ユグドラシル宇宙とは、テーブルトークRPG(TRPG)のデザイナーである井上純弌の作品世界を包括する宇宙観のことである。井上の代表作とされる『アルシャード』シリーズは、この多元宇宙を舞台にしている。また、スタンダードRPGシステムの展開に関連して、初期の作品である『天羅万象』と『』も、『天羅WAR』を介してこの宇宙観に組み込まれる事となった。ただし井上は『天羅WAR』(及び『天羅万象』と『テラ:ザ・ガンスリンガー』)の世界観とユグドラシル宇宙との関係については「個々の独立したゲームがあるべき」と発言しており、『アルシャード』の展開が必ずしも『天羅WAR』やスタンダードRPGシステム準拠作品を拘束する訳ではない点に注意が必要である。なお、全ての井上純弌作品が、共通する多元宇宙観でつながっているわけではない。例えば『BEAST BIND』シリーズや『エンゼルギア』シリーズの世界は他の井上作品とクロスオーバーする設定は今のところ見られない。以下の記述は、基本的に『アルシャード』シリーズに依拠している。ユグドラシルとは幾多の次元を貫き生える宇宙樹であり、全ての次元はユグドラシルの枝であり葉であるとされる。ユグドラシル宇宙には「マナ」と呼ばれる根源力が充満しており、これはユグドラシル宇宙のあらゆるものごとの源となっている。物質が形をとどめておけるのも、世界に生命が生まれるのも、様々な事象や概念や法則が宇宙に存在できるのも、突き詰めればこのマナが宇宙に影響を与えているからである。そして、このマナを自在に操ることができればそれこそ魔法のような不可思議な現象を操ることができる。ユグドラシル宇宙に属する世界での魔術師や超人たちは、マナを操る技に長けたものたちのことである。ユグドラシル宇宙は現在「奈落」というマイナスの力の影響を受けており、多くの枝や葉が枯れつつある。奈落はマナとは相反する存在で、世界に様々な災厄をもたらす。『アルシャード』においては、プレイヤーキャラクターは奈落に対抗できる戦士「クエスター」となり、あらゆる願いが叶うという理想郷アスガルドを見出し、全次元を奈落の魔手から救い出す事をゲームの大目的としている。ユグドラシル宇宙観では、ゲームの舞台になりうる各世界のことを枝世界(ルートワールド)と呼ぶ。そして枝世界にはさらに葉世界(リーフワールド)と呼ばれる次元が平行世界として多数従属している。これはユグドラシル宇宙を一本の大樹とみなしたとき、幹から生えている枝がそれぞれ世界であるとみなし、枝から生えている葉を、その枝世界に従属する平行世界/小世界であるとみなしているのである。葉世界が枝世界に従属するといわれるのは、枝世界が滅びるとそれにくっついている葉世界も同時に滅びるためである。なお、時間の流れによる過去や未来もまた枝世界に対する葉世界として存在し得る。そのため、歴史改変を行うことにより葉世界であった「可能性の世界」を枝世界へと変容させ、逆にそれまでの枝世界を「可能性の世界」である葉世界へと変容させることも可能である。枝世界のひとつであるブルースフィアでは時間管理局という組織の存在が確認されており、歴史改変および歴史の修正をおこなっている。2010年から2012年にかけて発売されたアルシャード関連製品において、「大ラグナロク」という事件の顛末が描かれた。詳細は後述するが、この結果、ユグドラシル宇宙は一度滅び、その後に再生を成した。再生されたユグドラシル宇宙はそれまでとほぼ同じものであるが、細部には違いがみられる。本項で「再生前の宇宙」「再生後の宇宙」という記述が含まれているものは、それぞれどちらかの宇宙に固有の特徴である。TRPGとしての製品展開としては、再生前の宇宙を舞台とするのが『アルシャード(無印)』『アルシャードff』『アルシャード・ガイアRPG』の三シリーズのゲームであり、再生後の宇宙を舞台とするのが『アルシャード・セイヴァーRPG』である。全ての世界を飲み込もうとする負のエネルギー。世界の根源力であるマナとは相反する関係にある。奈落の性質はマナを虚無に返すことである。世界の正のエネルギーであるマナが消えていくということは、その世界から活力や希望が消え去り、絶望と荒廃が広げることを意味する。