『スティング』("The Sting")は、1973年公開のアメリカ映画。製作会社はユニバーサル・ピクチャーズで、監督はジョージ・ロイ・ヒル。アメリカン・ニューシネマの代表作『明日に向って撃て!』で共演したポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが再共演を果たし大ヒットした。1936年のシカゴを舞台に詐欺で日銭を稼ぐ1人の若者が、親同然の師匠を殺害したギャングに復讐するために伝説的な賭博師と協力し、得意のイカサマで相手組織を徐々に追い詰めていく様を軽快に描いたコメディ映画。信用詐欺(コン・ゲーム )を扱った代表的な映画である。第46回アカデミー賞作品賞受賞作品。また、2005年に合衆国・国立フィルム保存委員会がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の1つである。原題の「Sting」は本来は英語で「ブッスリ・グッサリと強烈に突き刺す」「とどめを刺す」と言う意味だが、ここでは「騙す、法外な代金を請求する、ぼったくる」という俗語。1936年9月、ギャングの手下であるモットーラが、違法賭博の売上金11,000ドル(貨幣価値については後述)をシカゴに持っていく途中に路上で強盗の現場を目撃。黒人男性がナイフで足を刺され、大金が入った財布を盗まれた。偶然通りすがった別の男が犯人の足に鞄を投げつけて撃退し、モットーラは犯人が落とした財布を拾った。通りすがりの男が警察を呼ぼうとすると被害者の男に咎められた。聞くと男はギャングを主な顧客とする賭博場のオーナーであるらしい。財布の中身は顧客に渡すための金5,000ドルであるため、約束の4時までに届けなければ流用したと疑われ殺されてしまうという。被害者の男は、財布を届ければ謝礼として100ドルを支払うと約束。通りすがりの男が厄介事に関わるのを嫌ったため、モットーラがその役目を買って出た。財布の中身ごと自分のものにできると睨んだからだ。大金を乱雑にポケットに入れるモットーラに、通りすがりの男は、モットーラの所持金と一緒にズボンの中に入れた方が安全だとレクチャーした。モットーラはタクシーに乗ると、大金が自分のものになったと高笑いする。しかし「大金」が入った袋を開けてみると中身は大量のチリ紙だった。実は、通りすがりの男と被害者の黒人男性と強盗は詐欺グループで、まんまとモットーラを騙したのだ。通りすがりの男はフッカーという名の詐欺師で、レクチャーの際にモットーラの所持金だけ盗み取り、用意していた大量のチリ紙が入った袋をモットーラに渡したのだ。黒人男性のルーサーはフッカーにとって親同然の師匠で足は刺されてなどいなかった。モットーラは大量の売上金を所持していたためフッカーとルーサーは大儲けに成功した。しかしフッカーは図に乗り自らの取り分をさらに増やそうとギャンブルに投じて失敗。ルーサーは自らの取り分と引き換えにフッカーを組織から脱退させ、古い友人の元に行くよう命じた。落ち込むフッカーの前に、警察官であるスナイダーが現れ、詐欺で大金を手にしたことを問い詰めた。スナイダーによるとその金はドイル・ロネガンという大物ギャングの手元に渡る予定のもので、警察がロネガンに事実を伝えればフッカーは殺されると忠告。モットーラがロネガンの手下であると気づいたフッカーは、取り分の一部を要求してきたスナイダーに偽造紙幣を手渡してひとまず難を逃れた。しかし詐欺グループの師匠でもあるルーサーの命が狙われると思ったフッカーは近くの店に飛び込み彼と電話で連絡を取ろうとしたが繋がらない。急いで彼のいるアジトに向かったが、ルーサーはすでにロネガンの手下により殺害されていた。フッカーは、かつてルーサーに紹介されたヘンリー・ゴンドーフを尋ねにシカゴへと向かった。フッカーが目にしたゴンドーフの姿は伝え聞いた「大物詐欺師」とは程遠く、娼館主であるビリーの経営する屋内遊園地兼娼館兼酒場で寝泊りする体たらくであった。