こんごう型護衛艦(こんごうがたごえいかん、)は、海上自衛隊が運用するミサイル護衛艦の艦級。計画番号はF116。ネームシップの建造単価は約1,223億円であった。海自初のイージスシステム(AWS)搭載護衛艦にして、アメリカ海軍以外が初めて保有したイージス艦でもある。61・03中期防に基づき、昭和63年度から平成5年度にかけて4隻が建造された。海上自衛隊は、第1次防衛力整備計画期間中の「あまつかぜ」(35DDG)によってミサイル護衛艦(DDG)の整備に着手した。その後、第3次防衛力整備計画より建造を開始したたちかぜ型(46/48/53DDG)でシステムのデジタル化と海軍戦術情報システム(NTDS)に準じた戦術情報処理装置の導入、そして五三中業より建造を開始したはたかぜ型(56/58DDG)ではCIC能力の強化とともにプラットフォームのガスタービン化も達成するなど、順次に性能強化を図っており、とくにはたかぜ型については在来型ミサイル護衛艦の頂点に立つものと評されていた。しかし一方で、当時のソビエト連邦軍においては、射程400km、超音速を発揮できるKh-22 (AS-4「キッチン」) 空対艦ミサイルと、その発射母機として、やはり超音速を発揮できるTu-22M爆撃機、そしてこれらを援護して電子攻撃を行うTu-16電子戦機の開発・配備が進められており、経空脅威は急激に増大していた。このことから、これらの在来型ミサイル護衛艦が装備していたターター・システムでは、性能上対処困難という問題が生じ、電子戦下でも多目標同時対処可能な防空システムであるAWSの取得が志向されるようになった。海上自衛隊がAWSの導入に向けて動き始めたのは1981年ごろとされている。数度の折衝を経て、1984年には、アメリカ側より「日本に対するAWSのリリース可能」との回答がなされた。これを受けて、同年8月には「イージス・プロジェクト・チーム」が発足、1985年8月には「洋上防空態勢プロジェクト」が編成された。また昭和60年度計画で予定されていたはたかぜ型3番艦の建造が中止され、イージスミサイル護衛艦の建造余席が確保された。1986年5月、防衛庁(当時)内に設置されていた業務・運営自主監査委員会を発展拡大させて防衛改革委員会が設置され、その傘下の4つの委員会および小委員会の一つとして洋上防空体制研究会(洋防研)が発足した。洋防研においては、OTHレーダーや早期警戒機、要撃戦闘機、そして艦対空ミサイル・システムを組み合わせることによる洋上防空体制の強化・効率化が模索されており、研究の結果、護衛艦の艦対空ミサイル・システムの性能向上についてはAWSが最適であるとの結論に至った。これらの検討結果は1987年(昭和62年)12月の安全保障会議において了承された。これによって建造されたのが本型である。実際に、こんごう型の4番艦「ちょうかい」は、高雄型の3番艦「鳥海」から取られている。そして2000年代に入ると、高雄型2番艦の「愛宕」の名を受け継いだ艦をネームシップとするあたご型が建造され、こんごう型の次級として就役することになる。本型はアメリカ海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦をモデルとしており、特にAWSの各種レーダー類の配置の必要上、上部構造物の設計は類似したものとなっている。一方で、船体部分の設計は従来の護衛艦と同じ手法によって行われているほか、海自がイージスミサイル護衛艦に群旗艦としての能力を要求したこともあって、上部構造物は大型化し、排水量は同級と比して大きく増大している。船型は、アーレイ・バーク級では艦尾甲板が1段下がっている長船首楼型であったのに対し、本型では上甲板の整一化を図り、艦尾まで平坦に続く遮浪甲板型を採用した。なお艦尾甲板はヘリコプター甲板とされているが、ヘリコプターの発着が係留装置と干渉することがないよう、艦尾甲板の舷側部はなだらかに傾斜している。これを初代むらさめ型(32/33DD)を始めとする初期の海上自衛隊護衛艦の設計上の特徴であったオランダ坂に喩えて、"ミニ・オランダ坂"とも称するが、この造作はむらさめ型(03DD)をはじめとする第2世代汎用護衛艦においても踏襲された。またアーレイ・バーク級から導入された重要な要素が傾斜船型の採用である。これは、AN/SPY-1Dレーダーを設置するためには上甲板の幅を広げる必要があった一方で、艦の推進性能確保のためには吃水部分の幅を絞る必要があったことから、これらを両立させるために採用されたものであったが、レーダー反射断面積(RCS)低減にも効果があった。