円相場(えんそうば)は円に対する外貨の相対的価値(為替レート)のこと。通常は外貨1単位に相当する円貨額で表示する(通貨や市場によっては別の慣行もある)。特に、米ドルやユーロとの比較によって示され、その中でも、米ドルに対する円の相対価値を示すことがある。国際市場において、日本の通貨である円の相対的価値が過去のレートや政治の目的など、何らかの意味で基準とみなされる水準よりも高い状態を「円高」、逆に、低い水準であるとき「円安」という。分かりやすくいえば、今まで1ドル80円だったが、1ドル75円になった場合には円高になっている。つまり、より少額の「円」で1ドルと交換できるようになる訳である(同じ円貨額でより多くのドルを買えるようになったと考えると、通貨価値が上がったということが理解されやすい。後述のとおり「1ドル100円」ではなく「100円1ドル」とする表記法もあり、こちらはより直感的に理解しやすい)。為替レートのうち、国際的な金融取引や貿易の決済に利用されることが多いアメリカドル(米ドル)との為替レートは最も重要視されている。2007年には1米ドルは95-125円の比率で交換されていた。日本の為替レートの変遷は円を参照のこと。円高のメリットとして、輸入品が安くなる(原材料も含む)、日本からの海外旅行が安くなるというプラス面がある一方で、輸出品が外国で高くなる、輸出品が売れなくなり国内産業が打撃を受け不景気となる、日本の観光収入が減るなどのマイナス面がある。円安になると、円建ての海外資産所得が増加する。「円高になると、交易条件が向上する(日本国外からの購入が有利になる)のでよい」という議論があるが、交易条件は輸出物価と輸入物価の比率であるので、円高になると輸出物価も輸入物価も下がるため、交易条件に系統的な影響は与えない。それどころか、比較優位をもつ輸出産業(比較優位をもつからこそ輸出産業)が採算レートを割るような円高になって、日本国外に移転するなどすれば、平均的な生産性が下がり、賃金も下がって生活水準の低下にもなりかねない(参照:円高不況)。円高は、対外直接投資を増加させる要因となる。さらに、円高になると日本の労働力などの生産要素価格が他国に対し相対的に高くなる。円高は日本国外の賃金を日本の賃金に比べて低下させる。このコスト高になった結果、輸出財の競争力は低下することになり、輸出が減少して輸出企業やその下請けなど関連企業の業績が悪化する要因となる。反対に輸入財は相対的に割安になるため国内生産品より競争力が増し、輸入が増加することになる。円高で1万円で買えるものの量が増えるから一見メリットがあるように考えがちだが、その1万円を稼ぐこと自体が困難になるため、円高で有利になるとは言えない。また、円高が起きた場合、生産活動はすぐには変化しない一方で、将来の景気悪化を懸念して消費や設備投資の方がより早く反応して落ち込む。その結果、国内の貯蓄超過(貯蓄-投資)が増加し、これは経常収支の黒字増加を意味する(貯蓄投資バランス)。すなわち、円高が起きた直後には貿易黒字の拡大が起きやすい。その後、国内の消費や投資の落ち込みによる景況感悪化に合わせて生産活動も停滞する中で、貿易黒字は縮小していく。円高直後の貿易黒字拡大を見て円高の悪影響を過小評価しないよう注意する必要がある。経済学者の翁邦雄は「円安で輸出が増え経済が回復するという効果は非常に限定的である。また、大企業の製造業の労働や株を持っている人にはプラスであるが、そうではない人にはマイナスという分配効果によって不満が高まりかねない」と指摘している。元日銀理事の早川英男は「円安は実質賃金の低下をもたらす。円安は交易条件を悪化させ、賃金は企業収益と並行して増えないため、短期的には労働分配率を低下させる」「多くの外国人観光客が訪れるのを、日本人が相対的に貧しくなってしまった結果だと考えると好ましくない」と指摘している。エコノミストの岩田一政は「円安が進みエネルギー価格も上昇・高止まりすると、交易条件は大幅に悪化する。企業の仕入れ価格は大きく上がる一方出販売価格が上がらず、利潤が圧縮され賃金も抑制される」「実質所得の国外流出が輸出・生産、所得の増加といった効果を上回ると、経済全体として消費者の効用の水準は低下する」と指摘している。経済学者の小幡績は「円安になれば、輸入品の価格は確実に上がる。庶民の生活は苦しくなる。自動車・電機など一部の大企業にはメリットがあるけれど、日本経済を支えている内需関連の中小企業にとっては、輸送費・電気代が上がるなど、マイナスのほうが大きい」と指摘している。大和総研は「円安は、資源が乏しく食料自給率が低い日本にとって望ましくない」と指摘している。