民間軍事会社(みんかんぐんじがいしゃ)とは、直接戦闘、要人警護や施設、車列などの警備、軍事教育、兵站などの軍事的サービスを行う企業であり、新しい形態の傭兵組織である。PMC(private military company または private military contractor)、PMF(private military firm)、PSC(private security company または private security contractor)などと様々な略称で呼ばれるが、2008年9月17日にスイス・モントルーで採択されたモントルー文書で規定されたPMSC(private military and security company、複数形はPMSCs) が公的な略称である。1980年代末期から1990年代にかけて誕生し、2000年代の「対テロ戦争」で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の軍需産業と定義されつつある。主な業務としては軍隊や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した社員を派遣しての警備・戦闘業務に加え、兵站・整備・訓練など旧来型の傭兵と異なり提供するサービスは多岐に渡る。軍の増派がたびたび政治問題化していることや、より多くの兵士を最前線に送るために後方支援や警備活動の民間委託が進んだこと、民間軍事会社の社員の死者は公式な戦死者に含まれない等の理由がその背景にある。イラクやアフガニスタンでは、従来であれば正規軍の二線級部隊が行ってきた警備や兵站、情報収集など後方業務を外注する民間組織として正規軍の後方を支える役目を担い、多い時で約26万人の民間人が米国政府の業務に関わった。その一方で軍人、民間人、傭兵のどれにも当てはまらない非常に曖昧な存在であることや、需要が増大し急速に規模が拡大したため、管理が行き届かず多くの不祥事(2007年にブラックウォーター社が引き起こした民間人虐殺事件など)を起こした事などが問題になっている。また、2004年3月に、PMSCsコントラクターが民衆に惨殺され、町を引きずり回された後に焼却、橋に吊るされるという事件が発生。これが原因となりファルージャで多国籍軍と武装勢力が軍事衝突し、4月と11月の戦闘を合わせて多国籍軍側100人以上、武装勢力と民間人にそれぞれ1000人以上の死者が出た。2008年9月、スイスの国際会議においてアメリカや欧州諸国、中国、イラク、アフガニスタンなど17カ国は民間軍事会社に国際法を順守させるため、各国に対して適切な監督・免許制度の導入、採用時の審査の厳格化、戦時の民間人保護を規定した国際人道法や人権法に関する社員教育の強化など適切な監督を求める具体的な指針を盛り込んだモントルー文書を採択した。日本では民間軍事会社、民間軍事請負企業、民間警備会社などと呼称される。民間軍事会社を示す英語での正式な名称が決まったのは2008年9月17日にスイス・モントルーで採択されたモントルー文書でPMSC (private military and security company)(およびその複数形のPMSCs (… companies))の略語が使用されてからである。民間軍事会社で働く戦闘要員はプライベート・オペレーターやコントラクター(contractor 請負人、契約者)と呼ばれる。正式名称が決定される前は、民間軍事会社について報道機関や文献によって異なる名称が使用されており、PMC(private military company または private military contractor)、PMF(private military firms)、PSC(private security company または private security contractor)とさまざまだったが、モントルー指針にならいアメリカ国防総省や民間軍事会社の管理組織であるIPOAやBAPSCもPMSCの語を使用していることから、現在ではPMSCが正式名称となっている。国際政治学者のP・W・シンガーは『戦争請負会社』(邦訳版:日本放送出版協会 (2004/12)原著:Cornell University Press (July 2003))でPMFと表記し、2004年のイラク国内で活動する民間軍事会社の各種ライセンスに関する規定と、武器を使用するルールや手順を定めている「CAP oder 17」ではPSCと明記され、ブラックウォーターUSA社が起こした事件に関する公聴会では、質問側がPMCを使用したのに対し、ブラックウォーター社側はPSCと答えている。