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潮騒 (小説)

『潮騒』(しおさい)は、三島由紀夫の10作目の長編小説。三島の代表作の一つである。三重県鳥羽市に属する歌島(現在の神島の古名)を舞台に、若く純朴な恋人同士の漁夫と海女が、いくつもの障害や困難を乗り越え、成就するまでを描いた純愛物語。古代ギリシアの散文作品『ダフニスとクロエ』に着想を得て書かれた作品である。1954年(昭和29年)6月10日に書き下ろしで新潮社より刊行された。たちまちベストセラーとなり、第1回(1954年度)新潮社文学賞を受賞した。アメリカでも翻訳出版されベストセラーとなった。文庫版は新潮文庫で刊行されている。翻訳版は1956年(昭和31年)のメレディス・ウェザビー訳(英題:The Sound of Waves)をはじめ、世界各国で行われている。三島由紀夫は水産庁に依頼し、「都会の影響を少しも受けてゐず、風光明媚で、経済的にもやや富裕な漁村」を探してもらい、金華山沖の某島と三重県の神島(かみしま)を紹介された。そこで三島は万葉集の歌枕や古典文学の名どころに近い神島を選んだ。神島を舞台に選んだ理由を三島は、「日本で唯一パチンコ店がない島だったから」と、大蔵省同期の長岡實に語ったという。三島が元にした万葉集に歌われている伊良湖岬には、「潮騒」(万葉仮名では「潮左為」となる)という言葉が出てくる。この歌は、持統天皇が伊勢神宮参拝と舟遊びを兼ねて伊勢に旅した時に、都(飛鳥浄御原宮)に残った柿本人麻呂が、お供をした人々の中の女官の一人を想って詠んだ一首で、「伊良虞」は、伊良湖岬もしくは神島のことである。現代訳は以下の意味になる。1953年(昭和28年)3月と、8月から9月に、三島は鳥羽港から神島を訪れ、八代神社、神島灯台、観的哨、島民の生活、例祭神事、漁港、歴史、漁船員の仕事や生活、台風などについて取材した。神島滞在中、三島は川端康成への手紙の中で、『禁色』のようなデカダン小説とは正反対の健康な書き下ろし小説を書くために調査に来ていると伝えている。また、プロットについて三島は、ギリシア熱が最高に達し、「ギリシアの小説『ダフニスとクロエ』を底本とした小説の執筆を考へ、(中略)ほとんど原作どほりのプロットを作つた」としている。三島は『禁色』後の長編物の構想として次のようなメモを残している。伊勢湾に浮かぶ歌島で漁師をしている久保新治は、貧しい家に母と弟と暮す18歳の若者であった。ある日、新治は浜で見知らぬ少女を見かけ心惹かれる。少女は砂浜に座り、じっと西の海の空を見つめていた。少女・初江は、村の有力者で金持ちの家・宮田照吉の娘であった。初江は養女に出されていたが、照吉の跡取りの一人息子(初江の兄)が死んだため島に呼び戻されたのであった。それまで恋愛を知らない新治は、初江の名前をきくだけで頬がほてり鼓動が激しくなる自分の感情がよく分からなかった。しかし監的哨跡(原文は「観的哨」:旧陸軍が伊良湖岬から撃つ大砲の試射弾の弾着観測をしたコンクリート製の施設跡)で偶然、鉢合わせしたり、新治が浜で落とした給料袋を初江が拾ったり、灯台長の家でも顔を合わせた二人は、お互い相手に惹かれている自分の気持を知りはじめる。雨の降る休漁日に監的哨で初江と待ち合わせの約束をした新治は、嵐の日、先に到着し、初江を待っていたが、焚き火に暖められるうちに眠ってしまう。ふと目が覚めて気が付くと、初江が肌着を脱いで乾かしているのが見えた。裸を見られた初江は、羞恥心から新治にも裸になるように言う。裸になった新治に、さらに初江は、「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」と言った。火を飛び越した新治と初江は裸のまま抱き合うが、初江の、「今はいかん。私、あんたの嫁さんになることに決めたもの」という誓いと、新治の道徳に対する敬虔さから二人は衝動を抑えた。灯台長の娘で大学の春休みで帰省していた千代子は、新治と初江が一緒に帰るところを見てしまう。新治に気があった千代子は初江に嫉妬し、川本安夫に告げ口をした。有力者の息子・川本安夫は、自分が初江の入婿になるのだと吹聴していたから面目がつぶれた。安夫は夜中、水汲みに出た初江を襲おうとするが、蜂に撃退されてしまう。やがて新治と初江の噂は照吉の耳にも入り、照吉は二人が会うことを禁じた。気落ちする二人にとって秘密裡に交換する手紙だけが唯一の絆だった。健気な二人に新治の親方・十吉が加勢し、仲間の龍二が郵便屋をしてくれた。年配の海女たちも初江のまだ蕾のような乳房を見て、二人の悪い噂が嘘だと解する。そんな折、機帆船歌島丸の船長が、船員修業の炊(甲板見習)ために船に乗組まないかと新治を誘いに来た。歌島丸は照吉の持ち船の貨物船で、安夫も同船するらしかった。照吉は安夫に、初江との婚約の条件としてこの修業を申し渡したのだという。