『ヴイナス戦記』(ヴイナスせんき, The Venus Wars)は、学習研究社のコミックNORAにて連載された安彦良和の漫画作品、およびこれを原作とする1989年に公開されたアニメ映画。『アリオン』『クルドの星』に続く安彦の連載漫画としての3作目。未来の金星を舞台にしたSF作品だが、後の安彦漫画に通じる歴史ドキュメンタリー風のタッチで描かれている。人類が植民した金星(ヴイナス)の二大勢力の軍事衝突を背景に、「アフロディア」の戦闘バイク部隊に志願した少年ヒロの戦いを描く第一部(ヒロ編)、終戦後の「イシュタル」の覇権争いに巻き込まれた青年士官マティウの運命を描く第二部(マティウ編)から構成されている。1989年、ヒロ編をベースにアニメ映画化された。第三部も構想されている事がコミックNORAにて発表されていたが、作者の安彦良和自身が映画化の監督にあたる事になり、そちらの作業に専念するため第二部終了時点で連載が休止され、以後再開される事がなかった。当初の設定では、金星は小惑星との「大衝突(グレート・バンプ)」により自転と公転の周期が等しくなり、(地球の月の様に)太陽に常に同じ面を向けているため見かけ上昼夜が変わらないという事になっていた。しかし後に読者の指摘で、金星は自転と公転の向きが逆であるためにこうした現象が起こり得ない事が判明、第二部とアニメ版では、非常に長い周期で昼夜が訪れる設定に変更されている。21世紀初頭。金星は小惑星(巨大氷塊)との「大衝突(グレート・バンプ)」によって環境が激変(二酸化炭素の大気が宇宙空間に吹き飛び、表面温度が下がり、氷塊が溶けて海を形成し、地軸の傾きと自転速度が変化)し、人類の生活可能な惑星となっていた。金星の植民が開始されて半世紀余り、金星は強大な軍事力を誇る“イシュタル”と肥沃な国土に恵まれた“アフロディア”の二大自治州に別れ、対立を深めていた。生きる意味を見いだせないままバイクゲームに興じていたアフロディアの少年ヒロは、軍の技術士官シムスにスカウトされる。やがてイシュタルの重戦車部隊がアフロディアに侵攻、戦闘バイク部隊“HOUND”の一員として出撃したヒロは、大きな歴史のうねりに呑み込まれていく。終戦後、イシュタルでは現執政(コンスル)レーベンドルフと軍司令ワルデマルとの覇権争いが激化する。しかし野望の男ラドーの陰謀により両者共に死亡、彼と結託したレーベンドルフ未亡人グートルーネが実権を握る。陰謀に巻き込まれ左遷された親衛隊の青年士官マティウは、軍を離れて得た仲間達と共にラドーに戦いを挑む。メカニックは原作と大いに異なる。原作ではバイクや戦車が現在の現実社会に実在するものをベースとしていたのに対し、映画では横山・小林両者による独特且つ奇異なものに変っている。バイクは競技用も戦闘用も一輪(戦闘用は低速時に収納式補助輪が出る)となり、大型戦車「タコ」はトカゲを想起させるようなものとなっている。アニメ版オリジナルの登場人物として地球から金星を訪れた若い女性ジャーナリスト・スゥ(スーザン・ソマーズ)が、地球と異なる金星の文化や風俗を視聴者に紹介するための窓口役として設定されている。アニメ版のエンディングも、スゥが再び地球から金星へと旅立つシーンで終わっている。本作では、アメリカ合衆国のアリゾナ州化石の森国立公園の砂漠地帯が金星のイメージに近いと雑誌の写真で見た安彦の希望により、同地でロケーション撮影が行われた。プロデューサーと美術スタッフが参加した5日間のロケで撮影された映像は、本編中で「戦闘バイクシミュレーター内の風景」として利用されている。作者の安彦が自ら監督を担当したが興行的には振るわず、安彦はこの作品を最後にアニメ監督を引退し専業漫画家となった。安彦は、2012年3月に地元紙に掲載された連載記事で、本作品について「もしお客がそこそこ来たらもう一本作ろうと思ってた。そしたら案の定コケてしまってかっこがつかない。不本意だけど辞めるしかなくなった」「非常に苦い作品なんでDVDとか一切出ていない。僕が『いやだ』って言うんで出ていないんです」と語っている。劇場公開3ヶ月後の1989年6月に松竹から14800円でビデオが、7月にバンダイビジュアルからレーザーディスクが5800円で発売されたが、それ以降は2016年現在までソフト化されていない。なお日本国外向けには「Venus Wars」のタイトルでリマスター版DVDやBlu-rayが販売されている。
出典:wikipedia
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