フロッピーディスク (floppy disk) は、磁気ディスクの一種で、磁性体を塗布・蒸着した樹脂製小円盤を樹脂製の保護ケースに入れたものである。本来は記録媒体(メディア)が「フロッピーディスク」または「フロッピーディスクメディア」で、駆動装置(駆動し読み書きする装置)が「フロッピーディスクドライブ」(FDD) と呼ばれる。両者とも略して「フロッピー」などと呼ばれることも多い。また「フロッピィ」のように書き表すこともある。俗称の「フロッピーディスク」(floppy disk) が普及したが(レトロニム)、日本工業規格 (JIS) の用語集では「フレキシブルディスク」と「フレキシブルディスクカートリッジ」である。最初のフロッピーディスクは1971年にIBMが開発した。当時の名称は「フレキシブル・ディスケット」(flexible diskette) または「ディスケット」で、IBMの登録商標となった。IBMは現在、一般向けには「フロッピーディスク」の用語も併用している。かつては3 1/2インチ型媒体を使用する読取装置を「3.5型駆動機構」と呼んでいた。なお、「フレキシブル」も「フロッピー」も“柔らかい”の意味で命名されたもので、登場当初はメディアの構造が薄いディスクを薄い保護ケースに包んだ薄く柔らかいものであったためである。これに対して、従来の硬い磁気ディスクは「ハードディスク」や「ハードドライブ」と呼ばれるようになった。磁気ディスクの一種で、駆動装置からの取り外しが可能(リムーバブル)な記録媒体(メディア)である。磁性体を塗布した厚さ0.075ミリのプラスチック円盤を駆動装置で回転させ、円盤の片面ないしは両面に同心円状に信号を記録する。現時点で一般的なハードディスクとは異なり、駆動装置から媒体を取り外すことができることが特徴である。ディスクの直径により、8インチ、5 1/4 (5.25) インチ、3 1/2 (3.5) インチの3種が主に知られる。1969年に読み取り専用の8インチフロッピーディスクが生まれてから1990年代末にかけて、小型コンピュータのデータの記録に広く用いられた。その後、小型コンピュータの性能の向上により、扱うデータの容量も増大したため、CDやDVD、BDなどの記録型光ディスクドライブがパソコンに標準搭載されるようになり、2000年頃以降は徐々に廃れていっている。Windows XPおよびWindows Vistaが5.25インチ型にも対応はしているものの、最も普及した3.5インチ型以外を見る機会は少ない。2000年頃よりノートパソコンで、続いてデスクトップタイプでもフロッピーディスクドライブを内蔵していない製品が増えた。このような製品でOSインストール時のドライバの組み込みバックアップや復元作業など何らかの事情でフロッピーディスクを使う必要がある場合、USB接続による外付けのドライブを利用する。2000年代後半頃には市販のパソコンではほぼ搭載されなくなり、自作パソコンでも非対応のマザーボードが出回るなど、事実上レガシーデバイス扱いとなっている。代替メディアとしては、記録型CDや記録型DVD、記録型BD、MO、USBメモリ、SDメモリーカード等の各種メディアがあり、配布、保管などの役割を分けて普及している。現在では、BIOSのメニューのみで認識させられる数少ないメディアである。一部では需要があり、SDカードやメモリースティック、コンパクトフラッシュ、スマートメディアなどのカードリーダーと3.5インチフロッピードライブを一つにまとめた製品が販売されている。また3.5インチ型は最も普及していたことから、現在でもファイルの保存などに使われるマークの図柄(アイコン)として、多くのソフトでその形がモデルにされている。磁気ヘッドがメディアに接触する際、ヘッドの接触痕跡がメディアに残る。この痕跡はヘッド毎にユニークであるといわれる。記憶媒体の中では磁気テープと並び、読み取りの痕跡が媒体に残る数少ないメディアである。円盤(ベース)の直径、ないしその外側の正方形状の外装の辺の長さで分類される。主要な仕様を挙げれば200mm≒8インチ、130mm≒5.25インチ、90mm≒3.5インチなどがある。5.25インチは5インチと呼ばれることも多い(3.5インチについては、同時期に3インチ前後の仕様が複数提唱されていた経緯から、誤解を避けるために3インチと呼ばれることは稀である)。