『風流夢譚』(ふうりゅうむたん)は、深沢七郎の短編小説。挿絵は谷内六郎の版画。『風流夢譚』は、中央公論の1960年12月号に掲載された。夢譚(=「ゆめのはなし」の意)と言うように、全体的にシュールな展開で、最初から最後までが夢の話であるという設定ではあったが、ほぼ実名で、天皇と皇后、皇太子と皇太子妃の処刑の場面が登場し、皇太后を殴る、罵倒するといった、露骨に皇室を侮辱していると受け取れる内容であったので、宮内庁が民事訴訟を検討するなどして、公開当初より物議を醸した。風流夢譚は、意図された支離滅裂なストーリーであり、革命が起きた東京を描いているわけではなく、最後までなんだかわからないことが進行中という、天地が逆転したような夢の中の世界が語られ、60年安保の批判的パロディであり、挫折後のシラケた世相への皮肉であったり、反米感情や、皇室批判あるいは野卑表現であったりと、作者の心に鬱積した様々なタブーに挑戦した作品であった。中央公論社では、初めは(内容の如何に関わらず)言論の自由・表現の自由は守るという立場であったが、右翼少年が中央公論社の社長宅に侵入して社長夫人らを殺傷する嶋中事件が起こったほか、右翼団体の度重なる強い抗議を受けて圧力が強まり、一転、全面謝罪する事態になった。竹森清編集長と橋本進次長は更迭され、嶋中社長には「くだらない小説」で載せる気はなかったと酷評されてしまう。これに衝撃を受けた深沢はしばらく筆を絶ち、放浪することになった。戦後の代表的な言論弾圧の一つであり、出版言論の敗北として記憶されている。このような事情から、発禁になったわけではないのに、この小説は長く出版できずに海賊版が流布された。インターネット普及後はネット上で海賊版として公開されている。心ならずも人命が失われたことから、深沢は生前には復刻を拒否し、全集等にも収録させなかった。しかしその死後、著作権継承者の承諾を得て2012年に電子出版された。私(主人公)は、夜は一緒に寝てしまい、朝になると動き出すという不思議な腕時計を持っている。ある晩、私は「あの夢」を見た。その夢は井の頭線の渋谷行に乗っているところから始まる。朝、満員の乗客達は都内で暴動が起っているとラジオのニュースで聞いたと話しあっていた。渋谷の駅で降りた私は、八重洲口行のバスに乗ろうと、長いバス待ちの列の先頭に割り込んだが、周りの人々は文句の一つも言わない。都内では暴動ではなく革命が始まっているらしい。「革命ですか、左慾(サヨク)の人だちの?」と隣りの人に聞くが、革命ではない、政府を倒してよい日本を作ると言う。ニホンという言葉が私は嫌いで癪にさわった。まあ、怒るなと私は肩をポンと叩かれたが、並んでいる人たちはみんな労働者たちばかりなのに気がついた。バスが来て止り、並んでいる人たちがわーっとバスへ乗り込んで出て行った。私が隣りの人に聞くと、あのバスは警視庁との射ち合いの応援に行った、警察も巡査はみんな味方で、刑事だけが反抗しているのだと教えてくれた。こっちにはピストルや機関銃があり、悪魔の日本をやッつけるために、各国が応援してくれたものだった。またバスが来て、みんなわーっと乗り込んでバスは動きだしたが、私は相変らず停留所の前に立ったままだった。私が隣りの人に聞くと、あのバスは自衛隊を迎いに行ったと言う。自衛隊も反抗するのは幹部だけで、下ッパはみんな味方だと言う。振り向くと、中年の職業婦人が、会社に出勤する代わりに革命に行くと言う。私も誘われたが急に怖気ついた。しかし自衛隊も一緒だから大丈夫だと言い、今度のバスは皇居に乗り込むというので、私は喜んだ。それからバスが来て目の前に止った。この三度目のバスには私もわーっと乗り込んだ。バスは皇居へ向った。皇居広場には出店が出ていて、皇太子と皇太子妃が、私が薪割りに使っていた「マサキリ」で、首を切られるところであった。私は自分のマサキリが使えなくなるので困ると思っていると、2人は処刑された。交差点では、天皇と皇后の首なしの胴体があって、交通整理が出て、人ゴミができていた。そこに昭憲皇太后が現れたので、私はいきなり怒鳴ったら、怒鳴り返されたので、「糞ったれ婆」と「糞っ小僧」で言い合いになった。顔をひっかかれて怒った私は、足がけで投げ飛ばし、羽交い絞めにした。命があるのは「ヒロヒトのおかげ」という皇太后を殴ろうとした私は、皇太后の頭の真ん中に丸いハゲがあるのを見つけて飛びのいた。私はハゲを見ると恐ろしくなるたちだったのだ。口論は続いたが、突然、軍楽隊が耳元で演奏を始めたので、私はご機嫌になった。文化勲章やら三種の神器が捨ててあるが、誰も拾わず、クズ屋でも買わないという。戦いも終わって、花火が始まる。美しい花火を見て思い残すことがなくなった私は自殺しようと思い、辞世の句を詠む。そして頭をピストルで撃ったが、頭にはウジが詰まっていた。ここで私は甥に起こされた。腕時計は私が夢を見ていた間もおきて動いていたと私は喜んだ。
出典:wikipedia
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