エアバスA350 XWB () は、A300・A330/A340の後継機としてエアバス社が発売した新世代中型ワイドボディ旅客機。2015年1月15日、カタール航空がドーハ-フランクフルト線で世界初の営業運航を開始した。当初、A330をベースに開発が構想されていた機種の名称が「A350」であり、A350開発計画中止後に新規に設計し直され、2015年現在生産されている機種の正式名称が「A350 XWB」である。(開発計画の推移は後述)航空専門誌や航空系ニュースサイトでは正式名称で報道されることもあるが、一般的なニュース報道などではA350 XWBを指して「A350」と省略されることも多い。日本の航空雑誌『エアライン』(イカロス出版)の記者がエアバス社に「A350」と略して良いかと尋ねたところ、エアバス社の担当者は出来る限り正式名称の「A350 XWB」で表記してほしいと答えたという。ただ、エアバス社の公式資料でも「XWB」が省略されているものも存在している。なお、シリーズ名はA350 XWBであるが、個々のモデルは「A350-800」「A350-900」のようにXWBを含めないものが正式名称となっている。エアバスは、A300やA330といった自社の旅客機の後継機種、より直接にはA330やA340の市場を大型双発機777や新型機787で席巻しつつあるライバル・ボーイング社の対抗機種として、新しい世代の中型双発機を開発しようとしていた。これが初期のA350型機であるが、その大まかな特徴は以下のようなものであった。これらの特徴を持ち、「ライバル787と同等以上の性能の機体を、より安価で容易に開発する」とした初期のA350構想は、3つの派生形からなるファミリーとなる予定であった。エアバス社としてはA380に開発資源を集中する必要があり、全くの新規設計から始めることは困難な事情があった。開発予算は30から40億ドル程度の予定であった。しかし、この機体に対し発注の意向を示したシンガポール航空やILFCは、より設計の詳細を詰める段階で機体設計のやり直しを要求した。A350はライバル787に対して受注数で大きく水をあけられる状況であった。この初期構想は顧客からの反応を見ながら数回の改訂が加えられている。上記のような改訂を加え、航空機としての性能・経済性はA330に比べて大幅に改善されているにも関わらず受注は伸び悩み、製造ローンチできない状態が続いた。この段階で、予想される開発経費は概算で50億ドル強にまで増加していた。初期のA350のコンセプトは、のちに開発が決定することとなったA330neoに引き継がれることとなる。着々と受注数を伸ばすB787に比べ受注に苦しんだA350だったが、2006年7月17日開催のファーンボロー航空ショーにて「エアバスA350 XWB(eXtra Wide Body)」として、再設計され完全に新しい計画として発表された。また、この新たな計画のファミリーとしては次のものが発表された。当初最も小型の-800型が基本型と思われていたが、開発順序や派生型開発計画などから中間サイズの-900型が基本型であると考えられる。この基本機種はそれぞれ航続距離8500nmi (15,800km) を計画をしていたが、設計が進むにつれ若干の変動を見ている。さらに将来構想としては以下のものも考えられている。これら計画の総体、特に787より大きな機体サイズと新技術の積極採用という点から見て、787のみならず一回り大きな(そして今のところボーイングの独擅場である)777 (-200・-300・-8X) の市場にも対抗できる機体を目指していることがうかがえる計画である。日本航空のように、A350を777の後継機として位置づけている航空会社も実際にある。この計画変更により胴体径が広くなるためか、後方の胴体絞り部などは従来のエアバス機のように胴体上部へ絞り上がっていく形でなく、ボーイング機などに見られる胴体中心部へ上部からも絞っていく形に変更されている。その一方で、フラップを内外二分割してドループ・エルロンと共に巡航中に独立して角度制御を行うことで揚力分布を最適化し巡航時の揚抗比を改善するなど新しい技術も取り入れられている。