先行製品の磁気ディスクでは金属ベースだったこともあり(初期には)ディスクを剥き出しで扱うものもあったが、フロッピーディスクではその名の通り薄い樹脂のベースであるため、ほぼ全てのものが、おおよそ正方形の外装から取り出さず、常に入れたまま使うようになっている。駆動とアクセスのために、外装の中央と、1箇所に放射状の穴が開いている。外装は主要な仕様では、8インチと5.25インチのものは薄く弱い樹脂製、3.5インチでは硬質のハードケースになっている。他の仕様もだいたいそのどちらかに似ている。内側には不織布による内張りがある。3.5インチのケースのヘッドアクセス用の穴がある部分は、金属またはプラスチック製のシャッターで保護される。シャッターはディスクドライブ内部でスライドして開き、閉じるときはケース内のばねの力で閉じる。なお、このシャッターにはロック機構は無いため、手で開ける事もできてしまうのは、メディア保護の点では良くない。外装は「エンベロープ」とも「ジャケット」とも呼ばれるが、ディスクの一部とも言えるこの外装ではなく、8インチや5.25インチのディスクにおいて、保管時にそのさらに外側に被せる、1方向が開いた袋(紙製が多かった)のこともまた「エンベロープ」とも「ジャケット」とも呼ばれることがあり、混同に注意を要する。円盤が入っている正方形状の外装は紙製ではない。最初期にソニーが発売した3.5インチディスクドライブはシャッター自動開閉機能がなく、ディスクの出し入れ前後に手でシャッターをスライドさせて開閉する必要があった。やがてドライブにシャッター自動開閉機能が搭載されたが、その頃は自動開閉機能のないドライブとの互換のために、手でシャッターを開けると開けた位置でロックされ、"PINCH"と書かれた部分(肩部分)をつまむとロックが解除されてシャッターが閉じるという機構のディスクが発売された。このディスクは自動開閉機能搭載のドライブには手でシャッターを開けずに挿入することができた。やがて自動開閉機能が一般的になり、開けたままロックできる機構は消えていった。日本ではSIを使用し、計量法の関係上、正式な製品名称では、サイズを具体的にインチで表現することが禁じられており、サイズはmmで表し、インチの数字については「型」といった表現の使用が見られる。例:5インチ、90mm 3.5インチの一般的な2HDのメディアでは、約1.2-1.4MB (FAT12) の容量があり、現在では90mm 3.5インチのものが主流である。さらなる小型化を試みる動きもあり、80mm 3インチや65mm 2.5インチも発表されたが、計測器など一部機器の記録メディアとしての利用にとどまり、主流にはならなかった。また、大容量化を試みた製品も数多く存在していた。概要を大容量フロッピーディスクの節に記す。1枚で1MB程度という容量は、現在のように画像や音声データを扱う用途では不足する。しかしフロッピーの代替となる標準メディアがなかなか現れなかった。また、かつてのPC/AT互換機では唯一の起動可能 (Bootable) かつ読み書き可能なリムーバブルメディアだった。そのため、主に起動用や一部周辺機器のデバイスドライバなど、少量のデータの受け渡し用として広く普及し、現在でも利用されている。なお、類似のものに、クイックディスクやスーパーディスクなどがあるが、ともに広く普及することはなかった。読み込みのみを許可し、書き込みを禁止する設定ができ、「書き込み禁止」または「ライトプロテクト」と言う。その書き込み禁止の操作は各メディアにより異なる。ノッチを元に戻す、シールを剥がす、シールを貼るなどの逆操作を行えば、再び書き込み可能状態になる。ディスクドライブは、ノッチまたはシールの位置に配置した光センサまたはスイッチで、書き込み禁止の状態を判別する。他のディスクメディアと基本的には同様であるが、簡単に説明する。ディスクには、片面であれば1枚、両面であれば2枚の「サーフェース」がある。(各)サーフェースには、同心円状に独立した多数の「トラック」がある(スパイラル状のディスクもあるが稀)。各トラックは一定の角度毎に複数の「セクタ」に分けられている。フロッピーではほぼ全てのディスクが線速度一定ではなく角速度一定のため、内周と外周で記録密度が異なる。