88式地対艦誘導弾(はちはちしきちたいかんゆうどうだん)は、日本の陸上自衛隊が装備している地対艦ミサイル(対艦誘導弾)システム。略称はSSM-1で、広報を対象とした対外愛称はシーバスター。部隊内での通称は「SSM」。1988年から配備されている。周囲を海に囲まれた日本は、艦船に対する防衛兵器として1970年代から対艦ミサイルの開発に取り組んでおり、航空自衛隊においては、80式空対艦誘導弾(ASM-1)が1980年(昭和55年)から配備されていた。これを基に陸上自衛隊が運用する地対艦ミサイルとして開発された。沿岸に接近した上陸・侵攻艦船の撃破を目的としている。1979年から技術研究本部での部内研究が開始され、1982年より試作が開始された。開発経費は約205億円。1988年に制式採用され、システムの調達は2000年度まで行われた。ミサイルは、前方よりセンサー部、誘導部、弾頭部、燃料タンク部、エンジン部からなる。ミサイル本体は80式(ASM-1)から発展したもので、ミサイル本体中ほどに4枚の翼を持つ形状が共通している。本体尾部に4枚の操舵翼を有する。射程延伸のためエンジンが固体燃料ロケットからTJM2ターボジェットエンジンに変更され、発射時の初期加速用に4枚の安定翼を持つ固体燃料ロケットブースター部が尾部に追加されている。ブースターは初期加速終了後、分離される。ASM-1と比較し、地上発射が可能となっただけではなく、ジェットエンジン化による射程の延伸や誘導アルゴリズムやECCM性能も改良されている。本地対艦ミサイルシステムは、指揮統制装置、捜索・標定レーダー装置(JTPS-P15)、射撃管制装置(JTSQ-W5)、中継装置(JMRC-R5)、ミサイル発射機搭載車、予備ミサイル・装填装置搭載車で構成される。システムは車載化されており、十分な機動性を有する。運用可能なシステム構成の組合せは以下となる。各システム構成機材は、求められる任務の規模に応じて柔軟に組み合わされ運用される。2011年5月時点で5個地対艦ミサイル連隊が編成され、各連隊の隷下には4個射撃中隊が編制されている。連隊の本部管理中隊に捜索・標定レーダー装置と中継装置と指揮統制装置、各中隊本部に射撃管制装置が1基ずつ、各中隊にミサイル発射機搭載車と予備ミサイル・装填装置搭載車がそれぞれ4両ずつ配備されている。システムは整地道路での機動性を高めるためにすべて車載化されており、車体は装甲を持たないトラックを利用している。発射機は6連装のチューブ状のキャニスターを兼ねた発射装置からなる。ミサイルの翼は、すべて折りたたまれた状態でキャニスターに収容されており、発射直後に展開される。発射機は74式特大型トラックに搭載されている。予備ミサイルはキャニスターに収められ計6本のキャニスターがクレーン付き74式の荷台に搭載され、発射機への積み替えは予備弾搭載車両のクレーンを用いて行われる。また、水平線外射撃が可能な150kmを超える射程と、対艦ミサイルとしては本システムだけが持つ地形回避飛行能力を活かして、指揮装置や発射機を内陸部に設置してミサイルを発射することができ、遠距離から発射することでシステムの被発見率と生残性を高めることができるようになっている。このため上富良野駐屯地などの内陸部にも地対艦ミサイル連隊が編成されている。ミサイル発射時には捜索・標定レーダー装置JTPS-P15が海岸線に進出し、捜索・探知・識別した目標の位置情報と識別情報がレーダー中継装置を経由して指揮統制装置に送られる。指揮統制装置により経路プログラミングの諸元(中間誘導地点とそこまでに至る経路など)を計算後、処理結果と発射指令は射撃管制装置を経由して発射機・ミサイル本体に送られ、斜め上方へ仰角をかけた発射機の発射チューブからミサイルが発射される。ミサイルは中間誘導が慣性航法装置(INS)、終末誘導がミサイル自身によるアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)で飛行し、陸上と海上で低空飛行を行うことで被発見率を下げており、電波妨害を受けた場合には、ミサイルを妨害電波発信源に突入させることも可能である。平成3年度以降、毎年秋頃には米カリフォルニア州のポイントマグー射場にて射撃訓練を行っており、電波妨害下での射撃も含め、全てのミサイルの命中に成功している。江畑謙介は、水平線の向こうを捜索できないレーダーの特性上、JTPS-P15に捜索標定を依存する陸上自衛隊の運用法では、遠洋の敵艦船に対しては十分な運用ができないとして批判。これからは捜索標定に無人航空機(UAV)などを活用すべきであると主張した。一方、小川和久が知己の海上自衛隊の将官から入手した情報によると、遠洋を航行する敵艦船に対しては、海上自衛隊のP-3C哨戒機が敵艦船を同定し、この音声情報を元に陸上自衛隊側が本システムを運用する手はずになっているという。また、2015年2月13日付の読売新聞朝刊の記事では、海自のP-3Cが探知した情報を元に、陸自側が火力戦闘指揮統制システムに敵艦船の情報を手作業で入力して本システムを運用する手はずになっていると報じられた。88式地対艦誘導弾を基礎に、海上自衛隊向け艦対艦ミサイルの90式艦対艦誘導弾、哨戒機搭載用空対艦ミサイルの91式空対艦誘導弾が開発されている。また、平成24年度(2012年度)予算から後継システムの12式地対艦誘導弾の取得が開始された。これは防衛省技術研究本部が88式地対艦誘導弾システム(改)として開発を行っていたもので、88式地対艦誘導弾と比べて、目標情報更新能力、目標大小判別能力と指揮統制機能、命中点のばらつき、再装填時間が向上しており、同時弾着精度向上、推力偏向装置付きブースターと垂直発射方式の採用による即応性と陣地選定の自由度向上、地形追随能力の向上が成されたことにより、システムと誘導弾の生存性が高まっている。中間誘導では慣性誘導に加えてGPSでも誘導を行うことができるように改良されている。さらには、ライフサイクルコストの低減が図られている。陸上自衛隊富士学校陸上自衛隊武器学校北部方面隊東北方面隊西部方面隊東部方面隊
出典:wikipedia
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