『家畜人ヤプー』(かちくじんヤプー)は、1956年から『奇譚クラブ』に連載され、その後断続的に多誌に発表された沼正三の長編SF・SM小説。なお、本作品はマゾヒズムや汚物愛好、人体改造を含むグロテスクな描写を含む。『奇譚クラブ』連載時から当時の文学者・知識人の間で話題となっていた。そのきっかけは三島由紀夫がこの作品に興味を示し、多くの人々に紹介したことによる。三島のみならず澁澤龍彦、寺山修司らの評価もあり、文学界では知名度の高い作品となった。『奇譚クラブ』誌上での連載を終えて、誌上の都合で掲載できなかった部分などの作者による加筆の後、都市出版社により単行本が出版され、この際、右翼団体が出版妨害を行い、1名逮捕・2名指名手配という事件にまで発展した。『奇譚クラブ』1956年12月号-1958年4月号までの連載では打ち切りという事情もあり物語は完結せず、都市出版社版、角川文庫版、スコラ版、太田出版版、幻冬舎アウトロー文庫版と補正加筆が行われながら版が重ねられ、完結に至る。このような事情から版により内容に食い違いが存在する。婚約中のカップルである日本人青年留学生麟一郎とドイツ人女性クララは、ドイツの山中で未来帝国EHS人ポーリーンが乗った未来世界の円盤の墜落事故に巻きこまれ、それがきっかけで未来世界へ招待されることとなる。未来帝国EHS(The Empire of Hundred Suns イース = 百太陽帝国、またの名を大英宇宙帝国)は、白色人種(特にアングロ・サクソン系のイギリス人)の「人間」と、隷属する黒色人種の半人間「黒奴」と、旧日本人の家畜「ヤプー」(日本人以外の黄色人種は核兵器と細菌兵器によりほぼ絶滅している)の3色の厳然たる差別の帝国である。ヤプーに対しては、EHSの支配機構は抵抗するものを屈服させるのではなく、あらかじめ白人を神として崇拝させ「奉仕する喜び」を教えこみ、喜びのうちに服従させるしくみである。黒奴に対しては、巧妙な支配機構により大規模な抵抗運動は行えないようになっており、小規模の散発的抵抗がまれにあるだけである。ささいな過失などでも死刑に処されるなど酷使されるため、黒奴の寿命は30年ほどで、白人の200年より短い。EHSは女が男を支配し、男女の役割が逆転した女権主義の帝国である。EHSの帝位は女系の女子により引き継がれ、男性は私有財産を持つことすら禁止され、政治や軍事は女性のすることで、男性は化粧に何時間も費やし、学問や芸術に携わる。EHSではSEXにおいても、騎乗位が正常位とされるほど徹底している。そして、家畜である日本人「ヤプー」たちは家畜であるがゆえに、品種改良のための近親交配や、肉体改造などを受けており、「ヤプー」は知性ある動物・家畜として飼育され、肉便器「セッチン」など様々な用途の道具(生体家具)や畜人馬などの家畜、その他数限りない方法により、食用から愛玩動物に至るまで便利に用いられている。白人女性の出産も、受精卵の移植によって子宮畜(ヤプム)が代行する。さらに、日本民族が元々EHS貴族であるアンナ・テラスにより、タイムマシンの利用によって日本列島に放たれた「ヤプー」の末裔であること、日本神話の家畜人ヤプーの世界における物語を暴露し、これに基づく日本の各種古典の解釈が行われる。日本人青年の麟一郎と、ドイツ人女性のクララのカップルは空飛ぶ円盤(タイムマシン)の事故に巻き込まれたことから、このような未来世界へいざなわれる。二人は未来世界で、様々な体験をする。白人女性で元貴族の生まれであるクララはEHSの貴族たちに同胞として迎えられ、EHSの事物を満喫する。麟一郎は心身を改造され、凄まじい葛藤を経て、自らクララの家畜として生まれ変わる。その間、わずか三日であった。28章までと、それ以降(一説によると21章以降)では、文体や内容に多く差異が見られるため、途中で執筆者が交代したとの説がある。また、Aパートを1章から20章、Bパートを21章から31章、Cパートを32章以降とし、それぞれ執筆者が異なるという説や、Aパートに関してはそもそも複数の人間の手になると言う説もあり、著者の正体と合わせて、その成立過程はハッキリしない。Cパートのみは、作者がハッキリと分かっており、現在公式に沼正三を名乗る天野哲夫の手による。また、太田出版版は、全体に天野哲夫が再構成したことが知られており、読む際には注意が必要である。石森章太郎・シュガー佐藤により漫画版が製作された。後に江川達也による漫画も出版されたが、途中で打ち切りとなっている。先の石森・佐藤版よりも描写は丁寧だが、ヤプーが去勢されているという原作の設定を変更するなど、改変も見られる。2012年~2016年、ニコニコ動画にて、ライトノベル版と銘打ち、「家畜人ヤプー Yapoo, the Human Cattle,Again」のタイトルで伊藤ヒロ著、氏賀Y太挿絵の形でリメイクし配信された(制作 満月テレコ社)。主人公の設定等に一部差異が見られる。鳥肌実によるニコ生朗読会なども行われた。2000年5月、2005年1月に月蝕歌劇団(演出 高取英、音楽 J・A・シーザー)により2度上演。2010年9月1日~6日に「沼正三/家畜人ヤプー」として月蝕歌劇団(演出 高取英、音楽 J・A・シーザー)によりザムザ阿佐ヶ谷にて3度目の上演。しのはら美加がクララを演じた。プロデューサー康芳夫の下、長谷川和彦の監督作品第3作目として製作準備が進められていたが、2009年12月12日新文芸坐において行われた長谷川と三留まゆみとのトークショーの中で長谷川が「三、四年前に企画は頓挫した」と発言したことから、ヤプーの映画化は実質無に帰したものと思われる。
出典:wikipedia
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