private security company (PSC) は、直訳すると民間保安会社(民間警備会社)となり、民間軍事会社と違い、単なる戦争屋や傭兵集団といった悪いイメージよりも、警備や安全提供などといった良いイメージをされやすくなるため、民間軍事会社側は公式文章やCM、ウェブサイトなどでPSCを用いることが多い(ただし、古い文献では、民間軍事会社側もPMCと呼称していることが多い)。また、軍隊の民営化に肯定的な意見を持つ者も、PSCを使用する傾向にある。逆に、民間軍事会社に批判的な記事や、古い文献、映画やゲームなどではPMC、PMFが用いられることが多い。1995年のNHKのテレビ番組では、民間軍事会社の社長は「コントラクター」に相当する人間を「guards(警備員)」と呼び、NHKも「民間の警備会社」や「警備員」と訳している。第二次世界大戦後からダインコープやSAS創始者のデビッド・スターリングが経営するウォッチガード・セキュリティといった企業が間接的な軍事サービスを行い、コンゴ動乱やローデシア紛争などでは傭兵が戦闘や護衛にも関わっていたが、1991年のソ連崩壊に伴う冷戦の終結により、アメリカ合衆国を中心とした各国は肥大化した軍事費と兵員の削減を開始し、数多くの退役軍人を生み出した。冷戦終結以降の世界では超大国同士がぶつかりあう大規模な戦闘の可能性は大幅に少なくなったものの、テロリズムや小国における内戦、民族紛争など小規模な戦闘や特定の敵国が断定できない非対称戦争が頻発化した。優秀な軍歴保持者は有り余り、軍事予算の大幅な削減に伴い軍隊のコスト面での効率化が求められ、そして小規模の紛争が頻発する。この3つの要素が民間軍事会社を生み出す土壌を与える事となった。まさに戦争のアウトソーシングである。こうして、民間軍事会社の元祖とも言える「エグゼクティブ・アウトカムズ」が誕生し、既存の軍関連会社も次々と民間軍事会社化していった。1989年に南アフリカ共和国で誕生したエグゼクティブ・アウトカムズ(Executive Outcomes,略称EO)社は、フレデリック・ウィレム・デクラークやネルソン・マンデラ政権下で行われたアパルトヘイト政策の廃止や軍縮によって職を失った兵士を雇用することで、優秀な社員を多数有する会社となった。特に第32大隊などの精鋭部隊に所属していた黒人兵士を多く雇用していたが、彼らはアンゴラ内戦で家族や財産を失い、逃げ延びた先の南アフリカでは白人達に周辺国への軍事介入や同じ黒人の弾圧に動員され、アパルトヘイト廃止後行き場を失った者達だった(EO社の解体後はポムフレットなど辺境の町で貧しく暮らしている)。EO社はアンゴラ内戦中の1993年にアンゴラ政府と契約を結び、正規軍の訓練と直接戦闘を実行。結果アンゴラ全面独立民族同盟に壊滅的被害を与えることに成功し、20年続いた内戦をわずか1年で終結させた。その後、国際社会の圧力でアンゴラ政府はEO社との契約を打ち切り、国連が平和維持を行うことになったが平和維持部隊は任務に失敗し、アンゴラは内戦に逆戻りした。また、シエラレオネ内戦では、残虐な行動と少年兵を利用することで知られた反政府勢力革命統一戦線(RUF)の攻勢で、先に展開したグルカ・セキュリティー・サービス社はロバート・C・マッケンジーを捕食されるなど大きな被害を出し撤退、首都フリータウンも陥落寸前の状態であったが、EO社はわずか300人の部隊でRUFに壊滅的被害を与え、RUFが占拠していたダイヤモンド鉱山を奪還することで和平交渉の席に着かせることに成功した。しかし、こちらもアンゴラと同様に内戦に逆戻りした。EO社は次第に肥大化し、戦闘機、攻撃機、攻撃ヘリコプターなどの航空兵器や、戦車、歩兵戦闘車のような強力な陸上兵器、負傷者輸送用のボーイング707なども運用するようになったが、危機感を抱いた南アフリカ政府によって1998年に解体された。しかし、内戦の戦局をも変えてしまう民間軍事会社の登場は世界に衝撃を与えた。1990年代に登場した民間軍事会社は、その後急速に業務を拡大していき、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降からはイラクやアフガニスタンでの活動が注目を集めるようになった。しかし、急速な組織拡大から法規の作成が追いつかず、管理する法律も組織も無い無法状態が続いたため、殺人や虐待など数々の不祥事を起こしてきた。