787より大きな推力が要求される搭載エンジンとしては、ロールス・ロイスがトレント1700を強化し供給する覚書を締結している。ゼネラル・エレクトリックはGEnXでなく、より大きな推力を見込めるGP7200の派生型を供給する予定であった。しかしその後GE社とエアバス社の交渉は決裂しGEnX強化型あるいはGP7200派生型をA350 XWBに提供する覚書は2008年10月現在結ばれていない。そのため、現時点ではA350 XWBへのエンジン供給はロールス・ロイスの独占となっている。この背景には、GEがエンジン供給を独占して大きな利益を上げているボーイング777-200LR/300ER/および将来開発が予定されている777-8XとA350XWB-900R/1000が直接競合するという事情があるためと考えられている。GEと共にエンジン・アライアンスに出資するプラット・アンド・ホイットニーはXWB向けGP7200派生型の開発に前向きな旨の表明をしているが、優先交渉権はGEnXにありGEがXWB型へのエンジン提供を最終的に見送った場合にGP7200のXWB向け提供の交渉を開始できると認めている。2009年5月にGE首脳は、「B787の飛行試験によってGEnXの燃費を含めた性能が示されれば改めてエアバスとの交渉に臨むだろう」という趣旨の発言を行った。この場合は-800および-900型向けに限ってのエンジン開発となるだろうと見られている。また、エアバスはA350-1000に搭載予定のエンジンであるロールス・ロイスTrent XWBについて、当社と共同でより性能の良いバージョンを開発し、この型に装備することを明らかにしている。このエアバスA350 XWBの計画発表を受けて、シンガポール航空が2006年7月21日にA350-900型20機の購入を発表した。2006年12月1日、親会社であるエアバス・グループの役員会は本機の開発を承認した。およそ100億ユーロと見積もられる開発費分担の内訳は明らかにされなかった。2013年10月7日に日本航空とエアバスは共同プレスリリースで、A350-900型機18機とA350-1000型機13機の確定31機、オプション25機の購入契約を締結したと発表した。初期の機体の引渡しから20年を経過し、機材更新の時期を迎えるボーイング777の後継機として、2019年より順次導入される予定。日本航空(JAL)がエアバス機を発注するのは初めてのことである。なおこれに先立ち日本では日本航空 と併せ全日本空輸も老朽化したボーイング777の置き換えとしてA350-1000を有力な候補に挙げているとの報道がなされていたが、全日本空輸(ANA)は2014年3月にボーイング777-9Xの発注を決定し、エアバスA350の発注には至らなかったが、2016年1月に総二階建旅客機A380を3機発注した事が発表された為、全日本空輸と日本航空という日本国を代表する航空大手2社が、欧州エアバス社製ワイドボディ機を国際線で使用する事が決まった。エアバス社の同じ大型双発機シリーズA330とは補完関係にあるとされ、A330が中距離路線を主体とするのに対し、A350 XWBは長距離/超長距離路線で真価を発揮するため、航空会社は運航する路線によって両機種を使い分けることになるという。一方で日本航空のように、A350 XWBを短距離の国内線と長距離の国際線の両方に導入する意向を示している航空会社も存在する。2014年7月にはA330の次世代型であるA330neoを開発することが決まった。ハワイアン航空はA350 XWBの発注を全てキャンセルしA330neoへ切り替えた。マレーシアのLCCであるエアアジアXは主力機種であったA330-300の更新用として、A350 XWBを発注しているがA330neoも発注した。また2016年1月にはイランのフラッグキャリアであるイラン航空がエアバス社に大型発注を行い、A350-1000型機を16機確定発注した。香港のキャセイパシフィック航空はA350-900を22機、長胴型のA350-1000を26機の2タイプ計48機を発注しているが、受領を開始する2016年内に新造機12機を受領する予定であり、香港国際空港からロンドンへの基幹路線や、現在は主にA330-300で運航している香港と日本の三大都市圏を結ぶ路線に投入するとしている。。