも対応しているため、音楽再生中に写真をスライドショー再生する機能や内蔵カメラでCDなどのジャケットを撮影してHi-MD AUDIOトラックのジャケット画像として登録する機能などもある。音楽用MDの数年後には、MDをデータ記録用に活用するMD DATAも開発された。容量は140MBで、ファイルフォーマットには特定のOSに依存しない独自のものを採用していた。記録ディスクにはMD DATA専用のものが用いられており、音楽用ディスクとはシャッターのサイズが異なっている。非公式ではあるが安価な音楽用ディスクをMD DATAドライブにてフォーマットすることで使用可能だった。容量が当時の3.5インチMOと同等だったことやコンパクトさから普及が期待されたが、読み書き速度が遅い (150KByte/s) などの理由により敬遠され、PC用メディアとして普及することはなかった。PC用ドライブはソニーが1993年7月に発売したSCSI接続のポータブル型ドライブMDH-10が唯一の存在で、このドライブは通常の音楽用MDの再生も可能である。録音は不可。一方、PC以外ではソニーの自己完結型スキャナDATA EATAやヤマハのマルチトラックレコーダーMD4S、MD8、デジタルカメラなど多岐に渡る製品で利用され、一部には現在でも使用されているものもある。また、MD DATAで画像を扱うための規格としてPicture MDがある。この規格の採用製品はデジタルカメラが主で、ソニーのMDサイバーショット (DSC-MD1) やシャープのMDデジタルビューハンター (MD-PS1) などがある。なおPicture MD規格で規定された要素は、MDを使用しないタイプのソニー製デジタルカメラにもそのまま流用され、初期のサイバーショットではPicture MD規格準拠の画像形式(JPEGベース、拡張子pmp)が使われていた。1996年末、容量を650MBに大容量化し転送速度を9.4Mbpsに高速化したMD DATA2が発表された。1999年末に発売されたMDビデオカメラMD DISCAM(ソニーDCM-M1)で初採用され映像記録にMPEG-2、音声にATRACを利用し動画は最大20分、静止画約4,500枚、音声最大260分が記録できた。MDのランダムアクセス性を活かしたカメラ単体でのノンリニア編集や10BASE-TによるPCとの連携に対応するなど意欲的なカメラだった。しかし、後継機種が出ないまま市場から消えた。MD製品としては一世代限りのものとして終わったが、ディスクの利便性を持つビデオカメラはDVDビデオカメラとして普及した。なお、DVDビデオカメラはこの半年後の2000年8月に日立製作所が初めて市販化した。ソニーは2004年に国内で発売したDVDハンディカムを初めて発売した。MDは日本国内では普及したものの、海外ではほとんど普及せず、当初のコンセプトでもあったコンパクトカセット並みの普及には程遠い結果となった。またMDに用いられているATRACも、ネットワークウォークマンの海外向けモデルでは2007年秋頃から対応が打ち切られるなど、こちらも海外では普及しなかった。MDおよびATRACは事実上、日本独自のメディアフォーマットになっている。当初はソニーが海外向けにウォークマンのみならず据置型デッキ・ミニコンポ・カーオーディオ機器を開発・発売し、オーバーシーズモデルのカタログにも掲載されていた。一部完全な海外専用モデルも存在したが、既に生産終了となっている。その結果、現在販売されている海外向けオーディオ機器はCDとコンパクトカセットが主流である。2014年現在、iPodやメモリータイプのウォークマンなどに代表されるデジタルオーディオプレーヤーやデジタルメディアプレーヤー、音楽再生に対応したスマートフォンなどの普及により、MD市場はほぼ終焉に近い状態である。またCDからの録音に関しては2000年代に入り、CD-Rが普及したためMDを使用するメリットは相対的に低下した。特にポータブルMDプレーヤー/レコーダーに関しては2007年3月以降パナソニックを皮切りに各メーカーが次々と生産・販売から撤退し始め、これ以降約1年間でソニー以外のメーカーは全てポータブルMDプレーヤー/レコーダーの生産を終了した。2009年以降はソニー製の録音・再生対応Hi-MDウォークマン、MZ-RH1が唯一現行機種としてカタログに残っていたが、2009年10月頃には取り寄せ不可になる販売店が出始め、2011年7月7日にはソニーから「MZ-RH1の生産、出荷を2011年9月をもって完了する」と発表された。なお、ソニーの予想を上回る駆け込み需要が発生し、予定より早く2011年8月に生産を完了した。ポータブルMDに必須のガム型電池の生産の縮小も進み、新品で購入可能なポータブルMDは事実上、市場からほぼ完全に消滅した。据置型デッキ・ミニコンポ・MDシステムについては、ラジオ放送や地上・BSデジタル放送の録音用およびMDからハードディスク、内蔵メモリー(ビクターのMemory COMPOシリーズなど)などへのダビング用途や、パソコンやメモリーなど利用しないでCDなどからデジタルで高音質録音という点では一定の需要があるが、2011年2月頃より、各メーカーが相次いでMD搭載のミニコンポ、ラジカセ等の生産を終了した。パナソニックはSC-PM870SD、ビクターはUX-Z2、ケンウッドはMDX-L1、シャープはSD-FX200がMDを搭載した最終機種となり、いずれも2011年6月までにMD搭載機種を全て生産終了とした。