新治の心には、不安と悲しみと、それから一縷の希望が湧いた。船が沖縄の那覇港から運天港に入ったとき台風に襲われた。船をつなぎ止めていたワイヤーが切れ、命綱を浮標(ブイ)につなぐしか手はなくなった。誰もが尻込みする中、新治が志願して荒海に飛び込んだ。力の限り泳いだ若者・新治の活躍で歌島丸は救われた。二人の悪い噂を流した千代子の東京からの贖罪の手紙を読んだ灯台長夫人や、義侠心にかられた海女たちが、新治と初江の仲をとりもってやろうと、照吉の家に直談判にやって来た。女たちがやきもきする中、照吉は、新治と安夫を試すために自分が船に乗り込ませたのだと言った。照吉はすでに新治を婿にすると決めたところだった。新治と初江の願いは成就し、二人は灯台で美しい夜の光を眺める。『潮騒』は、『仮面の告白』『金閣寺』など三島の他の純文学系統とは色合いが異なり、話にも、難解・狷介な要素がなく、近代小説としては珍しく素直に青春の恋愛物語を描いた牧歌的な作品である。また、幅広い人気を博し、異例とも言える5回もの映画化もなされ、三島作品のなかで最も多くの「文学全集」に採られている作品でもあり、『まんが日本昔ばなし』などでアニメ化もされ、2013年(平成25年)には、テレビドラマ『あまちゃん』内に登場する架空の映画『潮騒のメモリー』に、『潮騒』をパロディ化した内容が含まれるなど、スタンダードな作品として定着している。しかし、成功した代表作の一つでありながらも、当時の文壇的評価には賛否が分かれる所もあった。その筋立てや人物造型が類型的で、神話やお伽話、人情講談の類でしかないといった寺田透、磯貝英夫や、日本の旧式の道徳や貧しい漁村を賛美しているといった中野重治によるオリエンタリズムに対する批判もあった。そういった批判があったことについて三島は、「この小説の採用してゐる、古代風の共同体倫理は、書かれた当時、進歩派の攻撃を受けたものであるが、日本人はどんなに変つても、その底に、かうした倫理感を隠してゐることは、その後だんだんに証明されてゐる」と記している。その一方、批判的批評に対し中村真一郎は、『潮騒』を近代的な意味での小説ではなく、「物語」だとした上で、「三島氏は近代的な小説家であると同時に、この作品によって最も痛烈な近代小説の解毒剤の製造家となった」とし、個性や自我を描くことに偏重していた近代小説への布石として『潮騒』が果たした意味を積極的に評価し、松本鶴雄も、「ポピュラリティに淫しながらも、その彼方に何が存在するかを意識的に実験した小説」だとしている。また清水文雄は、『花ざかりの森』から見られていた三島の「海」への憧れが、「ここに一編の記念すべき作品を結実させた」と評している。マルグリット・ユルスナールは、『仮面の告白』を「黒い傑作」、『金閣寺』を「赤い傑作」とすれば、『潮騒』は「透明な傑作」だとし、それは「一般に作家がその生涯に一度しか書けないような、あの幸福な書物の一つ」で、その華やかな大成功のために、「気むずかしい読者」には胡散臭く映ってしまうような作品の一つでもあるとし、以下のように高い評価をしている。またユルスナールは、有名な焚火のシーンを、男女混浴が根づいている日本では突飛なシーンではなく、その戯れは神道の火の儀式に近いとしている。また、荒海と闘う新治をレアンドロスより逞しい若者、初江をヘーローよりも慎ましい娘だとし、「動物の世界の一対がそうであるように、最後には詩人のために、二つの存在に分裂した一種の両性具有のイメージを実現しているかのようだ」と解説している。柴田勝二は、新治と初江を結ばせる「他動的な力」の一つとして新治の信仰している八代神社に祀られた綿津見命に触れ、八代神社が伊勢神宮と深い縁を持ち、両者を媒介している「太陽」への崇敬と、三島が主人公に造形したギリシャ的な要素の共通性を鑑み、「その信仰の実体性が『ギリシャ―神島―伊勢』の連関によって、伊勢神宮に祀られる天照大神に向かう方向性を帯びることが、この作品に密かに込められた企図であった」とし、最終的に新治と初江の結婚を許可する「宮田照吉」の名前も、伊勢神宮の「宮」と天照大神の「照」から取られていると考察している。そして柴田は、伊勢神宮の神饌のうちでも、最重要視されたのが鮑であることと、鮑が「常世に続く海の霊のシンボル的な存在」であり、鮑の産地に近いことが、神宮が伊勢に定められた理由の一つだとする矢野憲一の研究に触れつつ、特に志摩の海女の取る鮑は、神饌として供されることが特徴的だったことを説明し、優れた技能を持った「海女」である初江が、鮑を取る競争で一番になることに、初江の輪郭がより具体的に「伊勢神宮の神に仕える人間」としての側面がはらんでいることを指摘し、また、別の土地から歌島へ戻って来た初江と、天照大神の憑依を受けた倭姫命に共通する移動性と海産物や海人との深い類縁を考察している。