『江戸川乱歩の美女シリーズ』(えどがわらんぽのびじょシリーズ)は、テレビ朝日系の2時間ドラマ「土曜ワイド劇場」(土曜日21:00 - 22:51)で1977年から1994年までの17年間放送されたテレビドラマシリーズ。従来テレビでは子供向け作品の映像化が多かった江戸川乱歩作品を大人向け作品に絞って映像化し、現代風にアレンジした。短編原作ものをはじめ、ほとんど原作の影をとどめていないオリジナル脚本同然の作品も少なくない。トップ女優の官能的な演技とヌード、中盤でのカーチェイス、物語終盤に死亡したかと思われていた名探偵・明智小五郎が、別人物に成りすまして登場し、犯人の前で変装を解く場面、悲劇的なラストシーンが恒例となっている。ベテラン監督・井上梅次が大部分を手がけ、明智にカメラへ向けて語らせる、エンディングクレジットを中断してエピローグを挿入する、登場人物がBGMを指図する、ラストシーンを完全無音のままエンディングタイトルを流し始めるなど、自由奔放な演出の数々は今なお人気が高い。また、音楽は全作品とも鏑木創が担当しているが、有名なテーマ曲は第6作の「妖精の美女」より使用されている。製作は松竹だが、初期脚本を担当した宮川一郎をあわせ、監督、明智役、第一作主演女優が新東宝出身者であり、同社末期のモダニズムとキッチュ感が混合したような独自の雰囲気も再現されている。天知茂が明智に扮して1977年から死去する1985年まで25作品が制作され、その後、北大路欣也が2代目明智に扮し1986年から1990年まで6作品、西郷輝彦が3代目明智に扮し1992年と1994年に2作品が制作されており、作品数は全33作を数える。天知主演25作品と北大路主演の6作品はフィルム撮影のテロップ打ち込み式(第6作はフィルム撮影のVTR編集)だが、西郷主演の2作品はVTR撮影である。天知茂主演の25作品が「江戸川乱歩シリーズ」としてDVD化されているほか、2009年1月7日には北大路欣也主演、西郷輝彦主演の8作品をまとめたDVDボックスが発売された。2015年6月24日に「江戸川乱歩の美女シリーズ」のBlu-ray BOXが、江戸川乱歩没後50年、天知茂没後30年企画としてキングレコードから発売されることが松竹より発表された。(天知茂が明智小五郎を演じた全25作品を、Blu-rayDISCに13枚組で収録)シリーズのお約束である、クライマックスで明智が変装を解いて謎ときをするシーンは、第一作『氷柱の美女』の脚本には書かれておらず、井上梅次監督が現場で思いついて採用したアイディアであった。『氷柱の美女』の脚本におけるクライマックスでは、明智が簡単に犯人の前に現れて謎ときをするのだが、それでは面白くないと考えた井上監督が効果的な演出を考えた結果、現場で思いついて演出したのが「犯人が鏡に向って仮面をとると、その鏡の中に脱いだはずの吸血鬼の仮面が映る。びっくりして振向くと、もう一人の吸血鬼がゆっくり仮面をとり、明智探偵の顔が現れる」というシーンだった。この趣向は井上監督も大いに自信をもち、以降は明智が変装を解いて謎ときをするシーンがシリーズにおける定番として決まって取り入れられるようになった。シリーズの中で定着していった変装を解くパターンは次のような順である。となる。また、井上梅次監督はシリーズ名物の入浴シーンについて以下のように述懐している。「(二時間ドラマを演出する際には)五十五分から一時間五分までの間にはコマーシャルを入れずに、面白いシーンをここにはめるように計算する。(裏番組の)一時間番組では五十五分ごろにドラマが終わりコマーシャルが始まる。そのドラマを見ていた視聴者は、チャンネルをひねって他局の面白い番組を捜すのだ。二時間番組ではここで集まってくる視聴者を逃さないように、興味しんしんのシーンをぶつける。たとえば浴室の美女に忍び寄る謎の影……といった映像が出てくると、いっきに視聴率が高まってくる。」こうした二時間ドラマにおける時間の変わり目で視聴者をつなぎとめる手段として井上監督は、「ヒッチコックの『サイコ』の浴室惨殺シーンからヒントを得て、必ずヌードを出すことにした。」と語っている。しかし女優のヌードを撮影するに際しては、女優のほとんど全員はそう簡単にヌードを了承することはなく、説得から撮影に至るまで監督は常に多大な苦労と恐怖にさいなまれた。以下は「美女シリーズ」を始めとした映画・テレビドラマにおけるヌードの撮影に関する井上梅次監督の述懐である。「(ヌード・シーンの撮影は)監督が望んでいるという口実でプロデューサーが交渉し、後は監督と女優の直談判に任されてしまうから、監督にとっては大変苦労の多い仕事である。(中略)女優は半分肯定し、半分否定しながら現場に臨むのだから、ちょっとしたことで心証を害して、「いや!……」と言われればそれで終わりになってしまう。(中略)監督は脱がすまでに熱っぽく状況説明をして、なぜこのシーンが必要であるか、ここに賭けた意気込みを女優に感じさせるテクニックが必要である。そして芸術的な雰囲気をさらに高揚させて少しずつ、芝居の中で脱がしてゆくのだ。こうして有名女優が乳房を見せても、スタッフは好奇のまなざしを隠し、無関心をよそおって黙々と仕事を続けなければならない。「カット!」の声が掛かると、付き人または監督自らその裸体に衣装を着せて、芝居から解放されたときの羞恥心を少なくする配慮も必要である。どこでゴネられるか、どこで拒否されるか、こんな恐怖におびえながら、ただただ監督は仕事に没入したフリをしてゆく。細かく気を配りながら執拗に脱がしてゆくテクニックは、なかなか新人監督には難しいことであるが、どんなテクニックよりも、監督のそのシーンに賭けた情熱が一番効果があることは確かである。」ニヒルで渋い天知でしか着こなせないような柄のスーツやジャケット、コート類は、当時天知プロ所属で7作品に出演している岡部征純によれば、それらは皆、天知の私物だったということである。捜査中と変装を解いた後、また場面に応じてと一話につき数着使用されるのが通例である。全身タイツを脱ぎ捨てると皺一つないりゅうとしたスーツ姿が現れるという例もある。当然、井上梅次作品である。「美女シリーズ」とは別に「土曜ワイド劇場」では江戸川乱歩原作の作品を制作している。
出典:wikipedia
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