2001年にはアメリカで民間軍事会社の管理組織であるが発足、2006年にはイギリスでアメリカとは異なる民間軍事会社管理組織であるBritish Association Of Private Security Companiesが発足した。イギリスの場合はアメリカよりも非常に厳格で、民間軍事会社にISOやBSの取得を義務付けておりプレゼンテーションにおいてもイギリスの民間軍事会社はアメリカのそれとは違うことを強調している。イラクにおける管理組織は連合国暫定当局が行ってきたが解体にともない2004年8月に連合国暫定当局から分離したNPO法人としてが発足した。イラクでは連合国暫定当局が最後に発行したという規定に基づいて行動していたが、この規定は大変に問題のあるもので、民間軍事会社はイラクの法律に従う必要が無く、あらゆる免責特権を認め、税金も免除するなど民間軍事会社を完全に治外法権化する物であった。2007年9月にはブラックウォーターUSAのコントラクターがイラクで輸送部隊の護衛中に市中で無差別発砲を行いイラク人を17人射殺するという事件が起きると、イラク政府も厳しい措置を取らざるを得なくなり、2009年1月1日でCPA Order17の無効を宣言し、民間軍事会社から免責特権を剥奪した。これ以降、民間軍事会社はイラクの国内法に従う義務が生じPrivate Security Company Association OF Iraqは2009年現在は実質的に活動していない。このような無法状態を改善しようとする動きもあり、2008年9月17日にスイスのモントルーで17ヶ国によって採択されたモントルー文書で初めて国際的な規制が出来た。指針であり条約ではないため、国際法としての拘束力は無いが、新たな条約締結へ向けた活動が行われている。イラク戦争後、民間軍事会社は各地の小規模紛争に派遣されるようになった。リビア内戦においては、イスラエルのグローバルCSTが主にアフリカ系からなる警備要員や東欧・中東系の戦闘機パイロットなど多数のオペレーターを派遣して非武装市民への殺傷を含む過剰な業務を行い、シリア騒乱では、アメリカの民間軍事会社が自由シリア軍など反アサド派を訓練するためにトルコで活動していた。また2014年以降の騒乱下にあるウクライナにおいても西欧の民間軍事会社の要員らしき外国人が多数確認されたという証言がある。民間軍事会社は、それまでの傭兵が担っていた直接戦闘行為に特化した戦闘集団ではなく、兵站・整備・訓練・教育・戦闘に関するアドバイスも行い、従来の“戦争の犬たち”(フレデリック・フォーサイスの同名の小説より)と揶揄される荒くれ者、無法者が集まる「血に飢えた戦闘集団」というイメージと一線を画すよう努めている。国際政治学者のP・W・シンガーは三分類しているが、多様化する民間軍事会社の業務はそれ以外にも多岐にわたっている。民間軍事会社が連隊や大隊などの正規軍のような、戦術単位での部隊を編成することは無く、他国の正規軍との直接戦闘は行わない。主に民間軍事会社が戦う相手は軍人ではなく、テロリストやゲリラなど警察では手に負えない「犯罪者」とされる相手であり、会社の装備も戦車や戦闘機などは保有しておらず、従来の傭兵よりも重装備化した警備員に近い形態が多い一方、MiG-27、MiG-23、Su-25といった戦闘機、攻撃機やMi-24攻撃ヘリコプター、BMP-2歩兵戦闘車といった装備を運用(契約国が保有していたものを借用する場合もある)していたエグゼクティブ・アウトカムズ社のような例もある。特定の政府組織や国と契約を結び、戦闘を専門とする実戦部隊を派遣し、その国の地下資源の供給地となる施設の警備、また軍の後方兵站輸送部隊の警護や要人警護、国連、NGO職員、観光客や報道陣が特定の危険地域を通過する際の護衛任務なども担っている。イラクとアフガニスタンではアメリカの国防総省だけでなく国務省からも多くの仕事を請けており、アメリカ軍に国務省職員の警護にまで人員を割く余裕が無いため、イラクとアフガニスタンに展開している国務省職員の警護の大半を民間軍事企業が受け持っている。自動小銃や携帯対戦車兵器など軽装歩兵と同等の装備を持つゲリラやテロリストの襲撃が予想される地域での警備においては拳銃や警棒を持った軽装な警備員は役に立たない。このような地域を移動する場合にはガントラックなどの簡易装甲車に軽機関銃をすえつけて常に周囲に銃口を向けて威嚇しながら移動することで、敵の襲撃意思そのものを削いで襲撃を断念させることで安全を確保するような警護体制がとられる。