アダルトゲーム(エロゲ、 または 、和製英語:)とは、ハードコアな性的表現を好まない者や判断能力に劣る子供がプレーするには適さない『性的な表現』が含まれるコンピューターゲームのことである。東京都青少年の健全な育成に関する条例においては、「電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に卑わいな行為を擬似的に体験させるもの」がこれにあたるとされており、長野県の一部市町村を除く、他の地方公共団体の「青少年保護育成条例」においても、ほぼ同様の定義がなされている。通常、18歳未満の者や過激な性描写を望まない者への販売・頒布・譲渡並びに18歳未満者による購入・使用が風営法や児童福祉法、都道府県および市区町村の青少年保護育成条例、迷惑防止条例、ソフトウェア利用許諾契約、業界の自主規制により厳しく規制されており、これらの規定に違反した者には刑事罰・民事罰並びに行政罰が科されることがある。特に断り書きがない限り、日本国内での事例について述べる。コンピュータソフトウェア倫理機構による公式名称は「R18ゲーム」であるが、俗に「エロゲ(ー)」「18禁―」と呼ばれる。1980年代の業界黎明期から「美少女ゲーム」という呼び方もある。ただし、特にパソコンゲームにおいて「美少女ゲーム」という表現を用いる場合には、主人公・主要キャラクターとして魅力的な美少女キャラクターが複数登場するが性的描写のシーンがないノンアダルト作品や性的描写を回避しつつも美少女の育成や恋愛要素が主眼である「ギャルゲー」をアダルトゲームとは別区分として指すこともあるほか、性的描写を含む「成人向けゲームソフト」についても女性プレイヤー向けに美形男性キャラクターの同性愛を描いた「ボーイズラブゲーム」、女性視点で描かれる「18禁乙女ゲーム」、男性プレイヤー向けに少年愛を描いた「ショタゲー」、男性同性愛者向けにゲイ雑誌に通じる表現技法で同性愛を描いた「ゲイ向けゲーム」なども存在するため、「アダルトゲーム=美少女ゲーム」という構図は成り立たない。今日のアダルトゲームのほとんどは、x86アーキテクチャ上で稼働するNT系Windowsをプラットフォームとしたパーソナルコンピュータ(PC、以下パソコン)向けのソフトウェア、すなわちパソコンゲームとして発売されている。2011年前後からは、Androidを搭載したスマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末をプラットフォームとした製品も増えてきている。男女問わず、概ね20代から40代までを主たる購入対象とするタイトルが中心である。販売に当たっては、メーカー間の自主規制や児童福祉法、風営法、各都道府県および市区町村の青少年保護育成条例や迷惑防止条例により、18歳未満の者や過激な性的表現を望まない者の目に触れることがないよう販売店における陳列の分離や販売時の年齢確認を徹底するよう通達がなされている。違反者に対する刑罰も非常に厳しくなっており、児童福祉法違反とみなされた場合には、最大で10年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられるほか、青少年健全育成条例違反が適用された場合においても、有害図書の提供と淫行条例との併合罪が適用される可能性がある。また、過激な性描写を望まない18歳以上または18歳未満の者にプレーを勧めたり、目に触れさせたりする行為も迷惑防止条例上の卑猥な言動に該当し、処罰の対象となるほか、18歳未満の者が使用した場合でも、少年警察活動規則にて定められている不健全娯楽に興じたとして補導されたり、自身が在籍する組織の校則や社則などに基づき、懲戒処分の対象となるほか、購入者が18歳未満であった場合や18歳未満者に貸与・譲渡・サブライセンスする目的で購入した場合には、アカデミックパッケージの不正購入などと同様、使用ライセンスの不正取得行為に問われ、刑事上の責任を負う可能性もある。正規にライセンスを取得した者や18才未満の者を指導・監督する立場にある者に対しても、法律・条例・ソフトウェア利用許諾契約に基づき、当該ソフトウェアおよび関連製品が18才未満の者に触れないよう、厳重な管理をする必要があるため、18才未満の者が当該品を使用している事実を購入者本人並びに18才未満の者を指導する立場にある者が知り得た場合には、厳重に注意を行った上で直ちに使用を中止させなければならない。ゲームジャンルは、アドベンチャーゲームとその亜種であるビジュアルノベルが圧倒的多数を占める。それに対し、育成シミュレーションゲーム・シミュレーションRPG・アクションゲーム・RPG、シューティングゲームなどは珍しい。ゲーム内のイベント画面やキャラクターの立ち姿のグラフィックについては、日本ではマンガ・アニメ調の平面的な2次元コンピュータグラフィックスによる静止画像がそのほとんどを占めており、3次元コンピュータグラフィックスのキャラクターを用いた作品は存在するが少数派である。海外のアダルトソフトでは一般的なポルノ女優によるヌード実写映像の作品は少ない。受動的に鑑賞するアダルトビデオやヌード写真とは異なり、初期はキーボードからのコマンド入力、現在では主にマウス操作による登場人物の行動選択という形でのインタラクティヴな体裁を取り、現実の代替物ではなく独立したリアリティであり「萌え」「感動」「ノスタルジー」などとコミになった性的満足として存在している。このことは、日本では特有の発展を遂げた漫画・アニメなどのサブカルチャーと結びつかせる要因となり、また、ゲームソフト卸や一部のゲーム会社により自社の傘下に入ることを条件に制作チーム(ブランド)に開発資金を供給するシステムが広く確立されるとともに、資金や知名度の乏しいクリエイターやその集団が創作を行なう場として定着し、「成人向け作品として必要量の裸と“場面”を出しておけば、後は予算と納期と倫理基準の範囲内でクリエイターに裁量が与えられ、自由に表現を追求し創作意欲を満たせる」という、かつて斜陽の一途を辿る映画業界にあって機会に恵まれない多くの若手映画人が手腕を奮った日活ロマンポルノの成人映画と類似した制作システムの構造を成立させるに至り、日本のおたく文化の一翼を形成した。また人材発掘についても同様で、今日ではゲーム業界のみならずアニメ・漫画・小説などいわゆるメディアミックス関連業界全般への人材・コンテンツの主要な供給源の1つとしても機能しており、これら業界ではアダルトゲームからプロのクリエイターとしてのキャリアをスタートさせた人物や、あるいはクリエイターとして著名になる課程でアダルトゲーム業界に関与した経験を持つ人物はさして珍しいものではなくなっている。