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日光角化症

日光角化症(にっこうかくかしょう、、ICD10コード L57.0)は、メラノーマと基底細胞癌を除く皮膚癌(扁平上皮癌または有棘細胞癌)の前癌病変である。慢性の紫外線曝露により誘発される皮膚病変であり,日光曝露を受けやすい顔面,耳介,前腕,手背部の皮膚に好発する。急性日光曝露によるいわゆる日焼け(sunburn)とは異なり,年余に渡る慢性的な紫外線曝露でDNA変異が生じ発症する。皮膚癌の前駆病変とはいっても実際に上皮内癌や浸潤癌に発展する例は数パーセントに止まる。太陽紫外光の中でもUV-B領域(280-320nm)の紫外線が表皮細胞のDNA損傷をもたらす。近年,環境問題として世界的な話題となっている成層圏オゾン層の破壊による紫外線量の増加と皮膚癌との関係がますます重要視されてきている。患者の年齢は中高年層がほとんどである。性差はないがやや男性に多い傾向がある。白色人種に比べて黒色人種、黄色人種では有病率は低い。日焼けの際に肌に紅斑を生じやすい人の方が褐色変化する人よりも日光角化症になりやすい。日本人での有病率については,環境省が毎年発行している「オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」の中の参考資料「太陽紫外光の影響」の項に具体的で詳細な記述がある()。それによれば日光角化症は、全国26 大学病院の受診調査で1980年代より90年代の方が84%増加していた。また、兵庫県と沖縄県の特定地域での皮膚癌検診の結果によると、日光角化症の有病率は兵庫県(1992-1997 年)が人口10万人当たり203人、沖縄県(1993-1998年)が842人であった。年間UV-B量が約2倍の沖縄が約4倍高い有病率を示したと報告されている。平坦な角化を伴う皮疹である。通常は大きさ数ミリから最大でも2cm程度の表面がざらざらした斑状病変であり、紅桃色、褐色または肉色を呈する。通常、病変は顔面、耳介周辺、手背部、前腕に生じる。単発病変のこともあるが、複数の病変が同時性または異時性に発生する例もある。軽度の痒みを訴える例もあるが,皮疹以外に自覚症状を来たすことは稀である。ときに鶏冠(とさか)状の角化物が堆積することがあり「皮角」と呼ばれる。病変は自然消退することもあれば同じ部位や別の部位に再発することもある。前癌病変といっても自然消退する傾向もあり、実際に扁平上皮癌にまで発展する病変はそれほど高頻度ではない。高齢者に多い皮膚の病変であり,整容的な問題を生じない限り医療機関を受診する機会は多くない。しかし日光角化症は皮膚科専門医による定期的なチェックに委ねるべき病変である。病理検査に提出される検体の多くは皮膚病変の一部をパンチバイオプシーした小片である。病理組織学的には、日光角化症の病態は表皮の異形成である。角化層の肥厚、不全角化、顆粒細胞層の菲薄化、表皮基底層から有棘細胞層中層に異型表皮細胞の出現が認められる。異型細胞は核の腫大、クロマチンパターンの粗網化、孤細胞核化を示す。核分裂像もしばしば観察される。ボーエン病に比較して核異型や核形態の多態性は顕著でない。真皮にはリンパ球、組織球など単核細胞の浸潤があり、弾性線維の増生が認められる。特に萎縮型日光角化症で顕著である。組織所見に基づき日光角化症を亜型分類する試みもなされ、萎縮性,ボーエン病様,棘融解性,肥厚性,色素性に分類されている。この分類法は鑑別疾患を考えるうえで参考になる。しかし「各亜型に予後的な差はないので、亜型分類は意味がない」とする反論もある。平坦隆起性病変ではボーエン病(表皮内扁平上皮癌)、皮角形成を示す病変では脂漏性角化症、色素性病変では基底細胞癌との鑑別を要する。実践的にはボーエン病との鑑別に尽きる。保存的な治療が優先される。治療は液体窒素によるクライオサージャリー、または5-fluorouracil (5-FU) 軟膏による局所治療が一般的である。病変部の外科的切除は整容的な目的、またはボーエン病との鑑別が困難な例が対象となる。新たな治療の試みとして光線力学療法などが試行段階から実践的治療に応用されつつある。日光角化症そのものは生命予後に無関係である。メラノーマと基底細胞癌を除く皮膚の扁平上皮癌(有棘細胞癌)への進展は10%以下である。

出典:wikipedia

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