また、道路を頻繁にパトロールすることで爆発物の設置を断念させる業務も受け持っている。このように基本的には敵に襲撃を断念させる状況を作り出すことが主目的であり、直接の戦闘行為は最後の手段である。近年、アメリカ軍とCIAはパキスタンでMQ-1 プレデターやMQ-9 リーパーといった武装無人機による空爆を行っているが、この空爆の目標となるテロリストの捜索に民間軍事会社が使用されている。これは冷戦終結後にCIAの人員削減が行われたことで対テロ戦が活発化した現在人員不足に陥っていることや、コストの安さ、作戦が失敗した場合に政府の責任が問われないといった理由がある。また、無人機の操縦に関しても民間会社の社員が担当する場合があるが、攻撃に関しては交戦規定の関係で兵士が行っている。このような警備やその結果としての戦闘に従事する民間軍事会社のコントラクターらは、ジュネーヴ条約で「傭兵」として扱われないために、正規軍の兵士のような軍服を着用することはめったにない。このため民間人に近い服装の上に、ボディアーマーや銃器を装備をした「PMC装備」と呼ばれる独特の外見が特徴である。(正規軍でも特殊部隊の隊員や情報部員などが、このような格好をすることがある)戦争はその戦闘力を維持するための兵站や兵器の整備といった後方支援も重要である。以前は軍で行っていた司令部の設営や兵器の整備などの業務を代わって担うのがこのタイプの民間軍事会社である。傭兵というよりは中世時代の酒保商人のような仕事をしていると言える。具体的な内容としては、以下の3つが挙げられる。兵士の宿舎設営に始まり、食事を中心とする日常の生活に必要とされるサービスの提供、及び基地内のショッピングモールの運営。陸路・海路・空路とその輸送手段は幅広い。イラク戦争においてもクウェートからイラクまでの物資の輸送は主にこれらの民間軍事会社が受け持っている。主に陸路によるコンボイ輸送をIED即席爆弾・路上爆弾や武装勢力の襲撃などの数多くの危険を伴いながら業務を遂行。米本土から高収入に惹かれて数多くの一般人がこの業務に従事し昨今では業務中での負傷や業務災害に関する訴訟が頻発している。また、ヘリコプターや飛行機などの航空機による輸送では地上から銃撃される可能性を前提とした運行となり、荷物にパラシュートをつけて空中投下など一般の荷役業務では認められない運搬方法も行うため、一般の航空会社ではとても扱えない。そのためブラックウォーターエアシップなどの民間軍事会社の系列となる航空会社が業務を請け負っている。兵器のハイテク化に伴い、その運用もハードウェア、ソフトウェア共に複雑化しており軍隊だけでその運用方法の教育を実施することが困難となってきている。こうしたハイテク兵器の運用・保守点検は当該兵器の開発企業が受け持っていたが、軍事上問題のない部分や高度な技術を要しない部分については開発企業以外にも直接外注化され、これを請け負う専門の民間軍事企業が現れている。主に、将官・佐官クラスの退役軍人が運営する民間軍事会社。戦闘作戦における戦術・心理戦などのアドバイスや現在イラクにおいて進んでいるイラク政府への権限委譲で不可欠な国軍の訓練プログラムなどを受け持つ民間の軍事顧問といえる。これらの企業は実際戦争が起きている地域や国だけでなく、自国本土においても軍事訓練に関するプログラムを実施しており、戦場に派遣される前の民間軍事会社所属の社員の教育も実施している。近年は上記のサービスに加え、Xe社やクロアチアの嵐作戦を指揮したといわれるMPRI社などのように、イラクやアフガニスタンでの経験を元に、新たな兵器や既存兵器のアップグレード・キットを開発し、販売する動きも頻繁になってきている。イラクでビジネスや取材などの活動を行うために民間軍事会社であるG4Sが入国手続き、警備、宿泊施設の提供などを行っている。2010年6月には日本でもG4Sがイラクビジネスセミナーを開いて民間軍事会社による入国手続きや移動時の警備、宿泊施設の提供などについて説明している。自国で軍隊を創設し維持し、運用するには莫大な費用がかかり、使用する兵器もどんどん複雑化、高額化している。また軍事費での一番の比率を占める人件費は正に軍事費削減の一番のキーである。少ない兵力を運用する上ではいかなる時でも即座に対応できる民間軍事会社のフットワークの軽さは大変魅力である。民間軍事会社所属の社員が正式な戦死者数としてカウントされないことも、軍にとって無視できない利点である。ベトナム戦争に代表されるように戦争を継続する上での最大の懸念は自国兵士の想定以上の被害数であり、このことは世論の戦争に対する支持率を大きく左右し、民主主義国家にとってはより重要な要素である。