大学全入時代(だいがくぜんにゅうじだい)とは、2009年頃(細かい年は諸論分かれる)に日本の大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況を迎えるとされる状況を指す言葉である。この言葉を使う場合、それに伴う諸問題もあわせて扱われる。ここで言う問題とは、主に大学教育の質の低下、定員割れ、さらにその結果として引き起こされる大学崩壊などである。全入とはあくまでも全大学の定員数を統計した上での問題であり、誰もが志望する大学・学部に入れる、浪人生が存在しなくなるというわけでは決してない。この問題は2009年問題もしくは2007年問題とも呼ばれたが、少なくとも2007年度入試では発生しないことが明らかになり、数年後へ先延ばしになるであろうという状況となっている。2011年現在、その問題が発生したかどうかは不明である。しかし、実際には2000年頃から既に入る大学・学部さえ選ばなければ、経済問題などを除く入学選抜のみの点では、誰でも入学できる状況になっている。高等教育機関である大学自体が市場原理によって淘汰される時代に入ったため、大学崩壊や大学のレジャーランド化が叫ばれるなか、高等教育機関としてのあり方、教育研究の新しいあり方をいかにして各大学が発展させ、学生の質・量を確保するかが問われている。その過程で、受験生に対して様々な、時として過剰とも言える宣伝やサービスが行われるようになった。例としては、高校3年生を対象に就職率や就職先企業の実績、在学中に取得可能な公的資格などの広告や宣伝、オープンキャンパス(大学内の見学や学部などの説明、模擬授業、在籍学生や大学職員との交流イベント)、AO入試の実施などである。大学によっては、オープンキャンパスで周辺主要都市からキャンパスへの無料送迎バスの運行や交通費の補助をしたり、学内食堂の無料券の配布、記念品の配布などが行われることもある。さらに、入試の成績優秀者に対して、入学金や授業料の全額または一部免除を行う大学も増えている。これには、併願受験を行う受験生を囲い込むという側面もある。私立大学における経営収入の大部分を占める授業料を免除してまで学生を確保する動きがはじまったことは、大学全入時代の大学間競争が教育研究面での戦いだけでなく、財務状況、経営体力の争いであることを示している。よって、学生数を膨張させるマスプロ大学化が進んでいる。一方、浪人生、ひいては受験生全体の数の減少を受け、予備校においても現役生を視野に入れた経営を行うようになっている。三大予備校の他、東進ハイスクールは現役生中心の授業を行い業績を伸ばしにかかる一方、地方の中小予備校は生徒集めに苦しい状況となっている。しかし「三大予備校」の一つと称される「代々木ゼミナール」が2014年8月に少子化とそれに伴う浪人生の減少、「現役志向」が高くなったとして全国にある校舎を渋谷など7校に集約すると発表した。また、専門学校も大学より容易に入学できるという利点が大学全入時代の定員割れを起こしている大学の存在によってその利点が失われつつあり、存在目的である職業教育も大学が力を入れつつあるという苦しい状況となっている。上記の取得資格や就職率といった「学生獲得競争」により一部の大学が「就職予備校」「資格予備校」に成り下がったと評される。ある公立大学法人はその就職率の高さゆえ「就職予備校」と批判されたり、また、定員割れが続いていた地方の私立大学は「マナー研修」など「就職予備校」であることを前面に押し出し「高い就職率」をアピールし、志望者増加につながったという。近年では学生のダブルスクール現象が見られ、希望する職業を目指すため専門的な知識・技術を専門学校で学んだり、就職できなかった既卒者や大学を中退して専門学校に再入学するケースも増加しており、ダブルスクール族は今後も増えると見込まれている。主な原因として、日本における教育の大衆化の進展、1990年代以降の法的規制緩和による大学の新設ラッシュ、定員増加、少子化などが挙げられる。1980年代後半から1990年代前半、バブル期に18歳人口がピークを迎えたことや大学不合格者が増加したことにより、各大学に臨時定員増加が認められた。これは後に18歳人口が減少することを前提とした、あくまで一時的な措置であったが、政治家や私学関係者の働き掛けにより、国立大学は元に戻すが、公立大学と私立大学は臨時増加分の半分を維持してよいこととされた。2000年代に入り、小泉純一郎政権時代の規制緩和が大学にも及ぶことになり、それまでは学校法人審議会による厳しい審査が必要であった大学・学部新設の一部に届出制が導入された。これが大学の新設ラッシュを引き起こし、1992年から2006年までの間に大学は約70校新設され、短期大学からの四年制移行もあわせると184校増加した。