赤外線シグネチャー低減のため、煙突への低減装置装備や海水管の散水装置も設置されている。また水中放射雑音低減のため、プレーリー・マスカーを装備するほか、各種の防振・防音対策も講じられている。抗堪性についても、相応に配慮されている。アーレイ・バーク級では船体は鋼製としたものの、煙突やマストはアルミ合金のままであったのに対して、本型では全鋼製とし、枢要区画においては更に二重隔壁およびニッケルクロムモリブデン鋼による弾片防御が導入され、またノンハロゲン難燃性ケーブルの導入などもなされている。被害局限化のため、艦内は4つのゾーンに区分されている。また主要配管については、左右舷や甲板の上下などに分散しており、単に艦の中央部前後で左右に分けるだけだった従来のリングメイン方式よりも更に徹底した方式となっている。またNBC防御のため、艦内に与圧をかけて外圧と遮断している。搭載艇は7.9メートル内火艇2隻のほか、6.3メートル複合型作業艇1隻が搭載された。船体設計は独自色が強かったのに対して、機関構成はおおむねアーレイ・バーク級に準じたものとなっている。主機関には、同級と同じゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン(石川島播磨重工業によるライセンス生産機)を海自としては初装備し、COGAG方式で主機関4基により推進器(5翼のスキュー付き可変ピッチ・プロペラ)2軸を駆動する方式とされた。機関区画は抗堪性に配慮してシフト配置とされており、前方の第1機械室が左舷軸、補機室(第2発電機室)を挟んで後方の第2機械室が右舷軸を駆動する方式とされた。またこれら機械室の前後にそれぞれ第1・3発電機室が配されており、この5つの区画で機関区画を構成している。電源としては、アリソン社のガスタービンエンジン(石川島播磨重工業によるライセンス生産機)を原動機とする発電機(出力2,500 kW)3セットが搭載された。これは2基を常用、1基を非常用として主発電機の運転区分により対応するものであった。従来の護衛艦の装備要領とは異なっており、機種を含めてアーレイ・バーク級から導入された手法であったが、以後の汎用・ミサイル型護衛艦で標準となった。上記の経緯より、本型の中核的な装備となるのがイージス武器システム(AWS)である。搭載している全ての戦闘システムは、AWSの戦術情報処理装置である指揮決定システム(C&D)および武器管制システム(WCS)に連接されている。バージョンは、就役時には1番艦から3番艦がベースライン4で、4番艦のみがベースライン5としてリンク 16に対応していたが、2014年現在では全艦がベースライン5.2となっている。その中核となる多機能レーダーはAN/SPY-1Dで、固定式4面のパッシブ・フェーズドアレイ(PESA)アンテナは、03・04甲板レベルの艦橋構造物周囲四方に固定配置されている。これはアーレイ・バーク級と同様の装備要領である。またミサイル発射機としてはMk.41 mod.6 VLSを搭載するが、その搭載要領もやはりアーレイ・バーク級と同様で、艦首甲板に29セル、艦尾甲板に61セルを備えている。なお発射機それぞれについて、3セル分を使って再装填用クレーンが配置されている。搭載する艦対空ミサイルは、当初はSM-2ブロックIII(米海軍呼称RIM-66M-1)を用いていたが、後にブロックIIIA(米海軍呼称RIM-66M-2)、更には赤外線センサを付加したブロックIIIB(米海軍呼称RIM-66M-5)と順次に更新された。これらの終末航程においてセミアクティブ・レーダー・ホーミング誘導を行うためのイルミネーターとしては、AN/SPG-62を艦橋構造物上部に1基、後部に2基の、計3基を搭載する。こんごう型は、RIM-161スタンダード・ミサイル3 (SM-3) ブロックIAを使用した弾道ミサイル防衛(BMD)で運用されるため全艦が改修を受けた。「こんごう」へのミサイル防衛能力付与のための改修とSM-3の取得、発射試験の合計予算は340億円、「ちょうかい」は307億円、「みょうこう」は309億円、「きりしま」は312億円となる。SM-3ミサイルは航空自衛隊のPAC-3ミサイルとの併用で対処するものとして導入された。SM-3の1発の値段は20億円程度。実用配備数は8発×4隻の32発であるが、導入数は各艦実射試験用1発を合わせた9発×4隻の36発となる。