そして、最終的には世界そのものが奈落に沈んでしまうのである。奈落は様々な形態を持って世界を飲み込む。大地や天空を穿つ黒い亀裂として現れることもあれば、太陽を陰らせる暗い空として現れることもある。天変地異などの災厄として現れることもある。ユグドラシル宇宙において奈落の拡大はゆっくりとであるが着実に進んでおり、多くの世界が奈落によって滅んでいる。マナが消えると破滅が広がるというのは、逆説的に言えば世界に破滅や絶望を広げることでマナが消えていくことでもある。そのため、意図的に世界に破滅と絶望を広げることで奈落を広げようとする人間やクリーチャーも存在する。彼らは奈落の影響で肉体や精神が変容されてしまった者たちであり、奈落に満たされた世界を心地よく感じる。また、奈落に侵されると大いなる力が与えられるため、中には自らの意思で奈落を受け入れる者もいる。このような奈落の尖兵たちは『アルシャード』の代表的な敵役の一つになっている。虚無とはマナが存在できない状態のことを言い、ユグドラシル宇宙が誕生する前は全ての世界は虚無であったといわれる。ミッドガルドの創世神話に語られる原初の深淵ギンヌンガガップや、ブルースフィアの神話に登場する始原存在カオスも、この虚無を言い換えたものであるといわれている。根源力であるマナが存在できないということは、そこには物質や生命はおろか、概念さえも存在できないとされる。ただし、この虚無の中でも奈落のみは存在することができる。奈落と虚無は別個の概念ではあるが、深く関わりあってはいる。奈落はあらゆるものを虚無に変える性質を持つ一方、虚無となったその世界に奈落を広げているため、世界が虚無に飲まれないように封じている存在という見方もある。しかし、マナに由来するほとんどの生命にとっては、奈落に飲まれることも虚無に飲まれることも破滅であることには違いはない。奈落の尖兵は自らが勢力を広げることができる虚無を作り出すためにマナの消失をたくらんでいるが、奈落の侵略とは別の要因でマナの真空地帯が出来て、結果的に奈落が広がる場合もある。ミッドガルドで奈落が数百年で急激に拡大した理由は、世界のマナを封じ込めて利用する「リアクター」の普及によりマナの真空地帯が広がり、その隙を奈落が埋めたためという説もある。奈落は虚無の中でさえ存在できるため、奈落を根源的に駆逐する手段はいまだ見つかっていない。だが、あらゆる願いが叶うという理想郷アスガルドにたどり着けば、ユグドラシルを奈落による滅びの脅威から救うことができると伝説は語っている。奈落を肯定し、自らの身に受け入れて超常的な力を手に入れたものたちは「奈落の尖兵」「奈落の落とし子」などと呼ばれている。『アルシャード・セイヴァーRPG』ではこれら奈落の尖兵たちを「ダークレイス」という用語で総称している。この節ではその用語を使用する。ダークレイスは『アルシャード』シリーズでは原則的には敵役として扱われている。ダークレイスとなったものたちは心身ともに変容を重ね、多様な性質を持つが、その強さや特性、属する派閥などから以下で記されているようなある程度のカテゴリには分けられる。ダークレイスたちは属する派閥、もしくは個人毎に行動目的が異なり、ダークレイス同士で対立することもままある。しかし、どのような目的をもっていても、彼らが奈落の力を行使するたびに、結果的に世界が奈落に汚染されることは変わらない。神々よりもさらに以前に活躍していたといわれる巨人族。神人とも呼ばれる。ユグドラシルに連なる様々な世界で超古代文明を築き、さらにはその世界を支配するものとして神々を、そして神々に仕える奴隷として人間などの知的種族を作り上げた。なお、巨人族といっても人間より頭一つ高い程度である。人間たちがアルフを「巨人族」という大仰な名称で呼ぶのは、彼らの持つ高度な技術への畏敬の念からである。アルフたちは極限まで進化したあげく進化の袋小路に陥り、ゆっくりと退行していった。現在では太古の超文明のほとんどは失われており、いまや自らが創造した神々よりも下位の存在である。過去の遺産にすがって生きている衰退種族ではあるが、それでもアルフの持つ超古代の遺産の力は計り知れない。『アルシャード』では「レリクス」と呼ばれる器具が登場するが、これは超古代のアルフが創り上げたテクノロジーの産物である。