経済学者の浜田宏一は「古典派的に言えば、交易条件はアラブの王様が決めることであり、金融政策による為替レートの変動と交易条件の変動は無関係である。ただし、そのような関係があるというデータもある。石油はドル建てで決められるため、円安によって交易条件が悪化する傾向がある」と指摘している。早川英男は「交易条件に与える影響は、為替レートより原油価格の方がずっと大きい」と指摘している。経済学者の高橋洋一は「交易条件と為替レートにはほとんど関係がなく、交易条件は原油価格で決まる」と指摘している。「円安になっても輸出は増えないようになっている」という議論について、エコノミストの村上尚己は「自国通貨が安くなれば、国際市場での価格競争力が高まるメカニズムが働く。このメカニズムが働かないなどというのは、経済原理を無視している」と指摘している。村上は「円安の進行によって、企業の利益が増えて株高・外貨建て資産が増加することによって、民間部門のバランスシートが強固になり、設備投資・雇用拡大をもたらすメカニズムが一段と強まる」と指摘している。経済学者のポール・クルーグマンは「歴史的に通貨安は輸出を推進するという有力な証拠がある一方で、その影響は数回の四半期まで結果がはっきりしないという経済データもある。普通10%円安になると10%輸出が伸びるはずである。総合的に見て円安のマイナス面よりもプラス面のほうが大きい」と指摘している。経済学者の若田部昌澄は「円安によって、輸入競合企業(例:タオルメーカーなど)の収益が上がる」と指摘している。経済学者の原田泰、大和総研は「10%の円高は、実質GDPを0.54%押し下げる」と指摘している。原田は「完全雇用になる程度の為替レートの水準が良い。完全雇用になった後の円安はデメリットとなる」と指摘している。経済学者の岩田規久男は「過度の円高は、非正規雇用の比率を引き上げ、製造業を中心とした海外移転を促進し、国内雇用の需要の減少・失業率の上昇をもたらした」と指摘している。経済学者の田中秀臣は「生産性の向上という実力以上の円高が発生すると、企業収益の圧迫による賃金・投資の抑制、雇用の減少、それを通じた国民消費の減退が起きる」と指摘している。田中は「日本の代表的産業を苦境に立たせているのに関わらず、世の中には円高は『強い証拠』『国力が上がる』『日本にとって望ましい』といった言説が存在するが理解できない。また、円高が企業を淘汰し、過当競争を防ぎ、経済効率を上げるという見方もある。優良企業が、国際的に定評のある技術や販売力への評価ではなく、予期せぬ為替レートだけで窮地に追い込まれて淘汰されるのがいいのであろうか」と指摘している。若田部昌澄は「円高に耐えられるように更なる企業努力をすべきだという声があるが、無責任極まりない意見である。円高に対して企業が努力をすれば、生産拠点を海外に移すだろう」と指摘している。デフレーションと低金利の継続する日本は、購買力平価説および金利平価説により、長期平均では名目上の円高が進むのが理論的な期待値である。また円高がデフレ圧力として働く。2010年現在、「リスク回避の円買い」となっており、リスク回避的になる時には、全世界の株が下落し、円高となる傾向が強い。逆に「リスク選好的」となる時には、全世界の株が上昇し、円安となる傾向が強い。経済学者の松原聡は、円高が起きる主な要因として、1)日本の輸出の増加、2)日本国外からの日本への旅行者の増加、3)日本への投機マネーの増加、を挙げている。エコノミストの川村雄介は「日本の株価が上がったり、金利が高くなると円高になりやすい」と指摘している。2014年時点でIMFが試算した購買力平価に基づくドル円の均衡値は、約102円である。貿易黒字が増えると円高が進む、あるいは逆に貿易黒字が減ると円安になるという議論があるが、為替介入がない場合、貿易黒字と対外貸付の変化が均衡するように為替は変動する。つまり、貿易黒字が増えてもその分だけ対外貸付が増えなかった時に初めて、両者を均衡させるように円高が進む。結果的には貿易黒字と対外貸付の増える分は同じとなる。また、貿易黒字の増加分が対外貸付よりも少ない場合には、円安となる。貿易黒字が減る場合も同様に、貿易黒字そのものではなく、対外貸付との相対的な増減によって円高になるか円安になるかが決定する。これは、それぞれ別個に決定する経常収支と資本収支が、経常収支+資本収支+外貨準備増減=0となるよう、為替が調整するように変動するためである。あくまで貿易黒字が対外貸付より大きくならないように円高が進むのである。森永卓郎は「円安とは、日本が二流国扱いされていることと同じである」と指摘している。為替レートに対しては、たとえば「為替は国力を表すはずだ。