最初に改修が完了した「こんごう」(佐世保基地所属)は、2007年12月18日のハワイ、カウアイ島沖での迎撃実験(JFTM-1)で、SM-3ブロックIAにより、高度100キロ以上の大気圏外を飛行する標的ミサイル1発の迎撃に成功し、翌月に実戦配備された。次に改修を受けた「ちょうかい」(佐世保基地所属)は2008年12月20日に、模擬弾道弾の発射時刻を知らされない状態での迎撃実験(JFTM-2)を行い、探知、追尾、発射には成功したが撃墜には失敗した。この結果について防衛省では「イージスシステムは正常に作動しており、SM-3の弾頭部分に何らかの不具合が生じた可能性がある」としている。3番艦「みょうこう」(舞鶴基地所属)は、2009年10月27日、2番艦「きりしま」(横須賀基地所属)は2010年10月28日に弾道ミサイル迎撃試験(JFTM-3、JFTM-4)を行い、予め時刻を知らせられない条件下で発射された射程1,000km級の弾頭分離型準中距離弾道ミサイルを模した標的ミサイルの捕捉・追尾・迎撃に成功した。準中距離弾道ミサイルはブースト上昇が終了した段階で着弾地点推定が出せるが、朝鮮半島から発射された場合、日本列島主要域に着弾するまで7分程度しかないため、飛来する全てのミサイルを要撃対象とせざるをえない。但し、2011年04月におこなわれたFTM-15: First "Launch on Remote" Aegis Missile Defense Testで示されたように、C2BMC(指揮管制戦闘管理通信システム)を介して迎撃を可能にするリモート発射能力が確認されている。(FTM-15では、現用SM-3でウェーク島のAN/TPY-2により1,000km以上離れたクェゼリン環礁から発射された 3000-5500km型のトライデントSLBM改造型標的弾頭の迎撃に成功している・車力分屯基地のAN/TPY-2と朝鮮半島基部までは 1000-1300km)。常時哨戒配置の高練度艦1隻に作戦可能な低錬度艦1隻、入港補給等非活動艦1隻、教育・ドック入り等未活動艦1隻で、常に最低1隻は哨戒できる体制を取ることを目的に4隻の改修が行われるが、24時間程度前から液体燃料注入等の発射準備を衛星情報で感知できた場合、3隻まで対処に回すことが可能と想定されている。改修されたこんごう型が配備されることで、海上自衛隊で1ユニット、複数のイージス巡洋艦とイージス駆逐艦を配備する在日米海軍で1ユニットと2つ以上のMDイージス艦を日本海海上で常時哨戒させる体制を確立することが出来る様になる。防衛予算が2002年(平成14年)度から2010年度(平成22年)度まで8年連続で漸減している中で、総額で毎年1,000億円から2,000億円掛かる高額なミサイル防衛システムの導入を進めることで、従来型装備の調達や人員体制、訓練体制に大きな影響を及ぼしている。1998年に「みょうこう」が、北朝鮮によるミサイル発射実験で発射されたテポドン1号の探知・追尾に成功した。2006年の発射実験では、日本海に展開していた「こんごう」と「みょうこう」がテポドン2号とみられる噴射熱の探知・追尾を行った。これはミサイル防衛計画艦が「実戦」で弾道ミサイルの探知・追尾に成功した初めての例となった。2009年の発射実験では、一部の艦がSM-3による弾道弾迎撃能力を付与されていたことから、初めて防衛大臣により破壊措置命令が発出され、弾道弾迎撃能力獲得のための改修をうけた「こんごう」と「ちょうかい」が日本海側に、未改修の「きりしま」が太平洋に展開され、銀河2号の探知・追尾に成功した。ただしミサイルが日本の陸域に落下しなかったので迎撃は行われなかった。この際に使用されたのは、AN/SPY-1レーダーが元から備えていたNTDCプログラム (Non-Tactical Data Collection)だったが、イージスBMDにおいては、弾道ミサイルの追尾に使用する専用のプログラムが開発され、より精緻な追尾を可能にする発展型プロセッサも組み込まれている。上記の「こんごう」の改修に際し、アメリカ側はイージス艦の情報漏洩問題を受けて、2007年7月に改修に必要なソフトウェアや文書等の供給を停止した。日本側が新たな情報保全体制の取り組みを説明したのを受け、8月3日に供給は再開している。この供給停止による改修計画への遅れはないとしている。本型では、対潜戦能力についても、従来護衛艦と比して大きく刷新されている。最大の変更点がOYQ-102対潜情報処理装置(ASWCS)を中核としたシステム化である。