セクタ位置の判別において、各セクタの開始角度に対応する内周の記憶領域外の位置に穴(インデックスホール)が開けてあり、光学センサで検出するなどといった機械的方式がハードセクタ方式、第1セクタの位置のみ穴があり後続セクタの位置を各トラックの物理フォーマットにより磁気パターンで検出する方式がソフトセクタ方式である。読み書きの処理が行われるタイミングによっては、論理的には連続したセクタを、物理的には1セクタおき、あるいは数セクタおきに配置すると、前のセクタを読み込んで処理をした後に、ちょうどタイミング良く次のセクタの読み出し位置に来て、連続して読み書き可能にできることがある。この技法をインターリービングという(インターリーブ#ディスク・ストレージでのインターリーブ)。同様の理屈でトラックごとに第1セクタの位置をずらす手法もある。フロッピーディスクの容量表記には2進接頭辞が使用される場合が多い。しかし1.44MBなど一部に独特の表記もあり、1.44MBは1.44×1000×1024バイトである。詳細はメガバイト#実際の使い分けを参照。また各種フォーマットの容量についての詳細は下記#フォーマットを参照。3.5インチの2DDと2HDは、磁性体の品質の要件(塗布厚など)と、2HDのみ外側ケースに穴(HD検知孔)が開いている以外の差はない。3.5インチの2HCと2HDについては、メディア自体は全く同じ2HDであり、物理フォーマット(ローレベルフォーマット)が違うだけである。具体的には1トラックあたりのセクター数の違いである。PC-9800シリーズで用いられる2HDフォーマットとはこれに加えて1セクターあたりのバイト数(セクター長)とトラック数も異なる。フロッピーディスクでは物理フォーマットという言葉は、ハードウェア形式を指す用語ではなく、論理フォーマットの一段下のレベルのフォーマットを意味し、セクター長やトラック数などのパターンのマッピングを指すものである。フロッピーディスクは磁気ディスクの一種なので、磁気に弱い。ある程度以上に強力な磁石を近づけると、記録されている情報は破壊されてしまう。ホコリなどの異物の付着や汚れにも弱く、記録面が汚れると情報が読み取れなくなり、破壊に至ることがある。また、高温多湿や紫外線も嫌う。常に磁気ヘッドと接触した状態で読み書きを行うために少しずつ摩耗し、利用には限度がある。アクセス時以外にはヘッドをディスクから分離する機構のドライブもあるが、現在はヘッドとディスクが常に接触するドライブが一般的である。摩耗が重なるとディスクの磁気が弱まり、記録された情報を維持できなくなる。ただし、その磨耗は一般使用では無視できるレベルである。JISでは1トラックにつき300万回は使用できる耐久性を持たせるよう定められている。フロッピーディスクは、適切な使用と保管をしていれば、100年程度は情報を維持できるとされる。しかし、雑に扱うと、破壊に至る可能性が高くなるデリケートな記録媒体であり、保管方法によっては数年程度で読み込み不良となる場合もある。寿命を延ばすには、磁気、ホコリ、汚れ、高温多湿、紫外線を避ける保管方法が必須となる。もともとフロッピーディスクのようなフレキシブルな円盤に磁気情報を記録させようとする報告は1960年代からあり、例えばピアソンの研究報告では容量12.5KB、40トラック、回転速度は1800rpmでヘッドは非接触式のものであった。1970年、IBMによって370モデルのIPLローダーとして8インチのIBM23 (23FD-2) フロッピーディスクが開発された。容量は80キロバイト。1972年にはやはりIBMから新たなIBM33フロッピーディスクが発売。これは容量400KB、ディスケット1枚で1900枚のパンチカードに匹敵するデータを格納できる、当時としては画期的なものであり、フロッピーディスクの基本にあたる。その後ディスクを両面化し容量を800KBとしたIBM43フロッピーディスクとなり、さらに倍密度化して1.6MBのIBM53フロッピーディスクが登場する。その後小型コンピュータやワードプロセッサの記憶媒体として利用されていく。初期の8ビットや16ビットパソコン用としても1980年代後半前後まで使われていた。ミニフロッピーディスクとも呼ばれる。デスクの上に載せるには8インチフロッピーディスクドライブは大きすぎると考えられ、その小型化が要求された。