パンアメリカン航空214便墜落事故（"Pan Am Flight 214" ）は、飛行中の航空機に落雷があっても大きな損害は生じないとする通説に反し、落雷によって墜落したとされる航空事故である。1963年12月8日、プエルトリコ・サンフアンを離陸しメリーランド州ボルチモアを経由してペンシルベニア州フィラデルフィアに向かうパンアメリカン航空214便はボーイング707-121（機体記号N709PA, 1958年製造）で運航されていた。ボルチモアを午後8時24分（アメリカ東部標準時）に離陸した214便は、フィラデルフィアの航空管制官からフィラデルフィア国際空港の強風が収まるまで空中で待機するように指示され、他の5機の旅客機とともに空中待機コースを飛行していた。空中待機をしていた214便は、午後8時58分に落雷を受け、空中で爆発して操縦不能に陥り、午後8時59分にメリーランド州エルクトン () にあるトウモロコシ畑に墜落した。この事故で乗員8名、乗客73名のあわせて81名が犠牲になった。アメリカ民間航空委員会（当時）は事故原因を、落雷を受けた際、左翼燃料タンクの空気孔からもれて気化した燃料に高電圧がかかったことにより、引火して爆発、左翼端が失われると共に、燃料タンク内の燃料に引火して火災となり、墜落に至ったものとした。落雷が原因でどのように発火したかについての科学的メカニズムは充分に解明できなかったが、ストリーマ現象が発生したのではないかと推定された。事故直後、アメリカ連邦航空局（FAA）はアメリカ国内で登録されている民間ジェット旅客機に対して、放電装置の設置を勧告する耐空性改善通報を発行し、各航空会社は実行した。また当時は旅客機の航空燃料として揮発性が高いJP-4ジェット燃料が使用されていたが、この事故を契機に、引火性の少ないケロシン系ジェット燃料が使用されるようになった。ギネス世界記録に「最悪の犠牲者を出した落雷」としてこの事故が掲載されている。

出典:wikipedia