当初は落ちぶれた生活への慣れやフッカーの減らず口にやる気のなかったゴンドーフだが、旧友であるルーサーを殺された怒りと、フッカーがロネガンに対して抱いている熱い復讐心への共感から、再び動き出すことを決めた。身なりを整え新しく家を借りたゴンドーフとフッカーは昔の詐欺仲間を呼び集め作戦を練り始めた。仲間によるとロネガンは堅気の人物に見せかけるために慈善団体に所属し、酒にも煙草にも女にも手を出さず、スポーツにも興じない。しかしポーカーにだけは目がなく、時にイカサマを働いてまで勝ちを狙うらしい。視察のために時々シカゴを訪れるロネガンが移動の列車の中で行われるポーカーに参加すると聞いたゴンドーフはその機会を狙って一昔前の手「電信」でロネガンを騙すことに決め、さらに暫く使用されていない地下室を偽の賭博場に仕立てた。一方、フッカーに偽札をつかまされたスナイダーが、管轄外のシカゴまでフッカーに追いすがり、ビリーの店でまでバッジをチラつかせていた。ゴンドーフらは、ロネガンの乗車する列車に乗り込んだ。ビリーが車内の狭い通路でロネガンの財布を盗むことに成功した。ゴンドーフはロネガンと同じ組で賭博ポーカーができるよう、車掌に賄賂を手渡した。かくしてロネガンと直接対決することになったゴンドーフは「ショウ」と名乗り泥酔を装って次々と勝負に勝ち続けた。激昂したロネガンは一度休憩を取り、3と9のカードでイカサマをするように手下に指示。ロネガンの手元に9を4枚、ゴンドーフの手元には3を4枚巡らせることでロネガンが勝てるように仕組んだのだ。そしてイカサマは成功したかに見えた。互いに大量のチップを賭けている中、余裕の表情を見せるロネガン。しかし、ゴンドーフはイカサマされた自分の手札にさらにイカサマ札を加えてさらに強い手を作り、ロネガンに1万5000ドルの大損をさせる。ロネガンは負け金を支払おうとしたがその時初めて財布を盗まれたことに気づいた。「財布を部屋に置き忘れた」と言い逃れするロネガンにゴンドーフは、「5分後ロネガンの部屋に若い仲間を派遣し負け金を支払わせる」と告げてその場を後にした。ロネガンの部屋を訪れたフッカーは「ケリー」と名乗った。フッカーは懐からロネガンの財布を取り出し、「ショウ」が連れの情婦に盗ませたと告げ口した。「ショウのイカサマは貴方のそれより1枚上手だった」と言う「ケリー」にロネガンは激怒。フッカーとゴンドーフの両方を始末しようとするロネガンにフッカーは「借りのあるショウを殺すのは格好悪い。ほかの方法がある。俺はショウの組織の乗っ取りを目論んでいる。だから貴方の力を貸して欲しい」と提案。ロネガンの用意した車に乗せられたフッカーはその車内で、「「ショウ」の経営する賭博場で詐欺を働けば借りを返すどころか負け金を遥かに上回る大金を手にできる」と言った。翌日の午後に賭博場の近くの店で詳細を話すことを約束し車を降りたフッカーは早速ゴンドーフの元へ戻り、ロネガンを丸め込むことに成功したと報告するのだった。帰宅したフッカーを、ロネガンの配下の殺し屋たちが待っていた。辛くも逃げ延びたフッカーだったが、その話を聞いたゴンドーフは冷淡に「これ以上ケチがつくようなら、この仕事は中止だ」と告げる。一方、失敗の報を聞いたロネガンは激怒し、一流のプロ「サリーノ」にフッカーを確実に殺させるよう命じるが、フッカーが「ケリー」だということには気づかなかった。ゴンドーフが、自ら構えた偽の賭博場で順調に準備を進めるのと時を同じくしてフッカーはロネガンと待ち合わせた店にいた。話によると「ケリー」は賭博場へ電信を送る電報局の人物と繋がりを持っており、賭博場に送る競馬中継を実際よりも数分遅れたものにさせることができるという。その時間差の内に電話で教えられた当たり馬券を購入すればすぐに賭博場のオーナーである「ショウ」を破産させることができるとのことだ。しかし最初の1回はあくまでテストのため賭け金は2000ドルに留めた。本命のレースはその後にするということだ。