アダルトゲームの場合、「家庭用ゲーム」とも呼ばれるコンシューマゲーム機では発生するハードウェアメーカーへのライセンス権使用料や特定ハードウェア向けの専用ワークステーション・開発キットの導入やリースにかかる高額なコストがなく、遥かに廉価で一般的な仕様のパソコンおよび汎用ソフトウェア開発キット・周辺機器があれば作業の大半が可能であり、プレイヤーの使用しているパソコンと大差がない仕様で開発を行っているメーカーも多い。開発環境へ導入するLANやファイルサーバも比較的小規模なもので必要充分であり、3DCGやトゥーンレンダリングを本格導入するものでもなければ高性能なワークステーションを導入する必要もない。これらのことから、コンシューマゲーム機と比較すればアダルトゲームは小資本での制作が可能である。コンシューマゲーム機と比較した場合にはハードウェアメーカーによる作品内容・シナリオや販売計画への企画・開発段階でのチェックや干渉がなく、販売対象を18歳以上に限定していることから、性的描写以外の部分においても表現の自由度が大きいこともアダルトゲームを特徴付けている重要な要素である。たとえば古典的な恋愛小説・純文学の様式表現を追求したい作品や、同様に若年層には理解し難いラブコメ・懐古趣味・愛憎劇や過激なパロディ要素や社会風刺を内含している作品などでは、あえて登場人物の性描写を含めてパソコン向けのアダルトゲームのフォーマットで制作されることが多く、このような方向性を特に重視した作品の中にはヒロインの性的描写のシーンはゲームの本質に影響を及ぼさないサービスシーンという割り切った作りのものも見られる。これについては、このようなことが要因として挙げられ、いくら資金・人材・技術の面で制作が可能であってもコンシューマ機では現実にはソフトを流通させられず販売不可能な一方で、ハードウェアメーカーによる干渉がなく後述するような制作システムが構築されビジュアルノベルとそのゲームエンジンが普及・発展しているアダルトゲームならば制作・販売が容易でプレイヤーからも受容されやすいことなどが大きな要因になっている。アダルトゲームの、歴史に関する部分を解説する。日本で最も古く市販されたアダルトゲームは、ハドソンソフトのミソラーメングループが、シャープのMZ-80K/C用へ、1979年に発売した野球拳である。登場人物はキャラクターグラフィックで描かれており、とても簡素なゲームではあった。1982 - 1983年(昭和57年 - 58年)にかけて、パソコンショップ経営していた光栄マイコンシステム(現:コーエーテクモゲームス)、九十九電機、PSK(パソコンショップ高知)、CSKなどがアダルトゲームの制作・販売をしていた。エニックス(現:スクウェア・エニックス)など後にコンシューマーゲームで名をはせるソフトメーカーから、ポニカ(ポニーキャニオン)のような映像・音楽ソフトメーカーもアダルトゲームの制作・販売に参入し、より性的な内容に特化したソフトウェアの開発が進み、1983年には10本以上のアダルトゲームが発売された。チャンピオンソフトから初のアダルトゲーム『アタックひろ子ちゃん』が発売されたのもこの年である。1985年(昭和60年)、現在のアダルトゲームの元祖といわれる『天使たちの午後』(ジャスト)が登場し、アダルトゲームにキャラクター性とストーリー性を盛り込むという形式の原型が生まれた。しかし、当時はまだゲームオーバーが存在したり、話の流れが一様であったりと、物語としては稚拙な面も存在した。また、同時代にはこの他に脱衣麻雀に代表される「コンピューター版野球拳」のようなゲームもあり、ゲームの内容とは無関係に性的画像を表示させ、その一点のみをもってアダルトゲームに分類され、専用のコーナーに陳列されていた製品もみられる。このジャンルでは『雀豪ナイト』(1983年(昭和58年) 日本物産)が、アーケードゲーム初の脱衣麻雀として登場し、「脱衣もの」というジャンルが確立された。この時代、一般社会においてアダルトゲームは特殊な再生媒体によるポルノ作品として認識され、その存在は「ほぼ無視ないし無名」という状態であった。このため業界共通の性的描写に関するガイドラインは存在せず、各企業の裁量に任されていた。しかし1986年(昭和61年)に、刑法177条(強姦罪)からタイトルを取った『177』(マカダミアソフト=デービーソフトの一部門)が、草川昭三により国会で取り上げられたことにより次第にアダルトゲームは問題視されるようになり、そして1988年(昭和63年)に起こった東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件や、それに端を発した有害コミック騒動によってポルノ業界そのものへの批判が強くなっていく。1988年 - 1991年頃には、PC-9800シリーズが日本国内で販売されているPCハードウェアのシェアで圧倒的となり、16ビットパソコンの技術がある種の集大成を迎えた。1986年(昭和61年)発売のPC-9801VM21以降はグラフィック、効果音、記憶媒体の性能がそれ以前に比べ向上したうえ、事実上のOS統一などによる移植性の向上、製作に関する機器(スキャナ、グラフィックソフト)の値下がりなどにより、作り手側にとってゲームが製作しやすい環境となった。デジタル的だった色合いもアニメ的な色合いが出しやすくなった。そのためか製作本数が以前より増え、多種多様なアダルトゲームが販売されるが、その中で一部の作品が過激化し始めた。しかし1991年に制作企業の社長がわいせつ図画販売目的所持で逮捕される事件(沙織事件)が起きた。こうしたことから、業界による自主規制団体が立ち上げられることとなり、翌1992年にコンピュータソフトウェア倫理機構が設立された。この中で頭角を現したのがエルフで、1992年12月にリリースされた『同級生』は10万本を越えるベストセラーとなった。この作品は当初シミュレーションゲームの要素を取り入れたナンパゲームとして企画されていたが、各ヒロインに個性を与え、Hシーンに至るまでの恋愛ドラマを盛り込んだ結果、それまでのアダルトゲームのイメージを覆す恋愛ゲームとして評価された。そして『同級生』のドラマ性を参考にして開発された非アダルトの美少女ゲーム『ときめきメモリアル』(1994年、コナミ)が家庭用ゲーム機市場にて大ヒットしたことにより、コンピュータゲームにおいて美少女ゲームが次第に市場に認知され、その中でアダルトなシーンまで踏み込むものとしてアダルトゲームが知られるようになる。この時期は、ハードウェア的にはPC-9800シリーズからPC/AT互換機へ、ソフトウェア的にもCUIのDOS系OSからGUIのWindowsへの移行期であった。この頃のアダルトゲームは「どうゲームとして面白くするか」が試行錯誤された時期であった。