レリクスは誰もが使えるものもあるが、特別な権限を持つものしか使えないようにセキュリティがかけられているものも数多くある。全てのアルフには額に「レセプター」といわれる水晶体が埋め込まれており、そのレセプターの色によってそのアルフ個人がどこまでのレリクスを使えるかの権限が決まっている。『アルシャード』の公式リプレイでよく知られているレリクスは異世界間をつなぐ「ビフロストの橋」である。アルフは現在は個々の世界の支配権をそこに住むものたちに譲り、ウートガルドといわれる別天地で安穏とした眠りについている。しかし一部のアルフたちは地上に残り、なんらかの目的で活動をしているという。また、地上のアルフたちの中にはなんらかの理由でウートガルドを追放された者たちもいる。追放者たちはアルフが蓄えてきた知識の記憶を消去され、レセプターから色を抜かれレリクスへのアクセス権限をほぼ無くしてしまう。ただし、そのようなアルフでもなんらかの拍子に失われた記憶やアクセス権限の一部を取り戻すこともある。『アルシャード』では、プレイヤーキャラクターがアルフのクラスを選択した場合は基本的にはこの追放者の立場となる。レベルアップのたびにアクセス権限を取り戻していき多様なレリクスが使えるようになる。世界の原初から存在していたという母神ガイアを発見したアルフたちが、ガイアを利用して創造した「ガイアの子ら」。それが神々である。アルフたちが地上を去ってからは世界の支配者として君臨していたが、その多くは過去の戦いで死んだり力を減じたりしており、生き残っている神々の多くも自らの眷属に世界の管理を委ね、表舞台からは去っている。神々は人間の概念でいうような死を迎えても決して滅びることはない。神々は肉体が滅んでもその魂は不滅であり、人間やその他種族として転生することが可能である。転生者は「ワード」と呼ばれ、成長することでかつての神に匹敵する力を取り戻していく。自らの力を分割して複数のワードを生み出すものもいる。また、砕けてシャードになった神の中にも、砕かれる前に神の力の一部が切り離されてワードを生み出したものもいる。ワードの中には神としての記憶を引き継いでいるものもいれば、そうでないものもいる。戦争などで敗北した神の中には魂まで砕かれ、転生さえも不可能になるものもいる。そのような状況になっても神はその意思を世界に残すことができる。砕かれた神の肉体と魂の欠片は「シャード」と呼ばれるマナの結晶体として世界にちらばる。このシャードは意思をもつ。それは神そのものの意思ではないが、神の意思の残滓ではある。そして、このシャードが自らのパートナーとして選んだ人間や他種族たちが、クエスターと呼ばれる者たちである。神々、そしてシャードは今の人間たちにとっては謎につつまれた存在であり、太古の知識を失った現在のアルフたちでもその謎は解明できるものでなく、アルフにとって神々、そしてシャードはもはや畏怖すべき存在である。なお、神々の中にはガイアをルーツとしないものも存在する。ガイアと同じく世界の最初から存在した「始原存在」や、神代の後に神として誕生した機械神デウス・エクス・マキナ、未来の時代に神として誕生すると予言されているジャーヘッドの「新しき神」、そして神の座を得たクエスターなどである。また、シャードとして確認されているマリーシやアカラナータもガイアをルーツとしないとされるが詳細は不明である。ユグドラシル宇宙に連なる世界では、地球で語られている神話とほとんど同じものが他の世界にも伝わっていることがある。例えば、異世界であるはずのミッドガルドの神話に出てくる神々は、地球の北欧神話や日本神話、ギリシャ神話などに語られている神々である。これは、神話の時代に神々がユグドラシルの各世界をまたに掛けた活躍をしており、彼らが成した偉業がさまざまな世界に伝わったためだとされる。もちろん、地球(ブルースフィア)に伝わっている神話についても、異世界での歴史的事実が神話として伝わっている事もある。例えば、地球の北欧神話ではラグナロクの伝説が語られているが、これは異世界であるミッドガルドで実際に起こった神々の戦争の経緯が古代の地球に伝わり、神話として語り継がれたものだとされる。