エアバス社は2007年9月に、構造並びに一部形状の変更を公表した。それによるとこれまでアルミニウム・リチウム合金製とされてきた胴体構造はカーボンファイバーのフレームリングとアルミニウム・リチウム合金のビームからなる骨組みにカーボンファイバーパネルを張り合わせた構造になり、ボーイング787とほぼ同等のカーボンファイバー使用率となった。また、機首形状が2006年のXWB型の最初のアナウンス時のデザインから変更され、A380の機首先端を切って取りつけたような形状となっている。しかしフライトデッキはA380の液晶画面8面ではなく、より大型の液晶画面を6面用いた想像図が公開されている。これら設計の変更に伴い胴体内寸に変更が見られる模様で、下記の仕様における胴体内径は現在エアバス社のHPの仕様表には記載がない。2009年1月14日にエアバス社はA350XWB型機の最終組み立て施設の着工記念式典を挙行し、そこで新たな外観が公表された。同社のホームページで参照できる。2008年8月には搭載機器を含めた詳細な重量見積りの結果、-900型機で運行自重が従来予測より2.2t増大する見込みと公表されている。それと共に、-900型機の最大離陸重量は268tへと改訂された。2008年8月12日現在、A350 XWBは世界27社から452機の確定発注を受けライバルである787と同規模の受注を達成している。特に787の開発が、主翼の強度不足や試験飛行中の空中火災などで難航、納期が3年以上遅延しているため、就航予定時期等787の初期のアドバンテージはほとんど失われてしまっている。また、正式契約調印には至っていないが発注趣意書を発行されているものが106機ある。一方でGEエンジンの搭載が見送られたためにリース会社GECASのように初期型A350計画からXWB型への契約移行を行なわず、発注を取り消されたケースもある。2013年5月14日に飛行テスト用A350 XWB初号機(登録番号:F-WXWB)が組み立て、エアバスのデモ塗装を完了して、同年6月3日には地上でのエンジン始動を確認した。6月14日にはA350 XWB初号機が工場に隣接するトゥールーズ・ブラニャック空港で初飛行を実施し、その様子はエアバス社によってインターネット中継された。2014年9月30日にはA350-900が欧州航空安全機関の形式証明を取得。10月2日にはローンチカスタマーとなるカタール航空向けの初号機がロールアウト。2014年1月9日にボリビアのコチャバンバ、ラパスで高地テストを行うため、ボリビアに到着。コチャバンバは海抜8,300フィートで約2,500メートル、ラパスは海抜13,000フィートの約4000メートルにあり、3号機を使用して高地でのエンジン、補助動力装置(APU)、各種システムのオペレーションを確認。2014年1月28日にカナダのイカルイト空港で寒冷地テストのため高地テストを行っていたボリビアのコチャバンバ、ラパスから3号機が到着。イカルイトでは氷点下2桁台を記録する極寒の地で、高地テストと同様にエンジン、補助動力装置(APU)、各種システムのオペレーションを確認。2014年5月6日にアメリカ、フロリダ州のエグリン空軍基地に併設されているマッキンリー極限気候研究所へ2号機が到着。A350 XWB開発プロジェクトで、型式証明に必要な認定要件を上回る能力を確認するため、研究所で極限状態の気候条件でのテストを実施。試験は45度からマイナス45度の気温状況を作り出し、複数の気候や湿度で機体の状態を確認。2014年5月9日にフランスのイストル空軍基地で4号機が耐水テストを実施。滑走路上の水が最低22ミリメートルで、60ノットから140ノットまでの速度で滑走しノーズランディングギアの水しぶきがエンジン、補助動力装置(APU)の動きに影響がないことを確認。2014年6月2日に初期長距離フライト(ELF)試験を実施。2号機を使用し6月2日にフランスのトゥールーズ・ブラニャック空港を離陸、パリ、オランダ、デンマーク、ノルウェイ、イギリスの上空を飛び、7時間後にトゥールーズに 着陸。