その中で、プレイヤーの選択によって異なる物語と結末が訪れるマルチシナリオ・マルチエンディング形式のゲーム『弟切草』(1992年、チュンソフト)がスーパーファミコンで発売されヒットする。この作品のシステムはアダルトゲームにも大きな影響を及ぼした。アダルトゲームでマルチシナリオを確立させたのは『河原崎家の一族』(1993年、シルキーズ)で、その後『DESIRE 〜背徳の螺旋〜』(1994年、シーズウェア)、『EVE burst error』(1995年、シーズウェア)へと発展してゆく。1990年代半ばには、エルフとアリスソフトの2社を中心とした開発競争が繰り広げられ、「西のアリスソフト、東のエルフ」と呼ばれるようになった。この競争の過程で、ファンタジーアドベンチャーとウォーシミュレーションを融合させた『ドラゴンナイト4』(1994年、エルフ)、本格的ダンジョンRPGの『闘神都市II』(1994年、アリスソフト)、迷宮脱出推理アドベンチャーの『遺作』(1995年、エルフ)、マルチシナリオの『夢幻泡影』(1995年、アリスソフト)、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(1996年、エルフ)、地域制圧型シミュレーション『鬼畜王ランス』(1996年、アリスソフト)など、多様なジャンル・形式のアダルトゲームが登場した。このように多様化したジャンルの中で発展を遂げていったのは、より恋愛物語色を強めた『同級生』の後継作『同級生2』(1994年)で、以降のアダルトゲームはセックス描写を含む恋愛物語要素やシナリオを重視した、選択肢とイラストが付いた読み物とでも言うようなトレンドに傾いていく。『SM調教師瞳』(スーパーファミコン向け)や『しあわせうさぎ』(PCエンジン向け)など、家庭用ゲーム機対応の「裏ソフト」と呼ばれる物が発売されたのもこの頃である。技術面では、技術開発や記録媒体の大容量化によってパソコンの画像・音楽表現能力が著しく向上したうえ、1995年のWindows 95シリーズのヒット、パソコンの低価格化によってパソコンユーザーが増加した。一方で1999年に成立した『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律』によりアダルト・ポルノ業界に対する規制が強化され、対応が迫られるようになる。1996年、Leafは『弟切草』を参考にビジュアルノベル第一作 『雫』を制作、続いて同じコンセプトの『痕』を同年発売すると、(インターネットが普及していない時代であったが)パソコン通信や口コミで評判が広まりヒットし、ストーリー重視の流れがアダルトゲーム業界に定着した。翌1997年に発売された『To Heart』は、日常が舞台の恋愛ゲームとしてアダルトゲームの枠を飛び越え、家庭用ゲーム機への移植・アニメ化・漫画化などのメディアミックスが図られた。プレイヤーの好みのキャラクターを用意するため、幼馴染・活発・無口・外国人などの定型的なキャラクター作りの先駆けでもある。Leafとは別の方向でストーリー重視を打ち出して成功したのが『ONE 〜輝く季節へ〜』(1998年、Tactics)で、ラブストーリーに感動できる要素と泣ける要素を盛り込み、それを音楽によって高める演出の秀逸さで人気を集めた。この向きは、のちに同作の製作スタッフの一部がビジュアルアーツに移り旗揚げした新ブランドKeyの第一作『Kanon』(1999年)、第二作『AIR』(2000年)が立て続けに大ヒットしたことにより、「泣きゲー」というカテゴリを確立するに至った。2002年をピークにアダルトゲーム市場は衰退し、その関連のアダルトゲーム雑誌も同じく衰退している。同人誌即売会コミックマーケットにおいて、2000年冬に登場したオリジナル同人アダルトゲーム『月姫』(TYPE-MOON)が10万本以上の大ヒットとなり、同人原作作品ながらも事実上の商業化とメディアミックス展開を果たし、業界に大きな影響を与えた。ソフ倫の規制強化を逆手に取るように、義妹・幼馴染・いとこ(主に従兄妹)をメインヒロインに据えた作品で多くの話題作が出た。その中で『みずいろ』(2001年、ねこねこソフト)、『D.C. 〜ダ・カーポ〜』(2002年、CIRCUS)が相次いでヒットした。一方老舗のメーカーでエルフは鬼畜・凌辱物の『臭作』(1998年)・『鬼作』(2001年)といった純愛以外の作品や、ライトノベル作家あかほりさとる原作で、萌え重視・メディアミックス重視の『らいむいろ戦奇譚 〜明治日本、乙女 防人ス。〜』(2002年)を送り出す。もう一方の雄アリスソフトはあくまでエロさとゲーム性を重視した作風の『大悪司』(2001年)、『ランスVI-ゼス崩壊-』(2004年)といった作品や、希望小売価格が2800円の『妻みぐい』(2002年)で低価格路線を打ち出して新たな流れに対抗した。また2003年には女性プレーヤーを対象にした『星の王女』(美蕾)が発売された。高速インターネット回線の普及によりダウンロード販売が急速に拡大し、2004年には2万本だった販売数が翌2005年には17万本と急増した。その一方で、インターネットの大容量化は違法ダウンロードによる被害の拡大や、(2010年代に続く)動画共有サイトやSNSの出現によるコンテンツの多様化をもたらし、アダルトゲーム市場の縮小を招く一因にもなった。2010年代になるとWindowsPCだけではなくMACやスマートフォンにも対応している課金制18禁ブラウザゲームや18禁Androidアプリが登場し、それらに対応したゲームプラットフォーム「DMM.R18 オンラインゲーム」「にじよめ」「TSUTAYA オンラインゲーム」などが次々と開始された。一方、既存のパソコン用アダルトゲームは、萌えアニメやラノベやニコニコ動画に代表される動画サイト(で流行っているオタク向けコンテンツ)やダウンロード販売がさらに普及した低価格な同人ゲームなどに押され、秋葉原電気外祭りを開催するなど、振興策をとってはいるものの、依然として衰退傾向が続いている。若いユーザーは高価格なアダルトゲームを避けている傾向にあり、また、既存のパソコン用アダルトゲームの中心層が1990年代後半〜2000年代前半のアダルトゲームブームの頃の人たちで構成されていることもあり、アダルトゲームユーザーの年齢層は他のオタク産業と比較して高くなっていると言われている。そのような状況から、アダルトゲームから脱却し、一般向けへのシフトを模索するメーカーもある。