ニホンマムシ("Gloydius blomhoffii")は、有鱗目クサリヘビ科マムシ属に分類されるヘビ。単にマムシとも呼ばれる。日本(北海道、本州、四国、九州、大隅諸島、国後島)全長45 - 60センチメートル。まれに体長が1メートル近くになる。北海道産の個体は大型で、60センチメートルを超える個体が多い。伊豆大島には「赤まむし」の別名を持つ体色が赤い個体が多いと言われる。全長に比して胴が太く、体形は太短い。赤外線感知器官(頬窩、ピット器官)は明瞭。。舌は暗褐色や黒。20対前後の中央に黒い斑点のある俗に銭型とも呼ばれる楕円形の斑紋が入る。胴体中央部の斜めに列になった背面の鱗の数(体列鱗数)は21列。尾は短い。出産直後の幼蛇は全長20センチメートル、体重5グラム。幼蛇は尾の先端が橙色。毒性はハブよりも強いが、毒量は少ない。。20グラムのマウスに対する半数致死量(LD50/20g mouse)は静脈注射で19.5 - 23.7マイクログラム、(日本産の他種ではセグロウミヘビ1.7 - 2.2マイクログラム、ハブ沖縄島個体34.8マイクログラム・奄美大島個体47.8マイクログラムなど)。腹腔内投与では27 - 31マイクログラム。神経毒も含まれ斜視・複視などの症状が出現することもある。毒には様々な因子が含まれることに加え、注入された毒量・噛まれた部位によっても症状が異なる。などである。咬傷を受けると局所の疼痛、腫脹がおきる。局所の疼痛はしばらくすると収まるが、腫脹により神経が圧迫されることで腫脹部全体の疼痛が発生する。腫脹の進行は症例によって異なり手を噛まれた場合でも肩に達するのが数時間の例もあれば、2日かかった例もある。出血作用は強くないものの、血小板が凝集することで血中の血小板が減少し止血作用を失う。これに出血作用が加わることで皮下や消化管などの全身で持続性の出血が起こる。骨格筋が溶解し筋肉中のミオグロビンが血液中に流出し、ミオグロビン血症・褐色尿を引き起こす。全身の腫脹によって循環血液量が減少することで腎機能障害を引き起こす原因になったり、ミオグロビンの流出量が多いと腎臓の糸状体で詰まることで腎組織が壊死する。出血と末梢血管の膨張により血圧が下がり、ショック状態になることもある。重症化した例は大きく分けると腫脹が強く急性腎不全を起こす例か、腫脹は顕著でないものの咬傷後数時間で血小板が激減し全身性の出血・血圧低下を引き起こす例に分かれる。死亡例の多くは受傷後、3 - 4日後に集中する。重篤な場合は、呼吸不全。3 - 9日後、急性腎不全による乏尿、無尿、蛋白尿、血尿。以前は旧マムシ属"Agkistrodon"に分類され、北アメリカ大陸に分布する種と同属とされていた。ミトコンドリアDNAの分子系統解析から、北アメリカ大陸に分布する種は単系統群で東アジアに分布する種よりも同所的に分布するヤジリハブ属やガラガラヘビ属などに近縁であると推定された。そのため"Agkistrodon"属に北アメリカ大陸に分布する種を残して(アメリカマムシ属)、本種を含めた東アジアに分布する種はマムシ属"Gloydius"として分割された。1994年に対馬の個体群とされていたものは独立種ツシママムシ"G. tsusimaensis"として分割された。平地から山地の森林、藪に棲む。水場周辺に多く出現し、山間部の水田や小さな川周辺で見かけることも多い。時に田畑にも現れる。日周活動は季節や地理変異があり、例として九州の個体群は4 - 5月・10月は昼行性傾向が強く、6 - 9月は夜行性傾向が強い。危険を感じると頸部をもたげ舌を出し入れする、尾を細かく振るわせて威嚇音を出す、肛門腺から臭いを出すなどの行動を行う。樹皮が粗ければ木に登ることもあり、幼蛇は壁面を登ることもある。11 - 翌3月は冬眠し、冬眠前後の温暖な日には日光浴を行い体温を上げる。野生下ではアカネズミ・ヒミズなどの哺乳類、キビタキなどの鳥類、ニホンカナヘビ・ヒバカリなどの爬虫類、カエル類・アカハライモリなどの両生類、ウキゴリ・ニホンウナギ・ドジョウなどの魚類、ムカデ類などの節足動物を食べた例がある。共食いも行う。繁殖様式は胎生。8月下旬から9月に交尾し、メスは卵管にある腺組織(精子嚢)に精子を貯蔵する。翌年の6月にこの精子を用いて授精する(遅延授精)。妊娠期間は約90日。8 - 10月に1回に2 - 13匹の幼蛇を産む。出産間隔は2 - 3年。生後3 - 4年で成熟する。言い伝えに、「マムシは口から子供を産む。