このように、複数の世界に伝わっている神話を「源神話」と呼ぶ。ユグドラシル宇宙にはラグナロクと呼ばれる滅びと再生の予言が存在する。ギャラルホルンと呼ばれる角笛がかき鳴らされたときに起こると言われ、最終的に全ての次元宇宙がリセットされ新しい宇宙が生み出されるとされている。ラグナロクは以下に記した段階を経て宇宙を滅ぼす。ユグドラシル宇宙でギャラルホルンが初めてかき鳴らされたときに、ラグナロクの第一段階目「小ラグナロク」が発生する。これにより全ての枝世界、葉世界に対して、いつの日かなんらかの大災厄が引き起こされることが決定づけられる。起こる災厄の種類は様々であるが、どれもその世界の存亡に関わるものとなる。アルシャードシリーズでは一回目のギャラルホルンははるか太古にかき鳴らされたとされており、ミッドガルドで起こった「ラグナロク」や、ブルースフィアで起こった「ティタノマキア」「ギガントマキア」は、いずれも小ラグナロクとして引き起こされたものである。小ラグナロクを迎えた世界は、滅ぶことももあれば生き延びることもある。生き延びた世界の多くでは、それまで各世界を支配していた神々が滅びたり力を減じることとなった。生き残った神々の多くは世界に直接干渉することをやめ、自らの眷属に世界の管理を委ね、自らは世界を見守ることに徹した。小ラグナロクはユグドラシル宇宙の支配権を神々から代替わりさせたのである。長い時間をかけて全ての世界が小ラグナロクを体験した後、二回目のギャラルホルンをかき鳴らすことができる。これによって発生するのがラグナロクの第二段階目「大ラグナロク」である。大ラグナロクはあらゆる世界そのものをマナに分解し、ユグドラシル宇宙そのものをリセットする次元規模の滅びである。世界の存在力の弱い小さな世界はギャラルホルンが吹かれたと同時に一瞬にして全てがマナに分解されるが、存在力の強い世界はマナへの分解まである程度の時間的猶予がある。分解されたマナはリーヴとリーヴスラシルが眠るユグドラシルの洞へと蓄積され、後の宇宙再生のために使われることになる。宇宙のマナをひとところに集積しようとする大ラグナロクではマナの希薄地域が多数生まれる。そして奈落はマナが希薄になった場所に生まれるため、大ラグナロクは結果的に奈落をより活性化させる。奈落の活性化によって今まで封じられていた神代の奈落が目覚めるなどといった負の連鎖もおきつつある。奈落の活性化で最も危険視されるのが冥府龍ニーズヘグが活動を行うことである。ユグドラシルの根をかじりつづけているとされるこの巨龍は大ラグナロクが発生するとその鎌首をもたげ、ユグドラシルの枝や葉、すなわち世界をまるごと飲み込みはじめる。飲まれた世界は一瞬にして奈落に沈むことになる。なお、奈落に沈んだ世界のマナはユグドラシルの洞へと蓄積集積することはなく、宇宙再生の礎になることも許されない。大ラグナロクは一旦開始されると、神の奇跡を以てしてもその進行を止めることは出来ない。大ラグナロクにより宇宙が全てリセットされた後に、世界をもう一度再生させることができるのは、アスガルドに至り、三回目のギャラルホルンを吹くクエスターであると言われている。再生される世界の有り様は、このクエスターに委ねられている。言い換えれば、新生した世界は三回目のギャラルホルンを吹いたクエスターの心を投影した世界と言える。なお、大ラグナロクが完了する前に三回目のギャラルホルンが吹かれると、全ての因果律が崩壊してしまうとされる。一方、強大な力を持つ奈落神や奈落王の手の者もアスガルドを狙っている。アスガルドまでも奈落化させてクエスターによる新宇宙創世を防ごうという計画である。『アルシャード』の公式リプレイにおいては、大ラグナロクは『アルシャードガイア』リプレイ「襲来! コスモマケドニア!!」にて二回目のギャラルホルンが吹かれたことで開始された。同作を第一弾とするリプレイシリーズ『アルシャードトライデント』や、それと連動するサプリメントは、この大ラグナロクが発生した世界を舞台としている。世界の存在力によって大ラグナロクをどれだけ持ちこたえられるかが決まると上述したが、世界の存在力を決定するものは「イデア」と呼ばれている。