シュガートが興したメーカーである米シュガートアソシエイツは1976年に、SA-400と呼ばれる5.25インチのディスクとドライブを発表・発売した。当初は容量が109.4KB(1S、片面単密)と小さく、大いにヒットした。なお1980年には両面・倍密度として容量を約4倍の437.5KBとしたSA450が発売されている。また小型化により、コンピュータへのドライブの内蔵も可能となった。また小型化に伴い容量は一時的に減少している。1978年にアップルコンピュータのApple IIでは容量100KBのドライブが採用された。その後、フロッピーディスクはコンピュータにとって必要不可欠なものとなり、広く普及していった。5.25インチのディスクは1D(片面倍密度)や2D(両面倍密度)などに発展し、2DD(両面倍密度倍トラック)を経て、やがて主流となる2HD(両面高密度)に至る。日本では電電公社(現在のNTT)が5.25インチ2HDドライブの開発を行なってきたため、発表当時は電電公社フォーマットドライブとも言われた。これは容量が約1.2MBで、電気的にも8インチドライブと互換性をとっており、8インチドライブからの代替が可能だったのもスムーズな移行につながった。ごく古いMS-DOS等の5.25インチ2HD用ディスクフォーマットを持たないオペレーティングシステム (OS) でも、これを8インチ2Dディスク用フォーマットで代用できた。ただし信頼性は8インチディスク同様に問題があり、磁気に弱く、外装も変形しやすく、それに入った磁性体は、常にヘッド部が露出し、さらに磁性体を塗布した円盤の中央部も露出している。このため保管時は専用の封筒を用いねばならない。また開口部からは常に塵や埃が内部に侵入する危険性があり、その他その脆弱性により取り扱いには相当な注意を払うことが要求されているものであった。なおヘッドと磁性体は接触製であるため摩耗が心配されるが、これは当時1トラックの連続使用で100万パス(360rpmで46時間)が保証されていた。また、ドライブが磁性体の円盤中央部をクランプしチャッキングする際の精度やその部分の耐久性も弱点であった。1980年、ソニーが3.5インチ (90mm) のディスクを開発し、1981年発売の英文ワープロ「シリーズ35」の外部記録媒体として採用・発売した。なお外付け形式ではなく、ドライブはワープロ本体に2台内蔵されている。標準規格では「90mmフレキシブルディスク」が正しく、3.5インチフロッピーディスクは通称。マイクロフロッピーディスクとも呼ばれる。また従来は磁気ディスクは薄い樹脂製の「袋」に近いものに収められていたが、それをプラスチック製の硬質なケースに改めている。なお、3.5インチ、すなわち外径90mm、内径25mmと言うサイズは、ソニーのプロジェクトリーダー中山正之が、本人の言葉によれば「えいやー」と決めたものであり、結局それが変更なく標準と落ち着いてしまったものであり、深い意味が有るサイズではないらしい。本ディスクはもともとはソニーが自社のワードプロセッサーに内蔵させるために開発したもの。それに当たり他社をリードする、より小型のフロッピーディスクが計画された。また当時の5.25インチフロッピーディスクは容量250KBであったが、小型化を実現しつつ容量は4倍の1MBが目標とされた。このため、従来のディスクでは磁性体にガンマヘマタイトを使用していたところ、より高密度化が可能でコバルト・ガンマ酸化鉄を採用した。またデータ更新時の磁気の消し残りを解消するため、磁性体の塗布厚を減少させている。密度は従来48TPI (Track par Inch) であったものを135TPIに向上させ、磁気ヘッドもビデオテープレコーダーのヘッドに用いられていた技術を応用し、新たに開発された。さらに脆弱であった8インチ/5.25インチフロッピーディスクの問題を解消するため、高コストは信頼性のためやむを得ないとし磁性体のケースは比較的強靱な厚さ3.3mmのプラスティック製とされた。従来のディスクは外装が剛性の低い樹脂であったため、ドライブの内部で外から間接的にディスクを押さえる事が可能であったが、3.5インチフロッピーディスクでは硬質のケースとしたため、それが行えない。このため、ケース内部に「リフター」と呼ばれる板バネがあり、それによって押さえを行っている。