H&K VP70()は、ドイツのH&K社(Heckler & Koch GmbH)が開発・発売していた、世界初のポリマー製フレームをもった自動拳銃である。VP70のコンセプトそのものは、第二次世界大戦の頃に計画されていた「国民拳銃(Volks pistole)」まで遡る。敗色濃厚であったドイツは、少ない資源と労力で生産可能な火器を研究していた。国民拳銃はその中の1つであり、試作品が完成していたが、生産される前にドイツは降伏した。戦後、1960年後半にH&K社は「兵器購入予算をあまり取れない諸国向けの銃器」として、国民拳銃のコンセプトを受け継いだ拳銃の開発を開始した。この新型拳銃はという、当時としては革新的な拳銃として設計された。1968年に最初のデザインが完成し、国民拳銃のコンセプトに加え、オプションの銃床を装着することにより短機関銃として用いることができる、という多用途拳銃として完成し、「国民拳銃(Volks Pistole)」の頭文字にあやかると共に、設計が完了し生産が開始された1970年からVP70と命名され、各方面への売り込みが図られた。初期生産モデルの評価を元に、グリップ形状などを改良した軍用専用モデルであるVP70M、民間向けにセミオートオンリーとしたVP70Zも販売され、VP70Mはアメリカ軍制式拳銃であるM1911の後継機種選定トライアルにも出展されている。しかし、VP70は実用面では問題が多く、アメリカ軍次期制式拳銃選定トライアルでは実射テストにおいて散々たる成績に終わって不採用となった。価格も従来の拳銃に比べて特段には安価なものとはならず、公式装備としてまとまった数を購入したのはモロッコなどの極めて少数の国・機関に留まった。結果、軍用、民間用どちらも期待されたほどの売上が叶わず、各型合わせて約25,000丁が生産されたものの、H&K社は1989年8月に生産を打ち切った。こうしてVP70は商業的に失敗したが、その影響を強く受けたグロック17は、後に拳銃の世界に革命的な影響をもたらしている。なお、VP70は発表当時としては斬新なデザインと特異な機構から銃器愛好家の間では人気が高く、特に生産数の少ない9x21mm弾型はコレクターの間で高価で取引されている。国民拳銃のコンセプトを受け継いだVP70は、コストダウンのために先進的なアイデアを数多く盛り込んでいる。VP70には、独特の構造故にいくつかの問題があった。これらの問題により、本銃は「他の9x19mmパラベラム弾を使う拳銃に比べて威力が劣るにもかかわらず、反動が大きく命中精度が低い」という結果となった。ストックがあるとはいえ、ストレートブローバック方式である事と、2,200発/分相当という高速の連射レートも相まって、3点バーストは一括した非常に大きな反動として体感された。そのため、3点バースト時の反動制御は困難であった。擬似凹型の照星と照門を組み合わせた独特の照準器は「形状が従来の拳銃と異なるために照準が行い辛い」と不評であった。弾薬の適合性に厳しく、正規ライセンス品ではないコピー生産品の銃弾やハンドロードされた再生弾ではしばしば作動不良を起こした。このため、必ずしも高価な正規品を使用できるとは限らない第3世界や民間での使用において問題が多発する結果となった。また、弾薬の状態にも厳しく、表面が汚れたものや古く保管状態が悪い弾薬では高い頻度で作動不良が発生した。アメリカ軍次期制式拳銃選定トライアルでは「軍用拳銃においてもっとも重要な点」とされた「ある程度汚れた弾丸を使用して発射する」「保管状態の異なる弾薬を混用して発射する」テストにおいて装弾不良発生率20%(平均して5発に1発)という散々たる成績に終わっている。銃の素材としてのポリマーの使用は、生産過程において高度で複雑な金属加工を必要としない代わり、全く新たな製造ラインを構築する必要があったために、製造現場において新たな設備投資が必要で、生産コストは設計当初の予想よりも大幅に超過したものとなった。また、これはH&K社以外での生産に多額の投資を必要とするため、製造ライセンスの輸出に高いハードルを設けることになり、幅広いセールスに支障をきたすことになった。VP70の遊戯銃化は、小林太三の設計によって2度行われている。1度目はMGCより発売された発火式モデルガンで、初期型のVP70がモデル化されている。大きな特徴として、別売の銃床を装着すれば実銃通りの3点射が可能、というものであったが、作動が不安定で、当初発売予定であった銃床も作動保証のないジャンク品同然の扱いで少数が販売されたに留まった。2度目は小林自身の立ち上げたメーカータニオ・コバのブローバックガスガンで、VP70Mをモデル化している。このモデルにも銃床が用意されており、こちらは快調な3点射が可能となっていて、モデルガンのリベンジを果たす形となった。
出典:wikipedia
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