ゴキゲン中飛車(ゴキゲンなかびしゃ)は、将棋の戦法の一つ。序盤で飛車を横に動かす振り飛車戦法のうち、飛車を5筋に振る中飛車に分類される。ゴキゲン中飛車は、基本的には後手番の戦法である。▲7六歩△3四歩▲2六歩の出だしから、4手目で△4四歩と角道を止めずに△5四歩とし、さらに▲2五歩と飛車先の歩を伸ばす手に対して△5二飛と飛車を回る(第1図)。これが基本形である。先手番で指すときは、端歩を突いてタイミングを遅らせるなどの方法があるが、近年では初手▲5六歩△3四歩の出だしから、▲5八飛と飛車を回る(第2図)。これが先手番の基本形である。従来の中飛車は受けの要素が強い戦法であったが、ゴキゲン中飛車は攻めの戦法である。「ゴキゲン流」と呼ばれるキャラクターの近藤正和が升田式石田流と5筋位取り中飛車を元に開発し、奨励会時代から指している戦法で、2004年度には年度の終盤まで勝率が9割以上と勝ちまくった(最終的には0.822で将棋大賞勝率第一位賞を獲得)。勝率がよいため棋士間で流行した。なお「ゴキゲン中飛車」という戦法名の名づけ親は先崎学である。この戦法の開発により、近藤は2001年度将棋大賞の升田幸三賞を受賞した。従来、プロの公式戦では先手番を持った棋士が勝ちやすいとされ、年度末にまとめられるその年度の全公式戦の勝率は常に先手番の方が高かったが、2008年度は統計を取り始めて以来初めて後手番が勝ち越した("将棋界#将棋は先手が有利か" を参照)。その要因として、ゴキゲン中飛車や後手番一手損角換わりなどの台頭によって後手番の作戦の幅が広くなったことが挙げられる。ゴキゲン中飛車への対抗策として編み出された戦法の一つとして「丸山ワクチン」がある。2002年頃から丸山忠久が積極的に用いたことから、丸山千里が開発した皮膚結核の治療薬丸山ワクチンとひっかけて呼ばれるようになった。序盤、後手△5五歩と位を取られる前に、前記第1図の局面から居飛車側から▲2二角成△同銀と角交換を行う(第3図)。これは、角を持ち合って持久戦にする狙いである。これに対して振り飛車側には、美濃囲いから向かい飛車へ振るなどの対抗策が生まれた。かつて丸山ワクチンでは第3図から▲6八玉と囲っていた。しかし、その瞬間△3三角と打たれると、以下▲7七桂には△7四歩から桂頭を狙われ、▲8八角には△5五歩で角交換した意味が無くなる。この変化を避けるため、第3図から▲6八玉ではなく▲7八銀(第4図)とするのが新丸山ワクチンである。▲7八銀とする事によって、△3三角と打たれた時に▲7七銀を用意している。第4図から△6二玉▲4八銀△5五歩に▲6五角と打つと、以下△3二金▲8三角成△5六歩▲同馬△同飛▲同歩△8八角で後手優勢となる。これを防ぐため、第4図で▲9六歩(第5図)と突くのが、佐藤康光が編み出した新手である。次に▲9五歩があるので後手は△9四歩だが、先手は▲7八銀と新丸山ワクチンへ移行する。なおも△5五歩なら、以下▲6五角△3二金▲8三角成△5六歩▲同歩△8八角▲9七香で先手良し。なお、この手を初披露したのは2005年2月17日(朝日オープン将棋選手権・対山崎隆之戦)である(結果的に負けたが内容は十分)。しかし、そのときは棋士達の間で見向きもされず、5か月後にタイトル戦で羽生善治を相手に同じ手を指して勝ったときから流行り出した。この戦法は対策と言うよりは対抗して攻め合う戦法である。第1図の局面から▲5八金右(7手目)と上がり、後手が攻め合いを選ぶとこの戦型が生じる。藤井猛により考案され、第12期竜王戦▲藤井猛 対 △鈴木大介戦にて初めて指された。▲5八金右の後、△5五歩▲2四歩△同歩▲同飛(11手目)と進む。12手目は△5六歩と△3二金があり、△5六歩と進むと超急戦となる(第1号局では鈴木は決戦を避け、3二金と穏やかな進行を選んだ)。