VX方式(ブイエックスほうしき)は、松下寿電子工業(現:パナソニック ヘルスケア)が松下電器の「ナショナル」ブランドで1975年から1976年にかけて発売した家庭用VTR(ビデオテープレコーダ)規格。1ヘッドα巻きと分厚いカセット、ヘッドがカセット内に潜り込む珍しい構造が特徴である。この項では松下電器でVX方式以前に存在した規格、オートビジョン方式(商品名「a-VISION」)にも触れる。松下電器(現:パナソニック)は、1973年に家庭用VTR規格として1/2インチテープカートリッジ(CP-508規格)を採用したオートビジョン方式VTR「a-VISION」『NV-5125』を発売。日本ビクターの(現:JVCケンウッド)上層部はこの方式を採用するよう現場に指示を出したが、ビデオ事業部長が「この方式は本命ではない」との考えで拒絶して不採用となり、1972年から始まっていたVHS開発を進展させた。オートビジョン方式は録画時間が最大30分と短く、本体価格が348,000円と高価格であったため、市場の反応も悪く受け入れられず、短期間で消える結果となり失敗に終わった。1974年にはテープ幅3/4インチのU規格でクロスライセンスを結んでいたソニーから、テープ幅1/2インチVTRでの規格統一のためベータマックスに関するVTR試作機・技術・ノウハウを公開されたこともありそちらに興味を持っていたが、松下グループ(現:パナソニックグループ)内で「四国の天皇」と呼ばれるほど力を持っていた松下寿電子社長・稲井隆義が1975年に独自に立ち上げたのがVX方式である。ヘリカルスキャン方式でも家庭用での採用は珍しい「α巻き」を採用し、1リール2段巻きの厚みのある縦型カセットテープは、内部にヘッドが潜り込む独特の構造となっていた(ワンヘッドダイレクトローディング方式と呼ばれた)。これは、Uマチック(U規格)やベータ方式・VHS方式などがカセットからテープを引き出して回転する筒状のヘッドドラムにΩ の形のように巻きつけるという複雑な動作をしなければならないのに対し、VX方式はカセット内部であらかじめ巻きつけるような形状になっているα部分(ヘッド挿入口)にヘッドドラムを潜りこませるだけなので、比較的ビデオデッキのメカがシンプルにできたという利点があった。一方でカセット内部で常にα巻きしている分、テープに負担がかかり、テープが絡まる・切れやすい、ACモーター1台でメカを駆動させるため消費電力が多いなどの弱点があった。松下電器は家庭用ビデオ規格が乱立していた1970年代中盤、このままVX方式で行くのか、もしくはVHSかベータマックスを新たに採用するのか不鮮明な態度であったが、1976年末に相談役の松下幸之助とソニー・日本ビクター上層部による会談が行われ、その席で幸之助は同じ松下の子会社である日本ビクターのVHS方式の採用を決定したため、VX方式は2機種作られただけで結果的に姿を消すこととなった。U規格のカセットはサイズが大きいことからどかべんカセットとも呼ばれたがVX方式のカセットテープもU規格のカセットと同じく大きく更に分厚いため、こちらもどかべんカセットと呼ばれた。漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で未だに亀有公園前派出所の仮眠室のビデオデッキはVX方式のデッキが描かれている(テレビも相当古い)。ただ、大分前に廃れてしまったビデオ規格であるため、実際に使われているかは不明。1990年代中盤以降、近代的なAVカラーテレビに置き換えられ、VX方式のデッキも消滅している。また、両津勘吉はVX方式デッキの修理が得意と言う描写もある。本デッキには別売りタイマーが存在していたがそれを持ち主は利用していなかった。なお、東京都墨田区のレトロエンタープライズが日本国内でのVX方式のダビング作業に対応している。カッコ内は制定年又は発売年、会社名は提案会社。U規格のみテープ幅3/4インチ、他は1/2インチ。
出典:wikipedia
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