あぶくま型護衛艦(あぶくまがたごえいかん、)は海上自衛隊に所属する護衛艦(DE)の艦級。建造費用は1隻あたり250億円(昭和61年度予算)。地方隊の中核を担うべく計画され、2008年3月の海上自衛隊部隊組織改編に伴って地方隊が廃止された後は、護衛艦隊の2桁番号護衛隊所属となり現在も第一線で活躍している。艦名は川の名前から取られている。海上自衛隊では、第1次防衛力整備計画下で整備したいすず型(34DE)が昭和60年代後半に、またその発展型として第3次防衛力整備計画下で整備したちくご型(42DE)も昭和70年代前半には除籍時期を迎えることから、日本海での作戦を考慮したDE型護衛艦の計画に着手した。まず56中業で、ゆうばり型(54DE)の発展型として、昭和58年度計画で1,600トン型3隻の建造が検討された。この58DEでは、水中放射雑音低減などのため主機関をCODOG方式からオリンパスTM3Bのみによる構成に変更するとともに、凌波性向上のため船型を長船首楼型に改正していたが、同年度は58DDGや58DDなど大型護衛艦の予算要求があったこともあって、大蔵省の査定落ちとなった。その後の昭和60年度計画では、54DEの運用実績も加味して58DEの計画を修正して、OYQ-5改級の戦術情報処理装置と個艦防空ミサイル・システムを搭載するなど装備面でも強化し、基準排水量2,200トン級で計画された。しかしPDMS搭載について、DDとの関係性の整理やシステム構成の面で海上幕僚長の了解が得られず、再検討の結果、基準排水量1,900トン、RAM近接防空ミサイルの後日装備で落ち着いた。これは内局審議で58DEとの整合性などが問題視され、61中期防に持ち越しとなった。昭和61年度計画では、海上幕僚監部内で再び2,200トン型を基本とした検討を実施し、同年度予算の他項目との関係性考慮の結果、再度1,900トン型として予算要求を実施、やっと同年度で2隻の予算が成立した。これによって建造されたのが本型である。船型は全体的にあさぎり型(58DD)に類似しており、遮浪甲板型に近い、全通上甲板を有する長船首楼型の採用やクリッパー型の艦首形状も同様である。ただし本型では、上部構造は従来通りの形状であるものの、船体の外舷には約7度の傾斜がかけられており、海上自衛隊の護衛艦としては初めて、ステルス性を意識した設計が行われている。また乗組員の居住環境向上をはかるため、従来の3段ベッドにかえて2段ベッドを採用した最初の護衛艦でもある。これらの居住性向上策の結果、基準排水量は、当初計画の1,900トンから2,050トンに大型化した。対潜戦に重要な哨戒ヘリコプターの搭載能力はないものの、後部甲板は、HIFR(飛行中のヘリコプターに対する給油)や(ヘリコプターによる補給)に対応できるアプローチスペースが備えられており、後檣には進入角水平指示灯を装備したほか、船体安定化のためフィンスタビライザー1組を装備している。主機としては、「いしかり」(52DE)以来のCODOG方式が採用されたものの、52〜55DEでは1組のCODOG機関の出力を減速機を介して両舷2軸に分配する方式であったのに対し、本型においては左右2軸に1組ずつを配する方式とされた。また機種も刷新されており、高速機としては、あさぎり型と同じくロールス・ロイス・川崎 スペイSM1Aガスタービンエンジンが搭載された。一方、巡航機としては、海上保安庁のみはし型巡視船に搭載されたのと同型の三菱S12U-MTK 4サイクル直列12気筒ディーゼルエンジンが搭載された。機関配置もあさぎり型と同様で、前部の第1機械室に左舷軸機を、後部の第2機械室に右舷軸機を収容している。ただしDDと異なり、中間区画は設定されておらず、抗堪性は最低限のものとなっている。電源としては、出力1,000 kWのガスタービン主発電機1基、500 kWのディーゼル主発電機2基、300 kWのディーゼル非常発電機1基を搭載した。ガスタービン主発電機の原動機は、第1世代DDと同じ川崎重工業M1A-02ガスタービンエンジンであり、また発電機の総出力2,300 kWは、DD型護衛艦にも比肩しうる強力なものであった。「いしかり」及びゆうばり型では重量軽減のため採用されなかったアスロック対潜ミサイルを搭載し、さらにちくご型には無かったハープーン艦対艦ミサイルを装備して、DEとしては初めてバランスの取れた対潜・対水上能力を備えた。また、やはりDEとして初めて電子攻撃機能を付与されている。ただし戦闘指揮所は戦術情報処理装置をもたない在来型であり、搭載武器システムの全能発揮上の制約となった。ちくご型と同様、アスロックの予備弾は搭載されていないので、搭載弾は、8連装発射機に装填された即応弾8発のみとなる。発射機は前後煙突間の中部甲板に設置されているが、これはやまぐも型(37DDK)以降、2000トン級以下の護衛艦にアスロックを搭載する場合の標準的な要領であった。37DDKで採用された際、艦首尾方向で相当の射界の制約があることが指摘されていたが、当時、攻撃の際には複数艦で敵潜を包囲し、各艦がソナー探知を維持しつつ円運動しながら攻撃するという「サーキュラー・アタック」と呼ばれる手法が採用されていたことから、用兵者の強い不満には至らなかった。なおソナーとしては、アメリカ・レイセオン社の中周波ソナーであるDE-1167のライセンス生産によるOQS-8を船首装備として搭載する。日本近海での使用を前提としているため、対空兵装は、前甲板の76ミリ速射砲と後甲板の高性能20mm機関砲(CIWS)のみであり、対空戦闘能力は限定的なものでしかない。76ミリ砲と艦橋の間にRAM近接防空ミサイルの搭載スペースが用意されているが、RAM装備の改装は現在のところ予定にはなく、空地となっている。また同様に、簡易型の戦術情報処理装置や曳航ソナーも後日装備予定であるが、具体的な計画には至っていない。本型は昭和61・62・平成元年度に2隻ずつ、計6隻が建造された。しかしこの時点で海幕は、DEの建造を打ち切るかわりにDDの建造を継続し、これによって護衛隊群から押し出されるはつゆき型(52DD)を地方隊(組織改編により、現在は護衛艦隊直轄護衛隊【所謂2桁護衛隊】に改編。中身は同一)に配備することで、旧型DEの更新に充当する方針とした。これは、護衛隊群は新鋭DD、地方隊はDEと旧型DDという構図を崩すことになることから、内局や政府部内からの反発も強かった。しかし護衛隊群の護衛艦の更新を継続し、質的な水準の確保をはかるためには必要な施策であることから、最終的には承認された。これによって本型の建造はそれ以上行われず、以降、DEの新造はしばらく中断した。しかし、26中期防において、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させ、先述の2桁護衛隊所属の本型及び旧型DD全て、並びに ミサイル艇の後継、さらには掃海艇をも肩代わりする構想の多機能護衛艦(DEX)の建造が予定されている。また平成24年度から27年度予算までに、のべ12隻分の艦齢延伸のための先行的部品調達予算と4隻分の改修予算が計上された。艦齢延伸措置を行い、運用期間をこれまでより5~10年程度延伸する計画を予定している。
出典:wikipedia
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