また、『禁色』の悠一の「外人ぎらひ」に見られるように、三島が戦中戦後に持ちつづけていた対米関係への意識や、日本の民族・文化の同一性に対する意識が三島の中に一貫してあることがうかがえるのを柴田は鑑みて、『潮騒』で新治が行った沖縄の運天において、その場所を、「戦時中米軍が最初に上陸した地点である」と三島が記し、「打ちひしがれて」と表現しているところから、「沖縄の民衆の存在がほのめかされている」とし、その場所で新治が船を救う活躍を見せる行動について、以下のように解説している。そして柴田は、沖縄という「トポス」が三島作品で明確に姿を現わすのは、『椿説弓張月』において、主人公が最後に琉球で、君主への忠誠を尽くして天空へ去っていく場面であり、その背後には沖縄に霊的な世界を求めた折口信夫の眼差しの取り込みがあると推測しつつ、『潮騒』の新治が海の男として成熟する「イニシエーション」にも霊的な側面を想定することも可能だとみている。「新治と初江」という名前について佐藤秀明は、恋愛という行動に対して二人が未経験であり、そこに「新しく」あるいは「初めて」足を踏み入れる人間であることを物語るとし、羽鳥徹哉は、二人が初めて抱き合うのが廃墟となった観的哨である設定から、「敗戦による廃墟の日本から、どのような新生日本を作り上げていくべきであるか」という課題が示唆されているとし、それが「国生み」の寓意となると解説している。柴田勝二はさらにそれらを加味し、「新治が初江の身体に到達するために“炎”を乗り越えていく行動には、“戦火を超える”意味がはらまれている」と考察している。また羽鳥は、照吉が新治を認めた場面の言葉に示唆されているように、「人を家柄や財産で評価せず、気力で評価するような国」が、三島の描いていた「新生日本」の理想であるとし、それを敷衍した柴田は、「三島の念頭にあった新しい日本のあり方は、明らかに対米従属から断ち切られ、真の“独立”をかち得ることであり、それが“太陽”と“海”を結託させた地点に成り立つ日本の神―天照大神―に支えられることによって成就されるというのが、三島がこの作品に託したヴィジョンにほかならない」と論考している。初めて神島を訪れた三島は、次のように述べている。三島はその後、「神島は忘れがたい島である」と懐かしみ、「人情は素朴で強情で、なかなかプライドが強くて、都会を軽蔑してゐるところが気に入つた」と述べ、例えば地方へ行き、田舎の人の都会に対する地方的劣等感に会うほどイヤなものはないが、神島にはそういうところがなかったと述懐している。また、「辺鄙な漁村などにゆくと、たしかにそこには、古代ギリシアに似た生活感情が流れてゐる。そして、顔も都会人より立派で美しい。私はどうも日本人の美しい顔は、農漁村にしかないのではないかといふ気がしてゐる」と述べている。三重県および鳥羽市は『潮騒』を観光資源として活用している。神島港を降りてすぐに、「三島文学 潮騒の地」と刻まれた文学碑があり、定期船乗り場近くには、「潮騒公園」もある。新治と初江が焚火を境にして裸身で向い合った場所「監的哨跡」や、二人が手を合わせた「八代神社」は観光コースとなっており、三島が執筆取材中に宿泊した漁師の組合長の寺田さん宅も人気が高いスポットで、三島が使用した机も残されている。また、豊饒を祈るため八代神社で行われる太陽信仰の祭ともいわれる由緒ある伝統行事の「ゲーター祭」など神島には数多くの年中行事が今に伝えられているが、2001年(平成13年)からは地域の子どもたちの活動から、「かみしま潮騒太鼓」と名付けられた太鼓演奏の行事も生まれている。2006年(平成18年)に神島は、愛を誓いプロポーズをするのに相応しい観光スポットとして、「恋人の聖地」の30か所の1つに選ばれ、神島灯台そばの広場に記念プレートが設置されている。また、「監的哨跡」は耐震補強を施され、文学碑や公園も整備され、2013年(平成25年)6月2日に完成記念式典が行われた。それを記念し、映画で初江を演じた吉永小百合が神島を訪れ、49年ぶりに漁民たちと対面することとなった。なお、撮影当時20歳だった組合長の息子・寺田信吉さんは、新治役の浜田光夫の代わりに時化の海へ飛び込むシーンにスタントマンとして出演していたこれまで5度映画化された(2013年7月現在)。三島には、歌劇『潮騒』の構想もあり、4幕からなる歌劇台本ノートが残されている。ストーリーは小説とはやや異なり簡略化され、水汲み場で安夫に襲われそうになる初江を、新治が助けて2人が結ばれる展開となっている。そして、照爺と新治の母の抗争に悲観した初江が投身し、新治が救いにゆき、恋の勝利となる。フィナーレは漁夫ら大ぜいの、神をたたえる舟出の大合唱となる。新治(テノール)、初江(ソプラノ)、安夫(テノール)、千代子(ソプラノ)、新治の母(アルト)、照爺(バス)、小間物屋(バリトン)、子供たち、海女たち、漁夫たち

出典:wikipedia

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