『ファウンデーションシリーズ』 ("The Foundation Series") は、アメリカのSF作家アイザック・アシモフによる SF小説のシリーズ作品の総称。「ロボットシリーズ」と共にアシモフの代表作とされる。日本では創元推理文庫から発刊されたときの題名『銀河帝国の興亡』や、早川書房から発刊されたときの題名『銀河帝国興亡史』の名称でも知られる。ファウンデーションは財団の他、土台や基礎という意味合いも持つ。『ファウンデーションシリーズ』は、1万2千年続いた銀河帝国の衰退後、新たな第二銀河帝国の核となるべく設立された第一ファウンデーションに関係する人間を中心に描かれた物語である。銀河系の端の惑星ターミナスに追放された銀河百科辞典編纂者の集団ファウンデーション(第一ファウンデーション)が、帝国の衰退とともに混迷の度を深める銀河系の中、降りかかる危機を乗り越えることで覇者へと成長していく。シリーズは全7作からなる。特に1940年代に執筆され、1950年代に単行本化された第1巻から第3巻までは3部作と呼ばれている。1982年に出版された第4巻からは、ロボットシリーズや他のアシモフの旧作との融合がはかられ、アシモフの未来史としてゆるやかにまとめ上げられた。内容は、基本的には危機に対処する人間のドラマである。辺境にいる集団が、知恵を絞り、血を流しながら危機を乗り越え、全銀河系に勢力を伸ばしていく過程を描いている。そこでは戦争もたびたび登場するが、個々の戦闘の細かい描写はなく、戦闘場面の描写自体非常に少ない。主に政治や社会の動き、それに伴う人間の活動が描かれる。また、第2巻後半では登場人物の正体について、第3巻ではある団体の位置についての謎を解くという、推理小説の要素が入っている。SFとミステリの融合はこの後、1953年に発行された『鋼鉄都市』においてより鮮明になっていく。超小型化されて汎用化された原子力を用いた文明が、だんだん原子力を利用できなくなって衰退していくという筋書きであり、原子力を銀河文明成立の中核とする態度を貫いている。ただし危険性にも目を向けており、第1巻では、ガンマ・アンドロメダの第5惑星で、原子力技術の継承の失敗により原子力発電所の爆発事故が起こり、数百万人が死亡し、惑星の半分が廃墟となった、という記述がある。話の前後に、銀河百科辞典第116版からの引用という形の文章が添えられることがある。これはファウンデーションが設立されて1020年後に発行されたというもので、銀河系が新しい統一国家の元、発展していることを意味している。しかしシリーズで書かれている歴史は、ファウンデーション設立のきっかけになる事態が起きてから、設立して500年が経過した頃までで、第二銀河帝国設立そのものまでは書かれていない。3部作が1966年に設けられたヒューゴー賞のベストオールタイムシリーズ部門を受賞し、第4巻『ファウンデーションの彼方へ』が1983年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞した。1996年には、第2巻の後半を占める中編「ザ・ミュール」が、1946年分のレトロヒューゴー賞を受賞している。アシモフの死後、1997年から3人の現役アメリカSF作家によって、『新銀河帝国興亡史』3部作が刊行されている。アシモフの作り上げた銀河帝国興亡史の世界をさらに深め、新たなファウンデーション世界を描き出した作品として評価も高い。同時に、旧作の矛盾点や設定上の不備も解消されるよう、巧みに構成されている。題名はハヤカワ文庫のもの。年代はアメリカで単行本が出版された年。作中の時系列は 6 → 7 → 1 → 2 → 3 → 4 → 5 の順になる。また、以下の3作が前史にあたり、「トランターもの」と呼ばれている。新銀河帝国興亡史1万2千年の長きにわたり存続してきた銀河帝国も、人知れず崩壊が始まりつつあった。誰もその事実に気づかない(あるいは認めない)中、天才数学者ハリ・セルダンは人類の未来を数学的手法で予測する「心理歴史学」により、帝国の崩壊とその後の数万年に及ぶ暗黒時代の到来を予測し、暗黒時代の短縮とより強固な第二帝国の建設のための二つの「ファウンデーション」を設立する。銀河系の最果ての惑星ターミナス(テルミナス)に置かれ、人類の知識の避難所とされた第一ファウンデーション。やがて周辺の惑星が文明の衰退により野蛮化する中、ターミナスは優れた科学技術と指導者のリーダーシップとにより、それらを次々と支配下に置いていく。さらに帝国そのものの断末魔のあがきにも似た攻撃をも退けるが、内部では富と権力の集中による民主政治体制の崩壊が生じ、内乱の危険性をはらんでいく。しかしターミナスを陥落させたのは、強大な軍事力でも内部抗争でもなく、ただひとりの人物「ミュール」であった。他者の精神に干渉する能力を持つミュータントである彼の前には、心理歴史学もファウンデーションの科学技術も無力であった。