少子化で衰退していく国の通貨が上昇するのはおかしい」というような誤解を持たれることがある。為替レートというのは基本的に2つの通貨の交換価値に過ぎず、長期的には購買力平価に沿った動きになる。すなわち、インフレ率が高ければ通貨の価値が下がり、インフレ率が低ければ上がると考えることができる。そして、長期的にはそれが為替レートに反映される、とシンプルに考えればよい。基本的に為替レートは単純にモノとモノとの交換レートに過ぎないため、為替が国力を表したり、成長率が高い通貨が買われたりすると言うのは幻想であると言える。円高が進行しているのは準備通貨としての存在感が強まってきたからだという指摘がある。中央銀行(特にアジアの国の中央銀行)が、ドル中心だった外貨準備の多角化を目指しているためである。原田泰、大和総研は「為替レートとは、各国のマネーの交換比率のことであり、日本のマネーが増えていない状態で他国のマネーが増えれば、円高になる」と指摘している。原田泰、大和総研は「為替レートを、金融・財政政策で決まる変数とすれば、円高は政策の結果となる。金融緩和せずに財政拡大を行えば円高になる」と指摘している(マンデルフレミングモデル)。高橋洋一は「為替レートはマネタリーベースと大きく関係している。円高を是正したいなら、円を刷って増やせばよい。円高になると、GDPが減り、株価は下がる。円安になると、GDPが増えて、株価は上がる」と述べている。アメリカ政府が日本の政策に対する不満を高める局面では、経済のファンダメンタルズ(日米のマネタリーベース格差・金利差など)とは無関係に為替レートが円高ドル安に転換することが多かった(日米貿易摩擦など)。このような日米の政治要因が円高をもたらす現象をスタンフォード大学名誉教授のロナルド・マッキノンは「円高シンドローム」と呼び、日本経済の長期低迷および長期的な円高の理由であると主張した。田中秀臣は「日本では1990年後半以降、最適とされるマネーサプライの伸び率を、現実の伸び率が下回っていた。為替レートが『購買力平価の天井』に近づいたときには、日本銀行の金融引き締めスタンスが強まる傾向が実証研究によって確認されている」と指摘している(2010年時点)。為替相場が円高になると、日本国外からの原材料や食料品、石油などの輸入品が値下がりするので、物価が下がる。物価の下落は金利の低下に繋がるので、為替相場の円高は金利の低下に繋がる。為替相場が円安になると、日本国外からの原材料や食料品、石油などの輸入品が値上がりし、物価が上昇する。物価の上昇は金利の上昇に繋がるので、為替相場の円安は金利の上昇を引き起こす。米国の金利が上昇したり日本の金利が下降したりして日米金利差が拡大すると、日本の金融商品に投資するよりも米国の金融商品に投資をする方が有利になるので、円をドルに換えて米国の金融商品を購入しようと円売り・ドル買いが進む。この結果、日本から米国にお金が流出し、ドル高円安になっていく。日本の金利が上昇したり米国の金利が下降したりして日米金利差が拡大すると、米国の金融商品に投資するよりも日本の金融商品に投資をする方が有利になるので、ドルを円に換えて日本の金融商品を購入しようとする円買い・ドル売りが進む。この結果、米国から日本にお金が流入し、円高ドル安になっていく。短期的には金利の高い国の通貨が上昇しがちである。しかし、金利の高い国はインフレレートが高い国、通貨価値の下落が大きい国であるので、長期的には通貨安となる場合が多い。経済学者の野口悠紀雄は金利の引き上げによって円高を実現することができるとしている。エコノミストの片岡剛士は「マンデルフレミングモデルの知見からも明らかなように、(財政政策のみによる)財政支出の拡大は金利の上昇を招き、ひいては円高につながる」と指摘している。このように、金利差が為替レートにおよぼす関係は、短期と長期で逆である。「実質実効為替レートで見れば円高ではない」などの言葉が安易に使われることがあるが、これは適切でない使われ方をしている場合も多い。「実質実効為替レートでみると現代の円高は深刻な状況でない」という議論は、日本の場合、他国と比較してデフレーションが進んでいるから、輸出には有利であるということを意味しているのであって、円高およびデフレで懸念される、国内企業の収益条件や雇用環境の悪化等とは関係がないことに留意すべきである。高橋洋一は「学者などがある時点で計算した購買力平価や実効為替レートなどの数字を掲げて議論したとしても、企業・財界など、輸出が困難になり国内で企業を維持できないため海外展開をしようと考える人達の意見とは全く違うものであり、意味のない議論である」と述べている。外国人投資家による日本株の保有比率は26.7%(2011年3月末)と高くなっており、さらに売買代金に占めるシェアでは64.1%(2010年度)となっている。