なお、シャープはオーディオ事業そのものから事実上撤退している。撤退について、パナソニックは「需要の減少」、JVC、ケンウッドは「MD機構部品の調達が困難」を理由としている。開発元であるソニーの日本国内向け製品でMDが搭載されていたのは、オールインワンコンポ「CMT-M35WM」の1機種のみで、2013年3月で出荷終了。これをもってソニーはMDプレーヤーの販売をすべて終了し、レコーダー/プレーヤー事業からも撤退した。2011年に生産・出荷を終了したHi-MDウォークマン「MZ-RH1」の場合と同様に、ソニーの予想を大幅に上回る駆け込み需要が発生したため、予定時期より早く2013年2月に出荷を終了した。なお、CMT-M35WMは、2010年より生産拠点を変更して2013年1月まで継続生産された。ソニーは同社製パーソナルコンピュータのVAIOにもMDデッキ搭載モデルを発売していたが、こちらは2003年夏モデルを以て展開を終了しており、最終モデルはPCV-W121である。2013年3月現在の時点でソニー以外の日本国内向け製品の場合でMDが搭載されていたのはオンキヨーのCD/MDチューナーアンプ+スピーカーシステム一式セットモデルX-N7XX(D)、およびCD/MDチューナーアンプ単品モデルFR-N9NX(S)で、いずれも2013年7月に生産を終了した。この2機種が、カーオーディオ、および業務用機器を除けば日本国内で最後まで販売(ただし、製造は両者共にマレーシアで製造)されていた据え置きMDコンポであり、2012年6月に発売されたX-N7XXが日本国内で最後に発売されたMD搭載機種である。2013年8月より順次発売開始された事実上の後継モデルとなるX-NFR7、およびNFR-9では両機種の製品コンセプトの変更によって遂にMDが割愛され、代わりにMP3のほかにfs44.1KHz/16ビットのリニアPCM(WAV)によるリッピング及びダイレクトエンコード(録音)機能に対応したUSB、及びSDメモリーカード(32GBまでのSDHCメモリーカードに対応)の各種スロットとBluetoothが搭載された。また、据置型デッキについては2016年7月現在、ティアックから業務用(TASCAMブランド)向けに販売されているCDプレーヤー/MDレコーダーのコンビネーションデッキであるMD-CD1MkⅢ(XLR端子なし)とMD-CD1BMkⅢ(XLR端子あり)の2機種、そして同年3月にTEACブランドでコンシューマー用CDプレーヤー/MDレコーダーのコンビネーションデッキの'MD-70CDも発売されたがこれら3機種が最終機種となる見込みである。カーオーディオについては1DIN規格のMDチューナー、各メーカー専用品(1DINカセット、CDチューナーなどと組み合わせて利用する方式)のMDプレーヤーは2010年に入り消滅し、2DIN規格のMP3対応CD/MDチューナーやUSBメモリーに対応した製品も2016年7月現在では既に生産・販売が終了している。2014年まではMP3などデータCD-RW対応のパイオニアと、オーディオCD-RW対応の三菱電機がそれぞれ1機種のみ生産継続。長年特定の車種向けに1DINのCD/MDチューナーを三菱電機が生産していたが2013年中期に生産・販売終了。それに続いて2DIN機も2014年に生産・販売終了したため唯一最後まで残ったパイオニアがカーMDを2015年頃まで生産・販売していた。また、AVカーナビゲーションの分野からも2005年以降MDは段階的に淘汰され、代わりにDVDビデオ、CD-Rや機種によってはDVD-R、SDカード、メモリースティック、USBメモリに記録されたMP3などの再生機能がより充実するようになる。これらの再生機能はUSBを除くとMD時代にも一部存在していた。このように、2016年7月現在は、据え置き型のTASCAMブランドを含む一部のティアック製CDプレーヤー/MDレコーダーのコンビネーションデッキを除き、MDに対応したミニコンポ、並びにラジカセ型のパーソナルシステム、ポータブル機器、カーオーディオなどMD機器がほぼ全て生産終了となっており、ミニディスクという規格自体が事実上ほぼ終焉した状態である。ただし、現在流通している音声記録メディアではCDレコーダーやDATとともに、パソコンを使用せずにCDなどからの音源をデジタル録音できる数少ないメディアであるため、パソコンを持たない、十分に使用することが困難なユーザーなど、一部では未だに根強い需要がある。そのためミニディスクそのものは、スーパーマーケットなどでも大抵は5巻パックなどが揃っている場合が多い。ただし、ビクターアドバンストメディア(Victorブランド)製「MD-80RX5/MD-80RX10」とパナソニック(AY-MD74D、2001年1月発売)がそれぞれ生産・販売終了となった為、2016年7月現在の時点における国内メーカーでは唯一、ソニー(MDW80T、2015年11月発売)だけがディスクを生産・販売している状況である。その他の単品ディスクは大創産業からも発売しているが、徐々に取り扱う店舗が減ってきている。尚、普及当時は莫大なライセンス料の支払いという意味での敗者になることを避けるため、競合規格のDCC共々ソニー・フィリップス・松下電器産業(現:パナソニック)の3社で共同ライセンスしていた。
出典:wikipedia
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