大学全体の定員が増加する一方で少子化は急激に進み、大学全入が現実味を帯びる状況となった。大学全入時代を迎えるなかにあって、一部の難関大学や有名大学への受験・人気が集中していることにより地方大学や新興大学は受験生・生徒集めに苦戦している。日本私立学校振興・共済事業団が毎年行っている調査では、近年私立大学で定員割れを起こしている学部・学科等を持つ大学は全体の4割を超えることが続いており、2007年度の調査では私立短大の定員割れ率が初の6割超となった(つまり半数以上が定員を満たしていない)。また、最近では、地方国公立大学でも一部の学科、専攻などで二次募集を行うケースが発生している。実際に、定員割れによる経営問題や他の問題点を抱えた新興大学は多く、2003年には立志舘大学が定員割れで閉学(完成年度前)、キャンパスは呉大学(現:広島文化学園大学)に吸収された。2005年6月には萩国際大学(現・山口福祉文化大学)が定員割れが原因としては初の民事再生法適用を申請した。これらの事例より、「大学の閉鎖」という事態が現実のものとなった。その後も学生の募集を中止する大学は続き、2007年には東和大学が募集停止、またその後三重中京大学、聖トマス大学、神戸ファッション造形大学、愛知新城大谷大学、福岡医療福祉大学、東京女学館大学、LEC東京リーガルマインド大学、創造学園大学、神戸夙川学院大学の9大学が学生の募集を停止をした(いずれも募集停止後の数年後に閉学予定)。なお、現時点では上記のように募集停止となったもの、完成年度を迎えていないもの、民事再生法適用して生まれ変わった大学はあるものの、完成年度を迎えている正規の四年制大学が完全に閉鎖した事例はない。大学を閉鎖するためには最後の学生が卒業または退学するまで継続しなければならないため、募集停止の申請を文部科学省に行ってから約8年間程度にわたって存続するのが原則となっているからである。2006年8月11日付の読売新聞社説「私立大学乱立」によれば、志願者は難関校(都心部)へ集中する一方で、地方の中小規模の新興大学の経営悪化が目立ち、生き残りには、大学の個性のアピール、教育内容の充実、就職支援などによって「ブランド力」を身につける以外にないと記している。入学試験の多様化ついては、文部科学省高等教育局から毎年5月頃に各大学へ通知される『大学入学者選抜実施要項について』にある「多様な入試方法を工夫することが望ましい」の文言に基づいて実施されている。大学にとっては学生確保の側面もあり、AO入試など推薦入試枠の拡大、入試地方会場の設置、独自の学部の設置、受験機会(回数)の増加など、様々な対策を行っている。一方、定員割れを引き起こしている全入大学で新たに生じた珍現象として、いかに平易な入試問題であっても対応できない受験生が発生し、大学側の困惑を引き起こしている。程度によっては、およそ大学で学ぶに値しない(高校入試問題ですら解けない)受験生が出現し、入試の合否判定会議が紛糾する事態を迎えている。「解答用紙に名前さえ書いてもらえたら何とかします」という大学もある。(2007年5月23日 読売新聞中部版)また、受験生の目に留まるように、以前では考えられなかった対策も現れてきている。有名なものとしては、大学の合併という現象も起こっている。2002年の大阪国際大学による大阪国際女子大学の吸収を発端に、2008年には東海大学が北海道東海大学と九州東海大学を吸収した他、慶應義塾大学と共立薬科大学が合併。共立薬科大学が、慶應義塾大学薬学部となった。歴史ある共立薬科大学の、他大学との合併という選択は大学関係者に大きな驚きを与えた。2009年4月には、関西学院大学と聖和大学が合併。聖和大学が関西学院大学教育学部となった。また、聖母大学を運営する学校法人聖母学園と上智大学を運営する学校法人上智学院との間で法人合併契約が締結、2011年(平成23年) 3月31日を以って学校法人聖母学園は解散、2010年4月1日に上智大学に総合人間科学部看護学科と総合人間科学研究科看護学専攻が設置される。主に定員割れになった大学では留学生の獲得を行おうとしているところがある。国公立大学に関して言えばむしろ国立大学法人・公立大学法人化に伴う再編により絶対数は減少傾向にあるが、これは前述の私立大学の合併とはやや事情が異なる。一般に同等の教育やサービスが受けられるならば、授業料等の安い国公立大学が選ばれやすく、国公立大学への影響は少ないと見られている。実際定員割れを起こしているのはほとんどが私立大学である。入学率は、1990年には62.1%であったが、2000年には81.7%になった。大学全入時代に突入したといわれる2009年は89.7%であり、2010年が89.5%、2011年が89.6%であった。
出典:wikipedia
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