そしてレースは始まりロネガンの賭けた馬は見事勝利した。これを機にロネガンが一気に大金を投資すると期待したフッカーであったが、まだ何か裏があると察したロネガンは賭け金は小額ずつしか出さないとした。ロネガンと別れたフッカーの前に、スナイダーが現れる。シカゴ名物高架鉄道の駅の屋根から跳ぶという荒業でかろうじて逃げのびたフッカーの背中に、スナイダーは怒号と罵声を浴びせるのだった。スナイダーの事を聞かされたゴンドーフは、「何か手を打たなくちゃな」と考えこむ。フッカーを完全に信じ切れずにいるロネガンは、電報局の担当者との面会を要求。あわてたフッカーは急慮仲間の一人を担当者に仕立て上げロネガンと面会させることにした。フッカーの仲間は電報局に塗装夫に変装して潜入。いわゆるカゴ抜け詐欺の手口で「担当者」になりすまして密談の場所を変えた。もう一度だけ競馬中継の操作をしてほしいと申し出るフッカーとロネガンに対し「担当者」は査察官が目を光らせているとして断った。しかし、ロネガンは次も操作に成功すればその時に50万ドルの大金を賭けてその儲けを山分けすると言って、強制的に競馬中継の操作を約束させた。そのころフッカーを追うスナイダーはゴンドーフを追うFBI捜査官ポークに呼ばれ、ゴンドーフを陥れるためにその友人であるフッカーを逮捕することを要請される。レース当日ロネガンはいつもの店で賭ける馬を電話で指定された。一方ゴンドーフの賭博場ではスタッフが配当の低いレースを探していた。もしロネガンに大金を賭けられたら配当金を支払えないからである。かろうじて配当金の低いレースを探し出した折、ロネガンが賭博場に姿を現した。大金を賭けられると察したゴンドーフはすかさずレースの中継を開始させロネガンの馬券購入を阻止した。腑に落ちないロネガンであったがレース結果が先ほど店で伝えられたそれと一致したためフッカーと電報局の「担当者」を完全に信頼することにした。ロネガンは賭博場にいたフッカーを呼び、明日のレースのために50万ドル用意すると約束した。その夜、なじみの食堂で自分を追っている殺し屋らしき男をガラス越しに発見したフッカーは、店のトイレにある窓を1つ開けるよう新顔のウェイトレスロレッタに頼み込む。別のトイレに鍵を掛けて彼女と潜み、開いた窓から「殺し屋」を外に追い出そうと目論んだのだ。わざと食堂の外に出て「殺し屋」を店内に誘き寄せたフッカーの作戦は成功。「殺し屋」が窓から外に出た隙に食堂の入口から逃亡したフッカーは何とか逃げ切ることに成功した。一方、ロネガンの殺し屋は、手柄の独り占めをもくろんだ「サリーノ」に始末されていた。次の朝、ついにフッカーは自宅アパートで待ち構えていたスナイダーに捕らえられてしまう。FBIの事務所に連行されたフッカーはゴンドーフを追うFBIの捜査官ポークから、次に詐欺を働くのは何時かとゴンドーフに聞いて来いと迫られた。教えなければ20年の懲役に服さねばならないという。フッカーはそれでも断るが、それなら代わりにルーサーの妻を逮捕するといわれて仕方なく捜査に協力することにし、ゴンドーフを裏切ることにした。行くところのないフッカーはロレッタの部屋を訪れ、共に一夜を過ごす。だが、その部屋の外から「殺し屋」が様子をうかがっていた。作戦の当日フッカーは賭博場に向かう途中でロレッタに遭遇。抱擁を交わそうとしたその瞬間、フッカーの背後から銃弾が放たれロレッタの頭部を撃ち抜いた。呆然とするフッカーに、銃を撃った「殺し屋」はロレッタが持つハンドバッグに隠されていた拳銃を示した。実はロレッタこそがフッカーを殺害するためにロネガンが雇った殺し屋「ロレッタ・サリーノ」であり、「殺し屋」はゴンドーフがフッカーの元に遣わしたボディーガードであった。賭博場では、いつものように電話で賭けるべき馬を聞いたロネガンが、ついにある馬の単勝に50万ドルの大金をつぎ込んだ。あまりの賭け金の大きさに静まり返る店内であったが結局ゴンドーフはこの賭けを受け付けた。ロネガンは余裕の表情であった。