12手目からは△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成▲5五桂△6二玉(20手目)と進むのが定跡である。後手番の方が先に駒得をするが、19手目の▲5五桂が有力である。▲5五桂に後手が次の両取りを受けようと20手目に△5四銀とすると、▲3三角の王手が有力で、後手はどう受けても馬が素抜かれ、先手勝勢となる。そのため、必ず△6二玉とあがり、その間に▲1一竜と進む(第6図)。かつては第6図以降、△9九馬と香を取った手に対して、▲6六香や▲4四角などが有力とされていたが、研究が進み、後手良しと結論付けられていた。しかし、△9九馬に対する▲3三香と打つ手が都成竜馬当時奨励会3段により発見された。△2二銀打には▲3一香成△1一銀▲4一成香で2枚替えの上、打った銀も働いていないため、先手良し。▲3一香成△同金には▲1二竜△1一香などがあるが、先手が指せるとされている。そのため、△9九馬ではなく、△5四銀や超急戦を受けない研究もされている。GPS将棋が指して話題になった手が第6図以下、△9九馬▲6六香△5四銀▲1三龍△4二銀と進み、そこで角をただ捨てする▲4四角である(第7図)。ここで玉が△7二へ逃げたり、間駒すると馬が素抜かれてしまうため、△同歩か△5一玉と変化する。以降、先手は飛車を取れるものの、後手玉が固くなり、互角か後手良しとされている。いずれも超急戦は短手数で終局することが多く、研究量が物を言う勝負になりやすい。また、後手には▲5八金に対して△6二玉と囲いを優先するなど、決戦を回避する選択肢もある。そのため、タイトル戦では久保利明や谷川浩司が指した例があるものの、数は少ない。2010年度、プロの間で、後手ゴキゲン中飛車に対する先手の対応策として「超速▲3七銀」と呼ばれる戦法が流行し始めた。命名者は勝又清和で、1号局は2009年12月の朝日杯将棋オープン戦の▲深浦康市王位-△佐藤和俊五段戦(肩書は当時)。開発したのは、当時奨励会三段の星野良生であり、星野は第38回(2010年度)将棋大賞の升田幸三賞を受賞した。第1図から▲4八銀△5五歩▲6八玉△3三角▲3六歩△6二玉▲3七銀△7二玉と進み、次に▲4六銀と出て速攻を狙うのが基本形(第8図)。ここで後手の応手として、△3二銀、△4二銀、△3二金などがある。また△4四歩と突き、△4五歩から先手の右銀を引き込んで捌く菅井流も有力である。先手番のゴキゲン中飛車に対する後手番の居飛車での作戦は難しいが、後手番でも「丸山ワクチン」などの作戦は可能である。それ以外の作戦も考えられる。第2図から△8四歩▲5五歩△8五歩▲7六歩と進めば、急戦含みの将棋になる(A図)。ここから△8六歩▲同歩△同飛と進めば、序盤から乱戦の将棋になる。急戦を嫌うなら第2図から△5四歩▲7六歩△6二銀と進めば、やや穏やかな将棋になる(B図)。ここから▲4八玉と進めば、「丸山ワクチン」に進むなら△8八角成▲同銀△3二銀(「佐藤新手」なら△1四歩)というふうに進めばよい。また、A図から△4二玉、▲4八玉、△6二銀、▲7七角、△7四歩、▲3八玉、△7三銀と進めば、後手でも「超速△7三銀」を繰り出すことができるが、急戦策は1手の違いが大きくあまり指されない。よって居飛車穴熊が有力である。ゴキゲン中飛車は一時期大流行を見せたが、飯塚祐紀によれば、2014年現在はあまり指されておらず、研究を続けている棋士も少ない。またこの戦法を指す人間が少なくなったため狙い撃ちにされている印象があると言う。だが、後手ゴキゲン中飛車が不利と結論が出ているわけでもなく、飯塚によれば「一つの研究が互角以上であればいい」とのことである。
出典:wikipedia
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