そのような中、かつてはアダルトゲームのトップブランドだったLeafを有するアクアプラスが2013年10月にユメノソラホールディングス(とらのあな)に買収され、2013年冬を最後にコミックマーケットのジャンルコードから葉鍵が消滅し、2013年秋を最後にアダルトゲームのイベントであるDreamPartyが開催中止になるなど、市場規模や売上の減少と共に、1990年代後半〜2000年代前半にかけてトップレベルだったオタク業界内での影響力も相対的に小さくなりつつある。アダルトゲームに関する、日本国内の社会一般における議論や、表現の自主規制について解説する。アダルトゲームの規制に関する意見の中には、一部に感情論的な側面が含まれ、他方では明確な論拠を持たない、ないし事実に対する意図的な誤認を誘うようにされているものすら見られる。これらには、過去の犯罪行為に対して忌避感を抱く側の拒絶反応または嫌悪感やそれに対する配慮、あるいは制作者の利害関係ないし制作者・愛好者の規制強化に対する危機感、逆に規制推進派が唱える規制強化案では感情的なものの他にも自組織の存在の誇示や発言力強化まで計算に入れたセンセーショナルで声高な主張といったものが、時に密接な関連を及ぼしてくる。またマイナーカルチャーないしサブカルチャーの常ではあるが、これを包括的に研究する社会学・心理学・犯罪学、あるいは現代風俗論や文化論などの研究者も稀であり、この議論に明確な正解を提示できる者は、現在の所として見られない。このため、規制の賛成派と反対派の議論は、互いの主張をほぼ全否定し合うだけで議論の余地すらまともに見出せない双方の平行線に終わっており、現状に於いて決着がつかないのが実情である。加えて双方の話し合いの場すら、一部のインターネット上のコミュニティを除けば、皆無といえるような状況である。他方では、社会的圧力から販売禁止による損害を恐れるゲーム制作企業が、様々な迂回策や自主規制を行う傾向も見られる。日本における表現の自主規制は学識的・理知的な裏付けがない場合や、団体各々の主観で判断している部分がある。その対象・程度にばらつきも見られ、客観的に何処までが容認されるのか、何処からが規制されるのかという面で、レーティング設定も業界ごとに規制対象がまちまちであり、規制導入側にしても、その影響を被る側にしても混乱を招いている。この状況を打破する目的も含め、2006年4月経済産業省はCESA、ソフ倫、日本アミューズメントマシン工業協会、映倫管理委員会、日本ビデオ倫理協会と映像コンテンツ倫理連絡会議(仮称)において審査基準・表示の一本化を提言した。2005年現在において、日本では同年2月には45本発売されるなど(PC Angel2005年5月号による)多数のアダルトゲームが発売されている。『ナイトライフ』(1982年、光栄マイコンシステム)が始祖とされるこれらのゲームには、業界共通の性的描写に関するガイドラインは存在せず、性的描写は各企業の裁量に任されていた。なお、ナイトライフ自体はどちらかと言うと「夫婦生活をサポートする」ためのユーティリティ的なソフトウェアであり、直接的な性的興奮を目的としたコンピュータゲームではなかった。しかし同作品のヒット以降、着実に性的興奮を目的としたコンピュータゲームが、当時表現力が次第に向上した8ビットパソコン向けに盛んに販売されるようになった。これら成人指定の性的描写を含むコンピュータゲームの多くは、個人でもソフトウェア開発環境を揃え易いパーソナルコンピュータ向けの作品となっており、当初の市場はマニア・おたく向けの微々としたものであった。このため一般からは特殊な再生媒体によるポルノ作品としてのみ扱われ、1980年代末までのこれらゲームに対する一般の販売店での扱いは極めて無頓着なもので、販売店によっては商品であるこれらソフトウェアのパッケージは「店の入り口からでも見えるような位置」に堂々と陳列されていたり中高生ですらこれを購入することになんら制限は見られなかったほどである。社会一般での認知度も「ほぼ無視ないし無名」といった状態であった。だが、次第にアダルトゲームは問題視されるようになる。1986年には、刑法177条(強姦罪)からタイトルを取った『177』(マカダミアソフト=デービーソフトの一部門)が、草川昭三により国会で取り上げられた。そして1988年に起こった東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件や、それに端を発した有害コミック騒動によってポルノ業界そのものへの批判が強くなっていく。1991年成人向けゲームを万引きした中学生が補導されたことを発端に、成人向けゲームへの非難が高まり、製作会社の社長が京都府警に逮捕される事件が起きた。のちに沙織事件と呼ばれるものである。国会にも取り上げられたこともあり、業界全体に事態を重大に捉える動きが生まれた。翌 1992年には、業界団体の社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)が18禁シールを作成し、希望する企業への販売を開始した。一方、『電脳学園』(1989年、ガイナックス)が宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例に基づき有害図書指定される。沙織事件や宮崎県での有害指定をうけ、自主規制団体の必要性が叫ばれるようになり、1992年10月に自主規制団体のコンピュータソフトウェア倫理機構が設立された。他の分野では1990年にコミックマーケットが幕張メッセを使用できなくなる事件、それに伴いコミックマーケットでの性的表現自主規制が強化される事件が発生し、非実写性表現のあり方を問われた時代でもあった。1996年には『子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議』がストックホルムで開催された。この会議で日本人によるアジアでの児童買春と、日本国内で大量につくられる児童ポルノに対して非難が起きる。これに対して日本は法整備、取り締まりの強化を表明した。これらでは当時の日本においておたく向けの商業作品群に、所謂「アニメ風の女の子(→萌え絵)」を使っての性的興奮を煽ることを目的とした物が多く見られ、市場もそれら作品の傾向に寛容であったことも同規制による議論の対象に挙げられている。特にアダルトゲームは、かなりの比率をこの「アニメ風女の子」を使った作品が占めている。1999年は超党派の国会議員によって『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案』が提出され、成立した。法案段階では『児童ポルノ』の範疇に「絵」が含まれていたことから、業界筋やユーザー筋でも大きな論争になった。修正され『絵』は対象外になったが、3年後に見直しを行うことを明記した。