近鉄820系電車(きんてつ820けいでんしゃ)とは、1961年(昭和36年)に登場した、近畿日本鉄道が保有していた通勤形電車の一系列。本項目ではその改造車で、伊賀鉄道で使用されていた近鉄860系電車についても記述する。1961年に登場。車体の基本構造や主要機器は800系を基本としているが、天理線などの支線での使用を考慮してMc+Tcの2両固定編成となった。歯車比は5.47に変更され800系と異なっていた。側配置はd2D5D2で、前面は貫通式、前照灯は2灯となった。同時期に登場した900系と同様に、列車種別表示灯尾灯独立方式となるとともに客用扉はラッシュ対策のため両開き扉を採用した。ただし、扉の寸法はラビットカーや国鉄101系(登場時モハ90系)が採用し、以降両開き扉の標準となった1300mm幅員に対して10%アップした1450mmとなった。登場時は2両編成2本を組み合わせた4両編成で、821 - 826Fは800系とともに奈良線特急として使用され、827F・828F(当初より抑速制動未設置)は当時の奈良電京都 - 近畿日本奈良間の特別料金無料特急に充当されていた。新生駒トンネル開通後は900系や8000系などの大型車の登場により、全編成が京都・橿原線で使用されるようになり、同線の急行や普通で運用した。この場合、820系は小回りが利く利点も活かして2連で急行運用に入るという場合もあった。また800系とは異なり、丹波橋(当時)を経由した京阪電気鉄道への乗り入れにもよく使用された。京都・橿原線の車両限界拡大後は徐々に生駒線・田原本線での運行に移行して使用されていた。また、1975年(昭和50年)の800系807Fの京都線新祝園 - 山田川間の横転事故発生後、復旧した714-807と4両編成を組んで使用されていた。この際は800系側に貫通路改造と抑速制動回路の撤去が行われたが、820系には改造を行わなかった。1968年(昭和43年)の架線電圧600Vから1500Vへの昇圧工事の際に、電動発電機とコンプレッサーがTcに移設された。この際に抑速制動装置は撤去されたため、奈良線生駒以西の勾配区間での運用はできなくなった(この点が800系との相違点である)。また、1973年に実施された橿原・天理線の車両限界拡張の際にドアステップの延長が行われている。822Fは後述の860系にその他の編成が改造される直前に廃車されている。1984年(昭和59年)より、伊賀線車両近代化のため南大阪線用6800系の台車と主電動機を流用して4編成が860系として狭軌化されて伊賀線に移った。しかし当時、田原本線に820系を残す必要があったため、代わりに800系改造の880系2編成が伊賀線に移った。なお、本系列の狭軌改造に際し、不要となった三菱電機MB-3020-B電動機およびその駆動装置は、名古屋線1000系のWNドライブ化工事に再利用されている。8400系3両編成グループのワンマン改造により、田原本線では820系が不要となったため、1993年(平成5年)からは田原本線に残っていた3編成を冷房改造の上、伊賀線に転出し、先に伊賀線に移った車両も同じく冷房改造が行われた。その際に880系は廃車された。転出の際に、内外装材の交換や前面窓Hゴム支持の固定化、ステンレス化粧帯の撤去、ドアステップの拡張などの改造が行われた。冷房装置は11400系エースカーで使用されていたものを流用している。820系以降、近鉄では一般用18m車は導入されなかったうえ、伊賀線の車両限界や狭軌であることなどの特殊事情ゆえに、他の主要路線で使用されている20m車による代替が困難な状況が続いていた。860系に改造されなかった822Fに続き、820系として落成してから50年近く経過したことから、825F改造の864Fは2004年(平成16年)5月に廃車され、比土駅留置線で解体された。伊賀線は赤字解消のため、2007年(平成19年)10月1日、上下分離方式で近鉄が第3種鉄道事業者として従来通り線路や駅舎などの施設や車両を所有して保線などの管理を行い、近鉄出資の子会社「伊賀鉄道」が第2種鉄道事業者として施設と車両の貸与を受けて運営・運行する方式へ移行し、伊賀線所属の本系列はそのまま同社に貸与される形となった。この際、沿線自治体側は合併特例債により伊賀線の車両の更新を実行している。200系導入に伴い、まず866Fが2010年2月に、865Fが7月にそれぞれ運用離脱、8月に廃車・解体された。そして867Fが2010年3月に、861Fが2011年2月にそれぞれ運用離脱した。運用離脱後の5月3日には861Fがさよなら運転を行った。7月末には両編成とも廃車・解体された。2012年3月10日には、最後まで残った862Fと863Fが運用を離脱した。これにより伊賀鉄道で運用される車両は全て200系となった。7月8日には上野市~伊賀神戸間において、862Fによるさよなら運転が行われた。862Fと863Fが7月下旬に廃車となり、7月31日から8月1日にかけて解体された。これにより、820系として登場してから51年の歴史に幕を閉じた。伊賀線登場当初はマルーン一色だったが、その後マルーン色と白色のツートンへ塗り替えられた。1997年(平成9年)より、「忍者列車」として2編成を漫画家・松本零士デザインの忍者などのイメージに合わせた特殊ペインティングを施して注目されるようになった。忍者塗装は861Fが緑色(以前は青色)、866Fがピンク色をベースとしており、行先標も忍者塗装らしい仕様の物が装着された。これらの車両は、フジテレビ系のテレビ番組『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』でも紹介された。また、2009年(平成21年)2月には863Fがマルーン一色に銀色の飾り帯を入れた820系登場時の塗色に塗り直された。同年8月8日からは862Fが、旧型車で昭和30年代まで使用されたダークグリーン一色に塗り替えられ、「昭和レトロトレイン」として運用開始。どちらの編成も2012年7月の引退までその塗装で運行された。
出典:wikipedia
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