イデアはその世界が持つ本質や特性を記した仕様書のようなものであり、その形状は道具であったり人間であったり実体のない概念であったり様々である。ほとんどの世界において、イデアは一つしか存在しない。大ラグナロクによって滅びを迎えつつある世界の中には、他世界のイデアを狙って侵略をするものもいる。これはイデアが例外なく大量のマナを有するからであり、マナが大量にあれば世界の滅亡を先延ばしにすることができるからである(世界の様々な要素がマナに分解されてユグドラシルの洞に吸い取られつつある中で、他世界から奪ってきたイデアのマナを使って吸い取られた部分を逐次補修していくというイメージ)。一方、イデアからマナが奪われると、そのイデアがつなぎ止めていた世界は滅亡が加速することになる。クエスターの持つシャードはイデアと親和性が高く、イデアに触れることでシャードに格納して持ち運ぶことができる。これにはイデアの形状もサイズも問われないため、イデアを奪いにくるものたちの中にはクエスターもいる。また、イデアはアスガルドに至ったクエスターによる宇宙再生の際にも使われる。新しい宇宙はクエスターが持つイデアを元に再生される。この時、自分の世界のイデアを使えば全く同じ世界が再生される。いわば、自分の世界を「次の宇宙」に運ぶことができるわけであり、自分の世界を救うためにアスガルドを目指すクエスターも多い。また、複数のイデアを組み合わせれば複数の世界の要素が混ざり合った世界を生み出すこともできる。滅びいく世界の救済をあきらめた世界の中には、「次の宇宙」に自分の世界の要素を継承させるために他世界のクエスターにイデアを託す場合もある。また、クエスターの持つシャードを宇宙再生のためのイデアの一つに使用することもできる。自身が持つシャードはもっとも強力なイデアとして作用し、そこにはクエスター個人が持つ望みや思いが込められている。そのため、クエスターが望めば自分の思い通りの世界を創ることもできる。『アルシャード』の開発元であるファーイースト・アミューズメント・リサーチは、『アルシャードトライデント』の開始に当たり、自社の公式サイトにて、プレイヤーやリプレイ読者などからのイデアの投稿を募っていた。ユグドラシルに連なる「枝」にあたる世界の一つがミッドガルドである。『アルシャードff』の主要な舞台でもある。ひとつの巨大な大陸(「ミッドガルド」は大陸の名前でもある)といくつかの島々で構成されている世界である。北欧神話をモチーフにした世界観であり、上述の小ラグナロクが起こった後の世界という位置づけである。かつて人間たちを支配し導いた神々の神々は戦争によって滅び、残された人間たちは世界の支配権をかけて戦争の歴史を繰り返してきた。いわゆる剣と魔法のファンタジー世界だが、中世ヨーロッパ風のイメージにはこだわらず、近代的な機械技術を持つドイツ風の軍事帝国や、未来的な科学技術を持ったアルフの古代遺跡、樹海に棲む蛮族、日本風のサムライやニンジャ、チベット・モンゴル風の遊牧文化をもった異種族など、多様なイメージを背景にもつ文化が混在している世界であり、『ルーンクエスト』や『ルナルサーガ』などとも共通する「ごった煮ファンタジー」となっている。『アルシャードガイア』サプリメント『リーフワールド』によると世界の技術レベル平均は地球の18世紀相当とされる。このような多様性を持つミッドガルドではイデアも1つに収まりきらない。ミッドガルドは他の世界とは異なり、文化圏毎に全く異なるイデアが独立して存在している。複数のイデアによって成り立っている世界というのはユグドラシル宇宙でも稀有なこととされている。人間が支配する「人世の歴史」になってから約2000年の時を経たが、ミッドガルドではここ400年ほどで奈落が序々に拡大を続けていき、現在では大陸の5分の1が奈落に侵食されている。ミッドガルドの奈落は空間を切り裂く黒い亀裂として顕現し、奈落に飲まれた場所は侵入が不可能な空間となる。奈落の亀裂が広がるとともに、奈落に犯された生物であるダークワンが集落を襲ったり、奈落を受け入れ堕落した人間のなれの果てであるアポスル(奈落の使徒)が人間社会に混乱をもたらしたりと被害が増大している。なお、奈落の亀裂のほとんどは大陸北方に集中している。