2005年4月には、自由民主党の野田聖子の呼びかけにより、『少女アダルトアニメ及び同シミュレーションゲームの製造・販売に関する勉強会』が行われたが、この勉強会自体は大きな話題になることはなかった。2006年4月10日に日本テレビはNNN NewsリアルタイムおよびNNNきょうの出来事において、「アニメやインターネットに溢れる性や暴力に関る情報が、子供を標的にした事件に結びついている可能性がある」として警察庁が新たな規制に動き出したことを報道した。2008年に入り、日本ユニセフ協会を中心にアニメ、漫画、ゲームソフトおよび18歳以上の人物が児童を演じるものを含む児童の性的な姿態や虐待などを写実的に描写したものを「準児童ポルノ」として違法化することなどを柱とした「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンが開始された。国会では児童ポルノの規制強化を目的として、性表現色の濃い漫画・アニメ・ゲームといったフィクション作品の単純所持をも規制対象に含める改正案を検討し始めた。2008年には、「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」を「児童ポルノに類する漫画等」とした上で児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進することを附則に盛り込んだ児童ポルノ禁止法改正案が提出されたが、2009年7月21日に衆議院が解散されたため、廃案となった。2009年にはいると『レイプレイ』(2006年、ILLUSION)が英国国会で取り上げられ、ニューヨーク市議会でボイコット運動が起きた。5月にはアメリカのラディカル・フェミニズム団体の「イクオリティ・ナウ」が抗議活動を始めるなど日本国外でアダルトゲームが問題視された。この動きは日本にも波及し『レイプレイ』の発売元が取り扱いを中止した。公明党が秋葉原での販売形態を視察したほか当時与党であった自民党が「性暴力ゲームの規制に関する勉強会」を立ち上げ、罰則規定を含む法体制の整備を提言するなど政治の動きが活発になった。コンピュータソフトウェア倫理機構は、このような状況の下6月に開催された会合で「レイプなどの性暴力を扱うゲームソフト」の製造・販売を禁止パッケージに日本国内専売の明記などの規制の強化を決定した。また、minoriなどいくつかのブランドは公式サイトへの日本国外からの接続を切断した。2014年には、2008年に提出された児童ポルノ禁止法改正案の附則と同様に、「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」を「児童ポルノに類する漫画等」とした上で児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進することを附則に盛り込んだ児童ポルノ禁止法改正案が提出されたが、与野党の合意により成立した改正法からはその部分は削除された。なお、同法により、児童ポルノの単純所持が禁止された。規制強化を求める側の主張として、これらのゲームが流通することで児童誘拐事件などの凶悪犯罪が発生する可能性があるため、被害防止のために規制するべきという考え方がある。公明党所属の丸谷佳織衆議院議員(当時)はと述べ、「つまり、「絵」に関して、たとえ実在の被害者がいなくても、現状は放置しておくべき状況ではないというお考えですね」との問いにはと答えている。社会風潮の悪化防止のために規制の強化が必要とする意見が述べられることもある。児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の制定にも力を尽くしたNGO・ECPAT/ストップ子ども買春の会の共同代表者はと述べている。海外では規制されているとして、それらを参考にすべきとの意見もみられる。また、内容的に犯罪行為(→強姦)を扱うゲームがしばしば発表されている部分にも絡み、これらゲームの消費者の嗜好や、製作側の諸事情で用いられているいわゆる「アニメ風の女の子」の絵(→萌え絵)が、かわいらしさや女子らしさを強調しようとした結果、その映像面で幼児・児童として認識され得る辺りにも関連して、同種作品への拒否感を強め、規制案への支持に及んでいる傾向が見られる。中には、など、公の場で差別的ともとれる意見が述べられることもあった。これらの主張の他にも、架空のキャラクターにも人権が存在するため、陵辱されるようなゲームは許されないとする意見もある。元NPO法人カスパルの代表者は朝日新聞が2005年1月10日に行ったインタビューで「絵で描かれていても、少女たちの人権を侵していることには違いありません。」と述べている。この辺りは、ゲームによって提供される仮想内の出来事ながら、半ば作品提供側の意図したストーリーで犯罪行為を追体験するような物への風当たりが強く、また人間社会では各々の個人が持つ人権が同等の物であるように、ゲーム内に構築された仮想世界では、ユーザーの操作する主人公と、陵辱される側のキャラクターは本質的に同等の「仮想的人権」を有しているであろう…という点も成立する。憲法21条で保障される所の表現の自由による物や規制の恣意性から反対することが多い。このほか、強力効果説を否定し暴力的になることはないとする意見のほか、現実の女性に向かう性欲を失わせ、実際の性犯罪が抑制されている可能性があるという指摘もある。規制に関する歴史にあるように、業界にとって青天の霹靂とでも言うべき事態であった沙織事件などから来る規制強化の流れを受けて、1992年、自主審査機構つまり自主規制の団体としてコンピュータソフトウェア倫理機構(以下ソフ倫)が設立された。最初期に制定された性表現の規制基準については、主に当時のアダルトビデオ業界の最大の自主審査機構・日本ビデオ倫理協会(以下ビデ倫)の基準を参考にしていたが、動画の実写作品を管理することを主目的としたビデ倫をモデルにした基準は、ほとんどの作品で静止画のイラストが主体であるアダルトゲームの実態にはそぐわないものであった。しかし、ソフ倫はアダルトゲーム業界唯一の審査機構であることを背景に、パソコンソフト卸・流通の企業との関係・連携を重視しこれらを取り込むことで、ソフ倫に加盟してその規制・指示に従わなければアダルトゲームをパソコンソフトの商業流通の販路に乗せることが事実上不可能になるという業界の構図を作り出し、設立後数年と経たないうちにアダルトゲーム業界で絶大な権力を持つに至った。だが、その反面で、ソフ倫はその業務内容については非公開としており、ソフ倫に人員を提供する一部の制作会社に対しては作品の審査が甘いという指摘がなされるなど、透明性が低いと言わざるを得ない組織体質であり、プレイヤーサイドの求めるものとのギャップも大きく、プレイヤーや会員メーカーからの不信感を招いた。