パブリシティ権(パブリシティけん、)またはパブリシティの権利は、人に備わっている、顧客吸引力を中核とする経済的な価値(パブリシティ価値)を保護する権利を言う。パブリシティ権に言及した初めての判例は1953年にアメリカの裁判所で生まれた。その後もアメリカ国内でパブリシティ権を扱った裁判が繰り返されることにより、権利として確立された。芸能人やスポーツ選手に代表される、いわゆる有名人は有名であるがゆえに肖像権の行使が制限されていると解釈されている。一方で、有名人の肖像は経済的な価値を有するのも事実で、これを保護するべくパブリシティ権は生み出された。昨今では、成文法で保護を定めている国や地域はもちろんのこと、成文法とはなっていないいくらかの国――例えば日本――でも明確に保護されている。日本においてパブリシティ権が初めて俎上に上がった「マーク・レスター」事件や「おニャン子クラブ」事件の判決では財産権の一部であるとする見解が示唆された。パブリシティ権を財産権と見なせば、財産権であるために譲渡可能であるとする見識が成立する。ここでパブリシティ権を譲渡しても、自分の氏名や肖像を商品として利用することができなくなるのみで、当然のことながら、譲渡したとたん自身の氏名が利用不能になるというわけではない。この場合、パブリシティ権はある特定の人物の「顧客吸引力」が消滅するまで存続するということになる。こうした学説を持つ学者の一部には、基本的な性質は財産権としながらも、人格権との関わりが非常に強く、特殊な財産権であると考える学説や財産権と人格権の双方の成立を持ち合わせているとする学説を展開する学者も存在する。また、パブリシティ権は人格権の侵害で生ずる財産的利益を保護する人格権であるとする学説も存在する。最高裁判所はこれに比較的近い、「人格権に由来する権利の一内容を構成するもの」と判示している。また、ダービースタリオン事件の判決でも「著名人のこの権利をとらえて、「パブリシティ権」と呼ぶことは可能であるものの、この権利は、もともと人格権に根ざすものというべきである。」と判示されている。この見解に立つならば、パブリシティ権は当人の死亡を以て消滅し、譲渡も認められないと考えるのが自然となる。アメリカにおいては、いくらかの州が成文法を定めるほかは、判例のみで定められている。パブリシティ権に拠った裁判において原告はただ、パブリシティ権が保護する氏名等の使用の事実を摘示するのみでよいとされている。このパブリシティ権は前述のように強大な権利であるにもかかわらず、やに似たロボットを使用した宣伝など、適用範囲が写真などにとどまることなく拡がり続けている。物のパブリシティ権は、通常、否定される一方で、特定個人を想起させるような特定個人の物は、これの利用をパブリシティ権侵害と捉えうる。ケンタッキー州では、パブリシティ権を制定法で保護している。制定法のケンタッキー法第391章170条 () では、財産権であること及び著名人であれば死後50年に渡り有効な相続可能な権利として定めている。1907年著作権法には、肖像は本人の同意を得た場合のみ、頒布や公開が認められるという条項がある。この条項は、日本の旧著作権法第25条と同様に、嘱託者と著作者、被写体の関係を明らかにすることを目的に規定されたものであったが、マレーネ・ディートリヒ事件(2000年)の最高裁判決では、同条がパブリシティ権の根拠になることを示した。なお、同条に定められた「パブリシティ権」は死後10年の保護期間を有すると定められているが、ブルーエンジェル事件(後述)で「少なくとも10年の保護を与える」と判示したように、より長期の保護期間が与えられる可能性を否定しなかった。他方、後となる2007年の最高裁判決では同法第23条第3文の類推解釈により、パブリシティ権を死後10年と示した。1907年著作権法にいおける肖像を、裁判所は、「その肖像から生じる特徴で、まさに肖像本人固有のものを通じて認識可能な場合」(1979年サッカーゴール事件)や「本人が認識可能で特定可能である場合」(ブルーエンジェル事件、2000年)、つまり、サッカーのゴールキーパー背面や有名人のそっくりさんをも含める判示がされている。2015年現在もパブリシティ権が明文で示されているわけではないが、保護されるべきと解されている。日本において初めてパブリシティ権を認めたのはロッテが映画『小さな目撃者』の一部分を広告として使用したことがきっかけで起こされた「マーク・レスター」事件(東京地方裁判所昭和51年6月29日判決)である。この裁判では、「(いわゆる有名人の)人格的利益の保護は大幅に制限されると解し得る余地がある」「氏名や肖像を無許可で利用したことにうより精神的苦痛を受けた場合の損害賠償は、素材の使い方が評価・名声・印象を損なう場合に限られる」としながらも「(いわゆる有名人は)人格的利益の保護が減少する一方、当人の氏名や肖像は通常の人が持ち得ない利益を持っている」と判示された。