北方地域は真帝国領に属し、帝国領全体の3分の1くらいの広さを持つが、亀裂の拡大で人間の領域が年々奪われつつある。奈落の尖兵が跋扈し、自然が歪み荒れ果てた魔境と化している場所も多い。ミッドガルドはアース神族が強い影響力を持っていた世界であり、神々が死したこの時代でも素朴な信仰を保っている。神はマナとなってこの世界にいまでも影響を与えていると信じているものもいて祈りを捧げる者は絶えない。しかし、ラグナロクの勝利者を標榜する機械神デウス・エクス・マキナへの信仰が真帝国の勢力拡大とともに浸透しており、古き神々への信仰は序々に失われつつある。再生後の宇宙では、新しい敵勢力としてワームスカルが登場した。詳細は上述。一方、世界を穿つ黒い穴としての奈落そのものが顕現している割合は再生前より減っている。ミッドガルドを席巻する強大な軍事国家。『アルシャード』(ルール第一版)、『アルシャードff』における代表的な敵役の一つであるが、絶対悪というわけではない。PCが帝国側のキャラクターになってプレイするためのデータも用意されている。軍部が強い力を持つが、同時に機械の神デウス・エクス・マキナを奉ずる政教一致の宗教国家でもあり、軍と教会の間で対立が起こることもしばしばある。ミッドガルドの創世神話によると、人類は神々の下僕となるべくアルフに作られたとされているが、神代の末期にこの運命に逆らった北方のユグノス王の下に現れたのが機械神であるとされる。機械神は他のあらゆる神々の手から王国を守護することを約束し、ユグノスの王国は機械神を奉ずるようになった。これが後の真帝国の原型となる。そしてその契約どおりに、機械神は小ラグナロクで他の多くの古き神々を滅ぼしたのである。しかしその後、機械神は姿を隠し、現在までその姿を臣民の前には現していない。国教である真帝国教会による教えでは、ミッドガルド大陸全土に機械神の教えが広まったとき、機械神が再臨し、この世界に楽土たる千年王国が誕生すると言われている。真帝国はこの伝説を旗頭に大陸統一を目指して何百年もの間戦争を続けてきた結果、大陸の約七割をも支配するに至った。しかし現在は戦線は膠着状態なうえに、国力を超えた領土拡張政策による国内のひずみも問題視されつつある。国土の広さゆえに統治がままならない地域も数多く存在している。真帝国教会の教えでは、機械神デウス・エクス・マキナは神々の最終戦争ラグナロクの最後の勝利者であるため、敗北した神々の残滓であるシャードは機械神が受け取るべき戦利品であるとしている。そして、地上に存在するシャードを管理するのは機械神の代理人である皇帝および国体でなくてはならないと主張している。その考えのもとに、真帝国はクエスターを見つけ次第「保護」しシャードを徴収している。徴収されたシャードは後述するリアクターのエネルギー源として利用されている。「保護」されたクエスターがどうなるかについては様々な黒い噂がある。殺されるといった物騒な噂があるのは当然だが、真帝国内にはクエスターを秘密裏に子飼いにしている組織や個人がいて、様々な秘密任務に投入されている話もまことしやかに語られている。真帝国は、魔力の源である「マナ」を周囲から集めることでエネルギーを無尽蔵に抽出する永久機関「リアクター」の技術を独占している国家である。このリアクターによって動く機械群「カバラ」が軍事技術として普及しており、現代的な戦車や銃器が実用化している。非真帝国領域のほとんどは産業革命以前の文明レベルであるため、このカバラ兵器が真帝国の強さを支えているといって差し支えはない。リアクターは周囲のマナを集積するためのコアとしてクリスタル状の結晶体を利用しているが、これはシャードを模倣して造られたものである。リアクターに本物のシャードを入れた場合、通常のリアクターとは比較にならない桁違いのエネルギーを得られるため、真帝国はシャードを躍起になって回収している。シャードリアクターの強力さを象徴するのが真帝国領内の様々な場所に建築された巨大な塔である。これは「積層都市」と呼ばれているアーコロジーであり、積層都市の下部には必ずシャードリアクターが設置されており、この密閉された巨大な塔の内部全てにエネルギーフィールドが充満させている。