民間軍事企業に所属する社員は軍の公式の戦死者リストや負傷者リストにカウントされないため、戦争における人的被害者数を数値上少なくできる。民間軍事企業関連の人間がイラクにどのくらいいるのかは軍の上層部でも正確な数は把握していないのが現状である。軍と共に作戦行動を共にすることが多いにも拘わらず、社員らの戦争犯罪に関しては軍の法令を適用できず、正規兵と比べ処罰が軽すぎることが問題となっている(戦争犯罪の加害社員にとっては利点となる)。主な事例としては、キューバのグアンタナモ刑務所におけるイラク人捕虜の虐待では実際に虐待行為に参加した米軍兵士は軍法会議で厳しい判決を受けるも、刑務所を運営していたタイタン社所属の社員は比較的軽い処分で処理された。また、コソボ紛争では民間軍事企業所属の社員が地元の少女2人をレイプし、その様子をビデオカメラに収めるという行為にも拘わらず、同じく軽い処分で済まされた。そしてイラク戦争において、民間人を無差別に銃撃して「テロリスト相手の正当防衛」と偽証したブラックウォーター社社員に対しても、これといった処罰は行なわれなかった。近年では民間軍事企業に所属する将官クラスの退役軍人による優秀な人材のヘッドハンティングが大きな問題となっている。国を守る為の人材として国の多額の税金を費やして教育された特殊部隊員や空軍パイロットなどの優秀な人材が30代の一番脂の乗り切った時期に数多く民間軍事会社に引き抜かれてしまうのである。また、部隊の運用に無理解な上層部に愛想を尽かした現役軍人達が、経験者である退役軍人が経営する民間軍事会社に『転職』することも多い。戦傷によって肉体的・精神的に障害を負って勤務できなくなった場合、正規の軍人であれば勲章を授与され、傷痍軍人として恩給や廃兵院など、福利厚生を利用する権利が国から与えられるが、民間軍事会社の社員の場合、公式の戦傷者として認定されないために上記の権利が与えられず、「使い捨て」にされる可能性がある(「使い捨て」で安くすむ側にとってはメリット)。当然、死亡しても公式には戦死者として認定されないため、遺族に国から弔慰金が支給されることは無い。単なる業務災害、事故死である。アメリカ軍を始め先進民主主義国の軍隊では戦友は絶対に見捨てないという意識が確立しており、付加価値の低い兵士数名であっても多額の経費をかけてでも救助を行う。また先進国の軍隊では救助専門の部隊がいるのが普通である。これは兵士自身も守るべき国民の一部であり、兵士を見捨てないことは士気を維持する上で絶対に必要なことでもある。しかし、民間軍事会社の場合、十分な支援の受けられない可能性がある(露骨な背信行為があれば、社員同士の不和や不信感より組織として瓦解する危険性もあるため、悪質に見捨てることは少ないとしても)。また、負傷した場合にも正規の軍であれば、衛生兵が応急処置を行い後送して軍医の治療を受けられるなどのシステムが確立しているが、民間軍事会社の場合にはこのような救急医療システムが整備されているとは言い難く、負傷した場合の救護が十分に受けられない可能性がある。民間軍事会社の兵士がいくら高給であるといっても、これは福利厚生がないことや十分な救助が受けられない可能性の代価にすぎない。傭兵である彼らはあくまで金銭目的のビジネスマンであって、国家への“忠誠”に必ずしも縛られていない。ゆえに高度な軍機への接触、またそれらを用いた任務には就かせられない。常に懸念される寝返りの恐れ(とはいえ、契約に際して必要不可欠な「信頼関係」を決定的に損なうため裏切り・離反の可能性は少ないともいわれる)、忠誠心の低さは、中世の傭兵以来基本的に変わることはない。パプアニューギニアでは、において、政府が同国のよりも民間軍事会社のを重用したため、国軍によるクーデターが発生している。1991年の湾岸戦争時には全兵士における民間軍事会社社員の比率は100:1と言われていたが、2003年のイラク戦争時はおよそ10:1と言われている。イラクに駐留する民間軍事会社の人員は、一説にはアメリカ人が3千人から5千人。イギリスなどのヨーロッパ人や南アフリカ人では7千人から1万人。貧困国の出身者では1万5千人から2万人。イラク現地で雇用された者が2万5千人から3万人と言われている。また、受注した会社がさらに他の会社に仕事を丸投げしたり再発注しており、イラクに駐留する民間軍事会社の正確な社員数を把握する事の障害にもなっている。1994年のルワンダ紛争においてはエグゼクティブ・アウトカムズ社はいつでも1500人規模の部隊を展開出来る準備を整えていた。