神戸弁(こうべべん)は、兵庫県の南東部、神戸市周辺で用いられる日本語の方言で、近畿方言のうちの一つである。京阪式アクセント(標準的な甲種アクセント)。摂津方言とは異なるいくつかの特徴があり、播磨方言に属する。神戸と大阪の語法の差異には以下の重点が存在する:神戸弁における相(アスペクト)は播州弁およびその他の西日本諸方言と共通であり、完了と不完了を区別する。それぞれ不完了(進行態)を動詞連用形+ヨー(よう)、完了(継続・結果態)を動詞連用形+トー(とう)で表現する。「ヨー」は完了後を示さず、「トー」は開始前を含まない。これらは西日本方言に広く見られる「ヨル(連用形+おる)」「トル(連用形+て+おる)」と同じ用法である。ただし、最近はこの区別が曖昧になりつつあり全て「~トル」「~トー」で済ましてしまう人も増えている。摂津方言ではこれの同根語として「ヨール」「トール」を使うが、「ヨール」には侮蔑のニュアンスが含まれる。大阪弁の「イル」に対し神戸弁が「オル」を使うのはこれに付随する現象で、大阪では「オル」の卑語化が起こったことにより代わりに「イル」で進行態を表現するようになった結果である(井上文子、1992年)。その他、予備態の「トク」(標準語の「~ておく」)が存在する。この「トク」は継続動詞に付く場合の体系に崩れが起きており、戦前に「待っとう」だったのが戦後には「待っとく」となった。打ち消しには「ヘン」と「ン」を用いる。また過去を表すのに「ズ」も用いる。例:行かへん(行かない)、かまへん(構わない)、行かずや(行かなかった)、寄らずや(よらなかった)。短い動詞には「見やへん(見ない)」「せやしまへん(しやしません)」など、繋ぎの音が入る。「来ない」は基本的には「コン」だが「コヤヘン」「ケーヘン」もあり、使用頻度の高い「コーヘン」は大阪弁の影響から生じた所謂新方言である。「無い」という言葉は形容詞としてのみ使われ、「ノーナル(無くなる)」「ナケラコマル(無ければ困る)」の様に言う。現在ではあまり見なくなったが、一段動詞の五段化も併用されていた。例:見ん→見らん(見ない)、来ん→来らん(こない)。播州・丹波から中国地方にかけて用いられるテヤ敬語とは、摂津方言で言う尊敬表現の『ハル』の代わりに、『動詞連用形+テ(+「ヤ」など)』を用いる敬語体系である。大阪湾岸におけるテヤ敬語の東限は、昭和33年に鎌田良二が神戸市須磨区から大阪市までの1800人の中高生を対象にした調査から、神戸市東灘区の住吉川にあるとされ、西の御影でテヤ専用者が72%、東の本山でハル専用者が80%であった(テヤは灘区で82%、芦屋市で0%)。しかし戦中の東灘区御影地域(当時の御影町)を描いた野坂昭如の小説『火垂るの墓』ではテヤ敬語が登場したのは1度きりで、敬語体系は摂津方言のそれと軌を一にする。この事について東灘区が空襲の多大な被害に遭い復興の中で一時的に神戸との同一化が進んだ事が原因として挙げられる。ハル敬語も併用されるが大阪と同様の「ハル」ではなく、原型に近い「ナハル」が用いられる。テヤ敬語は大阪弁との平均化によって東から消滅しつつある。最近ではテヤ敬語よりもハル敬語が優勢になりつつある。「ウ」を東日本式のではなくで発音(西日本方言一般の特徴)したり、ジ・ズを破擦音ではなく必ず摩擦音で発音する事(京都から広島にかけての特徴)を除けば、標準語とほぼ同一の音韻体系を有する。すなわち合拗音は元々使われず、四つ仮名はジとヂ・ズとヅの区別がない。ただし系外音として「うん」同様のぞんざいな肯定に鼻から呼気を抜いて無声の「ン」(『細雪』の大阪弁で「ふん」と表現される音)を用いる。動詞の仮定形は『連用形+タラ』に取って変わられたため殆ど廃退した。一段動詞は五段化したものが併用されるが不完全で、未然形以外は馴染みが薄い。変格活用の未然形は複雑で、カ行変格活用「来る」では未然形は「コ(ラ)」「キ(ラ)」を併用。サ行変格活用「する」では「セ」「シ」「サ」を併用。また、特例として「おます(存在動詞「おる」の丁寧語)」では未然形のみsがhに転訛して「オマヘ」となり「おまへん(ございません)」の形をとる。これらを除けば神戸弁の動詞の活用は大阪弁とほぼ共通する。「雨が降ろと風が吹こと(雨が降ろうと風が吹こうと)」というような<未然形による推量>に使われる音便変化形(amu>au>o)が存在する点も標準語・大阪弁と同様である。命令法については命令形と連用形のそれぞれを単独使用できる。連用形を用いた方がニュアンスは丁寧で、多用される。例えば「付ける」の命令形と連用形はどちらも「付け」と書くが、連用形の「ツケ」(低高)に対し命令形の方は拍内下降を含み、正確には「ツケェ」(低高低)と発音する。「漬ける」では連用形が「ツケ」(高高)、命令形が「ツケ」(高低)となる。一方形容詞の仮定形はケレバ>ケリャ>ケラと直音化した。西日本諸方言の特徴として連用形にウ音便が適用される。近畿方言一般の特徴として語幹形があり、「無い」「良い」以外ではそれ単独で詠嘆法とできる。
出典:wikipedia
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