その上、組織体質的には極度の事なかれ主義で、1999年施行の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の影響が波及する事態や沙織事件の再来を恐れ、18歳未満の男女キャラクターの性的描写の禁止や、ゲーム内において使ってはいけない言葉(いわゆる「NGワード」)などといった規制強化ばかりを年々進め続け(例えば「高校生」(ほとんどが18歳未満)という言葉を「学園生」(年齢不詳)に言い換える、など)、ジュブナイルポルノやアダルトアニメなどと比べても表現の制約と不自由さは増すばかりであった。しかも、ソフ倫はアダルトゲームの審査業務を事実上独占し上述のように卸・流通をも掌握していたことから、事実上、商業流通のアダルトゲーム市場でのメーカーやクリエイターの生殺与奪の権を握っていたと言っても過言では無く、アダルトゲームのメーカーやクリエイターたちはソフ倫加盟か自主審査かは関係なくソフ倫に楯突くような真似はできず、ノベライズであるジュブナイルポルノ作品などの関連商品や雑誌イラスト、ウェブサイトなどにおける表現や言動も含めて、業界で権勢を増すばかりのソフ倫の影響下から逃れることはできなかった。この状況に小さくとも風穴が開く、すなわちアダルトゲームの審査業務におけるソフ倫の独占が崩れる、その転機となる出来事のきっかけは2001年8月に起きた。『君が望む永遠』(2001年、アージュ)が、画像の修正処理に不手際があるとして“自主回収”となった。発売元のアージュの代表は後年、同作について「自主審査のうえで自主回収だった」としているが、自主回収騒動の後しばらくは主に同作に絡めてアダルトゲーム業界やソフ倫に絡んだ様々な情報や憶測が流れたことも事実である。いずれにせよ、同作の回収騒ぎが1つの契機となり、アージュの作品を取り扱っていたソフトウェア卸売会社ホビボックスは、アダルトビデオの自主審査機構だったメディア倫理協会(現・コンテンツ・ソフト協同組合メディア倫理委員会、以下メディ倫)にアダルトゲームの審査を行うように働きかける。そして、2003年2月、アージュの『マブラヴ』がメディ倫審査によるアダルトゲーム第1号として発売された。また、ホビボックスとソフト流通の独占契約を締結していたぱんだはうすなど数ブランドが、アージュとほぼ同時期にメディ倫に移行した。前作『君が望む永遠』がヒット作になったアージュの新作『マブラヴ』は、諸般の事情で発売予定日の延期を何度も繰り返しながらも大きな注目を集めていた。しかし、メディ倫審査による作品の登場という事態に対して、当初、パソコンソフト流通の企業やこのルートからの仕入れをメインとする小売店の多くは、ソフ倫との関係への配慮からソフ倫審査作品以外は取り扱わない方針を取った。その結果、多くのパソコンソフト販売店で『マブラヴ』について入荷どころか仕入れ元からの情報さえ一切皆無という事態が起き、パソコンソフト販売店の店頭や通販のルートからの購入希望者たちを困惑させる。その一方で、『マブラヴ』の流通と販売の中核を担ったのは、従前からメディ倫審査のアダルトビデオの販売を数多く手掛けていたアダルトビデオ系の流通とこれを取り扱うサブカルチャー系書店であった。パソコンソフト販売店での『マブラヴ』の入手難から、アダルトゲームのプレイヤーたちの間ではインターネット上で同作の販売概況を巡る情報交換が幅広く行われ、やがて実情が明らかになるに連れて、サブカルチャー系書店でのパソコンソフト販売に対する認知がプレイヤーの間で広まることになった。また、当時のメディ倫はソフ倫と異なり、全ての素材を審査する完全審査体制を取っており、卑猥な用語に対する規制もソフ倫より若干緩いものであった。メディ倫審査を通過した『マブラヴ』の登場によって、当時のソフ倫とメディ倫の規制などへに対する姿勢の相違点は比較され、その中でソフ倫の表現規制や末端の加盟メーカーに対する姿勢のきつさが表面化する格好になった。その後、2004年初頭に数々のブランドを抱える大手・テックアーツがメディ倫への移行を表明、前後して主に中堅以下の数ブランドがメディ倫へ移行し、その後に設立されたメーカーの中には最初からメディ倫による審査を選択し、ソフ倫には加盟しない所も見られるようになった。これらの結果、パソコンソフト流通に属する流通・小売の各社もメディ倫審査の作品の存在を無視することができなくなり、なし崩し的に取り扱いが開始され、10年以上にわたって続いたソフ倫によるアダルトゲーム審査業務の独占は崩壊することになった。この一連の流れを受けて、加盟メーカーのメディ倫審査への流出防止、すなわち組織防衛の必要に迫られたソフ倫は様々な対抗策を打ち出して加盟メーカーの引き留めを図ったが、その最大の切り札は、それまで組織内部では口にすることさえ事実上のタブーであった性的描写の部分的規制緩和であり、たとえば一度は厳禁になった近親相姦描写は2004年秋以降の作品から再解禁となった。なお、メディ倫によるアダルトゲーム審査業務は、メディ倫の組織変更に伴い2010年に映像倫理機構による審査業務に移行している。アダルトゲームの、技術面に関する部分を解説する。1980年代までのパーソナルコンピュータの大半は、ソフトウェアの開発環境もトータルにパッケージ化された製品として市場に出ていた。このこともあり、コンシューマ機向けゲームソフトのようなワークステーションなどの専用機器の導入をせずとも製品の開発が可能で、これはアダルトゲームのみに限定されたことではないが、当時のパソコンゲームソフトのほとんどがこれらゲームを動作させる動作環境と同じ機器を利用して開発を行っていた。また、コンシューマ機と異なりソフトの流通をハードメーカーが一括して掌握・管理するシステムは構築されておらず、ほとんどのケースでハードウェアメーカーに対してのライセンスや許諾承認の手間・コストが存在しないか小さかった。そのため、パソコンゲームを開発・発売するにあたっては家庭用ゲーム機よりもハードルが低く、それこそ現在の小規模な同人ゲームと同程度の出資・開発規模でも商業規模の作品の制作が可能であった。あとはメンバーの熱意とセンスと開発に投じることの出来る時間で製品の完成度は左右され、同人での活動を目指すものは同人即売会などを目指し、開発チームが小規模でも商業ブランドとして立ち上げたい者たちは、当時の家電量販店や日本ソフトバンクなどのパソコンソフト卸で商品を流通させていくことを目指すことになった。このため、日本国内においてのアダルトゲームの開発と発展の歴史は、パソコンとパソコンゲームのそれ自体の発展の歴史、パソコンゲームに関する同人イベント、パソコン用ゲームソフト流通の歴史などとも密接に絡み重なり合う部分が存在する。