(これはアフガニスタン侵攻時のアメリカ海兵隊の先行侵攻部隊と同規模である。)ちなみに作戦期間は4週間を計画しており、1日あたりの費用はおよそ60万ドル。(国連など、依頼する組織が無かったため実現されず。)アメリカ人やイギリス人など欧米圏の社員を雇用する際には、正規軍の兵士(特にデルタフォースやDEVGRUといった有名特殊部隊に所属する元兵士を優遇する)を雇用することが主体であるが、社内の基準を満たしていれば(厳格な選抜試験を受けさせる会社もあれば、契約書にサインすれば誰でも入れる会社もある)、警察官や軍隊経験のない一般市民を雇用することもある。先進国の人員だけを雇用して警備などをしては、限られた人件費が高騰することや素早く効率的に人材を供給できないという事情から、フィジー、ネパール、フィリピン、コロンビアなどの、近年まで内戦や紛争状態にあり、実戦経験者が豊富な貧困国から元兵士が送られている割合が多い。アメリカのブラックウォーター社においては貧困国の出身者が警備要員の4割、「トリプル・キャノピー社」に至っては8割を占めている。トリプル・キャノピー社は設立当初実態のない会社でありながらも大型契約を取得し、チリ人やフィジー人と少数のアメリカ人を雇って、イラク全土にある13ヶ所の連合暫定施政当局に1000人もの警備員を派遣した。また、イラク現地では多くのイラク人が雇用されている。G4Sの場合は英国人2名にイラク人6人で身辺警護小隊を編成しており、欧米人の将校下士官に現地人の兵士という構成が取られている。このような雇用方式は「エリニュス社」や「アーマー・グループ」など、他の英国系民間軍事会社でも用いられる方針である。イラク人は警備員だけではなく、空港の荷物チェック係といった非戦闘員としても雇用されている。元有名特殊部隊所属の肩書きを持つ人材は1日で1000ドル程度の収入が見込めるが、ネパールのグルカ兵が民間軍事会社で働いた場合の給料は月給1000ドル程度である。ただ、ネパールの公務員の平均年収が1300ドルであることから考えると月給1000ドルという給料は彼らの所得水準から見ると大変に高額である。このため、貧困国の兵士にとっては民間軍事会社のコントラクターになって得る給料は普通に働く場合の10倍以上にもなり、一攫千金を夢見るに十分な額である。逆に日本などの先進国の国民から見れば一般企業の賃金と大差の無い、もしくはそれ以下の給与水準であり、危険性に比して薄給で、日本人が民間軍事会社で就労しても大金を稼げるとはいえない。実際にイラクで死亡した日本人コントラクターの年収は四百数十万円程度で、軍歴が長く下士官であったことから考えれば先進国の正規軍と変わらない報酬である。このため、民間軍事会社の給与は裕福な先進国の国民から見れば安く、貧困国の国民から見れば高給ということになっている。また、軍隊と比べると遺族補償、軍人恩給、褒賞といった福利厚生面は手薄だったり制度自体がない事も多い。なお、民間軍事会社においても兵士は兵士、下士官は下士官で終わりという点に変化はなく、たとえ入社前に歴戦の勇士でも、入社後にどれだけ実績を重ねても、入社前に幕僚課程や上級士官課程を取得していない者は現場指揮官以上に昇進できない。日本では銃刀法、警備業法により警備員の装備品は警戒棒、盾など非殺傷性の護身用具に限定されているため、日本国内に武力を持つ民間軍事会社は合法的に存在できない。一方、日本人が他国の民間軍事会社に雇われたり、民間軍事会社を自称する人物が出ている。2005年5月には、イラクで米軍の業務委託を受けていたクウェートの輸送会社「P.W.Cロジスティクス社」の車列を警備していたイギリスの「ハート・セキュリティー社」の車列に対して攻撃があり、同社の従業員として雇われていた日本人男性Sが負傷し、拉致された後、死亡した。Sはかつて陸上自衛隊で2年間活動した経験(第6普通科連隊に配属され、退職時は第1空挺団に所属)があり、その後フランス外人部隊に21年間在籍し、その間に第2外人落下傘連隊での活動経験もあった。2014年8月、日本東京都江東区青海2-7-4に本店を置いているとしている自称民間軍事会社「ピーエムシー株式会社」CEOを務める日本人男性Yが「イスラム国」に拘束され、2015年に入ってから「処刑」されている。なお、前述の所在地はレンタルオフィスであり、業務の請負元なども明らかになっていない。
出典:wikipedia
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