またやはりコストはかかるがヘッド部にはシャッターを設け、未使用時にはシャッターを閉じておくといった構造とし、異物の混入などを避け得る構造とした。なお、初期のものはこれの開閉は手動であり、手でシャッターを開けてからドライブに挿入し、ドライブから排出後は手動でピンチマークを締めこれを閉じる必要があったが、利用者から自動化への要求が多く寄せられ、後年は自動開閉式とされている。またやはりコストは増したがディスクのセンター部には金属製のハブを設け、ドライブはそれをチャックするシステムとした。これにより従来よりチャッキングの精度を上げると同時に、チャッキングを片面からのみ行うことによりケース中央の穴を片面に限定でき、異物の混入を防げるようになった。またドライブ側もチャッキングに要する部品を片面のみに限定することができるため、ドライブの薄型化にも貢献している。1980年末の「シリーズ35」発表時には、ワープロでなく3.5インチフロッピーディスクが注目を集め、翌年5月にはプロジェクトリーダーはフランスでIEEEの学会発表を行う。またソニーはディスクの普及のためにはじめてOEMを行う方針を打ち出すが、3.5インチフロッピーディスクの採用に至ったのは一社にとどまった。続いてパソコンへの採用も行われ、1982年に発売された同社製のSMC-70に最初に搭載された。また同年にはヒューレット・パッカードへ3年間に27万台の供給契約を締結、その後1983年にはアップルが導入を決定、マッキントッシュに採用され、ソニーは世界一のフロッピーディスクドライブ製造会社となった。1982年、ソニーはこのコミッティからの依頼を受け、以下の改良を行った。ソニーがこの3点を変更したことを受け、コミッティは全米規格協会 (American National Standards Institute: ANSI) に3.5インチ規格を提案し、1984年にはISO会議で規格が承認された。標準化案には他に3インチ、3.25インチ、4インチなどが提案されていたが、既にヒューレットパッカードやアップルが採用しておりデファクトスタンダードとなっている3.5インチフロッピーディスクが採用された。ただし各種パソコンメーカーは5.25インチフロッピーディスクドライブをそのまま置き換えられることを期待していたのに対し、ソニーは既にワープロ用として3.5インチフロッピーディスクを販売していたため、トラック数は70と80、回転数は300rpmと600rpm、転送レートは250Kbit/secと500Kbit/sec、と言った仕様が混在し、また接続ピンも5.25インチのドライブと互換性のある34ピンのものと、24ピンのものの二種類があった。3.5インチフロッピーディスクは従来は容量1MBのものであったが、その後当時もっとも標準的であった8インチフロッピーディスクと互換性がある、1.6MBの容量を持ったディスクへの要望が高まった。従来より磁性体を薄く塗布する技術が完成していたため、材料は共通化したままで1985年には容量1.6MBの「2HD」のディスクを発表、その後標準化される。1987年にはIBMでも採用されるに至った。この後3.5インチフロッピーディスクは大いに普及し、最盛期では世界市場で1995年にディスクが年間約45億枚、2002年にはドライブが年間約14000台となっている。だが1993年頃からCD-ROMが普及し始めたたことによって、ディスクの生産枚数は減少し始め、ドライブも2002年をピークに生産数は減少を始める。だが2004年頃までに、3.5インチフロッピーディスクドライブは、約1億台が生産された。ドライブがディスクの生産数減少後も長く生産されているのは、パーソナルコンピュータに標準で内蔵された期間が長かったためである。1980年 ソニーの英文ワープロ「シリーズ35」の外部記録媒体として採用。翌年発売。1982年 ソニーのパーソナルコンピュータSMC-70に搭載。1983年提唱のMSXが、1984年5月の発売時までに3.5インチに一本化されたこともあり、日本ではホビー用途の機種や、ワープロ専用機では普及が早かった。しかし、3.5インチのメディアは5.25インチより高価で、ゲームなどパッケージソフトの価格にも同封媒体による差があった。