ミュールはさらに謎の第二ファウンデーションの所在地を求めて捜索を開始するが、その指導者である「第一発言者」の前に敗れ、無害化される。初めてその存在と能力の一端をのぞかせた第二ファウンデーションに対し、自らの手による銀河系支配を望むようになったターミナスは敵意を向けるが、第二ファウンデーションは再びその存在を隠すことに成功する。創立500年後には、ターミナスは銀河系の半分を支配下に収め、もはや彼らと第二帝国との間を阻むものは考えられなかった。しかし第二ファウンデーションがまだ存在して自分達を操作していると考え、その探索に旅立った議員トレヴィズは、銀河系の未来を左右する重大な決断を求められ、そしてさらなる危機に気づくことになる。物語はそこで時代を遡り、心理歴史学の完成とファウンデーション設立に尽力したセルダンの生涯、そして地球放棄と銀河帝国成立の真相と、その陰に存在した人類の庇護者「ロボット」との関わりが描かれていく。なお、『新銀河帝国興亡史』三部作もこの時期を舞台にしている。そして、物語はセルダンの老いと死を描いて幕を降ろす。時代は数万年後の未来の話で、人類は銀河系全体に進出して約2500万個の惑星に住み、人口は兆や京の単位で数えられるほどになっている。人類は銀河帝国により統治されている。超光速航法であるハイパースペース・ジャンプを用いた宇宙船や超光速通信により、各星系の交流が保たれているが、科学や技術の進歩は停滞しており、新しいものは産み出されず、機器類の保守も困難な状態になっている。原子力(本シリーズにおける原子力とは、実在の核分裂反応とは桁違いに進歩した、往年のSFによく登場した「夢の未来エネルギー」のことである)の時代から、化石燃料を使う時代にまで逆行しているところもある。人類が単一の惑星から発生したことは「起源問題」として話題になることはあるが、真相はわかっていない。名称は早川書房版の訳に基づく。第二次世界大戦の最中である1941年8月1日、アシモフは『アスタウンディング』誌編集長ジョン・W・キャンベルの元へ向かう途中、ギルバートとサリヴァンの脚本集を読んでいた。その挿し絵からヒントを得、読破していたエドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を参考にすることで、未来史ものの小説を構想した。キャンベルは、ロバート・A・ハインラインがやったように未来史の概要をまとめるよう要請するが、アシモフはそのやり方になじめず、概要もないまま11日から執筆を開始した。シリーズ最初の小説となる「ファウンデーション」は同年9月4日にキャンベルに手渡され、1942年の『アスタウンディング』誌5月号に掲載された。物語の最後では問題が解決するに違いないことを読者に匂わせながらも、解決策自体はわざと明らかにしなかったこともあり、次作が依頼された。この作品は単行本化される際、第1巻の第2部「百科辞典編纂者」として収録された。1943年には、1907年に刊行された『歴史家の世界史』24巻を借りて読んでいる。これとギボンの『ローマ帝国衰亡史』が、『ファウンデーションシリーズ』に強い影響を与えることになった。1944年春、アーノルド・J・トインビーの『歴史の研究』を借りて読み、影響を受けた結果生まれたのが、第5篇「死者の手」だった。しかし、歴史の趨勢を重視しすぎるその思想に疑問を抱いたアシモフは、徐々にトインビーから離れていく。この作品は単行本化される際、第2巻の前半に収録された。1945年1月8日、キャンベルの発案により、セルダン計画を狂わせることになる。これが第6篇「ザ・ミュール」であり、2回に分けて雑誌に掲載された後、単行本では第2巻の後半に収録された。ミュールの容姿は当時アシモフが勤めていた海軍工廠の親友のものであり、ヒロインのベイタはアシモフの妻、その夫であるトランはアシモフ本人がモデルとなっている。1947年2月2日、「今度はわかったな―」が完成する。これは第3巻の前半「ミュールによる探索」として収録される。この頃には『ファウンデーションシリーズ』を書くのに少し飽きがきており、シリーズの結末になるよう書いたものの、キャンベルが承知しなかったことで結局書き直すはめになった。3部作最後の話は1948年10月12日、キャンベルとの話し合いによって生まれた。アシモフから、それまで謎だった第二ファウンデーションの位置を明らかにすることを編集長のキャンベルに提案し、承服させた。シリーズものを読む場合、話の背景や歴史、独自の単語を知らないと話に入りこめない場合がある。一つの歴史に沿うように書かれている『ファウンデーションシリーズ』では新作を書く際、それまでの歴史や説明を入れることが必要になってきた。この作業が困難になってきたことにより、「―しかもわかっていなくもある」でシリーズを最後にした。