そして翌3日には、夜間に離陸し、フランス上空やイベリア半島、北ヨーロッパ大陸の上空を12時間に渡って飛び、再びトゥールーズに着陸し、今回の試験では、航空会社のスタッフとしてエールフランスとルフトハンザの客室乗務員が乗務し、機内食の提供からギャレーの使い勝手や機内の防音性、空調や照明、トイレの使い心地や機内の娯楽設備などが評価され、さらに人間工学の専門家によって、機内の目印などの見やすさ、分かりやすさを評価確認した。2014年6月18日高温飛行試験を3号機を使用して実施。アラブ首長国連邦のアルアインを拠点に、40度を超える気温環境のもとで、エンジンや航空機のシステム挙動を確認。2014年7月19日にフランスのイストル空軍基地で1号機が最大離陸推力時の離陸中断テスト(Maximum Energy Rejected Take-Off:MERTO)を実施。離陸中断テストでは離陸時の最大スピード、最大重量でブレーキが安全に作動し、機体を安全に止めることが出来るかを確認。2014年7月24日にA350-900の型式証明取得に向けた最終段階として、5号機を使用した路線認定(Route Proving)試験を開始。約3週間かけて北極を通過したり、各大洋を横断飛行したり、合計で約180時間、およそ151,300キロの距離を飛行した。2014年10月19日には試作5号機(MSN005、機体記号:F-WWYB)がアジアを巡るデモツアーの一環として羽田空港に飛来し、日本航空の関係者や記者などを乗せてデモフライトを実施した。このデモツアーでは東京以外にもソウル、ハノイ、バンコク、クアラルンプールへ訪れ、A350 XWBの導入を予定している航空会社へのアピールが行われた。2014年10月に欧州航空安全機関がエアバスA350-900型機に対して、ETOPS-300及びETOPS-370の認定を与えた。これによってA350-900型機は太平洋と大西洋を含んだ世界中ほとんどすべての主要空港間に、無着陸飛行ルート設定が可能な直行定期便を運航する事が可能となった。この認定取得により、A350を発注した各国航空会社は、東南アジアであれば米国、オセアニアから米国といった中央太平洋上を飛行する史上最長となる定期国際路線設定が可能となった。これらETOPSのさらなる高度認定に対応する航続距離延長型として、「A350-ULR」が追加設定された。このタイプはパキスタン国際航空やエミレーツ航空などB777-200LR型機を運航している航空会社の超長距離線用機材としての新規需要が期待されており、2015年に発表されたULRタイプのローンチカスタマーとなったのはA380と同様にシンガポール航空であり、航続距離は双発機として最高記録となる予定であり、シンガポール航空保有機としてはA340-500型機の置き換え対象となる機材で、シンガポール/チャンギ国際空港からアメリカ合衆国/ロサンゼルス国際空港や中南米地域への直行便設定も可能となる。2016年5月2日エアバスは、A350-900が米連邦航空局(FAA)より180分超(最大300分)のETOPS認可を取得したと発表した。2014年12月22日、ローンチカスタマーであるカタール航空に最初の1機が引き渡され、2015年1月15日からドーハ - フランクフルト線で営業運行を開始した。。2015年現在2016年1月現在フィンランド航空やカタール航空及びベトナム航空などがA350による定期国際線運航を既に開始している。日本の航空会社は日本航空(JAL)からA350-900とA350-1000型機の計31機分を確定発注済である。アジア地域でA350型機の確定発注を行った航空会社は確定発注機数63機(ULR型を含んだオプション契約による購入権20機分)を誇るシンガポール航空や、ベトナム空軍が政府専用機としても使用しているベトナム航空、スリランカ航空、フィリピン航空などとなっている。2016年には南米大陸のA350発注会社にも新造機のデリバリーが始まり、ブラジルのTAM航空が大西洋横断の欧州-南米間渡洋路線に初めて使用した。2016年9月30日現在
出典:wikipedia
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