平成元年(1989年)9月27日には東京地裁で「パブリシティ権」の文言が盛り込まれた判決が初めて下された。平成24年(2012年)2月2日の最高裁判所の判決で、以下に示す要件を満たさない場合はパブリシティ権の侵害が否定されると判示した。日本においては、マーク・レスター事件などの事例を経て、おニャン子クラブ事件控訴審判決において、パブリシティ権に基づく差止請求が認められるに至った。以下、ダービースタリオン事件控訴審判決を引用して解説する。本判決によれば、「氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」を「パブリシティ権」と呼ぶことが可能である。これはもともと人格権に根ざすものであり、いわゆる物のパブリシティ権は認められていない。また、一般人と著名人はパブリシティ権の範囲が異なること等も示した。1 著名人のパブリシティ権について自然人は、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有すると解すべきであるから(商標法4条1項8号参照)、著名人も、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有するということができる。もっとも、著名人の氏名、肖像を商品の宣伝・広告に使用したり、商品そのものに付したりすることに、当該商品の宣伝・販売促進上の効果があることは、一般によく知られているところである。このような著名人の氏名、肖像は、当該著名人を象徴する個人識別情報として、それ自体が顧客吸引力を備えるものであり、一個の独立した経済的利益ないし価値を有するものである点において、一般人と異なるものである。自然人は、一般人であっても、上記のとおり、もともと、その人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に利用されない権利を有しているというべきなのであるから、一般人と異なり、その氏名、肖像から顧客吸引力が生じる著名人が、この氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利を有するのは、ある意味では、当然である。著名人のこの権利をとらえて、「パブリシティ権」と呼ぶことは可能であるものの、この権利は、もともと人格権に根ざすものというべきである。著名人も一般人も、上記のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有する点において差異はないものの、著名人の場合は、社会的に著名な存在であるがゆえに、第三者がその氏名・肖像等を使用することができる正当な理由の内容及び範囲が一般人と異なってくるのは、当然である。すなわち、著名人の場合は、正当な報道目的等のために、その氏名、肖像を利用されることが通常人より広い範囲で許容されることになるのは、この一例である。しかし、著名人であっても、上述のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者により使用されない権利を有するのであり、第三者が、単に経済的利益等を得るために、顧客吸引力を有する著名人の氏名・肖像を無断で使用する行為については、これを正当理由に含める必要はないことが明らかであるから、このような行為は、前述のような、著名人が排他的に支配している、その氏名権・肖像権あるいはそこから生じる経済的利益ないし価値をいたずらに損なう行為として、この行為の中止を求めたり、あるいは、この行為によって被った損害について賠償を求めたりすることができるものと解すべきである。そして、パブリシティ権を侵害するか否かは、その「使用が他人の氏名、肖像権の持つ顧客吸引力に着目し、もっぱらその利用を目的とするものであるかどうかにより判断すべきである」とする裁判例がでている(東京地判平成12年2月29日判時1715号76頁)。一般に、誹謗中傷を目的としない報道における肖像等の利用は受忍される必要がある。これはパブリシティ権が「顧客吸引力を中核とする経済的な価値」を保護するための権利であり、当該報道の「顧客吸引力」は報道自身にあるのであって、肖像によるものではないと判断されるからである。また、伝記は主題に有名人を起用しているとはいえ、伝記の「顧客吸引力」の大部分が伝記自身にある、つまり、有名人を主題にしている事実のみで顧客を誘引しているわけではないので、これも制約され得る
出典:wikipedia
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