だから、子が生まれる際に牙で子が傷つかぬよう、妊娠中のマムシは牙を折るために積極的に噛みつく」といったものがある。しかし、毒蛇にとって牙は重要なもので、定期的に生え換わるようになっており、常にマムシは牙をもっている。もちろん、子が口から生まれてくるわけではないものの、他の動物全般に言えることだが、実際に妊娠中の個体は神経質になる傾向があり、「積極的に噛みつく」ということはあながちデマではない。1961 - 1962年の調査では咬傷被害数は19県で年平均2,182人で、全国では約3,000人以上が咬傷被害にあったと推定されている。咬傷被害は手への被害が多く農作業や山菜採り・キノコ狩り・草刈りなどの際の被害例が多いが、捕獲時の咬傷被害例もある。足への咬傷被害ではぞうりなどを履いていた例が多い。 咬傷を受けた場合119番通報の上、救急車の出動を要請し、安静にする。身体を激しく動かすと体液の循環が促進され、その分毒のまわりが早くなる。ただし、救命救急医らのグループによる全国調査によれば、結果的には走ってでもいち早く医療機関を受診する方が軽症で済むことが分かったという。牙跡は通常2ヶ所(1 - 4ヶ所である場合もある)で、現場で可能な処置は、咬傷部より心臓側で軽く緊縛(緊縛も後述の乱切や吸引同様、問題視されつつあり、するのであれば軽く緊縛するのが無難である)。毒蛇に咬まれた時の応急措置として「口で毒を吸い出す」と言われているが、『素人による切開・毒素の吸引は行わない』こと。咬まれた時間や状況が説明出来るように覚えておく。速やかに処置可能な医療機関でマムシ抗毒素血清投与などの治療を受ける。6時間以内の血清投与が推奨されており、少なくとも24時間は経過観察が必要。血清投与に際しては、アナフィラキシー・ショックに十分注意し投与する(また、医療機関における乱切や吸引も問題視されつつある)。血清投与後、7 - 10日して2 - 10パーセントで遅延型アレルギーを起こした場合は、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤を投与する。血清投与に関わる諸問題を回避するため、台湾に自生するタマサキツヅラフジ ("Stephaniecepharantha") から抽出されたアルカロイド系のセファランチン ("Cepharanthin") が使用される場合がある。マムシの皮を取り去り乾燥させたものを、反鼻(はんぴ)と呼び、漢方薬として滋養強壮などの目的で用いる。また、胆嚢を乾燥したものは蛇胆(じゃたん(通称じゃったん))と呼ばれ、反鼻よりも滋養強壮効果が高いとされる。反鼻や蛇胆は、栄養ドリンクなどによく使用されている。「マムシドリンク」・「赤まむし」といえば、動物生薬を使った栄養ドリンクの代表格でもある。民間療法では強精効果を目的に乾燥させた身や生の身を焼酎漬けにして飲用する場合があり、マムシ酒(まむしざけ)と呼ばれる。また、目玉は生で飲用することもある。生の身をマムシ酒にする際は、1か月ほど餌を与えずに飼ってその間に体内の排泄物を全て出させるのだが、その状態でもまだ生きている。そのため、一般にはかなり生命力のある生物と思われる事が多いが、1か月の絶食でも生きているのは変温動物であるがゆえにエネルギー消費が小さいのが原因である。ただし、この方法でマムシ酒を造る場合、アルコール濃度が低いと腐敗してしまう可能性が高い。特に体色が赤めのものは赤マムシと呼ばれ薬効が高いとされるが、成分は他の個体と変わらない。マムシ酒は薬用酒として飲用されるだけでなく打撲傷に使用される。科学的な根拠は確認されていない。日本人にとって最も身近な毒蛇であることから、渾名(あだな)に使われる場合がある。毒蛇としての印象から、クセのある、どちらかといえば粗暴もしくは陰険な人物の渾名とされることも多い(例:斎藤道三・鳥居耀蔵・栃錦清隆・杉原輝雄など)。また、たとえば毒蝮三太夫のように奇抜な芸名として用いられる場合もある。植物の名にはマムシグサがある。これは茎のまだら模様がマムシに似ていることが由来である。また、関西では料理において鰻丼のことを「まむし」、あるいはウナギの釜飯をまむし釜飯と言うことがあるが、呼び名の由来は本種とは無関係である。(「鰻飯(まんめし)」のなまりという説や、飯の間に挟んで蒸すため「間蒸し(まむし)」という説などがある)
出典:wikipedia
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