はたかぜ型護衛艦(はたかぜがたごえいかん、)は、海上自衛隊が運用するミサイル護衛艦(DDG)の艦級。計画番号はF112。ネームシップの建造単価は約599億円であった。たちかぜ型(46DDG)に続く第三世代ミサイル護衛艦として、五三・五六中業中の昭和56・58年度計画で計2隻が建造された。海上自衛隊は、第1次防衛力整備計画期間中の「あまつかぜ」(35DDG)によってミサイル護衛艦(DDG)の整備に着手した。たちかぜ型護衛艦3隻(46/48/53DDG)の整備によって、五三中業の時点で、8艦8機体制下の護衛艦隊に必要な8隻のミサイル護衛艦のうち半分が充足することとなった。これらの艦は、いずれもアメリカ海軍のチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦に準じて、艦後部にターター・システムを搭載する設計を採用していたことから、ミサイルの射界はおおむね後方に限られた。これは適宜回頭・変針することによって補うことはできるが、戦術行動の自由度という観点からは、前方にターター・システムを装備した艦を従来艦とペアで配備するほうが望ましいことは明らかであった。このことから、海上自衛隊では、ミサイル護衛艦の5~8隻目は、船体前部にターター・システムを装備した新型艦とすることを決定した。これによって建造されたのが本型である。設計面では、本型にやや遅れて計画が進められていたあさぎり型(58DD)との共通点が多くなっており、船型も、全通上甲板を有する長船首楼型とされている。また顕著なナックルを有するのも同様である。ただし長さ/幅比(L/B比)は9.1と、はるな型(43/45DDH)に近い幅広の船型とされた(たちかぜ型は10、あさぎり型は9.4)。これはガスタービン主機の採用によって機関部重量が減少し、一方でCIWSやSSMなど搭載装備が増加したことによる重心上昇に対して、復原性を確保するための措置であった。またシアは少ないものとされている一方で、護衛艦としては珍しくブルワークを設けている。これは、艦首甲板のミサイル発射機を用いてミサイルの搭載・陸揚作業を行うための甲板平坦部を確保するとともに、凌波性も確保するための措置であった。8艦8機体制下として初めて計画されたミサイル護衛艦として、艦尾甲板をヘリコプター甲板として設定している。ただしハンガーを設置しないため固有の艦載機はもたないほか、通常の状態では所要の甲板長を確保できないことから、発着の際には2番砲の砲身を90度横に向けることで対処している。また発着の安全性向上の為、ミサイル護衛艦として初めてフィンスタビライザーが装備された。なお2番艦「しまかぜ」では、同年度の「あさぎり」(58DD)と同様、大きな把駐力を期待できる新型のAC-14型の錨を採用している。主機関としては、ミサイル護衛艦としては初めてガスタービンエンジンを採用している。あさぎり型(58DD)で大出力のスペイが搭載予定となったことを受けて、このスペイSM1Aと、はつゆき型(52DD)の高速機であるロールス・ロイス オリンパスTM3BをCOGAG方式に配することで、1軸あたり36,000馬力を確保している。このような異機種ガスタービンの組み合わせによるCOGAG構成は、世界に類を見ないものであった。ただし入手可能な主機関の出力と船体寸法を考慮して、最大速力は、部隊運用上の許容最低値である30ノットと妥協された(たちかぜ型は32ノット)。また船体寸法の制約上、たちかぜ型を含む蒸気タービン艦のように機関部をシフト配置とすることができず、はつゆき型と同様のパラレル配置とされている。なお、本型は推進装置の水中放射雑音の低減対策を総合的に実施した初の護衛艦であり、しらね型(50/52DDH)で導入されたハル・マスカーおよびプレリーに加えて、主機・補機や減速機の防振支持化や主要配管の防振対策、防振材の大量使用や防振継手の採用など多岐にわたる措置が徹底された。電源としては、ガスタービン駆動およびディーゼル駆動の主発電機を各1基(出力はいずれも1,200キロワット)を第1・3機械室にそれぞれ配置するとともに、ディーゼル非常発電機(300キロワット)を第3甲板の船体前後に分散配置している。ガスタービン主発電機の原動機は川崎重工業M1A-05ガスタービンエンジンであるが、これは第1世代護衛艦などで搭載されたM1A-02の強化版であった。本型の武器システムは、基本的に「さわかぜ」(53DDG)のものを踏襲している。特にSAM・CICシステムはアメリカ海軍のカリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦の半分の能力を備えており、イージス以前の在来型ミサイル駆逐艦としては頂点に立つものとされていた。戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置は、「さわかぜ」のOYQ-4に改善を加えたOYQ-4-1である。電子計算機としてはAN/UYK-7 2基、TDSコンソールとしては、大型のAN/UYA-4(OJ-197)1基および標準のAN/UYA-4(OJ-194B)9基が配されており、ターター艦としては極めて充実したものとなっている。このために戦闘指揮所(CIC)や関連機器室、空調設備はたちかぜ型と比して大幅に拡張する必要があったが、はつゆき型以来標準となったCIC船体内配置化によって、十分な容積を確保した。3次元レーダーは「さわかぜ」と同型のAN/SPS-52Cとされた。「たちかぜ」(46DDG)の建造当初に搭載されていたOYQ-1とAN/SPS-52Bレーダーの組み合わせでは、目標情報は手動入力、追尾も半自動式であったのに対し、本型のシステムでは自動探知・自動追尾が可能となったため、システムとしての対空目標追尾能力は著しく向上している。対空捜索レーダーはOPS-11Cを後檣頂部に、対水上捜索レーダーはOPS-28を前檣頂部に装備した。OPS-11は、当初計画では前檣のもっと高い位置に配されていたが、ガスタービンの排気の影響を避けるために後檣を新設してここに移動したものである。また電子戦システムとしては、NOLQ-1-3電波探知妨害装置(ESM/ECM)およびOLR-9Bミサイル警報装置が装備された。これらはいずれも「さわかぜ」と同様であった。ソナーについても「さわかぜ」と同様で、OQS-4(I)をバウ・ソナーとして装備している。本型の主要な武器システムとなるのはターターD・システムである。そのサブシステムはいずれも「さわかぜ」(53DDG)と同型で、Mk.74 mod.13ミサイル射撃指揮装置(GMFCS)、Mk.13 mod.4 ミサイル発射機(GMLS)、RIM-66B/E スタンダードMR(SM-1MR)艦隊防空ミサイル(SAM)から構成される。上記のとおり、本型では艦の前方象限での交戦能力が求められたことから、GMLSは艦首甲板に、また2基のGMFCSも前部上構上に配されている。就役後、スタンダードSM-2の運用能力付与、またアメリカ海軍がターターD搭載艦に対して行ったNTU改修に準じた近代化改修も検討されたものの、イージスシステム搭載ミサイル護衛艦導入を優先する観点から、これは見送られている。なお、「さわかぜ」ではMk.13 GMLSを用いてハープーン艦対艦ミサイルの運用を行っていたが、その分だけSM-1MRに充当される弾庫容量が奪われることから、本型では、あさぎり型(58DD)と同様に、ハープーン専用の3連装発射筒2基を煙突後部両舷の01甲板上に対向装備として、Mk.13 mod.4 GMLSはSM-1MR専用としている。主砲としては73式54口径5インチ単装速射砲を前部甲板室上と後甲板上に1基ずつ搭載、砲射撃指揮装置(GFCS)としては艦橋構造物上に81式射撃指揮装置2型22(FCS-2-22)を搭載した。また近接防空用として、高性能20mm機関砲(CIWS)2基が後部上構両舷に装備されている。前部砲塔直後にアスロック用の74式アスロック・ランチャーを搭載するのはたちかぜ型(46DDG)と同様だが、はつゆき型(52DD)以来採用された弾庫からの直接装填方式が踏襲されたことから、ランチャーの装備位置は艦橋構造物寄りとなり、また同構造物前面は傾斜して装填用の扉が設置されたものとなった。また68式3連装短魚雷発射管も、従来通り装備されており、装備位置はSSM直下の上甲板上両舷である。水中攻撃指揮装置は「さわかぜ」やはつゆき型、あさぎり型と同じくSFCS-6である。当初の計画では4隻建造される予定だったが、3番艦の計画時点でイージスシステム搭載護衛艦(後のこんごう型(63DDG))の導入の見通しが立ったことから、本型の建造は2隻にとどまることとなった。実際、昭和60年度予算では本型の3番艦とあさぎり型2隻を要求したものの、大蔵省査定の結果、後者3隻の建造が認められるという経緯があった。復活折衝に当たった防衛庁(現 防衛省)側も既に、イージス艦導入を視野に入れていた結果である。上記の通り、一時は近代化改修の計画があったものの実現せず、就役後は大きな変化なく活動を続けている。平成24年、25年、27年、28年度予算で延べ4隻分の艦齢延伸のための先行的部品調達予算が、平成26年度予算で1隻分の改修予算が計上された。艦齢延伸措置を行い、運用期間をこれまでより5から10年程度延伸する計画を予定している。
出典:wikipedia
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