それにより、あらゆるカバラ機器がリアクターを積まなくても動くようになっている。真帝国臣民の生活スタイルは積層都市とそれ以外では全く異なる。積層都市の内部ではカバラによるインフラが充実しており、一般生活に使われる道具も機械化されていて近代的な生活が送れるようになっている。一方、積層都市以外の場所でカバラ製品を使うにはその製品自体にリアクターが搭載されていなくてはならない。リアクターのほとんどは軍用にしか支給されていないため、積層都市以外の街では一般生活面でのカバラの恩恵はほとんど得られておらず、非真帝国領域とあまり変わらない生活スタイルが送られている。積層都市は広大な真帝国の領土でも建築されている数はそう多くはない。ただし全部で13ある州都は全て積層都市である。なお、リアクターは世界からマナを奪うことで結果的に奈落を生み出しているのではないかという説があり、一部の知識人からは危険視されている。しかしこれはあくまで仮説であり、アカデミーなどの中立的で権威ある学会では公式ではノーコメントという立場をとっている。真帝国はこの説を悪質なデマゴギーだと公式に否定している。一方、反真帝国勢力はこの仮説を支持しており、真帝国の政体の愚劣さを示すものとして政治的に利用している。再生前の宇宙における今上帝であったグスタフ・ヨーゼフ2世の治世は400年余りに及んだ。しかも彼は自身を機械化させて延命させていった事で本当に必要最低限の僅かな手振りで返答するほどの恐るべき無口と化し、言葉を一つ発しただけでも国を揺るがす重大事になるほどだった。だが皇帝は継嗣を公に残さないまま、『アルシャードff』リプレイ「天使がくれた世界滅亡」及びシナリオ集『パラダイスロスト』にて崩御した。皇嗣の不在(もしくは未確定)は『アルシャード』公式リプレイにおける伏線となっている。皇帝崩御と、それと時を同じくして発生した軍内のクーデターにより、真帝国中央権力は混乱状態に陥った。再生後の宇宙ではグスタフ・ヨーゼフ2世は崩御前に禅譲を行っており、今上帝はレオポルト2世と呼ばれる17歳の少女である。ただし、この皇帝が女帝であることは秘中の秘であり、世間一般には男帝として通っている。禅譲の経緯は不明だが、政治など携わったことがない凡人であるため、政治的な掌握能力は弱くお飾りに過ぎない。上級官僚たちによる駆け引きで帝国の中枢が動いている非常に不安定な状況である。レオポルト2世は帝都の塔に閉じこもりっきりで、周囲からは帝国の光の部分のみを見せられており、帝国を素晴らしい国であると信じきっている。暗愚ではないが極めて悪い意味で無垢。真帝国はそれ自体で三つのイデアを持つ文化圏である。帝国のイデアのうち一つは【無垢なる者】と呼ばれる童子であり、一つは機械神デウス・エクス・マキナのアバターである。ミッドガルド大陸の七割を国土とする真帝国は、その広大さがゆえに一枚岩ではなく、様々な派閥闘争や内乱の危機をはらんでいる。地域的には真帝国領内にあるにもかかわらず真帝国の支配が及んでない地域や、反真帝国組織も数多くある。ミッドガルド大陸の西方は未だ真帝国の領土とはなっていない地域であり、様々な国家・勢力が点在している。それぞれの国内での問題が山積みであり、真帝国に対抗するために団結する兆しは見えない。人類をはるかに超越した技術を持つ太古種族アルフは。彼らのほとんどは異世界ウートガルドで安穏とした眠りについており俗世には深く関わろうとしない。しかし、この世界を監視するための組織を作っている者たちもいる。それ自体がレリクスである巨大な浮遊プレートに作られた魔術の学院。ラグナロクにより神々が去り、新たな世界の支配者になった人間族に高度な魔術の知識を与えるために古代のアルフの魔術師シモン・マグヌスが作り上げた学校である。現在は人間族に限らず魔術の道を志すものならば誰でも入学資格を持つ。ただし、入学試験は非常に厳しく、卒業はそれ以上に厳しい。講師にも様々な種族の者がいるが、教授の地位を持つものとなるとアルフが中心である。教授になるとアカデミーの運営組織である「教授会」に参加することができる。教授会の方針によりアカデミーは地上の勢力のいずれにも肩入れせず、いずれにも敵対しない中立を貫いている。