SMCタンパク質(えすえむしいたんぱくしつ:SMC proteins)とは、染色体の高次構造と機能の制御に関わるATPアーゼファミリー、あるいはそれに属するタンパク質の総称。SMC は、染色体構造維持(Structural Maintenance of Chromosomes)の略。コンデンシンやコヒーシンなど巨大なタンパク質複合体のATPaseサブユニットとして働く。真核生物の SMC タンパク質は、6つのサブファミリー(SMC1- SMC6)に分類され、常にヘテロ2量体を形成する。例えば、SMC1とSMC3のペアは姉妹染色分体の接着に関わるコヒーシン複合体のコアサブユニットを構成し、SMC2とSMC4のペアは染色体凝縮に関わるコンデンシン複合体の一部として機能する。残りの SMC5とSMC6はDNA修復と染色体分離に関与する。SMC1-SMC3、SMC2-SMC4、SMC5-SMC6というパートナーの組み合わせは極めて特異的に決定されており、これまでに例外は報告されていない。一次構造は、SMC1とSMC4の間、SMC2とSMC3の間の類似性が高く、SMC5とSMC6はこれら4つとはやや離れた位置にある。これら6種に加えて、脊椎動物では減数分裂期に特異的に発現するSMC1のパラログ(SMC1β)、線虫では遺伝子量補償に関わるSMC4のパラログ(DPY-27)が知られている。SMCタンパク質の進化的起源は古く、真正細菌や古細菌にまで広く保存されている。ガンマ・プロテオバクテリア(γ-proteobacteria)と呼ばれる一部の真正細菌(大腸菌を含む)では、MukBと呼ばれる類似のタンパク質が SMC の機能を代行している。原核生物型のSMC/MukBはホモ2量体を形成し、さらにいくつかの制御サブユニットと結合することにより、コンデンシン様の働きをもつタンパク質複合体(SMC-ScpABおよびMukBEF)を構築する。広義には、真核生物のRad50や原核生物のSbcC, RecF, RecNをSMCタンパク質に含める場合もある。SMC タンパク質は、1,000-1,500アミノ酸残基からなる。 常に2量体(原核生物ではホモ2量体、真核生物ではヘテロ2量体)を形成し、特徴的なV字型構造をつくる。個々のSMCサブユニットは、まず反平行のコイルドコイルによって折り畳まれ、長い棒状の形態をとる。この際、一方の末端には ATP 結合部位("ヘッド")が、もう一方の末端には"ヒンジ"が形成される。2つのSMCサブユニットはヒンジを介して結合し、V字型の巨大な2量体を構築する。反平行のコイルドコイルによって形成される腕部の長さは、~50 nmにも達する(これは2重鎖DNA~150 bpに相当する長さである)。同程度あるいはそれ以上の長さをもつ「平行」のコイルドコイルはミオシンやキネシン等のモータータンパク質によくみられるが、これだけ長い「反平行」のコイルドコイルをもつものはSMCタンパク質以外に知られていない。SMC ヘッドドメインは、ABC輸送体や DNA修復タンパク質 Rad50 のATP結合部位と構造上の共通点を有する。このクラスの ATP 結合ドメイン(ATP結合カセット; ATP-binding cassette [ABC])では、Walker AモチーフとWalker Bモチーフに加えて、signatureモチーフ(別名C motif)と呼ばれる特有の配列が高度に保存されている。ATP結合と加水分解のサイクルは、2つのヘッドドメインの会合と解離のサイクルとカップルし、その結果としてV字型構造の開閉を制御する。こうした SMC 2量体の構造変換が制御サブユニット(kleisinサブユニットやHEATリピートサブユニット])およびDNAとのダイナミックな相互作用を制御すると考えられているが、その詳細はまだ明らかではない。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。