海自では、既にあさぎり型(58DD)などにOYQ-101 ASWDSを搭載していたが、これは戦術曳航ソナーやソノブイなどの情報を統合し、パッシブ運用のシステム化を図るものであった。これに対し、本型搭載のOYQ-102は、アーレイ・バーク級でも搭載されていたAN/SQQ-89に範をとって、AWSと同様のシステム統合を図っている。ソナーとしては、しらね型(50/51DDH)で搭載された75式探信儀 OQS-101の後継機種であるOQS-102を搭載した。なお、バウドームの前部はラバー・ウィンドウとされている。また艦尾左舷からは曳航式のOQR-2も繰り出される。対潜兵器としては、艦首側のMk.41 VLSから発射される垂直発射式アスロック(VLA)とともに、後部上構付近の両舷に68式3連装短魚雷発射管HOS-302を装備している。対水上捜索用のレーダーとしては、前任のはたかぜ型と同系列のOPS-28Dを搭載する。これは遠距離での精密捜索能力に優れており、水上の目標のみならず、低空を飛行する巡航ミサイル(シースキマー)などの探知にも使用される。艦対艦ミサイルもはたかぜ型と同様で、ハープーンを4連装発射筒2基を搭載できる。艦体外部の架台に、1発ごとにミサイル発射筒を搭載しているため、発射筒搭載数は最大数より少ない場合もある。主砲としては、アーレイ・バーク級で搭載されていた54口径5インチ単装砲(米海軍Mk.45)や、はたかぜ型で搭載されていた54口径5インチ単装速射砲(米海軍Mk.42)ではなく、オート・メラーラ製の54口径127mm単装速射砲(127mmコンパット砲)を搭載した。これはその名の通り、汎用護衛艦(DD)などで搭載されていた76mmコンパット砲のスケールアップ・モデルとして開発されたものであり、海上自衛隊としては初の採用例であった。またこれと組み合わせる砲射撃指揮装置(GFCS)としては、はたかぜ型などで搭載されたFCS-2-21に所定の改正を加えて、艦橋上部に装備した。CIWSは、従来の護衛艦同様高性能20mm機関砲(米海軍Mk.15)を2基搭載しているが、従来の両舷配置から中心線上の前後配置に、CIWS基部も露出した状態からアーレイ・バーク級と同様に改められている。尚、こんごう型は全4隻がBlock1Bへの換装を完了している。電子戦装置として、原型艦であるアーレイ・バーク級は、電子戦支援機能しかもたないAN/SLQ-32(V)2電波探知装置を搭載していた。これに対して本型では、電子攻撃機能を備えるとともに、より精巧な国産機であるNOLQ-2電波探知妨害装置を装備している。これは、技術研究本部において昭和50年度より「水上艦用電波探知妨害装置」として開発されていたもので、まず電波探知(ESM)機能のみが汎用護衛艦(DD)向けのNOLR-8として昭和60年度より装備化されたのち、電波妨害機能も備えたNOLQ-2が本型で装備化された。対艦ミサイル防御(ASMD)を重視して、ミサイル・シーカー波の瞬時探知・全方位同時捜索などの機能を備えている。また、チャフ・IRデコイ(フレア)を展開するため、他の護衛艦と同様にチャフロケットシステム(Mk 36 SRBOC)を装備しており、そのMk.137 6連装デコイ発射機は4基が搭載される。装備位置は前部01甲板上である。アーレイ・バーク級フライトIと同様、ハンガーこそもたないが、ヘリコプター甲板と給油機能を有している。またSH-60Jに搭載されるヘリコプター戦術情報処理装置(HCDS)との連接のため、ORQ-1ヘリコプター・データリンクも搭載されるなど、航空運用能力ははたかぜ型と比して大きく向上している。テロ対策特別措置法による後方支援の一環として、インド洋への海上自衛隊の派遣が決定された際、当初からリンク機能の装備状況を考慮してイージス艦を派遣艦に含めることが検討されていたが、などの反対意見が国会などであった。そのためインド洋へのイージス艦の派遣は2002年末まで行われなかった。最終的に本型艦の派遣が決定された理由として、司令部機能を持つ護衛艦のローテーションの組みやすさ、高い情報処理能力による安全性の確保、乗員の負担が軽減できる居住性の良さなどがある。ただし、こんごう型にはヘリコプター格納庫がないため運用できる哨戒ヘリ数は減少することになった。
出典:wikipedia
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