大気圏再突入(たいきけんさいとつにゅう、英語: atmospheric reentry)は、宇宙船などが真空に近い宇宙空間から地球などの大気圏に進入すること。単に再突入(さいとつにゅう、reentry)ともいう。宇宙飛行においては最も危険が大きいフェイズのひとつである。大気圏突入(たいきけんとつにゅう、atmospheric entry)と言う場合は隕石など外来の物体も含む広義の使われ方であるのに対し、大気圏再突入は地上から打ち上げた宇宙機や物体の帰還に限って言う。大気圏再突入技術の開発は、ロケット・弾道ミサイルの技術と伴に発達した。特に、冷戦初期において、宇宙開発競争・弾道ミサイル開発競争が行なわれ、アメリカ合衆国とソビエト連邦を中心に技術開発が行われている。長距離弾道ミサイルの弾頭にとって、着弾に至るまでの経路において大気圏再突入は避けられないものであり、必須の技術であったことから技術開発を促進した。有人宇宙船の開発も同様に再突入は必須であり、その技術開発を促進させている。1920年代には、すでにロバート・ゴダードが再突入に際し、熱遮蔽の必要性を指摘している。物体が大気圏に突入する際には熱の壁による空力加熱(断熱圧縮)が発生し、例えば標準大気でマッハ3の突入速度の場合、理論値でよどみ点温度350℃を超える(「空気との摩擦」により温度が上昇すると言われるが誤りである)。再突入の条件は、適切な軌道離脱タイミングと機体の角度(進入角度とはいわない)である。タイミングがわずかでもずれると着陸地点が大幅に変わる。また、「角度が浅いと大気に弾かれる」というのは間違った解釈である。有人宇宙船の場合は、進行方向に対し斜めの姿勢をとるなどして大気で揚力を発生させて「滑空」することで速度や高度を調整し、最高温度の上昇を防ぐと同時に宇宙飛行士にかかる加速度を軽減するのが一般的である。 アポロ宇宙船の頃から、初期のスペースシャトルにおいても、再突入時に宇宙船がプラズマに囲まれている間は外部との通信が不可能となっていた。データ中継衛星の整備後は、スペースシャトルの再突入時でも、プラズマの希薄な機体上方のアンテナを使って、静止軌道のデータ中継衛星を介した通信が可能となった。空気抵抗で減速し地上に接近するとパラシュートなどでさらに速度を落とし、着陸あるいは着水する。太平洋と大西洋に接しているアメリカでは主にアポロ宇宙船やマーキュリー宇宙船に見られる様に着水を行い、接している海がほとんど北極海というロシア(及びソ連)ではソユーズで見られる様に地表近くで逆噴射ロケットを噴かし大きく減速して着陸している。なお、ガガーリンの乗ったボストークは逆噴射ロケットを持たず、パラシュートで減速後、戦闘機のように乗員を座席ごと船外へ射出していた。再突入時に起きた死亡事故としては、がある。その他のトラブル事例としては、耐熱パネルが外れかかったため逆推進ロケットを分離せずに突入(後にセンサーの誤報と分かった)(マーキュリー6号)、逆推進システムがカプセルから分離しないまま突入(ボストーク1号、ソユーズ5号)、逆噴射に失敗(ソユーズTM-5)、予定外の場所に着地(平原のはずが森や湖)などのトラブルがある。低軌道の人工衛星などで、制御が可能で、回収の必要がないものやできないもの(例:ミールやプログレス補給船など)は、役目を終えるとスペースデブリの発生源にならないように再突入(制御再突入、制御落下、コントロールド・リエントリなどともいう)させられる。この場合は故意に突入角度を深く取り、地表に落下する前に燃え尽きるようにすること、たとえ破片が残っても海などへ落下させることなどが求められる。なお、地球の低周回軌道上の制御を失った衛星やロケットの上段も、いずれは空気抵抗により大気圏に再突入し地球に落下するが、この場合はどこに落ちるかは分からない。静止軌道投入に失敗した通信衛星で、制御突入させた例としては、2002年12月のAstra-1Kと、2012年3月のExpress-AM4がある。落下物による人的被害を防ぐため、NASAのガイドラインでは落下範囲が8m(統計的に人的被害が出る確率が1/10000)以上になるものについては制御落下を行うことが推奨されている。制御落下計画は以下の2点を満たさなければならない。再突入の際、衛星は中間圏(高度80km)に突入した時点で急速に破壊が始まり速度低下するが、落下物がどこに落ちるかは形状、材質により異なってくる。具体的にはアルミニウムよりは耐熱性の高いチタンの方が地表に落下する可能性が高い。また、中が空洞の燃料タンクは衛星の破壊が始まった地点から数百キロ程度の地点に落ちるが、リアクションホイールは千キロ以上離れたところに落ちることもある。