そこに電報局の「担当者」が姿を見せた。ロネガンが電話で指定された馬の単勝に50万ドルを賭けたと話すと「担当者」は驚いて、「複勝と言ったはずだ。その馬は2着だぞ」と言った。慌てたロネガンが賭けの取り消しを要求しに馬券売り場に駆け込んだその時、賭博場にポーク率いるFBIとスナイダーが現れた。ゴンドーフに逮捕を告げたポークがフッカーに労いの言葉を掛けると、フッカーに裏切られたことに気づいたゴンドーフはフッカーに発砲。それを見たポークもゴンドーフに発砲し、フッカーとゴンドーフは共に絶命する。ポークはスナイダーにロネガンを外に連れ出すよう命じ、スナイダーは急いでロネガンを外に連れ出した。ロネガンは50万ドルが中に残ったままだと主張するがスナイダーは聞く耳を持たなかった。スナイダーがロネガンを外に連れ出したのを確認すると、ポークは床に倒れているフッカーに「行ったぞ」と声をかけた。するとフッカーは目を開け、笑いながら立ち上がった。そしてゴンドーフもまた立ち上がった。ポークいわく「スナイダーは最後まで本物のFBIと信じ込んでいたよ。」そう。これらは全て、ゴンドーフとポークこと詐欺師ヒッキーによる、悪徳警察官スナイダーとギャングのボスであるロネガンを騙すための極めて大掛かりな芝居だったのである。偽の賭博場が解体される中、ゴンドーフとフッカーは、ロネガンから騙し取った大金を如何に山分けするかを話し合いながら人混みへと消えていくのであった。物語中に、金額として様々なドル額が頻出するが、物語の時点の1936年当時と2015年時点での物価水準は、約17倍になっていると想定される。したがって、ロネガンが列車内で損をした1万5000ドルは、現在価値で約25万ドル(100円/ドルとして、約25百万円)、賭博場でロネガンが賭けた50万ドルは現在価値で850万ドル(同、約8.5億円)となる。フッカーが食堂で払った夕食代は、85セントであり、これは現在価値14.5ドル(同、1450円)に当たる。詐欺師の手法をフィールドワークで集めた言語学者、の著作『詐欺師入門―騙しの天才たち:その華麗なる手口』に基づいている。「ゴンドーフ」や「JJ」といった名前は20世紀初期に実在した詐欺師たちの名前に因んでいる。しばしば犯罪映画に分類されることもある。レッドフォード演じるフッカーは当初ジャック・ニコルソンに出演が打診されていたが断られた。撮影当時、ロネガンを演じるロバート・ショウは足首を負傷していたため、ロネガンを足を引きずって歩く人物という設定にした。チャールズ・ダーニング演じるスナイダーが、アイリーン・ブレナン演じるビリーの手にビールをかけるシーンはダーニングによるアドリブである。ポール・ニューマン演じるゴンドーフが劇中、華麗にトランプを操るシーンがあるが、ボディダブル(身代り)を使用しており、実際に操っているのは米国内で著名なマジシャンであるジョン・スカーンである。主題歌は、スコット・ジョプリンの『ジ・エンターテイナー』を30年代に編曲した曲で、この映画の成功により、知名度は爆発的に上がった。第46回アカデミー賞2005年に、DVD『スティング スペシャル・エディション』が発売された。特典映像としてオリジナルの予告編や俳優・スタッフが語る「スティングの見どころ」を収録。また、新規に日本語吹替音声を収録している。作品内で用いられた詐欺の手法を詳細に記した『The Big Con』は1940年に初版され、1999年に再版された。ロバート・ウィーバーカによるノベライズ『スティング』(村上博基訳、ハヤカワ文庫)がある。主人公達が大芝居を打つ舞台となった場外馬券売り場の入口と主人公が身だしなみを整えた床屋はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのニューヨーク・エリアで再現されている。
出典:wikipedia
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