パソコン関連雑誌の付録メディアについては、「露出した金属を流通させてはならない」という付録に関する規制のため、3.5インチのメディアを付録として使用することが出来なかった。シャッターのプラスチック化は、価格よりもこの対策が主要因である。なお、チャッキング部分は露出していないため、金属製のままとされた。なお、後にはディスクと同じ厚さのボール紙で囲うことで金属部分を露出させないように対処した。また、ビジネス用途では、日本電気 (NEC) 製PC-9800シリーズなどの中期までは、互換性を重視して5.25インチが主流だった。だが、ホビーユースではいずれの16ビットパソコンも3.5インチを採用したため、両者間のデータ共有が少なからぬ問題となった。結局、家庭用では安価な3.5インチFDD標準搭載のホビーユースモデルに5.25インチFDDを外付けする手法で対応した。さらには、EPSON PCシリーズの一部では、3.5インチFDDと5.25インチFDDの両方を標準搭載したパソコンも発売された。1984年1月、アップルコンピュータのMacintoshが3.5インチ (400K) を採用したのを皮切りに、世界的にも各社が3.5インチを用いるようになった。1986年、IBMはIBM PC Convertibleで3.5インチ2DD (720KB) を採用。1987年にはPS/2とPS/55の全モデルで3.5インチを採用。下位機種は2DD (720KB)、上位機種は2DD (720KB) および2HD (1.44MB) を搭載した。後の上位機種には2ED (2.88MB) も追加された。この2HD (1.44MB) のフォーマットは2DD (720KB) のフォーマットを単純に2倍にした形である。5インチでの電電公社フォーマットをベースにした国産各社の3.5インチの2HD (1.2M) フォーマット(正確には1.21MBや1.23MBなど)とは互換性が無く、相互に読み書きできなかった。ただし、PS/2やPS/55は企業向けが中心であり、また当時のPC/AT互換機はまだ5.25インチが主流であり、2ED (2.88MB) はNeXTstationなどのワークステーションに採用された程度で、あまり普及しなかったため、影響は限られていた。しかし、1990年にDOS/Vが登場して1991年にOADGも3.5インチを推奨し、3.5インチ標準搭載のPC/AT互換機が一般家庭を含めて日本で本格的に普及すると、日本(PC-9800シリーズ、FMRシリーズ、FM TOWNSなど)と世界(PC/AT互換機)では両者で標準となった3.5インチの2HDフォーマットで互換性が無いという問題の影響が拡大し、PC/AT互換機の普及の過程で混乱があった。当初は、両者に共通のフォーマットである2DD (720KB) のフロッピーディスクや、ネットワークなどを利用したデータ交換が行われた。中には日本IBMのPS/55Zのようにオプションで1.2MBフォーマットのディスク読み出しに対応したドライブを搭載可能とした機種も存在した。次第に、3モードフロッピーディスクドライブ (720KB, 1.2MB, 1.44MB) が両者に普及した。2000年代後半から他の大容量電子媒体の登場に伴い、3.5インチFDの売り上げは大幅に落ち込んだ。2009年春に日立マクセルと三菱化学メディアがFD生産から撤退。最後までFD生産を続けたソニーも、2011年3月に中華人民共和国のメーカーに委託しているFDの生産を終了した。当初、フロッピーディスクは磁性体の塗布技術に難点があり、不良率が高かった。しかし、特定OS用の初期化作業時に全品検査する方式が導入されると、不良率が激減した。さらに、磁性体の塗布技術が向上し、1990年代前半には品質が安定した。その後は大容量化が図れず、日本ではコスト削減から製造ラインの国外移設により、品質も低下した。インターネット普及前は、本の付録などに3.5インチディスクが使われることも多かった。概ね2000年頃までフロッピーディスクは盛んに使われていたが、やがて光磁気ディスクや光学ドライブで書き換え可能なメディアが広まり、さらに読み書き速度も高速で大容量なフラッシュメモリ(特にUSBメモリ、およびSDメモリーカード(SDHC以上))が広まることで、フロッピーディスクは徐々に廃れつつある。