開発環境は、家庭向けのパーソナルコンピュータの性能が向上していく過程で、それに牽引される形で発達を見せており、この事情はやはり黎明期からあまり変わっていない。しかし共通化されたゲームエンジンの開発と導入などにより、「アダルトゲームを含むコンピュータゲームの開発環境」は総じて向上しており、また商業タイトルでも使用されているゲームエンジンが同人ゲームに導入されることも見られ、これは同人ゲーム開発サークルとの境界の曖昧化を発生させていると見ることも可能である。この中では、技術力と資金のあるメーカーが独自に新しい映像技術やゲームシステムを開発・導入したりする一方で、おたく文化・インターネットの発達や同人とその関連産業の拡大を背景に数多のクリエイター(原画・シナリオライター)が輩出されている関係で、技術力に劣る中小のメーカーでも描画力に優れ人気のあるクリエイターを確保できれば、あるいは所属者の原画・シナリオの作風が洗練されたものに変化し時流にマッチし人気が沸騰すれば、その可憐な美少女キャラクターを武器に大手・古参メーカーにも十分伍しての販売をし得るわけで、そのような形で住み分けや販売力の強化を行っている様子も見られる。アダルトゲームでは伝統的に、プログラマーもしくはシナリオライターがディレクターを兼任して企画を立て、作業の進行管理を行うことが多い。また、テキストの良さは物語とキャラクターをより魅力的なものとし、作品自体の評価を高める。これらのことからシナリオライターや企画担当者はスタッフ中でも重要な役職の1つとされる。2000年以降はメーカー、雑誌等で原画家と共にライターも紹介することが多くなった。シナリオライターの業態は黎明期から現在に至るまで形態に大きな変化がない。大半のアダルトゲームではメインライターは1人である。ただしマルチシナリオ・マルチエンディングのビジュアルノベルの普及や大作化傾向が進んだことで文章量が大幅に増加した現在では、ボリュームのある作品などでは一般的な文庫本を超えるほどの文章量があるものも少なくなく、サブライターとして何人かが協力したり、数人のシナリオライターや企画チームによる全面的にシステマティックな共同作業制を導入しているブランドも見られる。上述の通り企画や進行管理を兼任することが多いポジションであり、多くは開発組織内部の人間が務めることから内製の割合が高く、外部への発注は比較的少ない傾向にある。ただし、一部には外注としてシナリオ制作や企画立案を専業的に請け負う個人や企画チームも見られ、これらには一般的に他ブランドでメインライターを努めたことのある経験者が多い。日本のアダルトゲームの最大の特徴を成しているのがグラフィックである。アダルトゲームが出始めた1980年代の8ビットパソコン時代の末期から16ビットパソコン全盛期では、技術上の制約からプログラマー兼デザイナーの描くドット絵に留まっていた。その流れが大幅に変わったのが、アニメーション制作会社であったガイナックスの参入と『電脳学園』(1989年)『電脳学園2 HIGHWAY BUSTER』(1989年)の登場である。ここで赤井孝美・菊池道隆(麻宮騎亜)・新田真子・明貴美加といったアニメーターとして名を成した人物が参入、これに触発され、各社成人向け漫画家・アニメーターを起用し始めた。その中でエルフがアニメーター竹井正樹を起用した『同級生』(1992年)がヒットし、翌年アニメーター横田守を起用した『河原崎家の一族』もヒット、漫画・アニメーション業界からの技術流入によってグラフィックデザインの向上が図られた。1995年のWindows 95の登場により解像度と発色数が増加、技術進歩により、初め絵で描かれた作品の実写版もいくつか発売された。しかし、現在のアダルトゲームのグラフィックデザインの中核をなしているのは前掲の人物たちの絵を模倣しつつ成長した漫画・イラスト系同人作家による絵である。これにより、コンピュータゲームでも対戦格闘ゲームやロールプレイングゲームなどの他ジャンルでは、立体感のある3Dグラフィックスを用いたり、人物描写も比較的写実的になるのに対し、アダルトゲームは、現在でも2Dコンピュータグラフィックスで人物を表現するのが主流となっている。しかし例えば、アリスソフトやソフトウェアぱせりではRPGのダンジョン部分に使用され、エルフのドラゴンナイト4ではユニットを、ニトロプラスのファントム・オブ・インフェルノでは銃を3Dグラフィックスで形成するなど、作品ごとで部分的に使用されることも多く行われる。アダルトゲームの人物の絵やドット絵は瞳が顔の大半を占めるほど大きい反面、鼻や口がしばしば簡略化ないし省略される、一般的にはマンガ絵・アニメ絵と呼ばれる独特なデザインで表現されている。そのデザインはしばしばエロさといった性的興奮より、ユーザー・愛好者以外からは幼い・かわいらしいといったイメージを持たれる物で、それらへの愛らしさは『萌え』という単語で表現され、萌えを喚起する絵ということで『萌え絵』とも呼ばれている。萌え絵がアダルトゲームにおいて多い実利的な理由としては、第一に静止した立ち絵の構図が同じであるため、リアルな絵や全身図であるとそれが違和感を与えて無機質な印象を与えること(立ち絵を多くすれば解決できるが、管理が難しくユーザーも目が疲れる)があり、ディフォルメを強めることで、擬似的に与える印象を増やしていることが挙げられる。第二に、立ち絵の多くは目と口元を変えることで表情差分を作るが、切り替えを十分に表現するには目にユーザーの焦点が当たる方が都合がよい。塗る時も素早く範囲を指定できる。こうしたシンプルな形を採用し、「表現の多彩さ」と「改変のしやすさ」を兼ねることは、資源に限りがあるメーカー・制作に追われるスタッフにとっては重要なことであり、かつてのカセットテープやフロッピーディスク(FDD)など販売用記録媒体の容量の上限やコストが厳しかった時代にはなおさらのことであった。グラフィックが女優による映像ではなく、絵による画像のアダルトゲームにおいては、キャラクターのセリフに合わせた音声データを出力させることがあり、その音声を担当するのはほとんどが声優である。声優がアダルトゲームに声をあてる場合、声優名を非公表とするか、またはアダルト用の別の芸名を使うことがほとんどである。アダルトゲームへの音声の本格的な導入は、後述する音楽面と同様にCD-ROM・大容量ハードディスク・PCM・データ圧縮技術などのハードウェア・ソフトウェア両面の技術進歩と普及があって初めて可能になった要素で、時期的にはコンシューマゲーム機における導入とそれほど大差は無く、1990年代前半くらいから徐々に普及し始め、2000年代前半には普遍的なものになった。