上記の通り衛星の破壊が始まる地点は、衛星が中間圏に突入した地点となるため、再突入の際の軌道は円軌道の半径を次第に狭めるのではなく、マヌーバによって楕円軌道に変化させ、その近地点(ペリジー)を落下予定地点に合わせることで行う。月軌道以遠から無人宇宙機が直接地球の大気圏に再突入した事例は、2004年9月のジェネシス、2006年1月のスターダスト(いずれもサンプルリターン用カプセルのみ)、2010年6月のはやぶさ(はやぶさ本体およびサンプルリターン用カプセル)がある。月軌道も含めれば1970年 - 1976年に行なわれたルナ計画のサンプルリターン機(16・20・24号)も挙げられる。また大気圏(地球の大気を参照)や再突入の定義にもよるが、はやぶさと同じ MUSESシリーズの元祖ひてんも1991年に月以遠の軌道から上空120 kmの地球大気で空力ブレーキを成功させ軌道変更に成功している。これらはいずれも高速度で再突入している点が特徴である。地球重力圏の限界や月軌道から突入した探査機で11 km/s程度、惑星軌道から帰還したはやぶさとスターダストは12 km/sを超える再突入速度を記録している。1960年代から1980年代にかけて、ソ連の多数の金星探査機とアメリカのパイオニア・ヴィーナス2号が金星の大気圏に突入した。1970年代にソ連とアメリカ、1990年代以降もアメリカの多数の火星探査機と欧州のビーグル2が火星の大気圏に突入した。金星探査機・火星探査機とも地表に到達する前に通信途絶したものが少なくない。1995年12月にはガリレオのプローブが木星大気圏(上層部)に突入した。これは制御された大気圏突入としては最も高速なもので、速度47.4km/sec、減速度は230Gに達した。ガリレオ本体も2003年9月に木星大気圏に突入した。2005年1月、カッシーニに搭載されていたホイヘンス・プローブが土星の衛星タイタンの大気圏に突入、着陸した。NASAでは傘状の膨張型大気圏再突入実験装置(IRVE)を開発中である。これを将来の火星・木星、そして土星などの探査機に搭載する予定である。弾道ミサイルでは、弾頭(主に核弾頭)は先の尖った円錐状の耐熱カプセルである再突入体 (re-entry vehicle、RV) に搭載される。再突入時の速度はIRBMでも秒速2km程度、ICBMであれば秒速約7km程度になるので、着弾までにRVの大部分が損耗し半球状になってしまう。なお、日本が耐熱タイル技術の開発に消極的だったのは、核ミサイル保有の疑いを減らすためであったといわれている。日本が実施した大気圏再突入機として、以下の物がある。任務の最後に制御落下させた物には、以下の物がある。落下地点は南太平洋上。他にも、寿命が尽きた後に空気抵抗で高度が低くなり大気圏に再突入した衛星は数多くあるが、ここでは省略する。なお、意図的に再突入を早めることを予定していた衛星には以下の物がある。また、弾道飛行で高度100km以上に達する日本の観測ロケットの中にも、パラシュート降下で回収されるものがある。このほか日本で回収が行われている再突入体の例としては、高度100km以上で切り離されたペイロードフェアリングも挙げられるが、船舶航行上の安全が目的とされており、ここでは割愛する。アポロ13号事故の史実を元にした映画『アポロ13』や、映画『』、野尻抱介の小説『ロケットガール』シリーズなど、宇宙旅行あるいは宇宙開発が関係するフィクションでも、再突入はスリリングな場面として描かれることが多い。川端裕人の小説『夏のロケット』や映画『明日があるさ THE MOVIE』では、民間人による宇宙船の打ち上げが扱われているが、これらの中でも再突入時の耐熱対策は重要なウェイトを占めている。レイ・ブラッドベリの短編小説『万華鏡』では、事故により宇宙服ひとつで投げ出された宇宙飛行士がそのまま大気圏突入して燃え尽きる。その場面は石ノ森章太郎の漫画『サイボーグ009』などでもオマージュされている。映画『007 ムーンレイカー』、テレビドラマ『謎の円盤UFO』、アニメ『機動戦士ガンダム』や以後の作品群など、宇宙戦争を題材にしたフィクションでも大気圏突入寸前/突入中に実施される戦闘の描写は多く、戦闘の影響で突入軌道がずれて予定外の場所に降りてしまったり、大気圏突入の能力を持たない兵器や艦艇が地球に落下して燃え尽きるシーンなどが見られる。
出典:wikipedia
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