また、本の付録としての使用は、出版社や著者のWebサイト上でのファイル公開という代替手段ができている。ただし、自作機市場では現在でも一定の需要がある。自らシステムメンテナンスを行う自作機ユーザーは、フロッピーディスクを「最後の起動手段」として常識的に搭載してきた。だが、近年のWindowsでは、フロッピー起動ではNTFSの読み書きをするには上級の知識と技術が必要な事から、この意味での搭載の意味は薄くなった。DSP版Windowsのライセンスがハードウェアとのセット(OSとハードウェアを一体製品)で販売されていた時期は、フロッピーディスクドライブとのセットが見られた。これは、フロッピードライブは今後発展がないと推測されるため交換する必要がなく、ライセンスを維持したまま他のパーツを自由に交換することができる上に安価であるためである。この販売手法が、フロッピーディスクドライブインターフェイスを搭載しないマザーボードが主流となったのちにも一部で継続され、DSP版Windowsを廉価に販売および購入する方法の一つになっていた。フロッピーディスクドライブの製造が各社で終息したこと、マザーボードからFDインターフェースが廃止により、この方法での販売も収束した。その他の需要と問題点については後述するレガシーシステムとしてのフロッピーディスクを参照。フロッピーディスクの磁性体特性は、規格に定められているか、あるいはデファクトスタンダードとして定着しており、メディアの差別化は磁性体をフィルムに固定するバインダーと呼ばれる接着剤に工夫を凝らしていた。磁性体の剥離を最小限に抑えヘッドの清浄性を保つもの、導電性を持たせて埃の付着を防止したもの等があった。現在でも古いメディアをドライブに挿入するとヘッドにカビが付着し、他メディア読み取りも不可となる事例がある。経時したメディア使用時、白い粉が噴いていないか確認するユーザーもいる。フロッピーディスクの記憶容量を増やすために、フロッピーディスクと上位互換を持ついくつかの製品が開発されたこともある。それらを総称して大容量フロッピーディスクという。しかしそれぞれ専用のディスクと専用のドライブが必要で、製品間の互換性もないため、普及しなかったものがほとんどである。前述の自作機パーツとしての用途が廃れた後も、世界各国の刺繍機やATM、医療、航空機関連の機器で未だにフロッピーディスクは現役であり、新規の生産が終了した現在もその需要は消滅していない。一例として西陣織では、織機に紋様の織り出し方を指示する紋意匠図の製作と製織の過程で、以前は「紋紙」と呼ばれる孔開き厚紙(歴史的には、コンピュータ以前の時代から使われていたパンチカードの由来である、イギリスで発明された織機のシステムそのものである)を使っていたが、1980年代に紋紙に代わって電子的な形式が制定され(コンピュータ柄システム)フロッピーディスクを使う機器が普及した。その後フロッピーディスクの生産打ち切りに伴い、ほとんどの織機が使えなくなるおそれを生じている。このような問題に対応するために京都市産業技術研究所でシステムが開発され、平成23年(2011年)から西陣織セミナーが開催されている。米国でも、2016年に今だに核兵器の運用部門にはフロッピーディスクが使われており、それらを始めとする旧式システムの維持管理に年間600億ドル(約6兆6000億円)以上も費やされることが問題となっている。国防総省は一刻も速くフロッピーの使用を停止する方針を発表しているが、新システム構築のために用意された投資額は旧システム維持費用の3分の1以下に留まっており、「簡単に言えば現在も機能しているため」旧システムは使われ続けている。これらは同省固有の現象ではなく、財務省やホワイトハウスでもフロッピーディスクや1950年台のプログラムが使われ続けている。これら旧システムには利点もあり、フロッピー機器はその古さゆえにネットから遮断されサイバー攻撃の影響を受けないこと、また長年使用されてきた信頼性と確実性は新規システムを上回ること等が指摘されている。ともあれフロッピーディスクの生産が終了した現在、これらの供給は各所ともリサイクル・ショップに頼っているのが現状であり、いずれもシステムの更新は早急に行われることが望ましい。
出典:wikipedia
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