株価や景気に与える影響力は莫大で、外国人投資家の動向が日本株のトレンドを決めるとも言われている。日本の株価は、米株価とドル円レートで決まっているとされる。日本人個人の売買にはデイ・トレーダー的な取引も含まれているので、トレンドは形成し辛い。外国人は分散投資で、日本株の保有率を一定に保とうとしている。この事が外国人の売買がトレンドの形成し易さに繋がっている。円高時には東証の輸出向け企業の株価は下落する例が多い。また、輸出産業の業績が悪化し、輸入産業やその関連企業の業績が好調となる。また、TOPIX、日経平均は下落する例が多い。円安時には東証の輸出向け企業の株価は上昇する例が多い。また、輸入産業の業績が悪化し、輸出産業やその関連企業の業績が好調となる。また、TOPIX、日経平均は上昇する例が多い。ニュースや新聞等で報道される「1ドル = 110円10銭-110円20銭」などというレートは、銀行間での外国為替取引を行うときのレートで、銀行間相場と呼ばれるものである。各銀行は、その日の対顧客(輸出・輸入企業や個人など)については毎営業日の午前9:55分のスポット・レートを基に10時頃に仲値と呼ばれる基準相場を発表し、銀行間相場が大きく動くことが無い限り、(銀行間相場が細かく動いたとしても)日中はその相場を基に取引を行うことが多い(東京市場では、以前は大手行の当番制で共同して用いるドル円の仲値を定める慣行があったが、現在は異なる)。なお、銀行間での取引は、どの通貨も対(アメリカ)ドルで取引が圧倒的に多く、例えば円とタイバーツなど各国通貨との直接取引きの金額は少ない。このため各国通貨と円の為替レートは、当該通貨の対ドル相場と、ドル円の相場との合成として計算されることが一般的である。為替レートの表示の仕方は、1ドルが120円という表示の仕方と、1円が1/120ドル=0.00833ドルという表示の仕方がある。ほとんどの通貨では1ドル=120円、あるいは1ドル=700韓国ウォンというように、米ドル1ドルに相当する各国通貨額を使うことが慣例である。例外は、英国ポンドやユーロなどで、1ポンド=1.9ドル、1ユーロ=1.25ドルなどと表示することが慣例となっている。日本で円と他国通貨の為替レートを考える場合に、1円=○○ドルと表示するのを外貨(ドル)建て、1ドル=○○円と表示するのを、自国通貨(円)建てと言う。アメリカから見れば、1円=○○ドルが自国通貨(ドル)建てであり、1ドル=○○円が外貨(円)建てである。円の為替レートについて、自国通貨建ては邦貨建てと呼ばれることがある。一般個人が、銀行に外貨預金を依頼する場合、おおよそ数%-10%程度に相当する手数料分(銀行などで多少異なる;外貨1単位に対して何円という料率が普通)がレートに織り込まれる。そのため、かつて一般的だった「ドル円片道1円」と呼ばれる手数料率(仲値と取引に用いられるレートの差が1ドル当たり1円であることをいう)において、取引相手の銀行の仲値が1ドル=110円だったとすると、外貨預金への預け入れ、払い戻しや、外国送金の取り組み、円貨での受け取りに使われるレートはとなる。為替する金額が増えると差も増えてしまう。(例)また、外貨の現金との両替を依頼する場合には、さらにキャッシュハンドリングチャージ(cash handling charge;現金取り扱い手数料)と言われる手数料分が加味される。(顧客からの買取の場合はその分安く、顧客への売却の場合はその分高くなる。)これは、外貨預金の場合は帳簿上の付け替えでも済むのに対して、両替となると実際に外貨の現金を当該外貨の本国との間でやり取りする必要があり、運送費・保険料その他がかかってしまうことが理由とされている。また上記理由から、外貨硬貨は取り扱わないことが多く、取り扱っている場合でも、紙幣と比べレートが悪くなることか大半である。仲値ないし銀行間相場と、対顧客相場の乖離が比較的小さいのは、米ドルやユーロである。取引量の少ない通貨では相場の乖離幅(銀行の利幅)が大きくなる傾向がある。その他、貿易取引に使われるレートや、為替予約と呼ばれる先日付取引に使われるレートは、決済期日までの金利を勘案して定められる。外貨建てでクレジットカードを使った場合の決済相場は、請求票がカード会社の決済センターに届いた際の相場に、数%程度の手数料を加味した相場であるとされている。従って、国内で両替して海外で現金で支払うよりは、実質の為替レートが有利になる可能性がある。
出典:wikipedia
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