アカデミーを卒業した者は、「賢者の石」と呼ばれる水晶体を与えられる。これはアルフのレセプターの模造品であり、賢者の石を持つものはアルフと同格の叡智を得たことを示している。彼らは人間社会の間では「ウィザード(賢者)」と呼ばれており、魔術を極めたエリートとして高い社会的地位を得る。なお、アカデミーはひとつだけではなく複数の分校を持つ。学生の増加に伴い、1校だけでは対応できなくなったためである。分校は本校ほどの規模はないが、学習要項が本校に劣ることはない。後述するノース校のように、特定の目的の施設(魔術実験施設など)がある関係で、敢えて僻地に設けられる場合もある。ユグドラシルに連なる「枝」にあたる世界の一つがブルースフィアである。『アルシャードガイア』の主要な舞台でもある。ブルースフィアはユグドラシル宇宙観において我々の住む地球にあたる世界である(より正確にいえば、「この地球が存在する三次元宇宙空間全て」がブルースフィアと呼ばれる世界である)。魔法が存在はするが隠蔽されており、多くの人々は魔法や奈落の存在を知らずに日々を過ごしている。この世界の平和な日常を守るために、人々にばれないように奈落を退治するのが『アルシャードガイア』の基本的なゲームスタイルである。ブルースフィアはオリュンポス十二神が管理神を担っていた世界だが、源神話の影響力が強く、様々な神族の神話が残り、多様な神々への信仰が現在でも保たれている。ティタノマキア、ギガントマキアという2つの神々の戦い(小ラグナロク)を経て、神々は世界を去り人間の時代となって以降、ブルースフィアではマナや魔法の知識は隠され、世界の真実を知るのはマナを操る素質を持つ一部の者たちのみとなった。世界の真実が隠されているのは、マナを操る手法が下手に技術化され一般人でもマナを利用できるような文明が誕生してしまうと、マナが乱利用され枯渇する危険性があることを古代の大魔術師マーリンが指摘したためである。この方針は現在でも魔術師連盟(下記参照)によって厳格に守られている。なお、この世界が「ブルースフィア」と名づけられていること自体、一般人は知らない。ブルースフィアはガイアの恩寵が深い世界であるため、奈落の影響力は比較的抑えられている。しかし近年になってガイアの力が弱まり、奈落が活発化してきた。ブルースフィアの奈落の中でも最も危険なのはティターン十二神の手のものたちである。ティタノマキアで敗北し奈落の牢獄タルタロスに封じられ身動きができない彼らは、ガイアに復讐を果たすべく、ブルースフィアに奈落の尖兵を送り続けている。一方で近年になってクエスターも多く発生するようになり、この世界に住む者たちと奈落との戦いは激化しつつある。人間社会に存在する「世界の神秘をする者」たちは世界を守るために連携をとるようになってきている。しかし、実際は利害関係による対立が激しい。特にクエスターは普通の能力者よりも強力な存在であるため、クエスターの行動には様々な組織の思惑が絡むことも多い。『アルシャード』の公式リプレイにおいては、ブルースフィアは「襲来! コスモマケドニア!!」「美少女☆女神と黄金の林檎」にて冥府龍ニーズヘグに呑まれ、それに対抗する手段としてレリクス「アマルテイア」が起動した結果、ユグドラシルから離脱しつつある。この事実はユグドラシル宇宙に連なるブルースフィア以外の全ての世界における大ラグナロクを加速させている。ユグドラシルにおける全ての世界の神々の母。世界の原初から存在していた神であり、ブルースフィアの大地そのものでもある。その為、ブルースフィアのイデアは大地母神【ガイア】と言える。ブルースフィアはこのガイアにより強固に守られていたのだが、その守護の力は近年弱まってきており、それに対応するように奈落の侵略が激しくなってきている。ブルースフィアでクエスターとなったものはシャードだけでなくこのガイアにも導かれる特別なクエスター「ガイアの戦士」となる。ガイアの戦士の中でも特にガイアの寵愛を受けている者は「レジェンド」と呼ばれ、不可能を可能にする奇跡の力を発揮することができる。
出典:wikipedia
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