これは1949年3月29日に完成し、1949年の『アスタウンディング」誌11月号、12月号、1950年1月号と3回に分けて掲載され、第3巻の後半「ファウンデーションによる探索」として収録された。ファウンデーションが創立してから400年足らずのところでいったん終了したシリーズは、ノーム・プレス社より1951年から1953年にかけて3巻にまとめられて単行本化された。このとき、最初の4篇をまとめた第1巻は他の巻より短かったので、新たに1篇が追加された。これが3部作の導入部となる。それまでは過去の存在としてしか描かれなかった「心理歴史学者」ハリ・セルダンがここで初めて登場した。後に版権はダブルデイ社に移行し、出版されている。1950年代半ばから、アシモフの執筆はフィクションから科学解説や歴史等のノンフィクションへと比重が移っていった。またフィクションでも『黒後家蜘蛛の会』等の推理小説やロボットものを書いており、『ファウンデーションシリーズ」の続編が書かれることはなかった。しかし読者や出版社の要望は強く、1982年に『ファウンデーションの彼方へ』が出版された。これは30年前に書かれた前作「ファウンデーションによる探索」から約1世紀後を書いたもので、アメリカで話題になった。この年は親友であるアーサー・C・クラークの続編『2010年宇宙の旅』も出版されており、同じく話題になっている。その後、ロボットものの長編小説も書かれて、他作品との融合が進む。1986年には前作の直後を描く『ファウンデーションと地球』が出版される。1988年には若い頃のハリ・セルダンを主人公にした『ファウンデーションへの序曲』が出版され、シリーズの重要な小道具である心理歴史学発展のきっかけが描かれた。さらにその続編であり、ファウンデーション創設の道程を描いた『ファウンデーションの誕生』が1993年に出版される。これはハリ・セルダンの半生を描いており、セルダンの死を綴る銀河百科辞典からの引用をもって物語は終わる。アシモフ自身も1992年4月6日に死去しており、これが最後の長編小説となった。アシモフの死後、妻のジャネット・アシモフらの要請により、1997年から『新・銀河帝国興亡史』として新たな3部作が書かれている。作品はハリ・セルダンの半生を描いており、それ以前の歴史についても新しい解釈がなされる他、ヴォルテールとジャンヌ・ダルクの模造人格が登場する。『新・銀河帝国興亡史』は3巻で完結するものの、最後にデイヴィッド・ブリンによってファウンデーション設立500年後の世界を描くための布石が打たれる。1968年に第1巻が中上守訳『銀河帝国衰亡史』として、ハヤカワSFシリーズより出版された。同じく1968年から1970年にかけて、3部作が厚木淳訳『銀河帝国の興亡』全3巻として創元推理文庫より出版された。また、1970年には第1巻が野田昌宏の訳によるジュブナイル版『滅びゆく銀河帝国』が集英社より出版されている。第4巻『ファウンデーションの彼方へ』は1984年に岡部宏之訳で早川書房から出版されており、同年には3部作が新たに岡部訳で『銀河帝国興亡史』全3巻として出版された。以後の巻は「新・銀河帝国興亡史」3部作を含めて早川書房より出版されており、全て文庫化されている。なお、この『ファウンデーションの彼方へ』は早川書房からの出版より先に、旺文社から出版されていた月刊科学誌『OMNI』の1983年1月号に『ファウンデーションの果てに』として厚木淳による部分訳が掲載されている。惑星ターミナスが資源に乏しく、科学技術を発達させることで勢力を伸ばした点が、戦後の日本と同一視されることがある(『ファウンデーション』岡部宏之訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1984年、353頁、「訳者あとがき」での訳者の見解。もっとも、執筆年代からアシモフ自身の意図はなかったはずであることも記している)が、後年のターミナスが軍事力による覇権主義に転じたことへの考察はない。眉村卓の『司政官シリーズ』の世界観は、本シリーズやトランター・ノヴェルより多大な影響を受けている。ただし、こちらは当初よりロボットが登場している。オウム真理教が、第三次世界大戦後の世界に仏法やさまざまな文明等を残すための計画「シャンバラ化計画」を仏教的ファウンデーションであるとし、ファウンデーションという言葉をアシモフの小説のように知識の避難所という意味で使用している。ハヤカワ文庫版の岡部宏之訳を元に卯月、久間月慧太郎作画で漫画版が、サイドランチから出版されている。2巻で小説1巻『ファウンデーション』分を漫画化している。「テルミナス」表記の採用など、一部、創元SF文庫版の厚木淳訳の用語も使用されている。
出典:wikipedia
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