ベクトル積()とは、ベクトル解析において、3次元の向き付けられた内積空間において定義される、2つのベクトルから新たなベクトルを与える二項演算である。2つのベクトル a、b のベクトル積は a×b や [a,b] で表される。演算の記号からクロス積()と呼ばれることもある。2つのベクトルからスカラーを与える二項演算である内積に対して外積(がいせき)とも呼ばれるが、英語では直積を意味するので注意を要する。ベクトル積を拡張した外積代数があり、ベクトル積はその3次元における特殊な場合である。3次元の向き付けられたベクトル空間におけるベクトル積 [ · , · ] は、任意のベクトル v に対して内積 ( · , · ) との間にの関係を満たすベクトルの二項演算である。ここで 〈 · , · , · 〉 はベクトルを標準的な基底により列ベクトルと同一視することで得られる3次正方行列である。det は行列式を表す。標準的な基底を (e,e)="δ" として、ベクトル a の成分 "a"=(e,a) により列ベクトルとの同一視を行う。ベクトル a、b のベクトル積 [a,b] はあるいはとなる。以上のことを形式的にと表現することもある。エディントンのイプシロン "ε" を用いるとである。行列式の多重線型性から、ベクトル積も双線型性である。任意のベクトルに a、b、c とスカラー "k"、"l" に対してが成り立つ。特に "k"="l"=0 であればである。内積(スカラー積)の場合は零ベクトルとの積はスカラーのゼロであるが、ベクトル積の場合は零ベクトルであることに注意が必要。行列式の交代性から、ベクトル積も交代性をもつ。任意のベクトル a、b に対してが成り立つ。特に、自分自身とのベクトル積はであり恒等的に零ベクトルである。(複零性)内積の性質と異なることに注意が必要。ベクトル積による演算結果はベクトルなので、別のベクトルとのベクトル積を考えることができる。3つのベクトルのベクトル積はベクトル三重積と呼ばれている。ベクトル三重積はとなる。3つのスカラーの積と異なり、ベクトル三重積では一般にであり、結合法則が成り立たない。ベクトル積では結合法則に代わっての関係式が成り立つ。これを変形すればが得られ、ヤコビ恒等式と呼ばれている。ベクトル三重積:formula_1ベクトルformula_2とベクトルformula_3の外積であるから、これはベクトルである。その"x" 成分は同様にして、"y" 成分、"z" 成分は、ゆえに、ベクトル積は幾何学的なベクトルに対する演算と解釈することで、図形的な理解が可能となる。行列式の交代性からである。従って、2つのベクトル a、b のベクトル積 a×b は、元のベクトル a、b の両方と直交する。言い換えれば、2つのベクトルが作る平面の法線と平行な方向を向いている。ただし、法線のどちらの方向に向いているかは座標軸の選び方に依存し、右手系と左手系に分けられる。右手系の場合は、a をその始点の周りに180度以下の回転角で回して b に重ねるときに右ねじの進む方向である。すなわち、右手の親指を a、人差し指をb としたときの中指がベクトル積 a×b の向きを表す。左手系の場合は、b をその始点の周りに180度以下の回転角で回して a に重ねるときに右ねじの進む向きである。行列式とスカラー積の線型性からベクトル積も双線型性をもつ。特に、2つのベクトル a、b のベクトル積 a×b は、元のベクトル a、b の大きさに比例する。また、二つのベクトル a、b のなす角を "θ" とすれば、標準的な基底の下でと成分表示することができる。これらのベクトル積はとなる。従って、ベクトル積の大きさはであり、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積に等しい。行列式による定義を拡張して、"n" 次元ベクトル空間における "n" - 1 項演算としてのベクトル積がを定義できる。完全反対称行列を用いればepsilon_{i,j_1,ldots,j_{n-1}} a_1^{j_1} cdots a_{n-1}^{j_{n-1}}となる。例えば、2次元のベクトル空間では単項演算としてとなり、4次元ではそれぞれ三項演算としてとなる。また、1次元では定数 1 となる。3次元のクロス積は、4元数(formula_8)のベクトル成分(formula_9 の部分)の乗算のベクトル成分で定義できる。ちなみに、スカラー成分を符号反転した formula_11 は内積になっている。3次元のクロス積はハミルトンの4元数の概念をもとにして、ウィラード・ギブズとオリヴァー・ヘヴィサイドがそれぞれ独立に、ドット積と対になる数学的概念として考案した。これを多元数に拡張すると、"n" + 1 元数の乗算から "n" 次元でのクロス積を定義できる。つまり、実数(1元数)、複素数(2元数)、4元数、8元数の乗算から、0次元、1次元、3次元、7次元でのクロス積が定義できる(要素数が多くなるため縦ベクトルで表す)。これら以外の次元では、必要な対称性を持つ乗算が定義できないため(これはアドルフ・フルヴィッツによって証明された)、クロス積は定義できない。また、0次元では自明なことを確認できるにすぎず、1次元のクロス積は常に零ベクトルである。クロス積は、直積を使ってと定義できる。ただしここで、反対称テンソルと擬ベクトルを等価としたが、これをホッジ作用素で写像として明示するとと書ける。(*)式はそのまま、一般次元での定義に使える。ただし、これで定義できる積は、クロス積ではなく外積と呼び、で表す。外積は3次元ではクロス積に一致するが、同義語ではないので注意が必要である。外積は2階の反対称テンソルであり、これはホッジ作用素により、"n" 次元では "n" - 2 階の擬テンソルに写像できる。つまり、2次元では擬スカラー(0階の擬テンソル)、3次元では擬ベクトル(1階の擬テンソル)に写像できるが、4次元以上ではテンソルとして扱うしかない。外積(ドイツ語でäußeres Produkt)は、グラスマンによって導入されたが、当時はそれほど注目されず、彼の死後に高く評価された。
出典:wikipedia
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