コンピュータゲームの音声データ導入は、声優起用と音声収録のシステムとノウハウが確立されるまでの最初の数年間は試行錯誤の連続で、当初は規制基準が媒体によってまちまちであったため媒体ごとに声優を交代させる必要があり、1990年代中期の作品では1キャラあたり4-5人も声優がいるものも存在した。この流れも1999年の法改正(詳細別節)と、家庭用ゲーム機におけるハード間競争でソニーのPlayStation・PlayStation 2が優勢になったことを受け、1キャラクターあたりアダルト表現まで請け負う声優と、非アダルトの関連作品のみを担う声優の2名に大別されるケースが多くなった。このような流れと平行して、コンピュータゲーム業界全体では「第三次声優ブーム」のあおりを受けて高騰の一途を辿る声優のギャラを巡り、1997年9月からCESAと日本俳優連合(日俳連)の間で交渉の場がもたれていた。だが、日俳連が「ギャラをランク制の設定額よりも高額なものにすること」「ハード間移植の際の音声二次使用料を支払うこと」などを要求したため、交渉は難航。仲裁に日本音声製作者連盟(音声連)が加わり、日俳連がかなり譲歩する形で1999年2月10日に合意、ゲームにもランク制が導入された。ただし、アダルトゲーム制作会社の場合はCESAに加盟していないため、この合意の適用外であり、そのためアダルトゲームへの声あてのギャラは、アニメや一般向けゲームよりもはるかに高額であると言われている。一例をあげるとチュアブルソフトは『スイートロビンガール』の声優一般公募の際、募集要項にヒロイン4名の報酬について500ワードまでについては基本報酬の50,000円以降は10ワード毎に500円を支払うと明記している。アダルトであること以外の特徴として、アニメ作品の場合は出演者同士の掛け合い、すなわちアフレコで、基本的に自分の出番だけスタジオいればよいのに対して、ゲームの音声収録は個別にスタジオのブースに入って収録する形式で、スタジオレンタル料との兼ね合いから短期間に集中して収録するため、1日あたりの拘束時間が長いということが挙げられる。特にアダルトゲームはノベル形式のアドベンチャーゲームが主流のため、セリフの量がアニメに比して多く、平均的な商業作品で台本はおよそ電話帳タウンページ2冊前後、メインヒロインではその1.5〜2倍に達する分量があり(ただし、アニメ用と異なり、ゲームスタッフがプリンターとコピー機を駆使して作った簡易製本であることが多く、単純には比較できない)、ゲームの仕事が入ると他の仕事が入れづらく、スケジュールの都合がつかず出演できないという事情もある。これらの事情から特定の声優に起用が集中する傾向があり、人気となれば年間に50本以上、中堅でも30本前後の作品で起用される。その結果、アダルトゲームとその関連作品の収録だけで年間スケジュールの大半が埋まってしまう声優も少なくない。現在のアダルトゲーム業界では数人規模の小さな開発チームが大半を占めていることもあり、音楽面については専門スタッフや音楽制作の機器・設備を組織内に置かないのが一般的で、全面的に外注を利用するスタイルが広く定着している。また、効果音も含めて全面的に外注に委託したり、外部の専門業者から必要に応じて効果音の音声データを購入してくることは、ごく普通に見られる。つまり、関与する企業やプロダクションの規模の違いこそあるものの、現在のサウンド面の制作システムは従来のテレビアニメのそれをおおむね踏襲したものになっている。アダルトゲーム業界に関わる音楽制作のプロダクションは数多く競合も激しいが、その中でも知名度で頭一つ抜けた存在となっているのは1990年代末期に台頭したI'veで、主題歌の編曲を手がけた『Kanon』(1999年、Key)の大ヒットで注目を集めた。I'veが音楽あるいは主題歌を手がけたアダルトゲームのパッケージには、I'veが音楽を担当したことを表すロゴマークが付けられ、KOTOKOをはじめとする“歌姫”と称される女性ボーカリストの存在を前面に打ち出す形で2000年代前半に全盛期を作り出し、その後にはテレビアニメの劇伴(BGM)や主題歌にも進出している。また2001年にはkeyのサウンドトラックなどを専門に扱うKey Sounds Labelが発足した。他方でも、『吸血殲鬼ヴェドゴニア』(ニトロプラス、2001)では主題歌のボーカルに紅白歌合戦に出場したこともある小野正利を起用するなど、音楽や主題歌に力を入れる動きが顕著になった。また、インディーズで活動している者を中心に、アダルトゲームの主題歌の歌唱・作詞・作曲を担当する女性歌手・女性シンガーソングライターも少なくない。また、1990年代の音楽シーンには『メタル氷河期』と呼ばれる、ジャパニーズメタル音楽の著しい市場低迷が起き、数多くのヘヴィメタル系ミュージシャンが、生活と音楽活動の維持のためにアニメ・テレビゲームなども含む多ジャンルの商業音楽に進出し、若手もメジャーシーンにほとんど登場できなくなった時期があったが、その軽音業界の歴史的な経緯や影響によるものか、1990年代から2000年代にかけてのアダルトゲーム業界のサウンド面を支えた音楽集団や音楽担当スタッフには、メタル音楽の経験者やフォロワーが少なからず見られる。その状況下において、ロックよりもかなりハードなドラムやギター、間奏部のメロディカルなギターソロ、重低音重視のミキシングといったヘヴィメタル的な要素がふんだんに盛り込まれた楽曲が珍しくないことも、アダルトゲームの主題歌・BGMの特徴・様式として挙げられる。その中でも特筆すべきはメーカーであるがニトロプラスで、作品によっては歌詞と曲だけ聞かされてもアダルトゲームの主題歌とは到底信じ難いようなハードなメタルテイストの曲を主題歌や挿入歌に据えた作品が少なからず見られる。他方、アダルトゲームの主題歌であるため、メーカーによってはハードでハイテンポな曲に、本項ではさすがに掲載がはばかられるような性的表現を含んだ歌詞を組み合わせたケースもあり、たとえメタル調のハードな曲であっても歌詞のバラエティという意味では、ラブソングやいわゆる「萌え」に属する歌詞がほとんど見られない本家ジャパメタとは比較にならない幅の広さを持っている。また、先述のニトロプラスのものを例外とすれば、メタルテイストの曲であってもほとんど全ての曲についてボーカル担当が女性であることは大きな特徴で、特に男性ボーカルを起用した主題歌は皆無では無いが珍しい。I'veが人気を得た2000年頃以降は、主題歌CDの初回特典としての添付がこの業界では販売促進策としてごく当たり前の手法となっている。だが、これについては、多くのゲームに存在する初回特典の有無による価格差や、アダルトゲームでは初回限定版の発売後
出典:wikipedia
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